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第11章 テイマーの街
第172話 チェンジオブペース
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その後の試合展開は、アイシャさんの独壇場と言わざるを得なかった。ほとんどの選手はアイシャさんの蹴り一発でKOされてしまい、一部の選手は全力ガードで蹴りを凌いでいたがアイシャさんの実力は威力もそうだが、攻撃スピードの高さも非常に高い。2発目の蹴りのスピードが速すぎるため次のガードが間に合わないようで、結局止められたものはいなかった。
「さすがはアイシャってところやな」
「スピードだけで言えばもう俺やお前よりも速いかもしれないな」
「蹴りもかなり鋭い、今年は去年以上に厄介な存在になるかもしれへん」
ゼノンさんとダルトンさんがアイシャさんをべた褒めしていた。近くでかなり見てきているはずだからこそ、お世辞は一切なく本当に強いんだなと思う。
「シンジもあのスピードにはかなり手を焼くやろうな」
「そうですね、遠くから見ているから今はそこまでですけど、まじかで見ればおそらく今の何倍も速く感じるでしょうね」
残り10人を切ってもなお、アイシャさんの攻撃を止めるものはいなかった。しかし、残り7名のところでついにアイシャさんの蹴りをきっちり止めるものが現れた。
「去年以来の対戦かしらね、アイシャ」
両手にグローブをつけている女性闘士がアイシャさんの蹴りをきっちりガードした。遠目ではあるが、かなり魔力量もある。おそらくこのブロックの2トップといったところだ。
「あれは、去年もアイシャと予選で戦ったクレアだな。あの時も残り人数が少ないときに対峙してたな」
「あんなやつおったんか。俺は特に知らんけど」
「そりゃ、クレアの本職は冒険者だからな。普段は闘技場に顔を出すことはなかったはずだ。去年もそこそこいい試合はしていたが、今年はどれ食らう力をつけてきているかわからないな」
クレアと呼ばれた選手は、実際アイシャさんの蹴りを何度もガードしきっておりこの試合で始めてアイシャさんの動きが止まった。
「今年こそはその首をいただくわよ」
「くっ...」
動きを完全に読まれているようで、スピード感あるアイシャさんの蹴りをすべてさばききっている。またカウンター気味にこぶしを入れており、かなり攻めあぐねている。
「あのアイシャがあそこまで押されるとは想像しなかったな。去年も少しは善戦していたがここまでではなかったな」
「だが主導権はアイシャや」
「え!?」
ゼノンさんは自信満々に言うので、少し驚いてしまった。アイシャさんの実力を認めていないわけではない、ただ相手のクレアが完璧に合わせている。それでもなお断言するなんて。
「大丈夫や、すぐにわかるはずや」
アイシャさんの攻撃は未だクレアに防がれ続けている。それでもなお顔色1つ変えずに攻撃を続けてる。何か策はあるのか?
「ずいぶんお粗末な攻撃ね。去年はこんなものじゃなかったと思うんだけど、少し対策すればこんなものなのね」
クレアはかなり乗ってきているようで、そのような言葉も出てきた。事実、先ほどまで一番目立っていたアイシャさんを止めており、観客たちもクレアに期待するしてきている。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。【フォージドスパーク】」
クレアの拳に大量の魔力と同時に雷が纏った。おそらくここ一番の攻撃だろう。アイシャさんはこの技を凌げられるかどうかだが。
「この拳は今までの攻撃の何倍も速い。あなたの今の動きでは躱せない一撃だ」
「...そう、ならこれでおしまいね」
クレアが攻撃モーションに入ったとたんに、拳に纏われていた雷と大量の魔力が霧散してしまった。一体何があったのかと思ったが、クレアの首元にアイシャさんの蹴りが入っていたのだ。
「でも今までのクレアさんは、アイシャさんの攻撃をすべてさばいていましたよね。どういうこと何でしょうか?」
「ふ、あれがアイシャお得意の戦法【千夜一閃】だ」
「わかっていても、途中から気づかんくなってまうな」
ダルトンさんとゼノンさんは、この一連の流れを知っているようだが、俺には何があったのかわからなかった。
「一体、何をしたの」
その場でうつ伏せ状態になっているクレアがアイシャにそう質問した。
「私はあなたに攻撃を受け止められてからは、ずっと威力を下げさらに攻撃速度もほんの少しずつ落としていった」
「ほんの少しって、変わっていなかったじゃない」
「そう感じている時点で、すでにあなたは負けていた」
その後は、アイシャさんを止めることのできるものはおらず最後までアイシャさんが無双して決着がついた。
「速度をほんの少し下げたって、可能なんですか?」
「アイシャは緩急のつけ方が非常にうまくて、威力もあえて下げることでガードに集中させて攻撃速度に集中させないようにするんだ。そして相手が遅くなった攻撃に慣れてしまったところを、高速の蹴りで仕留める。これがアイシャの得意な戦法【千夜一閃】だ」
「さすがはアイシャってところやな」
「スピードだけで言えばもう俺やお前よりも速いかもしれないな」
「蹴りもかなり鋭い、今年は去年以上に厄介な存在になるかもしれへん」
ゼノンさんとダルトンさんがアイシャさんをべた褒めしていた。近くでかなり見てきているはずだからこそ、お世辞は一切なく本当に強いんだなと思う。
「シンジもあのスピードにはかなり手を焼くやろうな」
「そうですね、遠くから見ているから今はそこまでですけど、まじかで見ればおそらく今の何倍も速く感じるでしょうね」
残り10人を切ってもなお、アイシャさんの攻撃を止めるものはいなかった。しかし、残り7名のところでついにアイシャさんの蹴りをきっちり止めるものが現れた。
「去年以来の対戦かしらね、アイシャ」
両手にグローブをつけている女性闘士がアイシャさんの蹴りをきっちりガードした。遠目ではあるが、かなり魔力量もある。おそらくこのブロックの2トップといったところだ。
「あれは、去年もアイシャと予選で戦ったクレアだな。あの時も残り人数が少ないときに対峙してたな」
「あんなやつおったんか。俺は特に知らんけど」
「そりゃ、クレアの本職は冒険者だからな。普段は闘技場に顔を出すことはなかったはずだ。去年もそこそこいい試合はしていたが、今年はどれ食らう力をつけてきているかわからないな」
クレアと呼ばれた選手は、実際アイシャさんの蹴りを何度もガードしきっておりこの試合で始めてアイシャさんの動きが止まった。
「今年こそはその首をいただくわよ」
「くっ...」
動きを完全に読まれているようで、スピード感あるアイシャさんの蹴りをすべてさばききっている。またカウンター気味にこぶしを入れており、かなり攻めあぐねている。
「あのアイシャがあそこまで押されるとは想像しなかったな。去年も少しは善戦していたがここまでではなかったな」
「だが主導権はアイシャや」
「え!?」
ゼノンさんは自信満々に言うので、少し驚いてしまった。アイシャさんの実力を認めていないわけではない、ただ相手のクレアが完璧に合わせている。それでもなお断言するなんて。
「大丈夫や、すぐにわかるはずや」
アイシャさんの攻撃は未だクレアに防がれ続けている。それでもなお顔色1つ変えずに攻撃を続けてる。何か策はあるのか?
「ずいぶんお粗末な攻撃ね。去年はこんなものじゃなかったと思うんだけど、少し対策すればこんなものなのね」
クレアはかなり乗ってきているようで、そのような言葉も出てきた。事実、先ほどまで一番目立っていたアイシャさんを止めており、観客たちもクレアに期待するしてきている。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。【フォージドスパーク】」
クレアの拳に大量の魔力と同時に雷が纏った。おそらくここ一番の攻撃だろう。アイシャさんはこの技を凌げられるかどうかだが。
「この拳は今までの攻撃の何倍も速い。あなたの今の動きでは躱せない一撃だ」
「...そう、ならこれでおしまいね」
クレアが攻撃モーションに入ったとたんに、拳に纏われていた雷と大量の魔力が霧散してしまった。一体何があったのかと思ったが、クレアの首元にアイシャさんの蹴りが入っていたのだ。
「でも今までのクレアさんは、アイシャさんの攻撃をすべてさばいていましたよね。どういうこと何でしょうか?」
「ふ、あれがアイシャお得意の戦法【千夜一閃】だ」
「わかっていても、途中から気づかんくなってまうな」
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「一体、何をしたの」
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「ほんの少しって、変わっていなかったじゃない」
「そう感じている時点で、すでにあなたは負けていた」
その後は、アイシャさんを止めることのできるものはおらず最後までアイシャさんが無双して決着がついた。
「速度をほんの少し下げたって、可能なんですか?」
「アイシャは緩急のつけ方が非常にうまくて、威力もあえて下げることでガードに集中させて攻撃速度に集中させないようにするんだ。そして相手が遅くなった攻撃に慣れてしまったところを、高速の蹴りで仕留める。これがアイシャの得意な戦法【千夜一閃】だ」
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