スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya

文字の大きさ
上 下
172 / 196
第11章 テイマーの街

第171話 アイシャ強襲

しおりを挟む
「シンジ様、お疲れ様です」

俺は試合を終えて軽く体の様子を診てもらい、特に異常はなかったためすぐに観客席にいるシルやスライムたちのいる場所に来た。

「まあ何とか勝ち切れた、でも運がよかったところもあるだろうな」

結果として俺は本選に勝ち残れたが、これはルールが場外アウトもリタイア扱いになっていたからでノイドさんのあの爆発する技をうまく活用できたからである。このルールがなければ試合展開はかなり変わっていたと思う。

「確かに、あのノイドさん?も場外負けしたとは言え見たところまだ余裕はあったと思います」

「シルもそう思うか。俺も似たような意見だ」

場外アウトしたのも、ガードが遅れて初動をさばけず体が吹っ飛ばされただけで、爆風によるダメージ自体はそこまで受けてないように見えた。真相はわからないが、これで俺のほうが実力があるとは全く思えない。

考えている俺に、アクアが飛び込んでその場でプルプルと震えていた。俺が勝ったことを一層祝福したい気持ちの表れのようだった。

「...そうだな、ここはひとまず勝ち残ったことを喜ぼうか」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この後も、同じように予選の試合が続いた。この後の本選に出てくる選手について偵察の意味でも、観客席から試合を見ていた。アイシャさんは第2試合に出場のようだ。

「周りの噂ですと、アイシャさんは昨年のこの大会で本選に勝ち残ったらしいですね」

「そうなのか。この前のクエストでもかなり実力を持っているのはわかっていたけど」

クエストで多少戦い方を見させてもらったときに、十分強者であることはわかっていたが真の実力をまだ見たことはない。ゼノンさんやダルトンさんの話からも、コンスタントに本選に勝ち上がるとは思うが。

「第2試合、昨年ベスト8、深紅のアイシャ!!」

アイシャさんは呼ばれて登場すると、観客席から大きな歓声が起こった。それに対して答えるわけでもなくアイシャさんはそのままリングに向かった。ダルトンさんは、軽く観客席に手を振るなどといった一種のファンサービスをしていたが、アイシャさんは特に何もなかった。

「それでもかなり人気があるな。特に女性の声がより響いている気がするな」

「アイシャさんは独特な魅力がありますよ。美しさがありながら、かっこいいとも思わせる感じですね」

確かに、アイシャさんは美人ではあるがどことなくボーイッシュな雰囲気も持っている。髪もショートカットで、赤メッシュが入っている感じで、ヴィジュアル系バンドにいてもおかしくない感じだ。

「そのうえで、実力も相当高いもんな。そりゃ人気も出てくるわけだ」

「予選第2試合、開始!!」

試合開始と同時にアイシャさんは近くにいた選手に強烈な蹴りを食らわせた。しかし、アイシャさんの蹴りに反応してガードをした。

「あの速度に反応するのか!?あの選手に関して特に何も聞かなかったが」

ガードした選手は受け止めたことに一瞬歓喜の表情を浮かべたが、一瞬にしてその表情は消えた。綺麗にガードしたはずのアイシャさんの蹴りが止まっていなかったからだ。

「アイシャの開幕速攻キックは闘技場内ではかなり知れ渡っとるからな」

「ゼノンさん!?」

後ろのほうからゼノンさんと先の試合で一緒に戦ったダルトンさんが現れた。

「アイシャは試合開始の合図と同時に近くの敵にすぐに飛び込んで削っていく戦法を多用するんだ。最近は対策されてきているが、そんなにアイシャも考えなしであの戦法を使っているわけではない」

アイシャさんの蹴りは、相手選手のガードをお構いなくはじきそのまま吹っ飛ばしてしまった。相手選手は一発で倒れてしまった。

「やみくもに狙うのではなく、力量を判断して決めれる相手に照準を定めている。だから成功率はかなり高い」

「あの戦法を使わんでも、普通に戦うだけでも十分に強いんやけどな。でもアイシャはガンガン攻めるというよりかは、相手に気付かれずに削ることが多いな」

そういわれると、この前のクエストの時も静かにしれっと仕留めているような印象はあったな。魔法攻撃も特に使用していなかったし、基本蹴りだけで攻撃していた。

実際、今もタイマンはって戦うことはなく要所要所で1人ずつ仕留めてる。これがアイシャさん本来の戦闘パターンなんだろうな。

「シンジ、本選出場つかんだな。まずはおめでとうな」

「はい、ありがとうございます。ゼノンさんはこの後の試合ですよね」

「せや、俺は3試合目出場や。いったんアイシャの様子でも見ようや」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

安全第一異世界生活

笑田
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 異世界で出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて 婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の冒険生活目指します!!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...