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第11章 テイマーの街
第166話 闘士の場所
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ここは闘技場から少し離れた、かつて栄えていた酒場である。当時の店主はすでにこの酒場を去っている。その酒場を、当時から世話になっていたゼノンが、闘技場を盛り上げる一環として改築し闘士の集まる場所として提供している。
改築した当初は、単なる建物にすぎず食べて寝ることぐらいしかできない場所であった。しかし、今では闘士の数もとてつもなく増え、資金にもかなりのゆとりができたことにより、大きさは当初の何倍にも大きくなり、4人での対戦までなら可能なリングや、対戦データをまとめる設備など、闘技場のギルドのような施設となった。
今日もそのリングに1人の男が研鑽を積んでいた。
「ゼノン、今日もこんな朝早くから練習しているのか?」
話しかけた男は、ダルトン。彼は現在ランキング3位に位置付けている闘士である。ゼノンとはかなり長い付き合いであり、過去の【グレートモスリーグ】でもゼノンと何度も優勝を争っているほどの実力を持っている。
「ダルトンか、今日はずいぶん早いな」
「リーグ戦までもうあと3日だからな。お前ももともと早いけど、今日はいつにもまして早いな。やっぱあのルーキーの存在か?」
「まあそんなとこやな。シンジと戦うことを考えると昂ってしゃあないわ」
「偵察とかはしないのか?普段のお前だったら対戦相手をもっと綿密に調べ上げるだろ?」
「普段やったらそうするが、今回は勝つのはもちろんやけど、楽しむことにも意識しとるからな」
「楽しむこと?」
「最初は剣士かと思たが、先日のノルドを素手で抑え込むあたりこぶしでも戦えそうな実力もある。どう攻めてくるのかまるで分らん。この不思議な感覚がたまらんのや」
「(相変わらずねじが何本も飛んでやがるな。破天荒さを感じさせながらも、対戦相手の観察は全く怠らない。そして既存のルールを変えてしまう大胆さ。これらが混ざり1種のカリスマ性を生んでいる。だからこそ、人が集まりこうしてこの闘技場の価値も高めてきた)」
「せっかくやから、ここは軽く肌あわせようや」
「ふ、あんまりルーキーばかりに気にかけると足元すくわれるぞ。俺も当然優勝狙っているからな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そういえば、アイシャがルーキーのところに行ってからかなり時間がたつけど何か連絡は来ていないのか?」
「来てなかったな。もともと口数は少ないが、連絡の1つも来ないな」
アイシャもダルトンほどではないが、ゼノンとはかなり深い関係を持っている。アイシャがミラーゼルの闘士になってからはこの施設に住んでいた。
女性でも闘技場に参加する者は少なくないが、上位にランキングするほどのものはそうそういない。だからこそゼノン達トップクラスの闘士からも注目されることが多かった。
「まあ何か考えがあってのことやろな。俺はとにかくきっちり勝てるように強くなるだけや」
「俺はデータ整理の仕事を済ませてくる。昨日行われた分と【グレートモスリーグ】に出る選手に関して調べることがあるからな」
「おう、いつも悪いな」
「もうじきほかのやつらも来るだろうからな」
こうして今日もここ【闘士の酒場 バーアリーナ】に活気があふれてくる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アイシャさんがついてくるようになって数日が経過した。いまだ自身から話しかけてくることはない。クエストの確認やご飯のことなど質問すればかえっては来るが、やはり会話が続かないため時折微妙な空気になってしまう。
実力はさすがの一言で、蹴りが攻撃のほとんどにもかかわらず華麗に決めていく。足は攻撃だけでなく移動や回避にも使用するため、多少テンポが遅れてくる。
魔法も時折使っているが、蹴りの威力を上げたり魔法陣を作り足場にしたりと補助的な使い方がほとんどで直接的な使用はなかった。
細い脚から想像もできないほどの威力があり、4メートル近い熊の魔物が吹っ飛ぶ光景はなかなか面白かった。
「もうすぐリーグ戦が始まりますが、シンジ様は何かお考えになられておりますか?」
「多少は考えているけど、基本はいつも通りに戦うかな。戦闘のプロってわけでもないし、これといった作戦もそこまでないかな」
シルは出場しないようで観戦だけするそうだ。基本弓の攻撃だから今回の闘技場には少し合わなさそうだしな。
俺は俺で、この先どんな相手が出てくるかわからない。前みたいにいつ魔王の手先が来るかも予想がつかない。ここで何かしら手に入れていきたい。
改築した当初は、単なる建物にすぎず食べて寝ることぐらいしかできない場所であった。しかし、今では闘士の数もとてつもなく増え、資金にもかなりのゆとりができたことにより、大きさは当初の何倍にも大きくなり、4人での対戦までなら可能なリングや、対戦データをまとめる設備など、闘技場のギルドのような施設となった。
今日もそのリングに1人の男が研鑽を積んでいた。
「ゼノン、今日もこんな朝早くから練習しているのか?」
話しかけた男は、ダルトン。彼は現在ランキング3位に位置付けている闘士である。ゼノンとはかなり長い付き合いであり、過去の【グレートモスリーグ】でもゼノンと何度も優勝を争っているほどの実力を持っている。
「ダルトンか、今日はずいぶん早いな」
「リーグ戦までもうあと3日だからな。お前ももともと早いけど、今日はいつにもまして早いな。やっぱあのルーキーの存在か?」
「まあそんなとこやな。シンジと戦うことを考えると昂ってしゃあないわ」
「偵察とかはしないのか?普段のお前だったら対戦相手をもっと綿密に調べ上げるだろ?」
「普段やったらそうするが、今回は勝つのはもちろんやけど、楽しむことにも意識しとるからな」
「楽しむこと?」
「最初は剣士かと思たが、先日のノルドを素手で抑え込むあたりこぶしでも戦えそうな実力もある。どう攻めてくるのかまるで分らん。この不思議な感覚がたまらんのや」
「(相変わらずねじが何本も飛んでやがるな。破天荒さを感じさせながらも、対戦相手の観察は全く怠らない。そして既存のルールを変えてしまう大胆さ。これらが混ざり1種のカリスマ性を生んでいる。だからこそ、人が集まりこうしてこの闘技場の価値も高めてきた)」
「せっかくやから、ここは軽く肌あわせようや」
「ふ、あんまりルーキーばかりに気にかけると足元すくわれるぞ。俺も当然優勝狙っているからな」
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「そういえば、アイシャがルーキーのところに行ってからかなり時間がたつけど何か連絡は来ていないのか?」
「来てなかったな。もともと口数は少ないが、連絡の1つも来ないな」
アイシャもダルトンほどではないが、ゼノンとはかなり深い関係を持っている。アイシャがミラーゼルの闘士になってからはこの施設に住んでいた。
女性でも闘技場に参加する者は少なくないが、上位にランキングするほどのものはそうそういない。だからこそゼノン達トップクラスの闘士からも注目されることが多かった。
「まあ何か考えがあってのことやろな。俺はとにかくきっちり勝てるように強くなるだけや」
「俺はデータ整理の仕事を済ませてくる。昨日行われた分と【グレートモスリーグ】に出る選手に関して調べることがあるからな」
「おう、いつも悪いな」
「もうじきほかのやつらも来るだろうからな」
こうして今日もここ【闘士の酒場 バーアリーナ】に活気があふれてくる。
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アイシャさんがついてくるようになって数日が経過した。いまだ自身から話しかけてくることはない。クエストの確認やご飯のことなど質問すればかえっては来るが、やはり会話が続かないため時折微妙な空気になってしまう。
実力はさすがの一言で、蹴りが攻撃のほとんどにもかかわらず華麗に決めていく。足は攻撃だけでなく移動や回避にも使用するため、多少テンポが遅れてくる。
魔法も時折使っているが、蹴りの威力を上げたり魔法陣を作り足場にしたりと補助的な使い方がほとんどで直接的な使用はなかった。
細い脚から想像もできないほどの威力があり、4メートル近い熊の魔物が吹っ飛ぶ光景はなかなか面白かった。
「もうすぐリーグ戦が始まりますが、シンジ様は何かお考えになられておりますか?」
「多少は考えているけど、基本はいつも通りに戦うかな。戦闘のプロってわけでもないし、これといった作戦もそこまでないかな」
シルは出場しないようで観戦だけするそうだ。基本弓の攻撃だから今回の闘技場には少し合わなさそうだしな。
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