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第11章 テイマーの街

第165話 アイシャの実力

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「この人は、アイシャさん。ゼノンさんの知り合いで、よくわからずついてきたんだ」

シンジはシルにある程度経緯を伝えた。しかし、アイシャがついてきた理由をシンジも把握していないためシルはあまり納得できていなかった。

「とりあえず、経緯はわかりましたし敵意も今の所はなさそうですね。ですが」

シルはアイシャの方に視線を向ける。シンジもアイシャの方に目を向けた。アイシャの表情は無表情であるが、ルーに抱きついており時折頭をなでている。

最初こそ抵抗していたルーだったが、暫く経つうちに気を許せる存在だと感じたのか嬉しそうにしている。

「あの様子は一体何なんですか?」

「俺も本当にわからない。ただただ嬉しそうな感じはするけど」

こうして俺たちが会話している間も、ひたすらルーの頭を撫で続けている。表情と行動のアンバランスさに本当に驚きを隠せない。

「この子は一体何!?この最高のふわふわ具合!?」

アイシャさんはかわいいものとかに目がない感じなのか?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「改めて、自己紹介をお願いしていいですか?」

「私の名前はアイシャ。この街には5年前ぐらいから住んでいて、普段は闘士として過ごしている」

また、ゼノンさんとの関係性についても聞いたところ、この街で知り合ったようで、なれそめは俺たちに似たような感じだった。

「お金稼ぎで闘技場に入ったときに声をかけられた。その時から、すでにトップクラスだったようね」

さっきゼノンさんの周りにいた奴らも、似たような関係性なのか。

「シンジも参加するんでしょ?【グレートモスリーグ】」

「ああ、その予定だ。アイシャも出るのか?」

「あれは勝ち上がるほど、お金がより多くもらえるからね。でも、あなたとは戦いたくないわね」

「?一体どういう意味だ?」

俺はアイシャさんに聞き返そうとしたが、すぐにルーのもとに戻ってしまった。仕方なく、そのあとは特に何もなく一夜を過ごした。

そこまで大きい部屋をとってはいなかったので、俺だけ別で部屋を取り元の部屋ではシルとアイシャさんとルーが寝ていた。俺はスライムたちと仲良く就寝だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日になり、俺たちは冒険者ギルドに向かった。【グレートモスリーグ】の開催までもうしばらく時間がある。闘技場に参加してもいいが、俺たちは一応冒険者だ。金欠ではないが、ある程度活動は必要だ。

サイクロンウルフと呼ばれるモンスターの討伐に来た。討伐ランクはCランクだが、これは単体でのランク指定である。このモンスターの特徴は、自身の高速移動と抜群の連係プレーで群れで現れた場合はBランクにまで上がる。

このクエストを受けた理由はほかにもあり、アイシャさん自身の実力を見てみたかったのもある。ゼノンさんに見込まれているぐらいだから実力者なのは当然であるが、一緒に行動していく以上ある程度は把握する必要があるだろう。

アイシャさんのほうに、サイクロンウルフ3体が襲い掛かってきた。サイクロンウルフは連携プレーで詰め寄り、そのままかみつこうと飛ぶ。

しかし、アイシャさんは多角的な攻撃にもかかわらず、小さな動きで華麗にかわす。サイクロンウルフの動きが鈍ったのにあわせて、鋭い蹴りを首元に放った。吹っ飛んだサイクロンウルフは数メートル先にあった岩にめり込んでしまった。

「すげえ、とんでもないキック力だ」

「足のほうが、腕よりもパワーが大きい。だから私は蹴りを主軸に戦っている」

なるほど、確かに足は腕の3倍は強いって話もあったな。異世界に来てから蹴りを基本にしている相手はいなかったから新鮮味を感じる。

「これである程度実力は分かった?」

「ああ、それじゃあこのまま依頼を続行しよう」

そのままアイシャさんは遠くにいたサイクロンウルフの群れに向かった。俺が昨日男に殴りつけた威力よりもかなり高い。おそらく本気は出していないだろうから、そこが知れないな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その後3時間ぐらいが経ち、ここら一帯のサイクロンウルフの群れの排除が終了した。

「あなたのスライム何かおかしい」

アイシャさんはアクアを抱きしめながら問い詰めてきた。スライムが、サイクロンウルフ以上に卓越した連係プレーで、しかもアクアたちに関しては単体でも仕留めていた。

普通に考えれば以上事態だな。最弱クラスであるはずのスライムが、Bクラスのモンスターを蹂躙しているのだから。

「これが例の特別なスライム...」

「?アクアたちのことを知っているのか?」

「!? いや、ゼ、ゼノンに聞いた」

ああ、ゼノンさん初めてあったころにスライムたちのことを見抜いていたな。抱きしめられているアクアは振りほどくように暴れて、俺のほうに飛びついてきた。

「お、珍しいな」

アクアがこうして飛びついてくることは珍しいことではないが、それでも水を飲む時が多い。

「シンジ様、採集完了しました」

「よし、それじゃあ戻ろうか」
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