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第11章 テイマーの街
第162話 ゼノンの実力
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「本日のメインイベント、無差別スペシャルシングルマッチ!!」
リングアナウンサーに呼応するかのように観客たちのボルテージが上がってきた。中にはすでに酒が回ってふらふらのおやじもいた。
「まずは冒険者クラス!!この闘技場でもすでに名乗りを上げている、【瞬激のレイピア】アレス!!!」
まず闘技場に上がったのは、金髪の剣士だった。腰にはレイピアがかけられており、クラスは冒険者であるが騎士のような佇まいであった。
「そして反対からはーーー、現在334連勝中、この闘技場が生んだKOマシーーン!!ゼノン!!」
アナウンサーのマイクに会場がさらに熱を帯びた。ゼノンさんはこの闘技場では相当な有名人なようだ。
「この観客の歓声からあの人がどれだけの実力があるのかわかりますが、KOマシンっていうのが引っかかりますね」
確かに、相手のアレスのレイピアのようにゼノンさんの代名詞なのはわかるが、KOってことは気絶させてきたていうのか?
「それでは、開始!!」
リングアナの合図と同時に戦闘態勢に入る二人。ゼノンさんは特に武器を持っていないようで手ぶらのまま、アレスは自慢のレイピアを手に取り、独特の構えを取る。
「さあ、あの金髪がどこまでやれるのか」
「いったいどれぐらい持つと思うか?」
「そんなもん、ゼノン次第だろ」
周りの声を聴く限り、かなりゼノン寄りのようだ。中にはアレスを応援する声もあるが、それはほんの一部でこの闘技場の常連のような観客はほとんどゼノンさん支持だった。
アレスはレイピアを構えたまま一気に距離を詰めに行く。常人には目で追うことさえ厳しいような速さだった。普通に考えればこれだけで試合が決まるだろう。
「な!?」
アレスのレイピアはゼノンさんのほほをかすめていたが、ゼノンさんは余裕の表情だった。
「そんなもんか?その程度の速さやったら目つむってもよけれるで」
ほほから垂れる血をなめながら答える。アレスもゼノンさんの狂気に当てられ、萎縮しだした。それが証拠に、自信満々に構えていたレイピアを持つ手が、小鹿のように震えている。
圧倒的な実力差を感じてしまったのだろう。
「そっちが来ないんやったら、こっちから行かせてもらうで」
ゼノンさんは一瞬にしてアレスに近づく。レイピアを振るも、冷静さを欠いており雑にしか振れていない。
「期待されとったからどんなもんかと思たけど、しょうもないやつやんな。ま、出直してこいや」
刹那、ゼノンさんの拳はアレスの下あごにきれいにヒットした。アレスは意識がもうろうとしているのか、自慢のレイピアも地面に落としてしまった。
「あんまし体動かさんほうがええで。力入れたら余計に体壊すで、魔力も抑えきれてないしそのまま倒れないとどこかしら後遺症が残る」
アレスはうずくまっている。かなり苦しい様子で、最初の自信満々の顔はどこへ行ったのだろうかと思ってしまうほどである。
「勝者、ゼノン!!」
ゼノンさんが勝ち名乗りを受けると同時に、観客たちが一斉に盛り上がり始めた・
「やっぱゼノンが最強なんだよな」
「あいつに勝てる奴はいないんじゃないのか?」
「ほんとそう思えるほどの存在だよ。まだまだ連勝記録は止まらねえな」
ゼノンさんを褒めたたえる言葉が次々と出始めた。だが、俺自身も納得してしまう。相手のアレスも別に弱いとは感じなかった。あれだけの動きは、そう簡単には出せない。
ただ、それ以上にゼノンさんが圧倒的に強かった。実際、速さが自慢のアレスを上回る速さを見せつけ、一発で仕留めた攻撃力を持っている。なにより、モンスターを日々相手にする冒険者のアレスが簡単に怖気つくほどの狂気も持ち合わせている。
「これが、闘技場の覇者か」
ゼノンさんが、リングアナウンサーからマイクを受け取ると、一つ大きく息を吸って吐くと、
「さて、今年もあの時期がやってたな、おい!!」
ゼノンさんがしゃべり始めると、再び観客は盛り上がりを見せた。
「全クラスの相手が一同に集まり、その年の頂点を決めるトーナメント戦、『グレイトモスリーグ』に、俺は当然参戦するぞ!!」
「「おおおおーーーーーーー!!!!」」
「大本命の登場だ」
「前人未到の5連覇、期待しているぞ!!」
「今年の『グレイトモスリーグ』だが、通例では『登録してから半年間にわたってこの闘技場で戦ってきた者』と規定されている」
このリーグ戦に誰でも参加可能にしてしまうと、大けがした場合や選手の情報が皆無により出場しても問題ないのか判断するのが難しいとのことで、こういったルールが設けられているようだ。
「だが、このルールのせいでいつも似たり寄ったりの試合になってしまう。このまま初の5連覇を成し遂げても面白くない」
ここでゼノンさんはもう一度大きく息を吸い込み、
「今回の『グレイトモスリーグ』、この規定を撤廃することを要求する」
観客は一瞬静かになったが、その後再び騒ぎ始めた。
「そうしますと、このルールの規定理由に反してしまうのではないかと思うのですが?」
リングアナウンサーがすぐにゼノンさんが問いただした。当然だ、何も理由がなく設けられているわけではない。撤廃すればそれ相応の問題は生じるだろう。
「それは・・・」
「そこは自分から説明させていただこう」
ゼノンさんの後ろから、かなり体格のいいおじさんが現れた。
「リビートさん、いや現闘技場運営実行委員長」
「まず私の見解を述べようか。いじわるにこのルールを設けているわけではない。あまりの実力差ゆえに心を折れた者も少なからず存在した」
観客もゼノンさんも一つ息をのんだ。先ほどのアレスとの戦いが頭をよぎる。
「この闘技場では単に実力を試すだけでなく、精神的な実力も要求される。だからこそ、このルールの設置によりそういった事例を避けてきた。だが、君の提案は非常に面白い」
おな
「委員長、」
「私はゼノンと同じ『グレイトモスリーグ』4連覇の記録を持っている。しかし、3連覇するころには同じような選手としか対戦せず、非常に味気の無いものであった」
ゼノンさんは、委員長の言葉に同意するようにうなづく。
「今年に限り、『グレイトモスリーグ』の参加条件を撤廃する!!」
観客や闘士一同が最高潮に盛り上がった。
リングアナウンサーに呼応するかのように観客たちのボルテージが上がってきた。中にはすでに酒が回ってふらふらのおやじもいた。
「まずは冒険者クラス!!この闘技場でもすでに名乗りを上げている、【瞬激のレイピア】アレス!!!」
まず闘技場に上がったのは、金髪の剣士だった。腰にはレイピアがかけられており、クラスは冒険者であるが騎士のような佇まいであった。
「そして反対からはーーー、現在334連勝中、この闘技場が生んだKOマシーーン!!ゼノン!!」
アナウンサーのマイクに会場がさらに熱を帯びた。ゼノンさんはこの闘技場では相当な有名人なようだ。
「この観客の歓声からあの人がどれだけの実力があるのかわかりますが、KOマシンっていうのが引っかかりますね」
確かに、相手のアレスのレイピアのようにゼノンさんの代名詞なのはわかるが、KOってことは気絶させてきたていうのか?
「それでは、開始!!」
リングアナの合図と同時に戦闘態勢に入る二人。ゼノンさんは特に武器を持っていないようで手ぶらのまま、アレスは自慢のレイピアを手に取り、独特の構えを取る。
「さあ、あの金髪がどこまでやれるのか」
「いったいどれぐらい持つと思うか?」
「そんなもん、ゼノン次第だろ」
周りの声を聴く限り、かなりゼノン寄りのようだ。中にはアレスを応援する声もあるが、それはほんの一部でこの闘技場の常連のような観客はほとんどゼノンさん支持だった。
アレスはレイピアを構えたまま一気に距離を詰めに行く。常人には目で追うことさえ厳しいような速さだった。普通に考えればこれだけで試合が決まるだろう。
「な!?」
アレスのレイピアはゼノンさんのほほをかすめていたが、ゼノンさんは余裕の表情だった。
「そんなもんか?その程度の速さやったら目つむってもよけれるで」
ほほから垂れる血をなめながら答える。アレスもゼノンさんの狂気に当てられ、萎縮しだした。それが証拠に、自信満々に構えていたレイピアを持つ手が、小鹿のように震えている。
圧倒的な実力差を感じてしまったのだろう。
「そっちが来ないんやったら、こっちから行かせてもらうで」
ゼノンさんは一瞬にしてアレスに近づく。レイピアを振るも、冷静さを欠いており雑にしか振れていない。
「期待されとったからどんなもんかと思たけど、しょうもないやつやんな。ま、出直してこいや」
刹那、ゼノンさんの拳はアレスの下あごにきれいにヒットした。アレスは意識がもうろうとしているのか、自慢のレイピアも地面に落としてしまった。
「あんまし体動かさんほうがええで。力入れたら余計に体壊すで、魔力も抑えきれてないしそのまま倒れないとどこかしら後遺症が残る」
アレスはうずくまっている。かなり苦しい様子で、最初の自信満々の顔はどこへ行ったのだろうかと思ってしまうほどである。
「勝者、ゼノン!!」
ゼノンさんが勝ち名乗りを受けると同時に、観客たちが一斉に盛り上がり始めた・
「やっぱゼノンが最強なんだよな」
「あいつに勝てる奴はいないんじゃないのか?」
「ほんとそう思えるほどの存在だよ。まだまだ連勝記録は止まらねえな」
ゼノンさんを褒めたたえる言葉が次々と出始めた。だが、俺自身も納得してしまう。相手のアレスも別に弱いとは感じなかった。あれだけの動きは、そう簡単には出せない。
ただ、それ以上にゼノンさんが圧倒的に強かった。実際、速さが自慢のアレスを上回る速さを見せつけ、一発で仕留めた攻撃力を持っている。なにより、モンスターを日々相手にする冒険者のアレスが簡単に怖気つくほどの狂気も持ち合わせている。
「これが、闘技場の覇者か」
ゼノンさんが、リングアナウンサーからマイクを受け取ると、一つ大きく息を吸って吐くと、
「さて、今年もあの時期がやってたな、おい!!」
ゼノンさんがしゃべり始めると、再び観客は盛り上がりを見せた。
「全クラスの相手が一同に集まり、その年の頂点を決めるトーナメント戦、『グレイトモスリーグ』に、俺は当然参戦するぞ!!」
「「おおおおーーーーーーー!!!!」」
「大本命の登場だ」
「前人未到の5連覇、期待しているぞ!!」
「今年の『グレイトモスリーグ』だが、通例では『登録してから半年間にわたってこの闘技場で戦ってきた者』と規定されている」
このリーグ戦に誰でも参加可能にしてしまうと、大けがした場合や選手の情報が皆無により出場しても問題ないのか判断するのが難しいとのことで、こういったルールが設けられているようだ。
「だが、このルールのせいでいつも似たり寄ったりの試合になってしまう。このまま初の5連覇を成し遂げても面白くない」
ここでゼノンさんはもう一度大きく息を吸い込み、
「今回の『グレイトモスリーグ』、この規定を撤廃することを要求する」
観客は一瞬静かになったが、その後再び騒ぎ始めた。
「そうしますと、このルールの規定理由に反してしまうのではないかと思うのですが?」
リングアナウンサーがすぐにゼノンさんが問いただした。当然だ、何も理由がなく設けられているわけではない。撤廃すればそれ相応の問題は生じるだろう。
「それは・・・」
「そこは自分から説明させていただこう」
ゼノンさんの後ろから、かなり体格のいいおじさんが現れた。
「リビートさん、いや現闘技場運営実行委員長」
「まず私の見解を述べようか。いじわるにこのルールを設けているわけではない。あまりの実力差ゆえに心を折れた者も少なからず存在した」
観客もゼノンさんも一つ息をのんだ。先ほどのアレスとの戦いが頭をよぎる。
「この闘技場では単に実力を試すだけでなく、精神的な実力も要求される。だからこそ、このルールの設置によりそういった事例を避けてきた。だが、君の提案は非常に面白い」
おな
「委員長、」
「私はゼノンと同じ『グレイトモスリーグ』4連覇の記録を持っている。しかし、3連覇するころには同じような選手としか対戦せず、非常に味気の無いものであった」
ゼノンさんは、委員長の言葉に同意するようにうなづく。
「今年に限り、『グレイトモスリーグ』の参加条件を撤廃する!!」
観客や闘士一同が最高潮に盛り上がった。
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