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第10章 新たなる街への旅路編

第149話 魔王幹部の意地

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「はあ、はあ、やったかしら」

あれだけの魔力のこもった攻撃にあの速度、とてもかわせるとは思えないし直撃を避けることができたとしても爆風で無傷では済まないはず。

 シルはそう考えたが現実はそううまくはいかなかった。シルの弓攻撃により舞い上がった砂煙がおさまると1つの影が立っていた。

「!?うそでしょ!」

「ふん、さすがに魔王幹部をなめてもらっては困るな」

 アザゼラの横にはかなりの量の血を流した状態で倒れているセリアがいた。魔王の側近である彼女であったがさすがにシルの渾身の一撃を耐えきることはできなかった。

「まあもちろん余裕はなかった。がこの程度で倒れはしない。俺たち幹部は魔王様の次の存在、崩されるわけにはいかないんだよ」

 今のを皮切りにアザゼラの魔力はさらに増幅し周りの木々は大いに揺れ遠く離れた場所にいるモンスターの鳴き声も聞こえ始める。

「う!?」

 シルは突然口から血を吐き出した。そのままひざから崩れ落ちてとても立つことができなくなっていた。

「どうして、こんなところで」

「ふん、さすがに限界がきているようだな。銀血の天使シルバーブラッドエンジェル、確かに素晴らしかった。だがここまでだな」

 アザゼラは完全にシルが動けなくなったのを見て先ほどルーがシンジを連れて行った方向に体を向け、飛ぶ準備をしている。

刹那、アザゼラの背後から強力な魔力を感じる。

「…ほう、その状態でまだ抗うというのか」

「くっ、……絶対にシンジ様のところへは行かせない!」

 シルはボロボロの状態にも関わらず立ち上がり手を胸の前に突き出す。

「これで最後!」

「!?なんだこの魔力反応!!先ほどと同様…いやそれ以上の大きさ」

 シルの手の先には大きな魔力の塊が発生している。その魔力の大きさは今までのどの攻撃よりも大きい。魔力が彼女の思いに反応し、共鳴を起こして高まっている。

「ふん、そういえば魔力は精神にもつながっているとは聞くがここまでは初めてだな。この俺魔王幹部のアザゼラが褒めてやる、その想いの強さだけはな」

 アザゼラもその手に今まででもっとも大きい魔力を解放する。そして両者の最後の攻撃がぶつかる。

「……流石にこれはきついな」

 血を少し流したアザゼラがそこには立っていた。シルは完全に倒れており、生死の確認もままならない状態だ。

「さっきのこともあるし、確実に息の根を止めておこうか」

 アザゼラはシルのそばに歩みを進めると、手に魔力を込め始める。

「さて、ようやく奴のもとにいけるか」

「『ELC』!」

 突如アザゼラの背後から強力な炎属性の魔法が飛んできた。
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