上 下
139 / 195
第10章 新たなる街への旅路編

第138話 ちょいとひねる

しおりを挟む
 「ふ、食らいやがれ!」

盗賊の男は自慢の大きな剣を大きく振りかぶる。しかしその豪快さゆえあまりスピードはない。特に目を凝らさなくてもよけられる。

 「ガキの割には結構やるじゃねえか。」

追撃してくるかと思い構えたが盗賊は攻撃の手を止めこちらに体を向けた。

 「お前、ここら辺のやつじゃねえな。」

 「なぜそう言い切れるんだ?」

 「そうだな、まずはこの森で俺を見ると大抵は俺のことを知ってるやつが多いからな。だがお前はそうじゃなかった。」

 「だったらなんなんだ。」

 「ふっ、俺がそんなこと答えるわけないだろ!」

言い終わると同時に盗賊の魔力が高まり始めた。これからが本番ということか。俺も魔剣を抜いて臨戦態勢に入る。

 「俺をただの盗賊と思わないほうがいいぞ。」

急ダッシュする盗賊、俺も魔力を高めてそのスピードについていけるようにする。さっきの遅い剣のふりからは想像できない俊敏さ、緩急の付け方がうまい。

しかしまだまだついて行けるスピードではある。油断はしないように集中力を高めておく。

 「ほう、このスピードについていけるのか。」

 「こんなスピードまだまだ序の口だ。」

キリキリと剣で受け止めながらそんなことを思う。パワーも押し切られることはない。

 「スライムテイマーの割に近接戦がここまでとはな。」

そういえばテイマーは基本戦わないのか。そりゃ驚くのも納得ではあるが。

 「あんまりなめてかからなほうがいい。こっからはもっと本気で行く。」

魔剣に魔力をさらに流し込んでパワーを高める。さすがに盗賊も受け止めきれなくなり押されそうになるがギリギリのところではじいてその場を離れた。

 「パワーもここまでとは思わなかった。名前は?」

 「シンジだ。」

 「聞いたことないな。しかしこの実力で無名の冒険者?」

特に名前が知れ渡ることに興味はない、それに下手に勇者だというのがばれるのもなにかとめんどくさい。

 「まあ、ギルドに話を聞けばわかる話だ。」

(突っ込まれるかもしれないので解説、なぜ盗賊なのにギルドに話を聞けるのかというと顔を変えることができる能力を持っているからである)

 「そうはいかない。」

俺は魔剣に流している魔力の性質を変える。ただ淡い光を帯びていた魔剣に火がまとわり始める。

 「な!?それは魔剣術!?」

 「行くぞ!!」

盗賊はなんか驚いているが俺はそんなこと気にせずに剣を振る。盗賊は剣を構えて応戦するがその剣はあっさりと切れてしまった。

 「くそ、このまま引き下がれるか。」

盗賊は袖からナイフを出して突き出すがそれをハイキックで手を狙う。見事命中してナイフはポーンとどこかに飛んでいく。

あっけにとられている盗賊だが、俺は攻撃の手を緩めずそのまま近づき高く飛んで盗賊の首を足でつかんでそのまま後方に投げる。フランケンシュタイナーを食らった盗賊はきれいに首から地面に落ち、体がしびれているような動きをしている。

 「く、」

 「まだそれなりに意識があるのか。」

かなり危険な角度で落としたつもりだったけどさすがに雑魚ではないということか。まあうちのスライムたちに手を出そうとした罰だがな。

 「どうやら手を出す相手を間違えたようだな、俺は。あんな変わった体術がくるなんてな。」


そういえばこの世界に来てからプロレス技を初めて見たやつらは全員素っ頓狂な表情で受けてたな。フリースはすぐに対応できてたが。

 「俺たちはもう失礼する。もう気は済んだし殺すつもりはない。」

 「ふ、甘いなあ。」

 「なにを言って...!?」

盗賊が話し終えると地面が隆起し始めた。そして地面にひびが入りそこからでかいツタのようなものが俺の体にまとわりつく。

 「くく、意識さえあればこれぐらいのことはできる。」

 「シンジ様!?」「キュー!?」

 「おお、と。下手に動けば今すぐにこいつを絞め殺すからな。」

アクアとシルが駆け寄ろうとするがそれを盗賊が遮る。倒れながら言ってるためあまり威厳がないがそれでもかなりの威圧感がある。

 「甘いのはどっちだよ、と。」

しかし俺はまとわりつくツタをいともたやすく切った。そのままツタの上から盗賊を見下ろす。

 「な、いったいどうやって!?」

 「なにも特別なことはしてない。ただ魔力で切っただけだ。」

 「それだけで説明がつくわけ...」

もういい、と俺はツタの上から盗賊に向かって一回転しながら落ちた。プロレス技の一つのファイアーバードスプラッシュだ。

綺麗に盗賊の上でバウンドして腹部に大きなダメージを与えられた。フランケンシュタイナーのダメージが抜けてないのか身動きできずに攻撃を浴びた盗賊。

 「さて、と。終わったしマーク10まで目指そうか。」

 「そうですね。」

みんなを連れて本来の目的であるこの森の出口に向かって歩みを進めた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「俺としたことがまさか狙いを間違えるなんてな。」

薄れゆく意識の中で盗賊はそんなことを考えた。近接戦である程度シンジの能力を測り、そのうえで最後の魔法を放った。

防ぐことはできないと踏んでいた。事実シンジは食らってしまった。しかしそのなかである大誤算が生じそれが結果彼を敗北に招いた。

それはシンジの体内に保有する魔力の量だった。あの魔法を簡単に破られると思わなかったためインパクトはかなり大きいものだった。

 「シンジ、か。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

更新遅れて申し訳ありません
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...