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第9章 温泉街リリーシア

第115話 シルの買い物2

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 「ピイ!」

 「そこの屋台のお菓子が食べたいのね。」

作ってもらうことになった弓は約1時間かかるらしい。武器にはほとんど興味がないルーはあくびをしていたので工房から出て屋台めぐりをしようと思った。まだ子供だしあの場所はつまらないよね。

 「すいません、そのケーキ二つください。」

 「あいよ、お、美人さんに可愛いお嬢さんじゃねえか。おまけしといてやるよ。」

屋台のおじさんが袋の中に飴を何個か入れてくれた。そしてケーキをもらう。それにしてもおじさんがケーキの屋台を営むなんて意外ね。

 「それじゃあ、あのベンチに座って食べましょう。」

 「ピー♪」

ちょうど近くに公園があったからそこのベンチに座って食べることにした。紙袋からはクリームやスポンジのいいにおいがしてくる。

 「はい、ルーのロールケーキね。」

 「ピイ♪」

ルーはロールケーキを受け取ると早速ばくばくと食べ始めた。成長期なのかとんでもない食欲を持っている。私も美味しそうなホットケーキを食べる。

 「ピイ~♪」

ルーは幸せそうな表情でロールケーキを食べている。神鳥種に関する文献は天界にもそうはなかった。なにせ神直属の12使徒ぐらいしか召喚できないからだ。たぶん12使徒が読むような本になら載ってるかもしれないけど知る余地は無い。

 「ピー」

ルーは食べれて満足したのか羽おなかをさすっていた。その表情は幸せそのものだ。その顔を見るとすべての不安や心配が飛んでいきそうだ。

 「飴もいる?」

 「ピ!ピイー!!」

もちろんと言いたげに擦り寄ってくる。紙袋から一個出すとパシンと私の手からとるとすぐに口の中に飴を含んだ。
こんなに食べて太らないのかしら。

 「そっか、ルーはすぐに魔力に変換されるもんね。」

 「ピー?」

ルーはあまりわかってないようで首をかしげる。本来召喚獣は亜空間にいて必要なときだけ出てくるものだけどルーは基本外にいる。魔力をかなり糧にしないと生きていけない。

 「どっかで神獣種の本ないかしらね。」

あるわけがないがなんとなく口に出してしまう。なにかがきっかけでルーが倒れこんでしまうかもしれない。そういう非常事態にも対応できないといけない。

 「食べ終わったしもう少しここを見てまわりましょうか。」

 「ピ!ピイーーーーー」

 「どうしたの?待ってよルー。」

立ち上がると突然ルーが別の方向に走ってしまった。急いで追いかけるとそこには泣いている少女がいた。

 「うわーん。」

泣いてる少女の近くの木には彼女のものと思しきカバンがかかっていた。どうしてかかったのかはわからないけどなんとかしないと。

 「ピイーー♪」

ルーが優しく鳴くとふわーとまわりに風がおこりその風はカバンのある方向に向かいそのカバンにぶつかるとカバンが木から落ちる。それをルーがキャッチすると少女に優しい笑顔で渡した。

 「ありがとう、天使のお姉ちゃん。」

 「ピー♪」

ルーは胸を張り自慢の羽を広げた。これは友好の表現の一つだ。

 「うわー、すごい綺麗。」

さっきまで泣いていた彼女は笑顔にっていたルーのおかげで元気を取り戻した。

 「じゃあね、」

 「ピイー。」

カバンを大切そうに握り締めてもう片方の手でルーに手を振る。それに合わせてルーも右の羽を広げてばいばいと伝える。手を振り終わった後は私の方にトコトコと戻ってくる。

 「優しいねルー。えらいよ。」

 「ピイー♪♪」

頭を撫でると嬉しそうな表情をする。この子はこの子でいいんだ。悲しんでいる子にこうして優しく接して助ける天使の鏡みたいなルーがいいんだ。

~~~~~~~~~~~~

 「お、戻ってきましたか。完成してますよ。」

工房に戻るとすでに完成していたようで女性の店員さんが待ってた。そのまま工房の方に案内される。

 「親方ーー、来ましたよー。」

 「おお、久々にいい仕事だったぜ。ウルルガの糸を使わせてもらえるなんてな。」

渡された弓は最高の品としか言いようが無いほど完璧なつくりだった。木は軽く堅いで有名なカイノミヤの木が使われている。弓にもよく使われるものだ。それを覆うようにシルバーミスリルが使われていて頑丈さや火の耐性がかなり強化されている。

 「この弦はウルルガの糸でできてるんですか?」

 「おう、少し加工を加えるとかなりの強度がつくんだ。引っ張って矢を飛ばすときも普通のものよりもかなりの勢いがつくからな。」

ためしに弦を引っ張ってみるとかなり力強い。前使ってたものとは全然違う。あとよく弓をみると口が3つついていた。

 「お、そこにも気づいたか。この弓は最大3本の矢を同時に放つことができるんだ。まとめて倒すときにかなり有効になってくると思う。」

 「試しうちしてもいいですか?」

 「そう言うと思ってちゃんと用意はしている。」

奥を見ると弓の練習に使う的が置いてあった。

 「それじゃあ、」

ググググ、

 「うわ!?」

ウルルガの弦が強すぎて引き絞る前に飛ばしてしまった。

 「これは練習する必要がありますね。」

 「いやウルルガの弦を使って最初からこれだけ引っ張れるのはたいしたもんだぞ。

 「そうですか。ありがとうございます。こんなにいい弓を作ってくださって。」

 「いいってことよまいどありー。」

弓自体の代金は30万、矢筒の値段は3万ダリルになった。

私は弓と矢筒を携えてシンジ様がいる宿屋に戻った。そしてこの弓を使いこなすために練習の日々が始まった。

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すこし番外的な感じになりました。次回からまたストーリー進めていきます。あとスライム成分少なめでしたのでまた多くしていきます。
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