上 下
100 / 195
第9章 温泉街リリーシア

第99話 ルーの新たな能力

しおりを挟む
リーティ草の採集も早く終わり、ゴブリン討伐のために探索することにした。テイロ達がリーティ草を見つけた時には見かけなかったらしいから近辺にはいない。
 
 「アクア頼むぞ。」

 「キュー!」

こういう時にもアクアの探査能力が輝く。範囲はわからないが、かなり広域なのはわかる。特に背後からの奇襲を受けたことがないからだ。

 「ただ移動に時間がかかるか?」

探索できて速いとは言えスライムだ。ぴょんぴょんと移動するためそれなりに時間もかかる。さらに森という地形の悪さも考慮しないといけない。アクアや探査能力を持つミニスライム達も悩んでいた。

 「ピイー、」

 「うん?どうかした?ルー。」

アクア達と悩んでいるところにルーがトコトコと近づいてくる。

 「ルーも何か手伝いたいそうです。」

 「ピイ!」

 「そうか、でも大丈夫だから気にしないでい…………!?」

何か心配そうに見てくるルーを見ると、そこには幻想的な光景が広がっていた。

 「……小鳥?」

ルーの周りに白と銀色の混じった、まるでルーを擬鳥化したような小鳥が3匹ほど飛んでいた。しかもルーと会話をしている様子からしてルーが関わっていることは一目瞭然。

 「シルは何が起きてるかわかるか?」

 「……これはおそらく私たち天使が使う『使徒召喚』に似た魔法だと思われます。本来なら召喚者の魔力を糧に行動する使徒が自身の使徒を召喚することはありえないはずです。」

シルはいつもよりも気持ち弱めにそう話す。

 「しかし、この子は神鳥種。もしかしたら鳥つながりで出せたのかもしれません。今ルーの念話で聞こえてる限りでは楽しそうに会話してます。」

 「そうか、でもなんでいきなり呼び始めたんだろ。魔力を使うってことはより負担がかかることになるはずだけど。」

 「ちょっと待ってください、ルー、………うん、うん、!?そういうことなのね!!」

 「ちょちょ何が起こってるの?」

聞いてみると、小鳥さんを使ってうちのスライム達を運べないか?ということだった。小鳥の速度を見てみたらスライム達のスピードを優に越していた。

 「問題ないかな?それなら頼むよ。」

 「ピイー!ピイー、」

『任せろ』と羽で胸元を叩くと小鳥達に会話をして小鳥はミニスライム達を乗せる。アクアはサイズ的に乗れなかった。残念そうにするアクアを抱き上げて腕の中にしまう。

 「ピイー、『よろしく頼むよ、』」

 「「「ピイ!」」」

ルーが3匹の小鳥に声をかけると、揃えて鳴き声を出した後、探索に向かった。ミニスライムたちを乗せても特に問題なく飛んで行った。

 「ピイ、」

 「ん?ああ、お腹空いたんだね。シンジ様、パンをいくつかいいですか?」

 「もちろんいいよ。」

小鳥を出すためにさらに魔力を出したからお腹が空いたのか。惣菜パンを3つほど渡すとモリモリと食べる。その姿は可愛らしい女の子である。

 「そういえば、」

マロは今でも帽子をつけている。温泉の時にはなぜか魔力が漏れてなかった。理由は分からずじまい。でも今つけてる理由は前と同じで抑えられないからだ。それに初めて体色を変えてまで怒った理由もきになる。心配する時でも白色のままなのに。さらに言えば温厚なスライムの中でも特に温厚なエンジェルスライム、そんなマロがあんなに怒るか?

 「ピイー!」

 「あ、見つかったのね。シンジ様、ルーの小鳥が案内してくれるそうですので行きましょう。」

 「ん?ああ、そうだな。」

これがまさしく神のみぞ知るってやつかな。

~~~~~~~~

 「きーーーい、なんなのあいつ!!」

ここ精霊界で、一人の精霊が怒りに怒り叫んでいた。

 「なんなのスライムが最底辺のモンスターって!!あなた一度もまともに育てたことないでしょ!!」

スライムの精霊、エレノアだった。彼女はマロを通してシンジの行動を観察している。万が一の時に対処するため、以前の魔王の魔法陣の時のように。

今怒り狂ってる理由は、シンジが温泉で相対したスライムを罵った男だ。その様子をマロを通してみていたため我慢の限界がきたようだ。

 「だけど、少しやりすぎたかな?いや、むしろまだ足りないわね。」

マロの体色の変化はエレノアの心の色を映し出した。そのため普段は変わらないはずが怒りの赤色になった。

さらに言うとマロの魔力漏れを抑えたのはエレノアがマロに力を入れてしまったためだ。溶解液もシンジは気づいてなかったが綺麗な丸を描いた穴を作っていた。アクアでもできない芸当だ。

 「次会った時は殺す、と言いたいけどそうも言えないわね。」

ここで下手に殺してしまえば、被害を被るのはその従魔を持つシンジになる。ここでシンジが犯罪者になればエレノアの真の目的も潰えてしまう。

 「これからもあいつと会うかもしれないけど、彼ならなんとかするかな。私と同じスライム愛好家だからね。」

エレノアはそう決意し、マロを通してその後も観察を続けた。

~~~~~~~~

 「ここか、」

小鳥達に案内してもらった場所にしっかりとゴブリン、しかも50は超える数がいた。クエストには10体の討伐が目標だが、魔石などの調達のために全滅するつもりだ。

 「それじゃあ突撃するよ。」

 「はい、」「ピイ!」「キュー!」「ピュー!」

俺、シル、ルー、アクア、リーンに20匹のミニスライムで突撃する。テイロと残りのミニスライムは逃げたゴブリンの追い討ちを任せる。

 「ギャアー!」

さあ、戦闘だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔
ファンタジー
 対向車線からトラックが飛び出してきた。  特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。  想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。  手から何でも出せるスキルで国を造ったり、無双したりなどの、異世界転生のありがちファンタジー作品です。  王国? 人外の軍勢? 魔王? なんでも来いよ! 力でねじ伏せてやるっ!  感想やお気に入り、しおり等々頂けると幸甚です!    モチベーション上がりますので是非よろしくお願い致します♪  また、本作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨムで公開している作品となります。  小説家になろうの閲覧数は170万。  エブリスタの閲覧数は240万。また、毎日トレンドランキング、ファンタジーランキング30位以内に入っております!  カクヨムの閲覧数は45万。  日頃から読んでくださる方に感謝です!

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜

純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」 E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。 毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。 そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。 しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。 そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。 『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。 「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」 「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」 これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。 ※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

処理中です...