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第3話

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スライムはイノシシの突進をうまくキャッチしたようで、ダメージを受けることなくそのまま包み込んだようである。イノシシは器用に体を動かすことができないため、暴れまわるが全く出れ気配がない。

スライムも、イノシシの動きに合わせて体の大きさや形を調整しているようで、一切イノシシを出さないまま溶かしている。やがて体の大部分が動かなくなり、イノシシはスライムの中で息絶えた。

「もう大丈夫か?」

雅人はスライムにそっと近づく。バスケットボールサイズだったのが、今ではイノシシよりも巨大になっている。スライムはイノシシを吐き出すと、元のサイズに戻った。

元のサイズに戻ったスライムは、何事もなかったかのようにぴょんぴょんと雅人のもとに駆け寄った。

「イノシシはどうしたんだ?全部食べたのか?」

雅人がそう聞くと、スライムはプルプルと震えだした。しばらくすると、先ほどのイノシシが吐き出されてきた。雅人は一瞬驚くも、イノシシはピクリとも動かない。

「もしかして、体の中に収納できるのか?」

雅人はそうつぶやく。スライムはよくわからないらしく触手を揺らすだけだった。雅人はいったんスライムの能力として自分を納得させた。

当然、単純にスライムの能力ではない。この世界のスライムも弱いというのが常識である。

ここまでこのスライムに能力がある理由は、雅人の【極大魔力】に起因している。スライムが雅人の膝に乗っかったときに、その場で従魔契約がなされており、雅人の魔力を触媒にスライムの進化を促した。

また、彼が森のなかで一向にモンスターに出会うことがなかったのは、彼の【極大魔力】が理由で、彼の魔力におびえてモンスターたちは避けていた。

イノシシも例外ではなく、雅人の魔力におびえていたもののスライムを目の前にし、スライムからも魔力が得られるのではないかと、襲ってきたようだ。

「何はともあれ助かったよ。ありがとうな」

雅人はその場で腰を落とすとスライムを撫で始めた。スライムは気持ちよさそうにプルプルと震えている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イノシシの一件から、しばらく森の中を歩き回っていたが人どころか、ほかのモンスターにも出会わなくなった。日も暮れて、だいぶ森の中も暗くなった。

「今日はいったんさっきの洞窟で夜を過ごそうか」

スライムは同意するようにその場でぴょんと跳ねる。幸い歩き回った場所は、先ほどの洞窟からそこまではなれていなかったようで、安全に到着した。

無限水筒で、のどをある程度潤すと、空腹をかなり感じた。【極大魔法】を持っているとはいえ、何時間も何も食べずに歩き回れば、限界はくるというもの。

空腹に悩まされている雅人を見て、スライムはその場でプルプルと震え始めた。

「ど、どうした!?水が欲しくなったか?」

雅人は水筒をスライムに急いで近づけるが、スライムは触手でよけると体の中から生肉を取り出した。肉だけでなく木の枝や枯れ葉も出すと、あっという間に焚火を作る。溶解液をかけると、火がつき洞窟内に温かさが生まれた。

雅人は目の前の光景に唖然としていた。焚火ができたと思えばすぐにイノシシの肉も焼かれており、スライムはせっせと準備している。そして肉の焼き加減を確認すると、スライムはいい具合に焼けたイノシシ肉を雅人に渡す。

「⁉うまい!!」

お腹が減っていた雅人に焼き立ての肉は格別においしかった。たれや塩など調味料が一切なかったが噛むたびにうまみが口全体に広がった。スライムは雅人がおいしそうに食べているのをみて嬉しそうに震えていた。

「スライムも食べなよ、俺だけもらってばっかりもあれだし」

雅人はスライムにも食べるように促した。スライムは食事をとる必要がほとんどないが、雅人と一緒にイノシシ肉を食べ始めた。スライムは触手で肉をつかむと、そのまま体の中に入れ込むと、徐々に肉が解けていった。雅人はそんな様子を楽しそうに眺めていた。

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