野薔薇の国のエンプレス

「ブリギッド。ローザ。レギーナ。沢山の名前を持つその人は、僕に“トーマ”と名乗った――」

何者でもない少年は力を望まなかった。
何者でもあった乙女は力を背負っていた。

そんな二人の旅は人々を、世界を喧騒へと誘う。
果てなき久遠の夜を終えるために。
懐かしき久遠の朝を迎えるために。

だが、彼らは未だ知らない。
互いの運命が糾われた本当の意味を。
己が何を為し得る存在なのかを。

これは太陽の乙女が無極を太極に至らしめる冒険譚、その終幕。
そしてある者の家路に纏わる、ほんのささやかな記録。
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