異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

文字の大きさ
上 下
110 / 121

第百十話

しおりを挟む
 この世界には王族や貴族、平民や奴隷と云った身分制度が有るのが気に食わない。
が、人種や種族の差別や偏見が無い。
それはこの世界の良い所であると思う。
人種の王族や奴隷が居れば、ドワーフやエルフ等の王族や奴隷も居る。
俺自身も貴族としてこの世界で生活しているわけだが、日本では普通の一般市民なので、どうもピンと来ない部分も有る。
 それでも否応なく貴族としての仕事の割り振られる訳で、今日は自分の領地の視察に訪れている。
俺が治めているとされる地域には、そこそこのクラスの地区(パーム地区)も有れば、貧民街スラムと呼ばれるロゼス地区も有る。
 今はそのロゼス地区の再開発に着手している。
以前視察に来た時は、それはもう酷い有り様だった。
暴力が蔓延しており、あらゆる犯罪が横行していた。
まずはそれらを牛耳っていた組織を壊滅する所から始めたんだが、それは意外にもあっさりと決着してしまった。
結論だけ言えば、イラッと来たのでそのボスの腹にワンパン入れたんだ。
(その後、彼がどうなったかはご想像にお任せする)
で、今は地区のクリーンアップ作戦を実行中だ。
治安問題のクリーンアップは終わったので、今は環境のクリーンアップ中だ。
まずは道をキレイにする。
ゴミの放置を無くす所から始め、傷んで穴だらけだった道路の穴を埋めた。
そして街路樹を植え、花などの植物も植えた。
少し厳しいかも知れないが、ゴミのポイ捨てには罰金を科すことにした。
これが効果覿面だったのか、ゴミ投棄が一気に減った。
見せしめに何件か本当に罰金を科したんだが、道がキレイだと人は自然と優しくなるもんだ。
 そして住環境の問題だ。
ホームレスも多いこの地域に、公営住宅を建設することにした。
古く傾いたような家や廃墟なども取り壊し、建て直す。
やはり、廃墟やボロ家は人の心をも荒廃させてしまうものだからな。
それでミコトたちビルダーギルドが大忙しになってしまったのは、申し訳なく思う。
町の広場に仮設の簡易住宅を作ってそこに住人を一旦移動させて、一気に工事を開始した。
そうすることで、区画ごとに住人の引っ越しを纏められるからな。
 加えて、地区の清掃等に携わる者には、家賃を割引する制度も設けた。
これに関しては自治会を設置して、役割分担と相互監視のシステムを構築した。
こういうシステムの抜け穴を見付けて、ズルをしようとする奴は絶対に出て来るからな。
それを抑止するためのシステムだ。
 あと、職業問題。
街路樹の世話役や建設作業員を地区内で採用した。
食堂を開業し、そのための料理人やウエイトレスも地区内で採用。
食と職を一気に改善させるための計画だ。
やる気の有る者には資金を貸し付けて、まずは露天商を開業させた。
それらの露天商を纏めた公設市場を開設。
また、それらの商店から成る『商店会』も設置した。
扱う商品や仕入れ先は個人に任せる。
但し、盗品を扱った場合は王国の法律に則って処罰され、商店会からも永久追放される。
 それらがようやく形になって来た。
思い描いている理想像にはまだまだ程遠いが、自分たちの暮らす地域を何とかしたいと思っていた住人も一定数居たようなので、そういう人たちが率先してクリーンアップ作戦に参加してくれており、今では住人の八割の人が何らかの役目を担っている。
ちなみに、残りの二割の内の半数以上は高齢者と子供だ。
 最近では子供たちが元気に遊ぶ声が聞こえるようになった。
それだけ治安が良くなったと言えるだろう。
賑やかな子供たちの声ってのは、街の宝だな。
 『パーム地区に負けない街づくりをしよう!』
と、先日就任した自治会長が演説をしていたのが印象的だった。
 ロゼス地区のクリーンアップ作戦だが、パーム地区の自治会長の遣り方を参考にさせてもらったんだけどな。
『自治会制度』も、パーム地区を参考に創設したし。
ただ、パーム地区はロゼス地区の『清掃活動』を参考に、よりキレイな街づくりを始めると言っていた。
清掃活動が始まってからのロゼス地区の変わり方は凄かったからな。
この二つの地区は隣り合っている訳ではないけれど、これからは互いを意識して切磋琢磨してくれることだろう。
 ロゼス地区に作った食堂だが、これは日本の料理を出す『異世界食堂』ではない。
まずは通常のレムリア料理で、価格を安く設定した。
異世界料理を出すのなら、料理人の教育から始めないとならないから時間も掛かる。
それよりも安くて腹いっぱい食べられる店を出した方が、地区の住人からは喜ばれる。
 あと、十五歳未満の未成年の子供には『子供食堂』を併設して無料で食事を提供する。
無職の人には『皿洗いを二時間手伝う』ことで食事を提供する制度も作った。
無償で食事を食べていた人達も、職に就いてお金が払えるようになると
「以前はお世話になったから」
と、給料を握りしめて普通に食べに来てくれるようになっているが、それでもこの『食事提供サービス』を止める気は無い。

 こうすることで、活気溢れる街になった。
このロゼス地区に、旅人と冒険者向けの温泉宿を作る計画も進んでいる。
最近、レムリアに来る旅人や冒険者が増えているんだ。
温泉を掘って以来、人気になっているらしい。
所謂、インバウンドだな。
俺も最近知ったんだが、この王都の外れに王宮が管理する地下ダンジョンが有るらしい。
ダンジョンそのものは中級冒険者レベルの規模だそうだが、これまで冒険者たちはそのダンジョンでの経験値と賞金稼ぎが目当てで来ていた。
が、温泉施設や屋敷で経営する食堂やレストランが出来たことで『ダンジョンと温泉と美味いメシ』に変化している。
 旅人もこれまでは『レムリアは只の中継点』として、夕方に到着して朝には出て行くことがほとんどだった。
しかし、これも『レムリアの温泉と美味いメシ』に変化しており、旅の目的地がレムリアになったり、中継点だとしても数日間滞在する人が増えている。
 そんなこんなで国としての収益も増えつつある。
これはお客さんたちに飽きられないように二の手三の手を考えなければならない。
女王に呼び出されて『観光大臣に』と打診されたが、流石に断った。
そして、その観光大臣にはサナの母上エミーナさんが就任することになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...