異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

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第百四話

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 深夜、野鳥もまだ目を醒ましていない。
静まり返った森に、虫の音が響き渡っている。
「キャスター1、こちらバーサーカー10。状況はどうか。送れ」
「バーサーカー10、キャスター各員準備完了。送れ」
「キャスター1、了解。ライダー1、状況を送れ」
「バーサーカー10、ライダー及びアーチャー各員準備完了。送れ」
「ライダー1、了解。アサシン1、状況を送れ」
「バーサーカー10、アサシン各員準備完了。送れ」
「了解した。各員、次の指示を待て。通信終わり」
各班に配置状況の確認を済ませる。
キャスター1は騎士団長のレイナで、ライダー1は第一騎士隊長のサテラ、アサシン1は第二騎士隊長のルコアが務めている。
ライダー1であるサテラはアーチャー1も兼務しているので大変だと思う。最初は騎士団長であるレイナに任せようと思っていたんだが、サテラが自ら志願してくれた。
それを受けてレイナも
「この経験は、サテラにとって未来の騎士団を担って行く糧になるでしょう。彼女にやらせてあげてください」
と言ってくれたので、今回はサテラに任せた。
 セイバー1はエリスに任せている。
俺は全ての班の統括として『バーサーカー10』をコールネームとした。
 
 一時間後、夜はまだ明けていない。
作戦は空の色が変わり始めると同時に開始する。
「ご主人様、東の空色が変わり始めます」
「ユキ、ありがとう。セイバー5(リサ)、赤外線照射開始!」
同じ車両に乗っているユキにお礼を言い、後方の軽装甲機動車のリサに無線で赤外線照射を命ずる。
「セイバー5、赤外線照射を開始します。通信終わり」
上部ハッチから身を乗り出して待機していたリサが照射を開始する。
「キャスター1、赤外線照射を開始した。受信状況はどうか。送れ」
「バーサーカー10、赤外線照射を確認。受信状況良し。データ入力完了。送れ」
「攻撃を開始する!多目的誘導弾、全弾発射!撃て!!」
遠くからバシュッバシュッと発射音が響くと同時に、六発のミサイルが飛翔するのが見える。
俺もハッチから身を出して、その行方を追う。
観測員を務めてくれているユキも俺と一緒にハッチから身を乗り出し、その行方を追う。
「弾着!今!!」
ユキが無線でコールするのと同時に、六発のミサイルが砦を吹き飛ばす。
砦が四方八方に爆散する中で
「多目的誘導弾、全弾命中を確認」
ユキが冷静にコールする。
実際には聞こえないが、多目的誘導弾班の歓声が聞こえて来そうだ。
「ライダー1、各砲一斉に撃て!!」
言うと同時に、榴弾砲と戦闘車のライフル砲の砲撃音が響く。
「弾着!今!!」
ユキのコールとほぼ同時に、二発の砲弾がさらに砦を吹き飛ばす。
「アサシン1!対空砲発射!!」
「アサシン1、了解!」
ルコアのコールと同時に、二方向から対空砲の雨が砦に降り注ぐ。
「バーサーカー10、こちらキャスター1。次弾装填完了!送れ」
「キャスター1、了解。止めない限り許可を取る必要は無い!残ってる全弾、撃ち込んでやれ!!」
「バーサーカー10、了解しました!通信終わり!!」
コールとほぼ同時に、ミサイルの次弾が飛翔する。
それと同時に対空砲は発射を停止する。
万が一にも対空砲がミサイルを撃ち落としたりしたら、意味が無いからな。
事前にその様に打ち合わせてある。
その為にユナとハナには通信手を務めてもらっているんだ。
「ライダー1、装填が完了次第、次々に撃てぇ!送れ!!」
「了解です!通信終わり!!」
 
 それから十数分後、世界はすっかり朝を迎えていた。
先程までの爆撃音は嘘のように静まり返り、周囲では小鳥が囀っている。
ミサイルや砲弾や対空砲の雨にさらされて崩れ落ちた砦は、朝陽に無残なその姿を晒している。
「バーサーカー10、こちらキャスター1。手持ちの弾頭は撃ち尽くした。送れ」
レイナが冷静に三十発のミサイルを撃ち尽くしたことを告げて来る。
「バーサーカー10、了解。キャスター1、装備を撤収後、速やかに砦に集合せよ。送れ」
「キャスター各員、撤収後、砦に集合。了解しました。通信終わり」
レイナたち多目的誘導弾班は、撤収後に敗残兵に警戒しながら砦に移動し、制圧後の残敵掃討戦に合流することになっている。
あれだけの爆撃で、敵が残っているか解らんけど。
「ライダー1及びアサシン1、残弾はどうか。送れ」
「こちらライダー1、両砲とも残弾はまだまだ有ります。送れ」
「ライダー1、了解した。砦の制圧後、最大射程にて敵領地への砲撃を開始せよ。送れ」
「バーサーカー10、制圧後、最大射程にて敵領地を砲撃。了解しました。通信終わり」
「バーサーカー10、こちらアサシン1、弾薬はまだまだ有ります。送れ」
「アサシン1、了解した。敗残兵の反撃に対し、警戒を厳にせよ。送れ」
「バーサーカー10、了解です。攻撃は此方の判断でよろし?送れ」
「攻撃方法、使用武器、全ての判断はアサシン1に委譲する。送れ」
「バーサーカー10から攻撃判断をアサシン1に全委譲。了解です。送れ」
「但し、状況の報告は密にし、各班各員と共有すること。送れ」
「状況報告は密。アサシン1、了解。通信終わり」
 
 それにしても、初の戦闘なのによくもこれだけ正確な砲撃が出来たもんだ。
これは俺が考えていたよりも優秀だ。
時限信管を有効に使った砲撃も正確なタイミングだったし、照準も完璧だった。
山の標高が低くなるほど撃たせた甲斐が有ったってもんだ。
(魔獣の多くて人が寄り付かない山の廃城を標的にして演習した)
対空砲射撃にしても、ほとんど外さずに砦に当たってたもんな。
飛び散る曳光弾が花火みたいで美しかったくらいだ。
 
 「よし、こっからは俺たちの出番だ!」
運転席のエリスに合図を送る。
「はい!腕が鳴ります!!」
そう言ってエリスはフルスロットルで砦(の残骸)に向けて山道を駆け上がる。
後続のミクも同じように追従してくる。
「バーサーカー10より各員へ!これより砦に突入する!!」
無線で突撃を告げてからユキや後続車のリサを車内に退避させ、担いだ無反動砲を構える。
「ジェロニモーーッ!!」
使い所は違うが叫んでトリガーを引く。
発射された対戦車榴弾が、残されていた砦の門と防壁を吹き飛ばす。
間髪入れずにルーフに取り付けた重機関銃を発砲する。
ヨロヨロと砦から出て来た魔族を撃つ。
三匹ほど生き残りが出て来たが、全て撃ち殺した。
個人的な恨みは無いが、此奴らは砦に居たラズロフの騎士や衛兵を殺したんだ。
容赦する気など無い。
 車で突入できる所まで突き進むが、すぐに砦の瓦礫に突き当たってしまった。
まぁ、これは想定内だ。
全員で砦の建物だった場所を突き進むが、部屋なども既に跡形も無い。
元々は四階建ての中央棟と十階建ての見張り塔が二つ有ったのだが、その全てが一階部分の一部を残しているに過ぎない。
 まずは二つの見張り塔を索敵するが、虫の息だった三匹の魔族を見付けただけだった。
「おい、お前たちの親玉はどこだ。どこに隠れている。言え」
大怪我を負って息も絶え絶えの魔族の襟首を掴んで問う。
「ベ…ベリ…ベリシーズ様は…」
そこまで言って、事切れた。
魔族の屍をその場にポイッと投げ捨てる。
次を探すが、どれも屍のようだ。
屍を見付けると銃剣で突き、それで動かなければ念のため頭を撃つ。
そして目印に白い旗を挿して行く。
「中級以上の魔族は、低級魔族や魔物と違って黒い霧にならないんです」
エリスがそう教えてくれる。
なるほど。そう言う事なら、なおさら上級魔族の屍を見付けないと納得できないな。
 それにしても、先程から何かの気配がするのは確かだ。
強力な魔力を感じると言うか…。
よく解らんが、なんか違和感を感じるんだ。
暫く捜索していると
「バーサーカー10、こちらセイバー6。こちらの床に扉が有ります。送れ」
少し離れた場所からティファが無線で俺を呼ぶ。
「解った。すぐに行く。通信終わり」
一緒に居たエリスたち四人を連れて、ティファとミクの場所に急ぐ。
 「此方です」
ティファが指差した先に、確かに扉が有る。
この場所は一階だから、地下室か抜け穴の入り口だろう。
女王と側近のサリーはこの砦に来たことが無かったので、砦に来たことの有る貴族のおっさんが、俺たちに建物の説明をしてくれたんだ。
 「砦の事は知り尽くしています。何でも聞いてください」
と言っていた。
でも、あのおっさんは地下室のことなど何も言っていなかった。
怪しいな。スパイはあのおっさんかも知れない。
 「少し離れるんだ。俺が扉を開けるから、いつでも攻撃できるように構えていてくれ」
ティファとエリスが銃を構え、ミク、ユキ、リサが魔法の準備をする。
 扉は歪んでいるようで硬かったが、俺のチートな馬鹿力だと簡単に開いてしまう。
と言うより、床(だった場所)からもぎ取れてしまった。
 扉を横に投げ捨てるが、特に魔族や魔物が飛び出して来る気配が無い。
と、そこに、重機関銃の銃声が響く。
ハッと顔を上げると
「アサシン1よりバーサーカー10!砦より抜け出した者がいる!現在牽制攻撃中!上級魔族と思われる!送れ!!」
「アサシン1!すぐに向かう!攻撃を続けながら誘導を願う!送れ!」
言いながら、全員で軽装甲機動車に走って戻る。
「バーサーカー10、了解!砦から東よりのラズロフ側の斜面!機動車で行けます!送れ!」
やはり抜け道だったか。
ルコアの誘導ですぐに追い付くことが出来た。

 追い付いてみると、なんだか黒いお姉さんだった。
皮膚の色は色白と言うよりも青に近いんだが、それ以外が黒い。
で、瞳が真っ赤だ。
正直言って、気持ち悪い。
これは抱けない。
俺はストライクゾーンが広いとは言っても、これは無理だ。
なんか凄い怪我しているな。
砲撃のせいなのか、さっき重機関銃で撃たれたのかは知らないけど。
 此奴から感じる魔力…。間違いないさっき感じた違和感だ。
「お前が魔王の手先の上級魔族か?」
エリスたちが魔族に銃を向ける中、二歩ほど近付いて問いかける。
「誰が…あんな弱腰の手先なものか…」
あれ?なんか期待してたのと違う答えが返って来た。
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