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第六十二話
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中央に向かって歩く。
訓練場の広さはテニスコートくらいだろうか。
周囲には壁が廻らされ、観客は上から覗き込む感じだ。
何が有るか解らないから、一応結界を張ってサナたちが居る観客席を守っておく。
俺の大事な人たちを危険な目に遭わせたくはないからな。
『やっちまえ!』『ぶっ殺せ!』みたいな野次も聞こえなければ歓声も無い。
静まり返った中での決闘だ。なんだか西部劇のそれみたいだな。
全身に鎧を纏ったダミアスが中央に仁王立ちして待っている。
俺も屋敷に置いてある戦闘服を念じたら出て来たので、サナに着替えさせてもらった。
サナは俺が脱いだ常装服を抱えて顔面に押し付けて、クンクンクンクンと嗅いでいた。
「ダーリンの香りがします…。はぁぁ…♡ これもクセになりそう…♡」
とか言っていた。
俺の可愛いお嫁さんの匂いフェチは緊迫した場でも健在のようだ。
俺と対峙したダミアスが口を開く。
「レイナ殿たちは簡単に騙せたかも知れんが、儂はそうは行かない。覚悟することだ」
いかにも悪役な台詞だけど、自分より強いレイナを負かせた相手と戦おうってのに、その自信はどこから来るんだろう?
てか、口臭いぞ。五歩くらい離れてるのに、鼻が曲がりそうに臭い。
「そうか?ご忠告どうも。でも先に言っとくけど、これから行うのは勝負なんかじゃない。一方的な蹂躙だ。おっさん、泣くなよ?」
「それはこっちの台詞だぁぁっ!!」
ダミアスが片手剣を上段に構えて突進してくるけど、隙だらけだ。
面倒くさい。サッサと終わらせよう。
身体を避けて二度剣戟を躱し、顔面にパンチを入れる。
「ふぐぅっ!」
力入れてないのに、おっさん両鼻から鼻血吹いちゃったよ。
汚ねぇなぁ。サナが洗濯してくれた俺の戦闘服が汚れたらどうしてくれるんだよ。
二呼吸置いて立て続けに三発殴ると、おっさんは尻餅を突いて倒れる。
ここで初めて歓声が上がる。おっさん…お前、かなり嫌われてるなぁ。
「貴様ぁ…この儂をコケにしおって…ふざけるなぁぁっ!!」
再び剣を振りかぶって突進してくる。こいつは学習能力が欠如しているのか?
その刀身に回し蹴りを入れて剣をへし折ると、振り向きざまに鳩尾に弱いパンチを一発お見舞いする。
「げぽぉぉっ!!」
情けない声を出しながら腹を押さえてゲロを吐いてやがる。ばっちいな。
観客の貴族たちは『汚ねぇぞ!』とか『いつもの偉そうさはどうした』とか言ってる。
へぇ…お貴族様って、野次なんて飛ばすのね。お下品だこと。
「我が家の家宝が…オリハルコンが…」
とか言いながら地面に這い蹲っているダミアスの頭を踏む。
「探し物か?俺はここだ。まだ終わっちゃいねぇぞ」
そう言って蹴り飛ばす。
「ふんごぉぉっ!!」
壁まで飛んで行ったダミアスを追いかけて、追い付きざまに今度は反対側に蹴る。
「ぶにぃぃっ!!」
一人サッカーだな。これは。
訓練場のほぼ中央まで飛ばされたダミアスは蛆虫のように転がる。
その襟首を左手で掴んで立たせると、二発殴る。
「儂が悪かった!もう…勘弁してくれ!!」
「ヤダ」
また殴る。
「ほごぉっ!」
さらに殴る。
「何でもする!何でもくれてやるから許してくれ!」
「なんかエラそうだからダメ」
もう一発殴る。
「知ってることを全部吐け」
さらに二発、鼻を殴る
「むぎぃっ!何を…何を吐けと…!」
「トボけんなよ。お前、陛下に牙剥こうってんだろ?知ってんだよ」
「何を…!一体何を…ぶひぃっ!」
話してる途中で殴って、左手の人差し指を掴んで関節を逆方向にへし折る。
「あがぁぁっ!指が!指がぁぁ」
「吐けよ。もう四本くらい折ってやろうか?」
「知らない!本当に知らないんだ!!」
パッと襟首を掴んでいた手を放して、レミオールを地面に落とす。
「なぁんだ。つまんねぇの。じゃぁ、もういいや」
そう言ってダミアスに背中を見せて歩き出す。
八歩目。後ろから叫び声が聞こえた。
「死ねぇぇっ!」
振り返ると、デカイ火の玉が飛んで来るのが見えた。
ドガァァァン!!
爆発と衝撃が訓練場に響く。
「ワハハハハ!儂の勝ちだぁっ!!」
魔石を頭上に掲げたおっさんの勝鬨も響く。が…
ざわめいていた周囲の貴族が、ダミアスより先に驚きの声を上げる。
「なっ…!!」
俺は無傷でそこに立っている。髪の毛一本焦げていない。
でも、流石に服は燃え落ちちゃった。
難燃性の戦闘服を一撃で焼き尽すって、かなりの火力だな。
思ったより激しい爆発だったし、結界を張っておいて良かった。
「語るに落ちたな。ダミアス」
「な…何がだ!何が言いたい!!」
「お前、なんで魔石なんか持ってんだよ?」
言いながら、静かにダミアスに歩み寄って持っていた魔石を奪い取る。
魔石についてミクが言っていたことはもう一つある。
『この国では女王陛下から許可をいただかなければ、何人も魔石を所持できません』
ということだ。
「なんなの?あのイチモツは!?」
「ひぃっ!バケモノッ!!」
なんて女性の悲鳴に似た叫びが聞こえる。
フと気になって自分の姿を確認すると、パンツまで焼け落ちてフリチンだった。
慌てて、でも冷静を装って屋敷に置いてある予備の戦闘服を呼び出す。
着ている姿を想像して呼び出したら、ちゃんと俺が着用した状態で出て来てくれた。
観衆の前でイソイソお着替えなんてカッコ悪いこと、したくないからな。
『おぉ…!流石は精霊様…お召替えも素早い…』
『あんなに大きいイチモツは初めて見たわ』
『抱かれてみたい…』
なんて声も聞こえるが、そんな声は一切無視しておく。
「恐れながら、陛下にお伺い致します!」
「許します。何でもお聞きなさい」
女王は速やかに厳かモードで返答する。
「この者に魔石の所持を許されましたか!?」
「そのような許可を与えたことは、誰にも一度も有りません」
キマったな。
おっさんに向き直り、間合いを詰める。
「今一度問う。貴様、どこでこの魔石を手に入れた」
「しっ…知らん!儂は何も知らんぞ!そっ…そうだ!陛下は儂に許可を下さったことをお忘れなんだ!!」
ありゃま。今度はてめぇのガキより若い女王を健忘症扱いしちゃったよ。
「そのようなこと忘れるものか!侮るな!この戯けが!!」
あんなに穏やかに話す女王がキレちゃったよ。
「そっ…そうでした!先王だ!先王が許可を下さったんだ!」
「私の夫は魔石嫌いだった。その夫がそのような許可を出すはずが無かろう。貴様、亡き我が夫までをも愚弄するか?」
うわぁ…女王様怖~い…。口調が別人みたいにガラリと変わっちゃってるよ。
「ぐぅぅっ…」
ダミアスが言葉に窮する。
奪った魔石を粉々に握りつぶして捨てる。
「ひぃっ…!!」
さっき戦闘服を焼き尽くされる寸前に、拳銃をホルスターごと装備解除しておいた。
だって、火の中に弾丸を投入することになるから、暴発したら怖いんだもん。
それらを弾帯ごともう一度呼び出して装着する。
「お前、もういいよ。死ねよ」
拳銃を抜いて初弾を装填し、ダミアスに銃口を向ける。
「なっ…なんだそれは!なにをしようと…」
パーンッ!
9mmパラベラム弾がおっさんの左足の甲を貫く。
「はがぁぁっ!足がっ…足がぁっ!!」
おっさんは無様に地面をのたうち回る。
「悪い悪い。外しちゃったYO!よ~し、今度は当てちゃうぞ~」
アイソセレススタンスで構えて、狙いを定める。
パーンッ!
今度は右手の指を数本、付け根から吹き飛ばす。
「あぁぁっ!手がぁっ!儂の指がぁっ!」
「あんまり動き回るから外しちゃったじゃないかっ!」
言うまでもなく、わざとだYO!
転げるダミアスに拳銃を突き付け、じりじりとにじり寄る。
それを何とか逃げようと試みるダミアス。
「わかった!言う!!言いますから!命だけは…。魔石はバルバス国の間者に…」
「んなこたぁ全部知ってんだよ!このハゲが!!」
頭に銃口を押し付ける。
「この件、お前以外に誰が関わってる?それを言え」
「それは…それだけは…」
パーンッ!
おっさんの右足の脛を撃った。
「びやぁぁぁっ!もう止めてくれぇぇっ!」
弾丸は骨を砕いているだろうから、かなり痛いだろうなぁ。
「お前、そう簡単に死なせて貰えると思うなよ?もう共犯の名前を言いたくなきゃ言うなよ。その代わり『今すぐ殺してくれ』って俺にお願いたくなるくらい痛ぶって、じわじわ殺してやるよ。共犯の名前を言えば少しは考えてやってもいいと思ってたのにな。もういいよ。根性見せてみろよ」
ダミアスは恐怖のあまり失禁している。小便まで臭せぇなぁ。
「俺さぁ、どうすれば人間が苦しんで死ぬか、熟知してるんだよ。今から一つずつ試してやるよ。せいぜい楽しませろよなぁ。俺ってば、こう見えてもかなり怒ってるんだぜ?お前が俺の可愛いサナに手を出そうとしたからな。その罰だよ。お前もせいぜいこの罰を楽しんでくれよ…」
周囲は完全に静まり返っている。
それでも誰も逃げ出さないのは、このマッドなショーを楽しんでいるんだろう。
人間て、本当に残酷な生き物だよな。
「お前の可愛いあのハゲネズミも、俺のサナに付き纏った罰でたっぷり苦しませてから、俺が知り得る限りもっとも残忍な方法で殺してやるよ。親子揃って地獄で苦しかった思い出でも語り合え」
「わかった…。言うから、命だけは…助けてくれ…」
「は?もういいって言っただろ?だから言わなくていいって。楽しませろよ」
今度は銃口を右肩に押し付ける。
「グレアム!グレアム伯爵だ!!」
パーンッ!
弾丸が肩を貫く。たぶん鎖骨も折れただろうなぁ。
「グレアムを今すぐ捕らえなさい!!」
静寂を破ってセリカの声が響き、逃げ出そうとした男を騎士が捕らえる。
きっとあれがグレアムなんだろう。
「ぐわぁぁっ!言ったじゃないか!今、言ったっ…!」
「知らねぇよ!お前とお前の息子はぶっ殺すって決めてんだよ!」
「ランドレー女伯!ランドレーもだ!!頼む!命だけは…」
「知らねぇって言ってんだろうがぁ!それに、それが物を頼む態度かボケぇ!!」
そう言っておっさんを蹴り飛ばす。
「ランドレーを捕らえなさい!」
二人目。婆が捕まった。
そうしたところに、観客席から一人の婆が逃げ出した。
それを見ていたが、気付かぬフリをしてダミアスの頭に拳銃を突き付ける。
「ドブネズミはまだいるなぁ!誰だ!名を言え!!」
間者はダミアスの他二人と歌ったと聞いているが、カマを掛けて言ってみる。
「ドミオン女公です!お願いですっ!命…命だけはお助けをっ!」
パーンッ
「ドミオンを捕らえろ!」
セリカが騎士に向かって叫ぶ中、今度は右の太腿を撃ち抜いてやった。
「だから…っ!言ったのに…!」
「まだ隠してんじゃねぇだろうなぁ!」
「知らん!儂は本当にっ…」
パーンッ
「ぐわぁぁっ!」
結局、ダミアスを含む五人の反逆者を捕らえて投獄した。
間者はやはりウソの供述をしていたんだ。
その後、グレアムの肩を一発撃ったら新たな共犯者の名を歌ったので、即捕縛して牢屋に放り込んだ。
その光景を見ていた婆たちも、命欲しさにペラペラと歌ったそうだ。
この五人はバルバスと結託してこの国を乗っ取り、エリスたち勇者パーティーを抹殺しようと企んでいた。
エリスたちを葬った後、バルバスの王と契約した魔族が人間界を制圧し、ドミオンが新たな女王に就任してダミアスたち下級貴族がこの国の重臣として収まる。
という下らない計画だったようだ。
しかし、クーデターは阻止することが出来たし、エリスたちを守ることも出来た。
俺もこの国で少しは役に立つことが出来ただろうか。
まぁ…あの場に居た者の多くからは『とんでもないイチモツと武器を持った狂犬』とか『怒らせたら何をするか解らない』なんて噂されていると聞いた。
でも、そんな俺が居る限りこの国で不届き者が再び現れる可能性は低いだろう。
それを思えば変な噂の一つや二つくらいどうだって良いんだ。
俺の大事なお嫁さんや婚約者たちが楽しく暮らせる国なら、それで良い。
因みに…
捕縛された反逆者たちはその他にも横領など多数の罪が詳らかにされ、全員即日斬首。
お家断絶の上、何も知らなかったであろう家族も全員奴隷商に売られた。
知らなかったとは言え、横領した金や領民から違法に取り立てた税などで一緒になって良い暮らしをしていたんだから、仕方ないよな。
ダミアスも投獄されたが、俺に撃たれた傷を誰も治療してくれず、苦しんで死んだ。
反逆者たちは弔ってくれる者も無く、屍は王都外の野原に打ち捨てられた。
ダミアスの息子は街中の全ての住民から嫌われていたため、奴隷にもしてもらえず素っ裸に身包みを剥がれて王都外追放。
翌日魔獣に食い荒された状態が発見されたが、これも弔われることなく打ち捨てられた。
ありきたりな言い方だが、哀れな末路だな。
ま、同情は一切しないけどね。
訓練場の広さはテニスコートくらいだろうか。
周囲には壁が廻らされ、観客は上から覗き込む感じだ。
何が有るか解らないから、一応結界を張ってサナたちが居る観客席を守っておく。
俺の大事な人たちを危険な目に遭わせたくはないからな。
『やっちまえ!』『ぶっ殺せ!』みたいな野次も聞こえなければ歓声も無い。
静まり返った中での決闘だ。なんだか西部劇のそれみたいだな。
全身に鎧を纏ったダミアスが中央に仁王立ちして待っている。
俺も屋敷に置いてある戦闘服を念じたら出て来たので、サナに着替えさせてもらった。
サナは俺が脱いだ常装服を抱えて顔面に押し付けて、クンクンクンクンと嗅いでいた。
「ダーリンの香りがします…。はぁぁ…♡ これもクセになりそう…♡」
とか言っていた。
俺の可愛いお嫁さんの匂いフェチは緊迫した場でも健在のようだ。
俺と対峙したダミアスが口を開く。
「レイナ殿たちは簡単に騙せたかも知れんが、儂はそうは行かない。覚悟することだ」
いかにも悪役な台詞だけど、自分より強いレイナを負かせた相手と戦おうってのに、その自信はどこから来るんだろう?
てか、口臭いぞ。五歩くらい離れてるのに、鼻が曲がりそうに臭い。
「そうか?ご忠告どうも。でも先に言っとくけど、これから行うのは勝負なんかじゃない。一方的な蹂躙だ。おっさん、泣くなよ?」
「それはこっちの台詞だぁぁっ!!」
ダミアスが片手剣を上段に構えて突進してくるけど、隙だらけだ。
面倒くさい。サッサと終わらせよう。
身体を避けて二度剣戟を躱し、顔面にパンチを入れる。
「ふぐぅっ!」
力入れてないのに、おっさん両鼻から鼻血吹いちゃったよ。
汚ねぇなぁ。サナが洗濯してくれた俺の戦闘服が汚れたらどうしてくれるんだよ。
二呼吸置いて立て続けに三発殴ると、おっさんは尻餅を突いて倒れる。
ここで初めて歓声が上がる。おっさん…お前、かなり嫌われてるなぁ。
「貴様ぁ…この儂をコケにしおって…ふざけるなぁぁっ!!」
再び剣を振りかぶって突進してくる。こいつは学習能力が欠如しているのか?
その刀身に回し蹴りを入れて剣をへし折ると、振り向きざまに鳩尾に弱いパンチを一発お見舞いする。
「げぽぉぉっ!!」
情けない声を出しながら腹を押さえてゲロを吐いてやがる。ばっちいな。
観客の貴族たちは『汚ねぇぞ!』とか『いつもの偉そうさはどうした』とか言ってる。
へぇ…お貴族様って、野次なんて飛ばすのね。お下品だこと。
「我が家の家宝が…オリハルコンが…」
とか言いながら地面に這い蹲っているダミアスの頭を踏む。
「探し物か?俺はここだ。まだ終わっちゃいねぇぞ」
そう言って蹴り飛ばす。
「ふんごぉぉっ!!」
壁まで飛んで行ったダミアスを追いかけて、追い付きざまに今度は反対側に蹴る。
「ぶにぃぃっ!!」
一人サッカーだな。これは。
訓練場のほぼ中央まで飛ばされたダミアスは蛆虫のように転がる。
その襟首を左手で掴んで立たせると、二発殴る。
「儂が悪かった!もう…勘弁してくれ!!」
「ヤダ」
また殴る。
「ほごぉっ!」
さらに殴る。
「何でもする!何でもくれてやるから許してくれ!」
「なんかエラそうだからダメ」
もう一発殴る。
「知ってることを全部吐け」
さらに二発、鼻を殴る
「むぎぃっ!何を…何を吐けと…!」
「トボけんなよ。お前、陛下に牙剥こうってんだろ?知ってんだよ」
「何を…!一体何を…ぶひぃっ!」
話してる途中で殴って、左手の人差し指を掴んで関節を逆方向にへし折る。
「あがぁぁっ!指が!指がぁぁ」
「吐けよ。もう四本くらい折ってやろうか?」
「知らない!本当に知らないんだ!!」
パッと襟首を掴んでいた手を放して、レミオールを地面に落とす。
「なぁんだ。つまんねぇの。じゃぁ、もういいや」
そう言ってダミアスに背中を見せて歩き出す。
八歩目。後ろから叫び声が聞こえた。
「死ねぇぇっ!」
振り返ると、デカイ火の玉が飛んで来るのが見えた。
ドガァァァン!!
爆発と衝撃が訓練場に響く。
「ワハハハハ!儂の勝ちだぁっ!!」
魔石を頭上に掲げたおっさんの勝鬨も響く。が…
ざわめいていた周囲の貴族が、ダミアスより先に驚きの声を上げる。
「なっ…!!」
俺は無傷でそこに立っている。髪の毛一本焦げていない。
でも、流石に服は燃え落ちちゃった。
難燃性の戦闘服を一撃で焼き尽すって、かなりの火力だな。
思ったより激しい爆発だったし、結界を張っておいて良かった。
「語るに落ちたな。ダミアス」
「な…何がだ!何が言いたい!!」
「お前、なんで魔石なんか持ってんだよ?」
言いながら、静かにダミアスに歩み寄って持っていた魔石を奪い取る。
魔石についてミクが言っていたことはもう一つある。
『この国では女王陛下から許可をいただかなければ、何人も魔石を所持できません』
ということだ。
「なんなの?あのイチモツは!?」
「ひぃっ!バケモノッ!!」
なんて女性の悲鳴に似た叫びが聞こえる。
フと気になって自分の姿を確認すると、パンツまで焼け落ちてフリチンだった。
慌てて、でも冷静を装って屋敷に置いてある予備の戦闘服を呼び出す。
着ている姿を想像して呼び出したら、ちゃんと俺が着用した状態で出て来てくれた。
観衆の前でイソイソお着替えなんてカッコ悪いこと、したくないからな。
『おぉ…!流石は精霊様…お召替えも素早い…』
『あんなに大きいイチモツは初めて見たわ』
『抱かれてみたい…』
なんて声も聞こえるが、そんな声は一切無視しておく。
「恐れながら、陛下にお伺い致します!」
「許します。何でもお聞きなさい」
女王は速やかに厳かモードで返答する。
「この者に魔石の所持を許されましたか!?」
「そのような許可を与えたことは、誰にも一度も有りません」
キマったな。
おっさんに向き直り、間合いを詰める。
「今一度問う。貴様、どこでこの魔石を手に入れた」
「しっ…知らん!儂は何も知らんぞ!そっ…そうだ!陛下は儂に許可を下さったことをお忘れなんだ!!」
ありゃま。今度はてめぇのガキより若い女王を健忘症扱いしちゃったよ。
「そのようなこと忘れるものか!侮るな!この戯けが!!」
あんなに穏やかに話す女王がキレちゃったよ。
「そっ…そうでした!先王だ!先王が許可を下さったんだ!」
「私の夫は魔石嫌いだった。その夫がそのような許可を出すはずが無かろう。貴様、亡き我が夫までをも愚弄するか?」
うわぁ…女王様怖~い…。口調が別人みたいにガラリと変わっちゃってるよ。
「ぐぅぅっ…」
ダミアスが言葉に窮する。
奪った魔石を粉々に握りつぶして捨てる。
「ひぃっ…!!」
さっき戦闘服を焼き尽くされる寸前に、拳銃をホルスターごと装備解除しておいた。
だって、火の中に弾丸を投入することになるから、暴発したら怖いんだもん。
それらを弾帯ごともう一度呼び出して装着する。
「お前、もういいよ。死ねよ」
拳銃を抜いて初弾を装填し、ダミアスに銃口を向ける。
「なっ…なんだそれは!なにをしようと…」
パーンッ!
9mmパラベラム弾がおっさんの左足の甲を貫く。
「はがぁぁっ!足がっ…足がぁっ!!」
おっさんは無様に地面をのたうち回る。
「悪い悪い。外しちゃったYO!よ~し、今度は当てちゃうぞ~」
アイソセレススタンスで構えて、狙いを定める。
パーンッ!
今度は右手の指を数本、付け根から吹き飛ばす。
「あぁぁっ!手がぁっ!儂の指がぁっ!」
「あんまり動き回るから外しちゃったじゃないかっ!」
言うまでもなく、わざとだYO!
転げるダミアスに拳銃を突き付け、じりじりとにじり寄る。
それを何とか逃げようと試みるダミアス。
「わかった!言う!!言いますから!命だけは…。魔石はバルバス国の間者に…」
「んなこたぁ全部知ってんだよ!このハゲが!!」
頭に銃口を押し付ける。
「この件、お前以外に誰が関わってる?それを言え」
「それは…それだけは…」
パーンッ!
おっさんの右足の脛を撃った。
「びやぁぁぁっ!もう止めてくれぇぇっ!」
弾丸は骨を砕いているだろうから、かなり痛いだろうなぁ。
「お前、そう簡単に死なせて貰えると思うなよ?もう共犯の名前を言いたくなきゃ言うなよ。その代わり『今すぐ殺してくれ』って俺にお願いたくなるくらい痛ぶって、じわじわ殺してやるよ。共犯の名前を言えば少しは考えてやってもいいと思ってたのにな。もういいよ。根性見せてみろよ」
ダミアスは恐怖のあまり失禁している。小便まで臭せぇなぁ。
「俺さぁ、どうすれば人間が苦しんで死ぬか、熟知してるんだよ。今から一つずつ試してやるよ。せいぜい楽しませろよなぁ。俺ってば、こう見えてもかなり怒ってるんだぜ?お前が俺の可愛いサナに手を出そうとしたからな。その罰だよ。お前もせいぜいこの罰を楽しんでくれよ…」
周囲は完全に静まり返っている。
それでも誰も逃げ出さないのは、このマッドなショーを楽しんでいるんだろう。
人間て、本当に残酷な生き物だよな。
「お前の可愛いあのハゲネズミも、俺のサナに付き纏った罰でたっぷり苦しませてから、俺が知り得る限りもっとも残忍な方法で殺してやるよ。親子揃って地獄で苦しかった思い出でも語り合え」
「わかった…。言うから、命だけは…助けてくれ…」
「は?もういいって言っただろ?だから言わなくていいって。楽しませろよ」
今度は銃口を右肩に押し付ける。
「グレアム!グレアム伯爵だ!!」
パーンッ!
弾丸が肩を貫く。たぶん鎖骨も折れただろうなぁ。
「グレアムを今すぐ捕らえなさい!!」
静寂を破ってセリカの声が響き、逃げ出そうとした男を騎士が捕らえる。
きっとあれがグレアムなんだろう。
「ぐわぁぁっ!言ったじゃないか!今、言ったっ…!」
「知らねぇよ!お前とお前の息子はぶっ殺すって決めてんだよ!」
「ランドレー女伯!ランドレーもだ!!頼む!命だけは…」
「知らねぇって言ってんだろうがぁ!それに、それが物を頼む態度かボケぇ!!」
そう言っておっさんを蹴り飛ばす。
「ランドレーを捕らえなさい!」
二人目。婆が捕まった。
そうしたところに、観客席から一人の婆が逃げ出した。
それを見ていたが、気付かぬフリをしてダミアスの頭に拳銃を突き付ける。
「ドブネズミはまだいるなぁ!誰だ!名を言え!!」
間者はダミアスの他二人と歌ったと聞いているが、カマを掛けて言ってみる。
「ドミオン女公です!お願いですっ!命…命だけはお助けをっ!」
パーンッ
「ドミオンを捕らえろ!」
セリカが騎士に向かって叫ぶ中、今度は右の太腿を撃ち抜いてやった。
「だから…っ!言ったのに…!」
「まだ隠してんじゃねぇだろうなぁ!」
「知らん!儂は本当にっ…」
パーンッ
「ぐわぁぁっ!」
結局、ダミアスを含む五人の反逆者を捕らえて投獄した。
間者はやはりウソの供述をしていたんだ。
その後、グレアムの肩を一発撃ったら新たな共犯者の名を歌ったので、即捕縛して牢屋に放り込んだ。
その光景を見ていた婆たちも、命欲しさにペラペラと歌ったそうだ。
この五人はバルバスと結託してこの国を乗っ取り、エリスたち勇者パーティーを抹殺しようと企んでいた。
エリスたちを葬った後、バルバスの王と契約した魔族が人間界を制圧し、ドミオンが新たな女王に就任してダミアスたち下級貴族がこの国の重臣として収まる。
という下らない計画だったようだ。
しかし、クーデターは阻止することが出来たし、エリスたちを守ることも出来た。
俺もこの国で少しは役に立つことが出来ただろうか。
まぁ…あの場に居た者の多くからは『とんでもないイチモツと武器を持った狂犬』とか『怒らせたら何をするか解らない』なんて噂されていると聞いた。
でも、そんな俺が居る限りこの国で不届き者が再び現れる可能性は低いだろう。
それを思えば変な噂の一つや二つくらいどうだって良いんだ。
俺の大事なお嫁さんや婚約者たちが楽しく暮らせる国なら、それで良い。
因みに…
捕縛された反逆者たちはその他にも横領など多数の罪が詳らかにされ、全員即日斬首。
お家断絶の上、何も知らなかったであろう家族も全員奴隷商に売られた。
知らなかったとは言え、横領した金や領民から違法に取り立てた税などで一緒になって良い暮らしをしていたんだから、仕方ないよな。
ダミアスも投獄されたが、俺に撃たれた傷を誰も治療してくれず、苦しんで死んだ。
反逆者たちは弔ってくれる者も無く、屍は王都外の野原に打ち捨てられた。
ダミアスの息子は街中の全ての住民から嫌われていたため、奴隷にもしてもらえず素っ裸に身包みを剥がれて王都外追放。
翌日魔獣に食い荒された状態が発見されたが、これも弔われることなく打ち捨てられた。
ありきたりな言い方だが、哀れな末路だな。
ま、同情は一切しないけどね。
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しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
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相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
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