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第六十話
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昨日の夜も見せて貰ったけど、常装服姿の四人も綺麗だ。
自衛隊で見飽きるほど大勢の常装服姿を見ているけど、その誰にも負けてはいない。
王城には愛車で行こうと思うので、迎えの馬車は断った。
今の人数なら七人乗りの愛車で問題無いけど、もっと増えるようなら十人乗りのワゴンでも錬成しようかな。
王城に入り最初に通されたのは『謁見の間』と呼ばれる場所だった。
なんかその前に『控えの間』みたいな場所に通されると思ってたんだけど、いきなりなんだな。
まぁ、どっちでも良いんだけど。
謁見の間のドアの前で近衛騎士(美人)から
「こちらで武具をお預かりします…あれ?帯刀はされておられないのですか?」
と言われたから全員でホルスターから拳銃を出し
「これが私たちの武器ですが、何か?」
と言ったら、不思議そうな顔をされた。
そう言えば、一応近所の和菓子屋で大福をたくさん買って来ておいた。
挨拶代わりの献上品のつもりだけど、国王に食い物とか渡しても良かったのかな?
暫く待ってたらセリカが謁見の間に入って来て、王座の横に立った。
「カレン女王陛下がおいでになります。お控えなさい」
と先日とは違う雰囲気の口調で言った。
その言葉を合図にしたように、全員で横に並んで跪く。
こういう場での作法もサナから教わっておいた。郷に入れば…ってやつだな。
「女王陛下のおなりです!」
侍女の声が響く。聞いた声だと思ってチラリと見てみると、我が義母のエミーナさんだ。
誰かが謁見の間に入って来て王座に向かって歩いているのは判るが、頭を垂れているので姿は見えない。
「皆の物、苦しゅうない頭を上げなさい」
物腰柔らかい若い女性の声がした。これが女王陛下の声なんだろう。
顔を上げると、二十代半ばくらいの女性が王座に座っていた。
この人がカレン女王陛下か。めっちゃ可愛いな。
サナとの約束や王家の『一夫一婦制』が無ければ、告白しちゃってたかも。
ま、面倒なことになったらイヤだからしないけど。
エリスたちの話だと、夫だった先王に先立たれて女王の座に就いた未亡人なんだとか。
詳しくは知らないけど、娘が居るようなことも言ってたな。
暫く堅苦しい挨拶をして、献上品の説明をした。
「私の世界の菓子でございます。お口に合うとよろしいのですが」
「なるほど、菓子ですか。私は菓子には目が無いのです。楽しみにいただきましょう」
とか、そんなことを言っていた。
それと伯爵として爵位を正式に授与してくれて、この後この国の大臣や貴族を集めた場で発表するとのことだった。
そんな場に引き摺り出されるなんて聞いちゃいねぇぞ。
「サナ、貴女は英樹殿と結婚をされたのですね?」
女王がサナに声を掛ける。
「はい陛下。先日結婚していただき、結婚証明書にも司教様のご署名を賜りました」
「そのようですね。エミーナからも『娘は良き伴侶に恵まれた』と聞いておりますよ。サナ、遅くなりましたけど、結婚おめでとう。幸せですか?」
「祝福のお言葉、痛み入ります。とても良い夫、そして遣り甲斐の有るお仕事にも恵まれ、私はとても幸せです」
サナは俺の世界の料理を憶えるのが楽しいことや、俺が錬成した異世界の道具の便利さについて嬉しそうに丁寧な言葉で女王に話した。
「それは何よりです。ですがサナ、貴女は勇者専属メイドの任を解きます」
その場に居た全員がギョッとした。
「サナはこれ以上無いほどよく働いてくれております!陛下、どうかご再考くださいませんか!?」
そんな中、エリスが声を上げる。
エリスが言ってくれなきゃ、俺が『ふざけんな!』と言っていただろう。
ショックだったのか、サナは言葉が出て来ないようだ。俺の手を握って震えている。
「エリス、話を最後までお聞きなさい。セリカ、説明をお願いします」
「畏まりました。サナ、貴女は安田伯爵の妻です。つまり、今の貴女は伯爵夫人です。それは解っていますね?」
サナは無言で頷く。まだ言葉が出ないようだ。
俺の可愛いサナにこんな悲しい顔をさせやがって。こいつら全員引っ叩いてやろうか。
「伯爵夫人にメイドの仕事をさせておくわけにはいかないのです。それも解りますね?」
「ですが…。ですが、私はダーリンやエリス姉さまたちのお側に居たいです!私は…、ダーリンと引き離されて生きて行くことは出来ません!」
やっと言葉が出たサナは、泣き叫ぶようにそう言った。
「解っています。誰も貴女たちを引き離すとは言っていませんし、そのつもりもありません。貴女には屋敷で別の任に就いて貰います」
「別の…任…ですか?」
セリカは優しい笑顔になって続ける。
「そうです。貴女には屋敷の調理長と安田伯爵の専属秘書、そして屋敷のメイド統括としての任に当たって貰います。どうですか?妻として、これ以上の仕事は無いでしょう?」
はぁ?俺の秘書?そもそも、こっちで特に何もしていない俺に秘書が必要か?
まぁ、サナがずっと側に居てくれるのは嬉しいけど。
「お屋敷の調理長とダーリンの秘書…ですか?」
「そうです。異世界の料理を憶えるのが楽しいのでしょう?ならばそれを研究すれば良いのです。金須が必要ならこれまで通り王宮で負担しますから、存分にその腕を振るうと良いでしょう」
「サナ、たまには私たちにも異世界の料理を振舞ってね!」
女王の口調が急に砕けた。普段のこの人はこういう口調なんだろう。
「それと、専属秘書として安田伯爵の補佐やお世話をすることも貴女の仕事です。どうです?公私ともにずっと一緒にいられますよ?不満が有りますか?」
「ですが…お屋敷のメイドが居なくなってしまいます!」
うん。サナがメイドとしての仕事をしなくなったら、一体誰が掃除や洗濯を頑張ってくれるんだ?
「屋敷に六名のメイドを新たに配属します。ですので、サナはその指導と統括をしてください。貴女がメイドを育てるのです。よろしいですね?」
「そんな…急に六名ものメイドの統括だなんて…」
サナは力が抜けきったように項垂れるが、それでも俺の手は離さない。
「サナ、これは貴女にしか出来ない仕事です。他の者に安田伯爵のお世話を任せるなんて、イヤでしょう?」
セリカは既に畳み掛けに入っている。
「それは…そうですが…」
「では、やっていただけますね?」
サナは少しだけ時間を置いて
「畏まりました。謹んで拝命致します」
そう力強く応えた。
それにしたって、今までサナのワンオペだったのに俺たち六人にいきなりメイド六名は多すぎじゃないか?
「サナ、エミーナから『屋敷の外に女を作らない』と英樹殿と夫婦の契りを交わす際に約束をしたと聞いてるけど、間違いない?」
そう言えば、サナがお母上にそんな話をしてたな。
「はい陛下。間違いありません」
「じゃ、屋敷の内部に住まう者なら、妾にしたり新たに妻として娶ることは問題無いわよね?」
「はい。それは夫が大器であればこそ成せることですし、ダーリンは器の大きい方なので問題ありません」
「英樹殿、屋敷に配属するメイドは住み込みですし、精霊の『妾』や『妻』になることを希望した者で編成されています。お好きに手を出して構わないですよ」
なんだそりゃ!いきなり六人も愛人を作る気なんてねぇよ!
「それは…考えておきます…」
そこはそうとだけ答えておいた。
「安田伯爵、先日のレイナとマリコも結婚を希望しておりますよ」
セリカがニコリと笑って言う。なんか怖い。
何度も言うけど、屋敷の外に女を作る気は無いって。
「ところでサナ、先日から安田伯爵のことを『ダーリン』とお呼びしているようですけど、それはどういう意味が有るのですか?」
急にセリカがサナに質問する。
そりゃ聞き慣れないだろうから気になるんだろうね。
「はい。この『ダーリン』と言う言葉は、ダーリンの世界で『私の愛しい夫』を意味する愛称です。私はダーリンのことを心から慕い、愛し尊敬しておりますので、その愛称でお呼びしております」
「あら、オシャレで素敵な呼び名じゃない。私も先王がご存命だったらそうお呼びしたかったわ。サナ、貴女は英樹殿のことを存分にその愛称でお呼びなさい」
なんと、女王からもお墨付きを貰っちゃった。
「ありがとうございます!存分に呼ばせていただきます」
サナもさっきまでの焦燥っぷりがウソのように元気に応えた。
「皆の服装もとっても素敵ね。それも英樹殿の世界の物なの?」
「はい陛下。こちらはダーリンの世界の『セーラー服』と『常装服』という物で、私たち専用の訪問着として仕立てて下さったのです」
サナはスラスラと淀みなく答える。
「皆、可愛らしくて良く似合ってるわね。私も一着そういう可愛い服が欲しいわ」
女王にセーラー服…。なんか面白いけど、日本で見たらイタイな。
「機会が有りましたら…」
とだけ言っておいた。
「それとエリス、あの屋敷なんだけど」
女王は完全に口調に威厳が無くなっている。
「あの屋敷は今日から貴女ではなく英樹殿に管理していただくことにするわね。その方が貴女も都合が良いでしょ?」
女王はエリスにウインクをする。
「ありがとうございます!私もそれをお願いしようと考えておりました!」
え…?俺があの屋敷の主になるの?俺はお気楽な居候のままでいたかったんだけど…。
「というわけです、安田伯爵。今後は屋敷の運営管理造営等、一切の権限をエリスから貴方に移管します。屋敷の敷地はご自身の所領と思って任に当たってください。宜しいですね?」
授爵しちゃうとこんな面倒なことになるのかよ…。受けなきゃ良かった。
「あ、それと、隣の空き家も貴方がお使いなさい。有れば何かと役立つでしょ?」
女王様さ…。そんな大事なことお気楽に言わないでよ。
それに、今の屋敷だって十室ほど部屋が余ってるのに。
「安田伯爵、勿論、貴族としての賃金も王宮より支払います。月々大金貨十枚です」
あれ、屋敷の管理するだけでお金貰えるの?住み込み管理人みたいなもんか?
ともあれ『僕ちゃん面倒なのはイヤで~す。屋敷でとイチャイチャしてたいで~す』とは言えないもんな…。
「畏まりました。謹んで拝命します」
あ~あ。心にも無いこと言っちゃったよ。
自衛隊で見飽きるほど大勢の常装服姿を見ているけど、その誰にも負けてはいない。
王城には愛車で行こうと思うので、迎えの馬車は断った。
今の人数なら七人乗りの愛車で問題無いけど、もっと増えるようなら十人乗りのワゴンでも錬成しようかな。
王城に入り最初に通されたのは『謁見の間』と呼ばれる場所だった。
なんかその前に『控えの間』みたいな場所に通されると思ってたんだけど、いきなりなんだな。
まぁ、どっちでも良いんだけど。
謁見の間のドアの前で近衛騎士(美人)から
「こちらで武具をお預かりします…あれ?帯刀はされておられないのですか?」
と言われたから全員でホルスターから拳銃を出し
「これが私たちの武器ですが、何か?」
と言ったら、不思議そうな顔をされた。
そう言えば、一応近所の和菓子屋で大福をたくさん買って来ておいた。
挨拶代わりの献上品のつもりだけど、国王に食い物とか渡しても良かったのかな?
暫く待ってたらセリカが謁見の間に入って来て、王座の横に立った。
「カレン女王陛下がおいでになります。お控えなさい」
と先日とは違う雰囲気の口調で言った。
その言葉を合図にしたように、全員で横に並んで跪く。
こういう場での作法もサナから教わっておいた。郷に入れば…ってやつだな。
「女王陛下のおなりです!」
侍女の声が響く。聞いた声だと思ってチラリと見てみると、我が義母のエミーナさんだ。
誰かが謁見の間に入って来て王座に向かって歩いているのは判るが、頭を垂れているので姿は見えない。
「皆の物、苦しゅうない頭を上げなさい」
物腰柔らかい若い女性の声がした。これが女王陛下の声なんだろう。
顔を上げると、二十代半ばくらいの女性が王座に座っていた。
この人がカレン女王陛下か。めっちゃ可愛いな。
サナとの約束や王家の『一夫一婦制』が無ければ、告白しちゃってたかも。
ま、面倒なことになったらイヤだからしないけど。
エリスたちの話だと、夫だった先王に先立たれて女王の座に就いた未亡人なんだとか。
詳しくは知らないけど、娘が居るようなことも言ってたな。
暫く堅苦しい挨拶をして、献上品の説明をした。
「私の世界の菓子でございます。お口に合うとよろしいのですが」
「なるほど、菓子ですか。私は菓子には目が無いのです。楽しみにいただきましょう」
とか、そんなことを言っていた。
それと伯爵として爵位を正式に授与してくれて、この後この国の大臣や貴族を集めた場で発表するとのことだった。
そんな場に引き摺り出されるなんて聞いちゃいねぇぞ。
「サナ、貴女は英樹殿と結婚をされたのですね?」
女王がサナに声を掛ける。
「はい陛下。先日結婚していただき、結婚証明書にも司教様のご署名を賜りました」
「そのようですね。エミーナからも『娘は良き伴侶に恵まれた』と聞いておりますよ。サナ、遅くなりましたけど、結婚おめでとう。幸せですか?」
「祝福のお言葉、痛み入ります。とても良い夫、そして遣り甲斐の有るお仕事にも恵まれ、私はとても幸せです」
サナは俺の世界の料理を憶えるのが楽しいことや、俺が錬成した異世界の道具の便利さについて嬉しそうに丁寧な言葉で女王に話した。
「それは何よりです。ですがサナ、貴女は勇者専属メイドの任を解きます」
その場に居た全員がギョッとした。
「サナはこれ以上無いほどよく働いてくれております!陛下、どうかご再考くださいませんか!?」
そんな中、エリスが声を上げる。
エリスが言ってくれなきゃ、俺が『ふざけんな!』と言っていただろう。
ショックだったのか、サナは言葉が出て来ないようだ。俺の手を握って震えている。
「エリス、話を最後までお聞きなさい。セリカ、説明をお願いします」
「畏まりました。サナ、貴女は安田伯爵の妻です。つまり、今の貴女は伯爵夫人です。それは解っていますね?」
サナは無言で頷く。まだ言葉が出ないようだ。
俺の可愛いサナにこんな悲しい顔をさせやがって。こいつら全員引っ叩いてやろうか。
「伯爵夫人にメイドの仕事をさせておくわけにはいかないのです。それも解りますね?」
「ですが…。ですが、私はダーリンやエリス姉さまたちのお側に居たいです!私は…、ダーリンと引き離されて生きて行くことは出来ません!」
やっと言葉が出たサナは、泣き叫ぶようにそう言った。
「解っています。誰も貴女たちを引き離すとは言っていませんし、そのつもりもありません。貴女には屋敷で別の任に就いて貰います」
「別の…任…ですか?」
セリカは優しい笑顔になって続ける。
「そうです。貴女には屋敷の調理長と安田伯爵の専属秘書、そして屋敷のメイド統括としての任に当たって貰います。どうですか?妻として、これ以上の仕事は無いでしょう?」
はぁ?俺の秘書?そもそも、こっちで特に何もしていない俺に秘書が必要か?
まぁ、サナがずっと側に居てくれるのは嬉しいけど。
「お屋敷の調理長とダーリンの秘書…ですか?」
「そうです。異世界の料理を憶えるのが楽しいのでしょう?ならばそれを研究すれば良いのです。金須が必要ならこれまで通り王宮で負担しますから、存分にその腕を振るうと良いでしょう」
「サナ、たまには私たちにも異世界の料理を振舞ってね!」
女王の口調が急に砕けた。普段のこの人はこういう口調なんだろう。
「それと、専属秘書として安田伯爵の補佐やお世話をすることも貴女の仕事です。どうです?公私ともにずっと一緒にいられますよ?不満が有りますか?」
「ですが…お屋敷のメイドが居なくなってしまいます!」
うん。サナがメイドとしての仕事をしなくなったら、一体誰が掃除や洗濯を頑張ってくれるんだ?
「屋敷に六名のメイドを新たに配属します。ですので、サナはその指導と統括をしてください。貴女がメイドを育てるのです。よろしいですね?」
「そんな…急に六名ものメイドの統括だなんて…」
サナは力が抜けきったように項垂れるが、それでも俺の手は離さない。
「サナ、これは貴女にしか出来ない仕事です。他の者に安田伯爵のお世話を任せるなんて、イヤでしょう?」
セリカは既に畳み掛けに入っている。
「それは…そうですが…」
「では、やっていただけますね?」
サナは少しだけ時間を置いて
「畏まりました。謹んで拝命致します」
そう力強く応えた。
それにしたって、今までサナのワンオペだったのに俺たち六人にいきなりメイド六名は多すぎじゃないか?
「サナ、エミーナから『屋敷の外に女を作らない』と英樹殿と夫婦の契りを交わす際に約束をしたと聞いてるけど、間違いない?」
そう言えば、サナがお母上にそんな話をしてたな。
「はい陛下。間違いありません」
「じゃ、屋敷の内部に住まう者なら、妾にしたり新たに妻として娶ることは問題無いわよね?」
「はい。それは夫が大器であればこそ成せることですし、ダーリンは器の大きい方なので問題ありません」
「英樹殿、屋敷に配属するメイドは住み込みですし、精霊の『妾』や『妻』になることを希望した者で編成されています。お好きに手を出して構わないですよ」
なんだそりゃ!いきなり六人も愛人を作る気なんてねぇよ!
「それは…考えておきます…」
そこはそうとだけ答えておいた。
「安田伯爵、先日のレイナとマリコも結婚を希望しておりますよ」
セリカがニコリと笑って言う。なんか怖い。
何度も言うけど、屋敷の外に女を作る気は無いって。
「ところでサナ、先日から安田伯爵のことを『ダーリン』とお呼びしているようですけど、それはどういう意味が有るのですか?」
急にセリカがサナに質問する。
そりゃ聞き慣れないだろうから気になるんだろうね。
「はい。この『ダーリン』と言う言葉は、ダーリンの世界で『私の愛しい夫』を意味する愛称です。私はダーリンのことを心から慕い、愛し尊敬しておりますので、その愛称でお呼びしております」
「あら、オシャレで素敵な呼び名じゃない。私も先王がご存命だったらそうお呼びしたかったわ。サナ、貴女は英樹殿のことを存分にその愛称でお呼びなさい」
なんと、女王からもお墨付きを貰っちゃった。
「ありがとうございます!存分に呼ばせていただきます」
サナもさっきまでの焦燥っぷりがウソのように元気に応えた。
「皆の服装もとっても素敵ね。それも英樹殿の世界の物なの?」
「はい陛下。こちらはダーリンの世界の『セーラー服』と『常装服』という物で、私たち専用の訪問着として仕立てて下さったのです」
サナはスラスラと淀みなく答える。
「皆、可愛らしくて良く似合ってるわね。私も一着そういう可愛い服が欲しいわ」
女王にセーラー服…。なんか面白いけど、日本で見たらイタイな。
「機会が有りましたら…」
とだけ言っておいた。
「それとエリス、あの屋敷なんだけど」
女王は完全に口調に威厳が無くなっている。
「あの屋敷は今日から貴女ではなく英樹殿に管理していただくことにするわね。その方が貴女も都合が良いでしょ?」
女王はエリスにウインクをする。
「ありがとうございます!私もそれをお願いしようと考えておりました!」
え…?俺があの屋敷の主になるの?俺はお気楽な居候のままでいたかったんだけど…。
「というわけです、安田伯爵。今後は屋敷の運営管理造営等、一切の権限をエリスから貴方に移管します。屋敷の敷地はご自身の所領と思って任に当たってください。宜しいですね?」
授爵しちゃうとこんな面倒なことになるのかよ…。受けなきゃ良かった。
「あ、それと、隣の空き家も貴方がお使いなさい。有れば何かと役立つでしょ?」
女王様さ…。そんな大事なことお気楽に言わないでよ。
それに、今の屋敷だって十室ほど部屋が余ってるのに。
「安田伯爵、勿論、貴族としての賃金も王宮より支払います。月々大金貨十枚です」
あれ、屋敷の管理するだけでお金貰えるの?住み込み管理人みたいなもんか?
ともあれ『僕ちゃん面倒なのはイヤで~す。屋敷でとイチャイチャしてたいで~す』とは言えないもんな…。
「畏まりました。謹んで拝命します」
あ~あ。心にも無いこと言っちゃったよ。
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