異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

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第五十話

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 屋敷に戻るとすぐにサナが飛び出して来て、俺を抱き締める。
ミクが一足先に戻って全てを知らせてくれていたからだと思う。
「ダーリン、ご無事でよかった…」
きっとミクが『魔獣に飛び掛かって、すごいことになった』とか、あることないこと伝えたんだろう。
その証拠に、ミクを見たら目を逸らして口笛を吹いていたからな。
知らせに遣る人選を間違えたような気がする。
「サナ、汚れちゃうよ?」
サナをそっと抱いて頭を撫でて言う。
「良いんです。防汚の能力を付与していただいてますから」
そう言ってくれたので、ギュッと抱きしめていい香りのする髪にキスをした。

 「犠牲者を出してしまったことは悔やまれるが、全員無事で良かった。本当にお疲れ様。風呂に入って疲れをとって、夕食にしよう」
屋敷に入ろうと思ったが、サナに呼び止められる。
「ダーリン、此方のお客様方は…」
いけね。すっかり忘れてた。
振り返ると、デスハウンドの返り血シャワーを浴びて見るも無残な姿になった未希たちが立ち尽くしていた。
「彼女たちは俺の世界での同僚たちなんだ。ユキに召喚された時に此方に付いて来てしまったらしい。そうだ。未希、その拳銃を回収しようか」
 未希から拳銃を受け取って残弾を確認すると、やはり二発減っている。
それを確認すると、忘れようとしていた怒りが沸々と込み上げて来る。
「俺の部屋で話を聞こうか。皆、この三人を屋敷に入れて構わないか?」
「英樹様のご同僚ということでしたら、どうぞ」
屋敷の主の許可を得たので、三人を連れて俺の部屋に行く。勿論、エリス、ユキ、ミク、サナも一緒だ。
 屋敷に入るなり三人…特に未希が
「へぇ…シンプルだけど、いいお屋敷よね」
とか、お気楽に屋敷の寸評なんかしてやがる。
その言葉を受けてエリスやサナが質問に答えたりしながら、廊下を進む。
 部屋に入ると席に着かず、三人にも席を進めることも無く口を開いた。
「星野に聞く。なぜ撃った」
俺の声に怒りが混じっていることを瞬時に悟った此方の世界の四人は一斉に黙る。
流石に普段は『未希』と呼んでいる俺が『星野』と名字で呼んだことから俺の怒りを察したらしい未希も黙る。
「え…?」
「もう一度問う。何のつもりでなぜ撃った」
「いや…手助け出来ればと思って…」
「あの状況で何の手助けだ!」
俺の怒鳴り声に四人が首を竦める。自分が怒られている気分なんだろう。
「あの状況で発砲することで、誰かを巻き込むとは思わなかったのか?」
「隊長たちを助けようと思って、あの怪物の気を引こうと…空中に…」
「それがダメだと言ってるんだ!」
ダメだ。こいつ、本当に元自衛官なのか?
「英樹様、申し訳ありません。近くにいた私が止めていたら…」
俺の横に整列している四人の中で、ミクが一歩前に出て俺に頭を下げる。
「ミクが謝る必要は無い。悪いのは星野だ」
「……」
未希は一言も発しない。よく考えずに撃った証拠だ。
「あの状況で本当に撃つ必要が有ったか?」
「…本当に、ただ手助けをしたくて…」
「結果として、手助けになったと思うか?」
「……」
堪りかねたのか、あずさが口を開く。
「英樹さん…、未希先輩は英樹さんの役に立ちたくて、必死で…」
「悪いが戦闘を知らない素人は口を挟まないでくれ」
酷い言い方に聞こえるかも知れないが、これもまた事実だ。
あずさもシュンとなって引っ込む。
「星野、お前が不必要に発砲したことで、ミクとユキ、あずさや陽菜の命をも危険に晒したことが解からないのか?俺とエリスが立てていた作戦を台無しにした挙句、お前たちを守るために戦っていたミク、怪我人の治療中で無防備なユキと陽菜、戦うことも身を守ることも出来ないあずさをも巻き込んでしまったんだぞ!最悪の場合、お前たちの誰かが、あの怪我人や亡くなった人のようになっていたかも知れないんだ!」
その言葉を聞いて、青くなっていた未希の顔がさらに青くなる。
「それでも…それでも、必死に戦ってる皆を見てたら…何かしなくちゃって…」
「貴様も自衛隊の訓練受けた身だ。せめて自分の身やあずさや陽菜くらいは守れるだろうと期待して拳銃を渡したが、それさえも満足にこなせないのなら、この世界で貴様に出来ることなど無い」
事実を冷酷に言い放つ。
「そもそも、何故俺に付いて来た。興味本位か観光気分か?」
「そんな…!そんなつもりじゃ…急にどこかに行こうとするから…心配で…」
「貴様のその軽はずみな行動が周囲に迷惑を掛けて危険に巻き込んでいることを自覚しろ。これについては部隊に居た時にも口を酸っぱくして言ったはずだが、俺の言葉は貴様には響かなかったようだな」
「……」
言われても仕方ないと感じてくれているだろうか?
自分の仲間や俺の大切な人たちを危険に晒した自覚を持ってくれるだろうか?
それを受けて自分の軽薄な性格を改めてくれるだろうか?
「エリス、今の話を聞いてどう感じた?正直に言ってくれ」
突然話を振られたエリスは返答に窮していたが、ちゃんと答えてくれる。
「戦闘に慣れていらっしゃらないのなら…仕方ないかも知れません…」
「この星野は俺と同じ訓練を受けた元軍人だと知っても、そう思うかい?」
「それは…話が変わってきますね…。行動が軽率過ぎたと…言わざるを得ません」
慎重に言葉を選びながらだが、それがエリスの正直な意見だろう。

 「この世界のことを君たちに話したのは間違いだった。日本に送ってあげるから、今日のことやこの世界でのことは全て忘れるんだ。…俺のこともだ」
「やだ!せっかくまた一緒に居られるチャンスなのに、忘れたくない!」
「あたしもお兄ちゃんのことを忘れるなんて出来ないよ!」
そう言われても、彼女たちがこの世界と関わって生きて行くことは難しいだろう。
「私、こっちの世界で生きて行きます!」
あずさは何を思ったのか、突然そんな宣言をする。
「英樹さんのことを忘れるくらいなら、こっちの世界で生きます!」
なんで二度言った?そんな大事なことか?
「あずさ、自分の言ってることが解かってるかい?」
「解ってます!」
口調はいつものおっとりではなくしっかりしたものだけど、本当にちゃんと考えて話してるのか?
「君は『こっちの世界で生きる』と言ったな?今日見た通り、こっちの世界は食うか食われるかだ。力の無い君が、どうやって自分の身を守るんだ?」
「それは…」
「力も無い、金も無い、住むところも仕事も無い。そんな世界でどうやって生きて行くつもりだい?俺が助けてくれるとでも考えてるのか?」
「……」
「悪いがこの屋敷は俺の物ではないから、俺の一存で住まわせてやるなんてことは出来ないぞ。仕事だってこの世界に紹介してやれるような伝手なんて無い。そんな甘っちょろい考えでは、この世界で生きるなんて到底無理だ」
「それでも…英樹さんと離れるくらいなら、こっちで生きたい…。愛してるから…」
そう言って泣き崩れる。
『愛してるから』というあずさの言葉に顔を上げて反応したサナだったが、しゃがみ込んで泣きじゃくるあずさに歩み寄って、そっと背中をさすってあげている。
本当に優しいな、サナは。

 「皆さん!お風呂に入りましょう!」
エリスが唐突に言い出した。
そう言えば、未希たちはデスハウンドの血を頭から被ってベトベトのままだ。
ミクとユキは『防汚』の能力を付与した服を着てるし、エリスは離れた場所に居たから大して汚れてないけど、早く汗は流したいだろうな。
それに、何だか部屋の中が獣の血で臭い気がする。
一見ボケているかのような提案をしたエリスの機転と優しさに、思わず顔が綻ぶ。
「そうだな。風呂に入って来るといい」
俺も疲れた。怒るのはエネルギーを使うから好きじゃないんだよな。
女性陣を風呂に送り出して、俺も少しゆっくりしよう。

 流石に俺も一緒に入るわけにはいかないから、部屋に残ることにした。
その間にあの三人の着替えにルームウェアと下着を錬成しておいてやろうと思う。
すぐにでも日本に送るつもりだが、あの姿で歩いてたら職務質問でもされかねない。
下着のサイズまでは解らないから、脱衣所でサナに預かって来てもらってサイズを確認させてもらった。
服の上からでも判るけど、下着のサイズからして三人もなかなかのたわわをお持ちだな。
匂いを嗅げばどれが誰のだか判別できそうだが、サナが目の前に居るから控えた。
錬成した物をサナに渡して脱衣所に持って行ってもらったんだが、そのサナはすぐに戻って来た。
「あれ?サナはお風呂に入らないのかい?」
「私は後でダーリンとご一緒しますから、大丈夫です♡」
そんな可愛いことを言うサナを膝に乗せて抱き締める。
「一人で入るのは淋しいなって思ってたんだよ」
「私の愛しいダーリンに淋しい思いなんて、絶対にさせません」
あぁ…。もう…サナのことがすごく愛しい。
「本当かい?約束だよ?」
「はい♡ お約束致します…」
サナとディープなキスを交わし、お互いの舌をレロレロと求め絡ませ合う。
「昼間にエッチする約束だったのに、守れなくてごめんね?」
サナの『約束』という言葉を聞いて、そのことを思い出す。
「緊急の戦闘が有ったんです、仕方ないですよ。悪いのは馬車を襲って私たち夫婦の『愛の営み』を邪魔した魔獣です。でも、ダーリンがその憎い魔獣を倒して下さったおかげで、エリス姉さまたちも無事に帰って来て下さったし、私の淋しさも報われました。それにダーリンは旅人の命までも救われるなんて偉業を成し遂げられたんです。とっても誇らしいです!『私の夫はスゴイんだぞ!』って、街中の人たちに言って回りたいくらいに嬉しい気分なんです」
そう言ってたわわに実ったおっぱいに俺の顔を抱きかかえてくれる。
たゆんと柔らかい感触が心地よく、愛しく甘い香りが優しく香る。
俺は物理攻撃無効のおかげで窒息することは無いけど、普通ならこれで死ねそうだ。
「ありがとう…サナ。君が側にいてくれるだけで、強くなれる気がするよ。サナは俺の自慢の奥さんだよ…。愛してるよ、サナ…」
サナの香りを全て吸い込むように、深く呼吸をしながら愛の言葉囁く。
「私もダーリンを愛してます。心の底からこれからも永遠に…愛してますよ…」
そう言ってより強く俺の顔を抱き締める。
「サナに淋しい思いをさせてごめんね…」
「良いんですよ…。今日のことは…お気になさらなくて大丈夫です…」
そう優しく小さな声で囁いて、俺の額にキスをして愛しそうに髪を撫でてくれた。
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