異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

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第四十七話

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 またサナが私服に着替えさせてくれて、再び日本の自宅に戻った。
約束の13時ギリギリになってしまったが、仕方ないだろう。
それにしても、あちらの世界は朝が早いしサナの手作り焼きそばをお腹いっぱい食べたので眠い。
このまま寝てしまいたくなる衝動に駆られるけれど、ここで寝るくらいならあっちの世界でサナに膝枕でもしてもらって寝たい。
 そうこうしていたら、インターホンが来客を報せて、俺の眠気も醒める。
モニターを覗いたら未希の他にあずさも陽菜ひなも来ているようだ。
 三人とは飲食店舗跡で話をすることにした。自宅のリビングよりここの方が気楽に話せそうな気がしたし、皆で店をやってた時はミーティングもここでやっていたからだ。
「飲み物はほとんどの物が残ってるから、適当にやってくれ」
厨房に行って各々が飲みたい物をチョイスするが、流石に今ビール等の酒類を選択する者は居なかった。
まぁ、飲みたきゃ自己責任でやってくれりゃ全然構わないんだがな。
 少しだけ挨拶程度に世間話をしてたら、黙っていた未希に
「で?隊長はここ数日、どこで何をしてたの?」
などといきなりな聞き方をされる。正直に言葉を選ばず言うならば、なんで俺はコイツにこんな物言いをされなければならないんだ?
「昨日も言ったが、商売だ」
「商売って、また何かの商売を始めたの?」
「まぁ…そうだな」
「何のご商売を始められたんですか?」
いつものおっとりした口調であずさが横から聞いて来る。
たぶん高揚している未希を落ち着かせたくて、敢えてそうした口調で話してくれているんだと思う。
「どういうかな…。ちょっとした輸入業だな」
「その仕事って、お兄ちゃんは前から考えてたの?」
陽菜も特にいつもとは変わらない口調だ。
「いや、思い付きで始めたんだ」
「輸入って何を取り扱ってるんですか?まさか…危ない物ではないですよね?」
「どっかから変なもん密輸して売り捌いたりしてないでしょうね?」
「そんな…!お兄ちゃんに限って、犯罪になるようなことしてないよね!?」
俺はこいつらからそんなに信用がないのか…。ちょっと悲しいぞ。
「危ない物とか変な物ってなんだよ。ちゃんとした品だし、取引してるのもちゃんとした会社だ。俺は犯罪になるようなことは一切してない」
「じゃあ、どこから何を仕入れてんの?」
なんで俺はこんなに詰められんとならんのか?何か知らんがカチンと来た。
「ちょっと待て。君は俺の母親かなんかか?悪いが俺にはちゃんと母ちゃんがいる。さっきから君の口調は俺を問い質すように聞こえるんだが、なんで俺は君からそんなに責められないとならないんだ?一体何様なんだ?」
「あたしは…あたしは隊長のことを心配してたんだよ!?何日も連絡が付かなくてそれで…」
「だからと言って、俺は君の子供でもなければ所有物でもない。俺を管理するような物言いは控えてもらおうか」
完全に『売り言葉に買い言葉』な子供の喧嘩に近いものが有るが、未希の口調にはハッキリ棘が有るし、いかに心配させたか知らないが、俺はガキじゃない。自分で自分を管理できる、いい歳した大人なんだ。
「俺がどこで何をしていようと、君にとやかく言われる筋合いは無い。心配してくれたことについては素直に感謝するが、だからといって今日の君の態度は看過できない。改めてもらおう」
理不尽な態度には毅然とした態度で臨ませてもらう。
「それは…」
「未希先輩、確かにちょっとムキになり過ぎです。落ち着きましょう」
「そうだよ。折角お兄ちゃんと会えたんだもん、ちゃんと話そうよ」
あずさと陽菜も助け船を出してくれる。ありがたい。
「ごめんなさい…。隊長も…ごめんなさい。言い過ぎました…」
年下から窘められて意気消沈したのか、立ち上がって謝罪してくれる。
「解ってくれたら良いんだ。俺だって人の子だ。理不尽な態度を取られたら、流石に腹も立つ。それも理解しておいてくれ」
「英樹さんも、未希先輩の気持ちを解ってあげてください。本当に心配して夜も寝られなかったようですし、昨日は電話が繋がって本当に嬉しそうだったんですから」
俺も窘められてしまった。
あずさは普段はおっとりしてるのに、こういう時は本当にしっかりしている。
この中で精神年齢は一番大人なのかも知れない。
「ここ数日のことで心配を掛けてしまったのは、本当に申し訳ない。この通りだ」
立ち上がって、三人に頭を下げた。
 場が落ち着いたところで話し始める。
「この数日の間ははほとんど、スマホが使えない国にいたんだ。日本にいてもバタバタと用事を済ませるのに忙しくてスマホのチェックが出来なかったんだ」
「スマホ使えないって、どんな田舎の国に行ってたの?しかもたった数日で?」
陽菜の疑問はご尤もだな。でも、どう説明しよう。
確かに日本ではない外国ではあるけど、海外ではない。厳密には家から出てないし。
だからと言って『異世界に行ってました』とか信じてもらえるか?
「どこに行っていたかは、今は言えないんだ」
「どこに行ってるのか、何を扱って商売をしてるのかも教えてもらえないんじゃ、納得できないよ!秘密は守るから、ちゃんと教えてよ!」
「解った。扱ってる品物は、ダイヤモンドの原石だ」
仕方ない。それくらいは教えても良いだろう。
「ダイヤモンド…?宝石のダイヤモンド?」
「そのダイヤモンドだ。原石だけどな」
三人の顔が呆気に取られたようにポカンとする。
現物を見せてしまった方が話が早い気がするな。
三人を待たせて書斎の金庫から原石の入った巾着袋を持ち出す。
「これがその原石だよ」
幾つか取り出してテーブルの上に並べる。
三人の顔がポカンから真っ青に変わる。
「お兄ちゃん、こんなのどこから買い付けしてるの?」
「それだけは言えないよ。ごめんな、陽菜」
「凄いですね…。これでお幾らくらいになるんですか?」
あずさがゴクリと喉を鳴らす。
「品質がかなり高いらしくてな。一握りで五百万円だ」
「「「ご…五百…!!??」」」
「今日の昼前に初めての取引をしたんだけど、そこでその値で売れたんだ」
「じゃあ…その一袋で…?」
そう言えば俺も考えてなかったけど、間違いなくこの一袋で億単位の金額になるはずだ。
「とんでもない金額になるな」

 暫し、沈黙の時間が流れる。
「英樹さん、ダイヤモンドの取引は継続されるんですか?」
あずさが口火を切ってくれる。
「うん。明後日、一千万円の取引を予定してる」
「一度の取引で一千万円…。それって、以前の雑貨店の売り上げの半年分くらいになりますよ?」
以前の雑貨屋の平均月間売り上げは二百万円ちょっとだったから、確かにそうだな。
もし仮に一年間で毎月この一袋分を完売したら、年間で数十億円の売り上げになる。
仕入れは無料だし社屋も自宅だから元手は掛からないし、収益がすごいことになりそうだ。
「そんだけ稼げたら…お店も再開できるんじゃない…?」
陽菜のその言葉に、四人で顔を見合わせる。
「は…ははは…」
「ふ…ふふふ…」
「え…えへへ…」
誰からともなく、引き攣った笑いが上がる。
「なっ…何を言ってるんだよ陽菜…そんな馬鹿な…いやいや…そんな…なぁ?」
未希に同意を求めてしまう。
「そ…そうだよ…!就職先も決まってるのにもう一度お店やるとか…ねぇ?」
未希はあずさに同意を求めるが
「再開…アリかも…」
あずさは核心に触れてしまう。
「いいじゃん!!再開しようよ!!!」
陽菜の元気よく明るい声に
「あ…あはは…そんな…ねぇ?」
と言った後、再び黙り込んでしまう。

 「隊長…、再開するとしたら、お店はどうするんです?」
今度は未希から口を開いた。
「俺は向こうとの行き来があるから、厨房に入れないからなぁ…。料理人を雇ってまで飲食店をやりたいとは思わないし、かといって料理人のいない飲食店なんて成立しないしな…。もう一度始めるのなら雑貨屋だけで、この店は原石販売の拠点に改装するかな」
飲食店舗跡を拠点に改装するプランは、原石販売を思い付いた時点で考えてはいた。
いつまでも閉店したままにしておくのは、用心も良くないからな。
「なんだ…。もうほとんどプラン出来てんじゃん…」
俺の回答を受けて、未希がぼそりと呟く。
「英樹さんも、従業員が居た方が商売し易いですよね?」
「まぁ…、一人で商売するよりも店番してくれる人が居た方が良いよな」
「じゃ、決まりだね!あたしたち、またお兄ちゃんと一緒に働くよ!」
陽菜は思い切りが良すぎる。
「そうですね。私と陽菜ちゃんは雑貨店。未希先輩は原石販売の窓口。それで良いんではないでしょうか?」
あずさも相変わらずおっとりした口調なのに、なんだかノリノリだ。
「ちょっと待ってよ!あたし、やるなんて一言も…」
「やりたいんですよね?未希先輩」
「あたし、原石やあんな多額の現金なんて扱ったことないもん!出来ないよ!」
「私たちもお店の仕事をしながら手伝いますよ。だから、大丈夫です」
おいおい…。あずさはなんでそこまで乗り気なんだ?
「そうだよ!あたしもあずさ姉ちゃんと一緒に未希姉ちゃんのお手伝いもするから、また皆で一緒に働こうよ!」
「でも…」
「未希先輩はもうメンバーには加わらないんですね。じゃ、残念ですけど、今後英樹さんのサポートは私がやります。それで良いですよね?」
今度は何だか脅してるぞ。
「それは…!」
「やるんですか?やらないんですか?」
あずさからおっとりした口調が完全に消えて、畳み掛けに入っている。
「わかったよ!やる!やります!!」
未希も同意してしまい、『これで大団円』みたいな空気が流れる。
「ちょっと待ってくれ!」
俺の事業なのに、俺を抜きに勝手に話を勧められても困る。
「俺は前の事業に失敗してるんだ。また君たちを巻き込むことは出来ない」
臆病だと言われたらそうなのかも知れないが、この事業だってこれからどうなって行くのか全く先行きは見えない。
あれだけ大きな売り上げが有れば、俺一人ならどうにでも出来る。
だが、この三人にも未来がある。
それを俺がその場の思い付きだけで始めた無計画な事業に巻き込むことは、やはり気が引けてならない。
「英樹さんは、私たちを巻き込むことが怖いんですよね?だったら大丈夫です」
「大丈夫って…、どこにそんな根拠が有るんだ?」
「根拠なんて無いです。一度失敗したのだって、事業の進め方が悪かったわけじゃなくて、事業計画の中に『世界的な病原菌の蔓延』なんて入れて無かっただけじゃないですか」
そりゃそうだ。そんなことを予測できるのなら、事業に失敗するはずがないからな。
「ちょっと待って!あたし思ったことが有るんだけど…」
陽菜が急に声を上げた。
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