異世界召喚されて神様貴族生活

シロイイヌZ

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第二十話

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 屋敷と同様に装飾は少ないが、整頓されていて女の子らしい香りがする部屋で話をする。
「ユキ、召喚主である君に聞きたい。サナと俺が結婚することに問題は無いかい?」
これは本当に真面目に質問したつもりだ。
「問題ですか?私が召喚した『精霊様』と、私の家族であるサナさんが恋に落ちて結婚することに、祝福はしても問題なんて何一つ無いですよ?」
あまりにもあっさりしていて、拍子抜けだ。
「じゃあ、女性としての二人に聞くね。サナに対して何も思う所はないよね?」
この質問は解り難かっただろうか。
二人は顔を見合わせた後、俺の目を見て答える。
「英樹様、私たちはお二人の結婚を心から祝福しますし、魔王討伐後は英樹様の妻になることが決まった身です。嬉しくはあっても嫉妬なんてしませんから、ご安心ください。それに、世界一素敵な殿方である英樹様と、人形のように可愛らしいサナとの間に子が生まれたら…とんでもなく可愛いお子になるのは必至です!私はそれが楽しみなんです!」
どうやら、エリスは本当に子供が生まれることが楽しみで仕方ないらしい。
どんだけ気が早いんだとツッコミたくもなるが、素直に好意的にその言葉を受け取っておこう。
「但し、新婚だからと言ってご主人様がサナさんのお相手ばかりして、私たちを抱いてくれなくなったら…」
「なったら…?」
「「グレますよ?」」
「そ、そうならないように頑張ります…」
そう言って、三人で笑う。
まさか俺の人生で、セクシーランジェリーの美少女の婚約者に別の美少女との結婚話を相談することになるとは思いもしなかったが、おかげで俺も気持ちが固まった。
あと三つのハードルをクリアすれば、大団円だ。

 「エリス、聞きたいんだけど、こっちではプロポーズってするの?」
「ぷろぽーず?って、なんでしょうか?」
「あぁ…、男が女に…まぁ…逆もあるけど、相手に結婚を申し込むことだよ」
「それはつまり、『求婚する』ということですね?! 英樹様は、これからサナにその『プロポーズ』をなさって下さるのですね?!」
「…そうだよ。愛する女性を娶るんだから、それくらいの男気を見せるのは当然だよね?」
「さすが英樹様。素晴らしいお考えです。そうですね…。こちらではアクセサリーを贈りながら相手に自分の思いを伝える習慣が有りますね」
「アクセサリーか…。指輪?ネックレス?値段は給料の三か月分?」
「いえ、贈る品物や値段に決まりはありません。気持ちが伝わればいいので」
「そうなんだね。ありがとう。ちなみにだけど、サナの指輪のサイズって、知ってる?」
二人は顔を見合わせる。
「サナは普段から身も心も飾らないですからねぇ…」
「カチューシャやリボンくらいしか着けたところを見たことがないですからね…」
つくづくサナの純朴さが愛しくなる。
「仕方ない。サナの指で直接サイズを測ってみようか。それとさ、俺の世界では結婚すると左手の薬指に指輪をする習慣があるんだけど、こっちではどうなのかな?」
「なんだかロマンチックな習慣ですね。こちらにはその習慣は無いですが、流行しそうですね。それをサナにやってあげてくれませんか?」
意を決して立ち上がる。きっと今、二人の目に俺は凛々しく見えてる(はず)だろう。
「指輪のサイズって、どうやって測るのですか?」
エリスの部屋の床を見回してみる。髪の毛か糸くずが一本くらい落ちてるはずだ。
すぐにクローゼットの前でお誂え向きの髪の毛を発見して、それを手に俺の部屋に戻る。

 「サナ、左手を出してくれるかい?」
「はい。こうですか?」
不思議そうな顔をして差し出してくれた左手の薬指に、エリスの部屋で拾った一本の髪を緩く巻き付ける。
「これは…何をなさってるのですか?」
なおも不思議そうな顔で俺を見上げるサナ。可愛らしいなぁ。
「うん?これはね…まぁ、お楽しみに!」
サナの唇に軽くキスをして
「ちょっとあっちの世界に行ってくるよ。すぐ戻るから、此処で待ってて」
そう言い残して、『異界渡航』を発動して自宅に戻る。

 自宅に戻ってすぐにサナの指のサイズを測った髪の毛を物差しで測りなおし、メモに書く。
次に向かったのは、寝室のクローゼットだ。
つい壁を撫でると部屋が明るくなるのではないかと思ってしまうが、ここでは壁のスイッチを押さないと明るくならない。
 男の一人暮らしにしては大きなベッドを置いている。
俺とて結婚を諦めたわけではなかったからだが、あちらの世界で妻を娶るので、生涯このベッドで伴侶となる女性と褥を共にすることは無いのだろうな。
クローゼットから出したのは自衛官時代の紫紺の制服。常装服だ。
諸般の事情により手元にある。
『サナにプロポーズするには、正装であるこの制服で』と思ったのだ。
一式を揃えてベッドに並べて置き、一階の雑貨屋だった店舗跡に降りる。
片付けはまだしていないので、売れ残った商品は陳列したままになっている。
レジ前のショーケースにアクセサリー類を並べて売っていた。
それなりのブランドの物を揃えていたが、雑貨屋に置くにはちょっと高級すぎたか、かなり売れ残ってしまった。
次に商売を始めるのなら、反省して改善すべき点かも知れないな。
 ショーケースの中からプラチナリングのトレーを取り出す。
真っ白くて細い、守ってあげたくなるサナの指に似合うのはどれだろうか。
『気持ちを伝えるための物』とエリスが言っていたので、俺なりに選んでみる。
その中で俺の目を引いたのはウェーブデザインのプロミスリングだ。小さいながら石も埋め込まれている。タグを見て品番を確かめると、レジ裏のストックヤードに入って在庫を確かめる。
「六号…六号っと…」
サナの指のサイズは六号だ。うん。有った。
棚に別売りのケースも一緒に置いているので、指輪をクロスで磨いてからそれに納める。
そのまま寝室に戻って着替えようかと思ったが、ショーケースに戻ってプラチナネックレスのトレーを取り出す。
その中でスクリューのマルチチェーンの物を選んで、またストックヤードに戻って在庫を確認する。
これもそこそこの数があったので、同じ物を四本とケースを四つ持ち出す。

 今度こそ制服に着替え、キッチンに行ってインスタントだがコーヒーを作り、一息吐く。
頭の中でサナに伝える言葉を考え、繰り返す。
実際のところ、サナという美少女とは今日出会ったばかりだ。
その美少女を出会ったその日のうちに手籠めにした上に、妻にしようとしている。
やっていることは悪役そのものだ。
でも俺は純粋に、そして真剣に、サナというその娘を愛している。
ずっと隣に居て欲しいし、俺たちの子供を産んで欲しい。
運命の相手だと、心の底から思うんだ。
だからサナと結婚したい。最初の妻は彼女でなくてはならないんだ。
付き合ってゼロ日で結婚を決めたっていいじゃないか。
覚悟を決めて立ち上がる。
しかし、もう一度トイレに行っておこう。
さぁ、屋敷に戻ろう。戻って愛しいサナを抱きしめよう。
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