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第二話
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数分の後、黒い霧が完全に晴れた。
倒れてはいるが姿が残っているホブゴブリンが数匹確認できるが、死に切れていないか死んだふりをしているのだろう。
念のため、対面の丘にある木の上にも撃ち込んでおく。ゴブリンは狡猾な魔物なので、枝陰に身を潜めている可能性があるとアニメで学んだ。
結果としては本当に三匹落ちてきた。まだいるかも知れない。油断は禁物だ。
そろそろ小銃の弾丸も尽きる。掃討しながら落ちている武器を拾っては弾丸を創る。
裸足だったので歩きにくいから、途中でいつも履いているスニーカーも出してみた。
「あの…。さっきから使ってるその魔法はなんですか?」
魔法使いの少女が聞いてくる。
「これかい?どうやら俺は錬金術が使えるみたいなんだ」
「錬金術…!あの幻の神術と言われた…?『使えるみたいなんだ』って、そんな…他人事みたいに言わないでくださいよ!」
口をぽかんと開けて大きな目をさらに見開いている。
この娘はどうやら好奇心は旺盛だけど、やっぱりちょっと残念さんのようだ。
でも、こういう娘は嫌いではない。そういうところが憎めないってやつだ。
そう言えば、なんで魔法なんて使えるのかな?
三十路だけど、家庭教師だった近所の二十歳のお姉さんに十五歳の時に童貞を捧げているし、過去には体の関係の持った数人の恋人もいたから、魔法使いになれる要素は無い。
これが『死後の世界』の恩恵なのだろうか?
掃討を進めていき、四匹目の場所に向かいながら考えていたのは
『こういう時ってショットガンがあると便利だよな』
そう考えていた所に良さげなバトルアックスが落ちていたので、拾い上げて錬金術に掛ける。オートマチックで且つ見た目がカッコイイのが欲しかったが、これもまた前職で使ったことがあるM870を創り出した。良い。かなり良い出来だ。
と、いきなり真横からホブゴブリンが斬りかかってきた。
カキィィィィン!
ホブゴブリンの剣は俺の頭にクリーンヒットする。しまった。完全に油断した。
久しぶりに銃を扱ったことで、おもちゃを貰った子供のように興奮していたかも知れない。
「キャァァァァァ!」
美少女三人の悲鳴を聞きながら
『あぁ…。ここで終わりかぁ』
と思ったが、特に痛くも痒くもない。頭をやられたからか?
そう言えばさっきも棍棒で頭を殴られたり、素手で短剣を掴んだりしたけど
俺の体には傷一つ無いし、どこも痛くないぞ?
一瞬怯んだホブゴブリンだったが、自棄になったのか闇雲に斬りかかってきた。
「うるせぇ!ボケェ!!」
身体を翻して間合いを取り、力任せに側頭部に回し蹴りを叩き込む。
なんかおかしな音を立てて首がもげて、えらい遠くまで飛んで行ってしまった。
あっ!ジーパンが血塗れになった!お気に入りだったのに…。
三人の美少女はまたも目を丸くして驚いていた。
そりゃぁ俺も死んだと思ったもん。皆もそう思うはずだよね。
でも、どうやら俺には物理攻撃は効かないようだ。きっとチートってやつだな。
掃討を続け、ドロップアイテムを手当たり次第に武器や弾薬に交換していく。持ちきれなくなってきたので背嚢も作ってみたが、随分と動きやすくなった。
「そう言えば、君たちの名前を聞いてなかったし、俺も名乗ってなかったね」
今更ながらだが、そんな話を三人に振ってみる。
「俺は安田英樹。自分の世界では商人で、元は自衛官…軍人だった者だ」
「ありがとうございます。私はエリス・フォールズ・ミュルゼンと申します。ジョブは勇者で、このパーティーのリーダーを務めさせていただいております」
なるほど、金髪の美少女がリーダーか。しかも勇者って!本当にこの世にいるのか!
あ、ここはあの世か。
それにしても、この娘、めっちゃ可愛いな。
「ミク・ブラウニングです。魔法使いをしてます。回復魔法と水魔法はお任せ!」
うん。残念魔法使いちゃんはミクちゃんね。覚えたよ。『残念ミクちゃん』って。
「私はユキ=シーラ・プリローズと申します。見習いの精霊術士で、普段は妖精術のヒーラーを務めています。今回貴方様を召喚させていただいたのは私です。
ですが、初めての精霊召喚であったためか、あなた様のような高位のお方を召喚してしまいました。私のような出来損ないの召喚士でもお許し願えるのであれば、ぜひとも私と召喚契約を契っていただけませんでしょうか」
銀髪のユキと名乗る少女は、俺の前に跪き首を垂れる。
召喚?なんだそれ??俺は脳梗塞かなんかで死んだんではないのか?
「そんなことしなくていいから、頭を上げてくれよ。
それより、召喚ってなんのことだい?君が俺を此処に連れて来たってこと?」
「はい。さようでございます。私が精霊術士としてこちらにお招きしました」
「てことは、俺って精霊なの?それと、さっき戦闘中に『神様』とか言ってなかった?」
ということは、俺は死んで精霊に転生したってことなのか?
「はい。上位精霊様をお呼びしたつもりだったんですが、先ほどから使われている術を見る限り、あなた様はそれよりも高位の『神様』なのではないかと思うのです」
俺が『神様』??そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない。
ちょっと落ち着こうと思い、目を閉じる。瞼に手をやると自分のステータスが見えた。
『安田 英樹 Job:召喚されし神 Lv:計測不能 三十三歳
攻撃力:―――
防御力:―――
魔力 :―――
速さ :―――
賢さ :―――
魅力 :―――
運 :―――
魔法属性:全属性魔法使用可能 (火・水・木・氷・土・風・光・闇・空・時) 各種治癒魔法
能力:物理・魔法攻撃無効 状態異常無効 全環境・全属性適応 完全治癒 疾病治癒
主の威光 錬金術 属性付与 魔術付与 魔法術式創造
持ち物:異界の衣 神の剣 神の拳銃 神の自動小銃 神のショットガン 神の靴
神の背嚢 神の弾薬 』
なんだこりゃ?「神のショットガン」って装備はちょっと笑えるけど。
確かに物理攻撃は効かなかったな。ってことは、魔法もなのか?
全属性魔法使用可能って、どんだけチートなんだ?
母さん…。僕は見知らぬ場所でムテキングになってしまいました…。
いずれにしても、これは詳しく検証してみる必要があるな。
職業は『召喚されし神』だから、やはり俺はユキに召喚されて此処にいるのだろう。
能力に『主の威光』なんてよく解らんのもあるが、やはり『錬金術』は使えるようだ。
ジョブや持ち物を見た感じでは、この世界では俺はユキの言うように『神』の扱いようだ。
これは…。何かの間違いだろうし黙っていよう。飽くまでも召喚された只のおっさんに徹しよう。
「神様がこのような出来損ないに呼び出されたことが容赦できないと仰るのなら、私はこの場でこの命を差し上げても構わないと覚悟しております」
ユキは落ち着いた声でそう言うと、再び俺の前に跪く。
「私もです。ユキにだけ責めを負わせることはできません」
隣にエリスが跪く。
「わ…私も!」
慌てて反対側にミクが跪くが、君はたぶん事の重大さが解ってないよね?
「三人ともよしてくれよ。確かに俺はユキちゃんに召喚された者のようだ。だけど、俺は断じて神ではない。俺の存在がこの世界でなんなのか解らないが、俺の世界ではどこにでもいる普通の人間なんだ」
「そうなのですか…?」
「あぁ。だから、召喚契約を契るのが正解なのか解らないけど、ユキちゃんが望んでくれるのであれば、俺は喜んで契約を契るよ。だから、命なんて取らないよ」
「私と契っていただける…のですか…?」
「勿論だよ」
「命は取らないと…?」
「こんな可愛い女の子たちの命なんて取れないよ。その代わりに全力で守るだけだよ」
人生で一番ってくらい爽やかな笑顔を作り、三人の腕を取り立ち上がらせる。
三人とも震えていた。『覚悟は出来ている』とは言っても、怖かったのだろう。
その顔を見ると、今はまさにウットリという感じで六つの瞳が俺を見ている。
初めて三人のステータスを見てみることにした。
『エリス Job:勇者 Lv:22 二十一歳 状態:恍惚』
『ユキ Job:精霊術士 Lv:19 十八歳 状態:恍惚』
『ミク Job:魔法使い Lv:18 二十歳 状態:恍惚』
なんだよ!『恍惚』って!!
落ち着いた口調と態度で話していたユキまでもが頬を染めて
「可愛いだなんて…。そんな…恥ずかしい…」
と、モジモジしながら俺をウットリと見つめている。
うん。この娘もめちゃくちゃ可愛い。三人とも本当に美少女だ。
正直、こんな可愛い娘たちに熱っぽい視線で見つめられたら、盛大に勘違いしてしまいそうだ。
また風に乗ってゴブリン臭がしてきた。しかも、今度かなり強烈だ。
『おいおい。またかよ…。今度はどんだけ湧いてくるんだよ』
ウンザリしながら臭いの先に視線を向ける。三人はまだ気付いていないようだ。
「三人とも俺の後ろに隠れろ!なんかスゲェのが来る!」
反射的に三人を後ろに匿う。
次の瞬間すぐ横手の林から姿を現したのは、どデカイ片手剣を手にした、ホブゴブリンよりも二回りくらいデカくてデブなゴブリンだった。
「そんな…。ゴブリン…ロード…」
苦々しい声でエリスが呟く。
「なんでこんな所にゴブリンロードがいるの?!」
「こいつのせいで、この辺りにゴブリンが増えたようですね」
どうやらこのデカイのは、本来はこの周囲には生息していないらしい。
ステータスを確認してみる。
『ゴブリンロード Lv:43 状態:発情中』
こいつは三人に任せてしまうと殺されかねない。
「精霊様、ご一緒します」
と、エリスが横に出ようとする。
「君は下がってろ。レベルはあっちの方が君より倍ほど上だ」
左手で制すと、エリスは分の悪さを悟ったのか大人しく引き下がった。
発情ゴブリンロードは濁った眼でこちらを一瞥すると、涎を垂らしながら口を開いた。
「メスヲ…」
タァァァン!
言葉を発した瞬間に構えた小銃が火を噴き、発情した変態ゴブリンロードの頭をぶち抜く。
人間語を使うとは思わなかったが、卑猥なことを言うのは解ってる。
『発情中』とかステータスに出てたからな。
そんなのはこの娘たちに聞かせたくないし、聞かせるなら俺の口からにしたい。
はい!どうもスミマセン!俺も変態でっす!!
後ろの木にもたれかかる様に倒れたゴブリンロードは、こと切れているようだ。
しかし、「念には念を」だ。
帝国陸軍時代に少佐だったじいちゃんがよく言っていたので、止めを刺しておこう。
小銃からショットガンにスイッチし、歩み寄りながら立て続けに三発。
胸部一発に頭部二発。うん。死んでるな。端から黒い霧になっていってる。
なんとなく気になったので、ゴブリンロードの股間の前掛けを捲ってみた。
付いてた!ちゃんとチンコが付いてたよ!でも、体の割にすんごく小っちゃかった。
俺のジュニアといい勝負かも。体の大きさが違うけど。あれだな。残念ロードだな。
横に来ていた三人は
「汚いモノを見せないでください!」
「魔物のアレだなんて…汚らわしいです」
「あれだね。ゴブリンロードって体の割に小っちゃかったね」
最後の一人はが誰だかは想像に任せるが、そんなことを言っていた。
でも、あんまり汚いとか小さいとか言わないで。俺の心もダメージを受けるから。
その後は俺の武器と戦い方について言われた。
「その武器は凄まじいですね。高レベルのゴブリンロードさえも一撃とは」
エリスは自動小銃に興味津々のようだ。
使い方を教えて『近代装備勇者部隊』とか『機甲化勇者部隊』なんて面白いかもな。
「喋ろうとした瞬間に倒しちゃうんだもん。卑怯過ぎて笑っちゃったよ」
うん、ミク。君は発言を自重しようか。
「それにしても、なぜこんな所にゴブリンロードがいたのでしょうか?」
ユキは冷静に分析を始めている。
答えは俺に解るはずもないが、ややこしいことにならなければ良いのだが…。
「精霊様、どうか私どもの屋敷へお越しください」
ゴブリンロードのドロップアイテムを拾っていると、エリスが申し出てくれる。
「そうですね。せっかくお越しいただいたのですから、おもてなしさせてください」
「どうぞ!私たちの屋敷でお休みになってください!」
異口同音に誘ってくれる。美少女たちの誘いを断るわけないでしょう!
現実世界では美少女たちの家に招かれるなんて有り得ないことなんだから!
しかし、そこはクールに
「ありがとう。この身は異世界から来た者だから、この世界では行く所がないんだ。
お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうね」
そう返事をすると、三人は嬉しそうに微笑んでくれた。
エリスとユキに手を引かれ、ミクに背中を押されて歩き出す。
この世界での悦楽の日々が、この瞬間に始まった。
倒れてはいるが姿が残っているホブゴブリンが数匹確認できるが、死に切れていないか死んだふりをしているのだろう。
念のため、対面の丘にある木の上にも撃ち込んでおく。ゴブリンは狡猾な魔物なので、枝陰に身を潜めている可能性があるとアニメで学んだ。
結果としては本当に三匹落ちてきた。まだいるかも知れない。油断は禁物だ。
そろそろ小銃の弾丸も尽きる。掃討しながら落ちている武器を拾っては弾丸を創る。
裸足だったので歩きにくいから、途中でいつも履いているスニーカーも出してみた。
「あの…。さっきから使ってるその魔法はなんですか?」
魔法使いの少女が聞いてくる。
「これかい?どうやら俺は錬金術が使えるみたいなんだ」
「錬金術…!あの幻の神術と言われた…?『使えるみたいなんだ』って、そんな…他人事みたいに言わないでくださいよ!」
口をぽかんと開けて大きな目をさらに見開いている。
この娘はどうやら好奇心は旺盛だけど、やっぱりちょっと残念さんのようだ。
でも、こういう娘は嫌いではない。そういうところが憎めないってやつだ。
そう言えば、なんで魔法なんて使えるのかな?
三十路だけど、家庭教師だった近所の二十歳のお姉さんに十五歳の時に童貞を捧げているし、過去には体の関係の持った数人の恋人もいたから、魔法使いになれる要素は無い。
これが『死後の世界』の恩恵なのだろうか?
掃討を進めていき、四匹目の場所に向かいながら考えていたのは
『こういう時ってショットガンがあると便利だよな』
そう考えていた所に良さげなバトルアックスが落ちていたので、拾い上げて錬金術に掛ける。オートマチックで且つ見た目がカッコイイのが欲しかったが、これもまた前職で使ったことがあるM870を創り出した。良い。かなり良い出来だ。
と、いきなり真横からホブゴブリンが斬りかかってきた。
カキィィィィン!
ホブゴブリンの剣は俺の頭にクリーンヒットする。しまった。完全に油断した。
久しぶりに銃を扱ったことで、おもちゃを貰った子供のように興奮していたかも知れない。
「キャァァァァァ!」
美少女三人の悲鳴を聞きながら
『あぁ…。ここで終わりかぁ』
と思ったが、特に痛くも痒くもない。頭をやられたからか?
そう言えばさっきも棍棒で頭を殴られたり、素手で短剣を掴んだりしたけど
俺の体には傷一つ無いし、どこも痛くないぞ?
一瞬怯んだホブゴブリンだったが、自棄になったのか闇雲に斬りかかってきた。
「うるせぇ!ボケェ!!」
身体を翻して間合いを取り、力任せに側頭部に回し蹴りを叩き込む。
なんかおかしな音を立てて首がもげて、えらい遠くまで飛んで行ってしまった。
あっ!ジーパンが血塗れになった!お気に入りだったのに…。
三人の美少女はまたも目を丸くして驚いていた。
そりゃぁ俺も死んだと思ったもん。皆もそう思うはずだよね。
でも、どうやら俺には物理攻撃は効かないようだ。きっとチートってやつだな。
掃討を続け、ドロップアイテムを手当たり次第に武器や弾薬に交換していく。持ちきれなくなってきたので背嚢も作ってみたが、随分と動きやすくなった。
「そう言えば、君たちの名前を聞いてなかったし、俺も名乗ってなかったね」
今更ながらだが、そんな話を三人に振ってみる。
「俺は安田英樹。自分の世界では商人で、元は自衛官…軍人だった者だ」
「ありがとうございます。私はエリス・フォールズ・ミュルゼンと申します。ジョブは勇者で、このパーティーのリーダーを務めさせていただいております」
なるほど、金髪の美少女がリーダーか。しかも勇者って!本当にこの世にいるのか!
あ、ここはあの世か。
それにしても、この娘、めっちゃ可愛いな。
「ミク・ブラウニングです。魔法使いをしてます。回復魔法と水魔法はお任せ!」
うん。残念魔法使いちゃんはミクちゃんね。覚えたよ。『残念ミクちゃん』って。
「私はユキ=シーラ・プリローズと申します。見習いの精霊術士で、普段は妖精術のヒーラーを務めています。今回貴方様を召喚させていただいたのは私です。
ですが、初めての精霊召喚であったためか、あなた様のような高位のお方を召喚してしまいました。私のような出来損ないの召喚士でもお許し願えるのであれば、ぜひとも私と召喚契約を契っていただけませんでしょうか」
銀髪のユキと名乗る少女は、俺の前に跪き首を垂れる。
召喚?なんだそれ??俺は脳梗塞かなんかで死んだんではないのか?
「そんなことしなくていいから、頭を上げてくれよ。
それより、召喚ってなんのことだい?君が俺を此処に連れて来たってこと?」
「はい。さようでございます。私が精霊術士としてこちらにお招きしました」
「てことは、俺って精霊なの?それと、さっき戦闘中に『神様』とか言ってなかった?」
ということは、俺は死んで精霊に転生したってことなのか?
「はい。上位精霊様をお呼びしたつもりだったんですが、先ほどから使われている術を見る限り、あなた様はそれよりも高位の『神様』なのではないかと思うのです」
俺が『神様』??そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない。
ちょっと落ち着こうと思い、目を閉じる。瞼に手をやると自分のステータスが見えた。
『安田 英樹 Job:召喚されし神 Lv:計測不能 三十三歳
攻撃力:―――
防御力:―――
魔力 :―――
速さ :―――
賢さ :―――
魅力 :―――
運 :―――
魔法属性:全属性魔法使用可能 (火・水・木・氷・土・風・光・闇・空・時) 各種治癒魔法
能力:物理・魔法攻撃無効 状態異常無効 全環境・全属性適応 完全治癒 疾病治癒
主の威光 錬金術 属性付与 魔術付与 魔法術式創造
持ち物:異界の衣 神の剣 神の拳銃 神の自動小銃 神のショットガン 神の靴
神の背嚢 神の弾薬 』
なんだこりゃ?「神のショットガン」って装備はちょっと笑えるけど。
確かに物理攻撃は効かなかったな。ってことは、魔法もなのか?
全属性魔法使用可能って、どんだけチートなんだ?
母さん…。僕は見知らぬ場所でムテキングになってしまいました…。
いずれにしても、これは詳しく検証してみる必要があるな。
職業は『召喚されし神』だから、やはり俺はユキに召喚されて此処にいるのだろう。
能力に『主の威光』なんてよく解らんのもあるが、やはり『錬金術』は使えるようだ。
ジョブや持ち物を見た感じでは、この世界では俺はユキの言うように『神』の扱いようだ。
これは…。何かの間違いだろうし黙っていよう。飽くまでも召喚された只のおっさんに徹しよう。
「神様がこのような出来損ないに呼び出されたことが容赦できないと仰るのなら、私はこの場でこの命を差し上げても構わないと覚悟しております」
ユキは落ち着いた声でそう言うと、再び俺の前に跪く。
「私もです。ユキにだけ責めを負わせることはできません」
隣にエリスが跪く。
「わ…私も!」
慌てて反対側にミクが跪くが、君はたぶん事の重大さが解ってないよね?
「三人ともよしてくれよ。確かに俺はユキちゃんに召喚された者のようだ。だけど、俺は断じて神ではない。俺の存在がこの世界でなんなのか解らないが、俺の世界ではどこにでもいる普通の人間なんだ」
「そうなのですか…?」
「あぁ。だから、召喚契約を契るのが正解なのか解らないけど、ユキちゃんが望んでくれるのであれば、俺は喜んで契約を契るよ。だから、命なんて取らないよ」
「私と契っていただける…のですか…?」
「勿論だよ」
「命は取らないと…?」
「こんな可愛い女の子たちの命なんて取れないよ。その代わりに全力で守るだけだよ」
人生で一番ってくらい爽やかな笑顔を作り、三人の腕を取り立ち上がらせる。
三人とも震えていた。『覚悟は出来ている』とは言っても、怖かったのだろう。
その顔を見ると、今はまさにウットリという感じで六つの瞳が俺を見ている。
初めて三人のステータスを見てみることにした。
『エリス Job:勇者 Lv:22 二十一歳 状態:恍惚』
『ユキ Job:精霊術士 Lv:19 十八歳 状態:恍惚』
『ミク Job:魔法使い Lv:18 二十歳 状態:恍惚』
なんだよ!『恍惚』って!!
落ち着いた口調と態度で話していたユキまでもが頬を染めて
「可愛いだなんて…。そんな…恥ずかしい…」
と、モジモジしながら俺をウットリと見つめている。
うん。この娘もめちゃくちゃ可愛い。三人とも本当に美少女だ。
正直、こんな可愛い娘たちに熱っぽい視線で見つめられたら、盛大に勘違いしてしまいそうだ。
また風に乗ってゴブリン臭がしてきた。しかも、今度かなり強烈だ。
『おいおい。またかよ…。今度はどんだけ湧いてくるんだよ』
ウンザリしながら臭いの先に視線を向ける。三人はまだ気付いていないようだ。
「三人とも俺の後ろに隠れろ!なんかスゲェのが来る!」
反射的に三人を後ろに匿う。
次の瞬間すぐ横手の林から姿を現したのは、どデカイ片手剣を手にした、ホブゴブリンよりも二回りくらいデカくてデブなゴブリンだった。
「そんな…。ゴブリン…ロード…」
苦々しい声でエリスが呟く。
「なんでこんな所にゴブリンロードがいるの?!」
「こいつのせいで、この辺りにゴブリンが増えたようですね」
どうやらこのデカイのは、本来はこの周囲には生息していないらしい。
ステータスを確認してみる。
『ゴブリンロード Lv:43 状態:発情中』
こいつは三人に任せてしまうと殺されかねない。
「精霊様、ご一緒します」
と、エリスが横に出ようとする。
「君は下がってろ。レベルはあっちの方が君より倍ほど上だ」
左手で制すと、エリスは分の悪さを悟ったのか大人しく引き下がった。
発情ゴブリンロードは濁った眼でこちらを一瞥すると、涎を垂らしながら口を開いた。
「メスヲ…」
タァァァン!
言葉を発した瞬間に構えた小銃が火を噴き、発情した変態ゴブリンロードの頭をぶち抜く。
人間語を使うとは思わなかったが、卑猥なことを言うのは解ってる。
『発情中』とかステータスに出てたからな。
そんなのはこの娘たちに聞かせたくないし、聞かせるなら俺の口からにしたい。
はい!どうもスミマセン!俺も変態でっす!!
後ろの木にもたれかかる様に倒れたゴブリンロードは、こと切れているようだ。
しかし、「念には念を」だ。
帝国陸軍時代に少佐だったじいちゃんがよく言っていたので、止めを刺しておこう。
小銃からショットガンにスイッチし、歩み寄りながら立て続けに三発。
胸部一発に頭部二発。うん。死んでるな。端から黒い霧になっていってる。
なんとなく気になったので、ゴブリンロードの股間の前掛けを捲ってみた。
付いてた!ちゃんとチンコが付いてたよ!でも、体の割にすんごく小っちゃかった。
俺のジュニアといい勝負かも。体の大きさが違うけど。あれだな。残念ロードだな。
横に来ていた三人は
「汚いモノを見せないでください!」
「魔物のアレだなんて…汚らわしいです」
「あれだね。ゴブリンロードって体の割に小っちゃかったね」
最後の一人はが誰だかは想像に任せるが、そんなことを言っていた。
でも、あんまり汚いとか小さいとか言わないで。俺の心もダメージを受けるから。
その後は俺の武器と戦い方について言われた。
「その武器は凄まじいですね。高レベルのゴブリンロードさえも一撃とは」
エリスは自動小銃に興味津々のようだ。
使い方を教えて『近代装備勇者部隊』とか『機甲化勇者部隊』なんて面白いかもな。
「喋ろうとした瞬間に倒しちゃうんだもん。卑怯過ぎて笑っちゃったよ」
うん、ミク。君は発言を自重しようか。
「それにしても、なぜこんな所にゴブリンロードがいたのでしょうか?」
ユキは冷静に分析を始めている。
答えは俺に解るはずもないが、ややこしいことにならなければ良いのだが…。
「精霊様、どうか私どもの屋敷へお越しください」
ゴブリンロードのドロップアイテムを拾っていると、エリスが申し出てくれる。
「そうですね。せっかくお越しいただいたのですから、おもてなしさせてください」
「どうぞ!私たちの屋敷でお休みになってください!」
異口同音に誘ってくれる。美少女たちの誘いを断るわけないでしょう!
現実世界では美少女たちの家に招かれるなんて有り得ないことなんだから!
しかし、そこはクールに
「ありがとう。この身は異世界から来た者だから、この世界では行く所がないんだ。
お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうね」
そう返事をすると、三人は嬉しそうに微笑んでくれた。
エリスとユキに手を引かれ、ミクに背中を押されて歩き出す。
この世界での悦楽の日々が、この瞬間に始まった。
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【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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