上 下
24 / 36

消えるコップ

しおりを挟む
目が覚めたとき、口の中がとても乾いていた。
暖房をつけて、それに口を開けて寝ていたからだろう。
我ながらひどい口臭もする。


布団から這い出て、キッチンへと向かう。
マットレスに足が沈み、寝起きのせいでふらついてしまう。
近くにある本棚に手をついて体を支える。


テーブルの上に出しっぱなしにしていたコップを手に取る。
冷蔵庫を開け、お茶の入ったポットを取り出す。


んん!と咳払いを二回。
早くお茶を飲もう。イガイガする。


コップになみなみ注ぐ。
ポットをしまい、冷蔵庫をしめる。


よろけてキッチンの壁にもたれかかる。
こぼれないようにコップをバランス良く持ち、口元へ運ぶ。


「あれ?」


コップの中には何も入っていない。
お茶を入れたはず。
もしかして溢したのか?そう思って床を見ても濡れていないし、服にシミもついていない。


よく見るとコップには水滴すらついていない。
寝ぼけていたのかな。
そう思ってもう一度お茶を注ぐ。


今度はポットをしまわずに、飲む。


「あれ?」


また、飲めなかった。
コップの中には何もなく、お茶の冷たさも感じない。
まるで、何も入れてなかったよう。


ポットを見ると、明らかにかさが減っている。
二リットルのポット一杯にお茶を入れてから寝た。ちゃんと覚えている。


そして今ポットのかさは全体の一割ほど減っている。
正にコップ二杯分だ。ちゃんと注いでいたのだ。
それなのに何故?


キッチンの水道で少し顔を濡らす。
意識をはっきりさせて、もう一度お茶を注ぐ。


目をそらさずに、コップのお茶を一息に飲む。

















ゴク、ゴク。ぷぁ。


今度はちゃんと飲めた。
ポットのかさは先程より少しだけ減っていて、やっぱりはじめの二杯は夢ではなかったんだ。


どういうことなんだろう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

モテる兄貴を持つと・・・Yamato&Kaito

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:366

普通に生きられなかった私への鎮魂歌

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:3

悪役令嬢に転生しましたがどうでもいいです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,702

医者の心

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

霊能者のお仕事

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:21

待ち望んだゲームへ転生

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...