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秘密基地って言えば子供の頃のロマンですよね。
しおりを挟む降り立った場所は王都から離れた人気のない村だった。
ここは地図から無くなった村。
周りが深い森で、さらに強い結界を張っているため、滅多に人は入り込んでこない。というか来れない。その結界には所謂認証システムみたいなものを付けている。
魔力の質や揺らぎ方は人によって異なる。それで個人を特定しているわけだ。
認証されている者が連れてきた者ははじかれることはないが、認証されていない者が入り込もうとするとはじかれる。はじかれるといっても入ったところに戻るくらいなものだが。
簡単に言えば村全体が秘密基地だ。
いいねえ秘密基地!5歳の俺なら大喜びだ。
地図から無くなってしまった村だが、結構大きな村だったようだ。
俺はちょくちょく子供とか怪我人とか連れ帰っちまうから今はかなりの大所帯になってしまっている。そんな結構な人数がしっかり暮らせる広さがあるのがとてもありがたい。野盗とかに目をつけられる前に住んでてよかった。
なんてことを考えながら足は勝手に家に向かっている。
一際大きな家が俺たちが暮らしている家だ。おそらく村長が暮らしていたところだろう。そこを住処にさせてもらっている。
随分時間がたってしまった。早く家でゆっくりしたいものだ。
「帰ったぞー」
なんて言ってゆっくり扉を開ける。家もでかいが玄関も結構でかい。その玄関に仁王立ちで佇むオブジェ…ではなく者が口を開いた。
「お帰りなさい、ディフィカルト。今回も随分たくさんの子供たちを拉致してきたわね。イフィアの街は楽しかった?」
ニコニコと笑んで嫌味を飛ばしてくるこの女。俺の仲間であり、お世話係(俺が勝手に言ってるだけ)のルジェーナ・ヘルンだ。ロザという。あのヘルン家の生き残り。ま、これは追々だな。
ロザはとにかく口うるさい。手を洗え。腹を出して寝るな。菓子は食いすぎるな等々。俺が子供みたいだって?ちげーよ。良い大人な俺がなんでこんなに言われなきゃならないんだって話なんだよ。めんどくせえ。
ちなみにイフィアってさっきいた街の名前な。
「拉致ってなんだよ人聞きの悪い。しかも毎回みたいな言い方すんな。親が死んじまったから拾ってきたんだよ。」
「死んじゃったんじゃなくて殺しちゃったんでしょ?それにどうせ強引に連れてきたんだから拉致で合ってるわよ。」
ぐうの音も出ない。
「んでも連れてきちまったもんはしゃあねえだろ。何とかしてやってくれ。」
「自分でお世話できないのに何で連れてきちゃうのよ。犬猫も自分で世話できたためしないのに。」
自分の世話も十分にできないから他人に任せるんだよ。
そんなことは口が裂けても言えないから心の中で言って心なし胸も張っておく。言うなればドヤッだな。
「確かにあんたは自分の世話さえもできないものね。私やヒビキが大変。」
「っ!?ロザてめえ読みやがったな!」
「たまたまよ。たまたま。」
大きなため息を吐いたロザは一回俺を睨んだ後、連れてきた子供と一緒に家から出て行った。睨み付けたいのはこっちだ。
ロザは人の心で思ったことを目を見ることで読み取ることができる。普段は安易に人の心を読みたくないからサングラスしてたりできるだけ目を見ないようにして暮らしている。
小さい頃からってことだからそろそろ慣れて制御できるようになると思うんだがな。
ま、いいや。俺は心が広いから許してやろう。
で、出てった先だな。たぶん子供がたくさんいて世話してくれる奴の所へ連れて行くんだろう。
あとはアイツに任せておけば安心安心。
あとは自室へ行ってごろごろしよう。ちょいと頭痛がしてきた。早く横になりたい。
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