Kill Will

帷飛鳥

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可愛い時期もありました。

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あの頃の俺は、完全に彼に心酔してしまっていた。文字通り心から酔っていたんだ。
この人のためならば死ねる。人も殺せる。彼が居なければ生きていけないとまで思っていた。
いや、実際に彼が居なければ俺は確実にここには居ないからその辺は事実なわけか?

まあ、そんな俺が今は彼を追い続け、殺そうとしてるわけなのだが。

所謂復讐というやつで。
復讐なんだから是非とも彼には苦しんで死んでもらいたい。それに大事な人が居るならそいつの前で殺してやりたい。
そのためにいろんなところへ足を運んで彼の情報を探っているわけなのだが、今回も空振りだ。
あいつめ、全然尻尾を見せねえ。あ、比喩だぞ?奴は獣人族じゃないからな。

「いつになったら俺に殺されてくれるのかな、師匠?」

危ない目に何度も遭ったし、人を死なせ過ぎちまって指名手配されるしで踏んだり蹴ったりだ。ま、自業自得も入ってるけどな。
とにかく奴を殺すまで俺は死ねないからな。諦めずに頑張るとしましょう。






空振りをした俺が今どこにいるのかというと、王都に近い街だ。ここに奴が滞在していたっていう噂を聞いたからすっ飛んできたのに。ああ、文字通りすっ飛んでな。これは比喩じゃないぞ。本当に飛んできた。なーのに空振りだ。一暴れしたくなるもんだろ?
だからこの状況を見てもみんな納得してくれると思うんだ。俺は悪くない。

一面に広がる赤、赤、赤。
人だったものは物を言わぬ肉塊となり、そこにある。

一暴れってのはむしゃくしゃしてたし奴が泊まってたらしい宿舎の主人やら女将やら宿泊客やらをとりあえず皆殺しにしちゃった☆
俺っておっちゃめ~

子供は殺してないし、金品やらは盗んでない。良心的だろ?

とりあえず子供たちは連れ帰るか。うちは大所帯だから5、6人増えたところで変わらんだろ。
ひとかたまりになって震えている子供たちに近づいていくと、一番体の大きい子供が涙目になりながらも必死で俺を睨み付けていた。
おーおー怖いけど頑張ってるって感じだねえ。ま、そんなんしても無駄だけどなー。
そんな目線を無視してさらに近づく俺。
近づくたんびに端っこに寄ってぎゅうぎゅうでって、苦しくないんかお前ら?

「とりあえずお前らの親は俺が殺しちゃったしさ、お前ら俺のとこに来いよ。同じ年代の子供も居るし、寂しくない。衣食住は保障するからな~。」

そういって俺にできる限りの笑みを見せながら転移のために子供たちに触れようとしたら頑張って睨み付けてた子供が俺の手を振り払った。結構痛い。いい音したわ。パチンだってよ。ちょっといらっとした。

「触るな!どうせ連れて行ったって殺して僕らを焼肉にして食べちゃうんだろ!そうはいかないんだからな!!」

何の冗談かと思ったがどうも本気でそう思っているらしい。他の子供もそうだったようで次々と泣き出してしまった。声出すと殺されるって思ってるのか啜り泣きな奴らばっかだけどな。
俺はというと焼肉にして食べちゃうなんて発想面白すぎで笑いを堪えられなかった。吹き出すってこういうのだよな。久々にこんなに笑ったよ。突然笑い出した俺に子供たちはきょとん、だったけどな。

俺もこんな純粋な頃があったなー、子供の肉って柔らかいから焼肉にしたら美味そうだな冗談だけど、なんて思いながらも笑いすぎで涙が滲んだ目尻を拭いながら転移をするために俺を振り払った子供の頭に手を乗せる。一瞬びくっとしてたけどまだ頑張って睨み付けてたけどな。
子供たちはみんな引っ付きあってたから漏れなし。たぶん大丈夫だろ。さて転移転移。

疲れたから早く帰ってベッドにインしたいなー。
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