1 / 2
可愛い時期もありました。
しおりを挟むあの頃の俺は、完全に彼に心酔してしまっていた。文字通り心から酔っていたんだ。
この人のためならば死ねる。人も殺せる。彼が居なければ生きていけないとまで思っていた。
いや、実際に彼が居なければ俺は確実にここには居ないからその辺は事実なわけか?
まあ、そんな俺が今は彼を追い続け、殺そうとしてるわけなのだが。
所謂復讐というやつで。
復讐なんだから是非とも彼には苦しんで死んでもらいたい。それに大事な人が居るならそいつの前で殺してやりたい。
そのためにいろんなところへ足を運んで彼の情報を探っているわけなのだが、今回も空振りだ。
あいつめ、全然尻尾を見せねえ。あ、比喩だぞ?奴は獣人族じゃないからな。
「いつになったら俺に殺されてくれるのかな、師匠?」
危ない目に何度も遭ったし、人を死なせ過ぎちまって指名手配されるしで踏んだり蹴ったりだ。ま、自業自得も入ってるけどな。
とにかく奴を殺すまで俺は死ねないからな。諦めずに頑張るとしましょう。
空振りをした俺が今どこにいるのかというと、王都に近い街だ。ここに奴が滞在していたっていう噂を聞いたからすっ飛んできたのに。ああ、文字通りすっ飛んでな。これは比喩じゃないぞ。本当に飛んできた。なーのに空振りだ。一暴れしたくなるもんだろ?
だからこの状況を見てもみんな納得してくれると思うんだ。俺は悪くない。
一面に広がる赤、赤、赤。
人だったものは物を言わぬ肉塊となり、そこにある。
一暴れってのはむしゃくしゃしてたし奴が泊まってたらしい宿舎の主人やら女将やら宿泊客やらをとりあえず皆殺しにしちゃった☆
俺っておっちゃめ~
子供は殺してないし、金品やらは盗んでない。良心的だろ?
とりあえず子供たちは連れ帰るか。うちは大所帯だから5、6人増えたところで変わらんだろ。
ひとかたまりになって震えている子供たちに近づいていくと、一番体の大きい子供が涙目になりながらも必死で俺を睨み付けていた。
おーおー怖いけど頑張ってるって感じだねえ。ま、そんなんしても無駄だけどなー。
そんな目線を無視してさらに近づく俺。
近づくたんびに端っこに寄ってぎゅうぎゅうでって、苦しくないんかお前ら?
「とりあえずお前らの親は俺が殺しちゃったしさ、お前ら俺のとこに来いよ。同じ年代の子供も居るし、寂しくない。衣食住は保障するからな~。」
そういって俺にできる限りの笑みを見せながら転移のために子供たちに触れようとしたら頑張って睨み付けてた子供が俺の手を振り払った。結構痛い。いい音したわ。パチンだってよ。ちょっといらっとした。
「触るな!どうせ連れて行ったって殺して僕らを焼肉にして食べちゃうんだろ!そうはいかないんだからな!!」
何の冗談かと思ったがどうも本気でそう思っているらしい。他の子供もそうだったようで次々と泣き出してしまった。声出すと殺されるって思ってるのか啜り泣きな奴らばっかだけどな。
俺はというと焼肉にして食べちゃうなんて発想面白すぎで笑いを堪えられなかった。吹き出すってこういうのだよな。久々にこんなに笑ったよ。突然笑い出した俺に子供たちはきょとん、だったけどな。
俺もこんな純粋な頃があったなー、子供の肉って柔らかいから焼肉にしたら美味そうだな冗談だけど、なんて思いながらも笑いすぎで涙が滲んだ目尻を拭いながら転移をするために俺を振り払った子供の頭に手を乗せる。一瞬びくっとしてたけどまだ頑張って睨み付けてたけどな。
子供たちはみんな引っ付きあってたから漏れなし。たぶん大丈夫だろ。さて転移転移。
疲れたから早く帰ってベッドにインしたいなー。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる