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本編
第五話~国防派~
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開戦から一週間がたつ、秘匿第十三艦隊派遣部隊は母港である海崎港に帰投、全艦のメンテナンスと補給が行われ。乗組員には2日ほどの自由行動が許可された。秘匿第十三艦隊の第三遊撃艦隊昇格はひとまず取り消しになってしまった。
「黒羽皐月中佐入ります。」
「入れ。」
現在私は、艦隊司令室に呼び出されていた。今回の開戦やはり司令も何か思うとこでもあるのだろうか。そう思いながら見渡すと、扶桑大佐と樋川中佐、フレックス大佐が居ることに気がついた。仮称第十三艦隊所属の部隊指揮官クラス、さらに副艦隊司令が勢揃いとは。
「今日君達を呼んだのはあの海戦についての所見を聞くためだ。気になることがあれば言ってくれ。」
なるほど、司令はあの事に違和感を抱いているのか。
「では、二つ気になることがあります。」
と、前置きをして扶桑さんが話し始めた。
「まず、一つ目は敵戦力の数です。はっきり言って少なすぎます。あの艦隊は開戦劈頭に我が国に打撃を与えるために編成されたと考える場合、ナポーズド連邦国海軍の総力を挙げた部隊にはとても見えませんでしたから。二つ目は敵の対応の遅さです。とてもプランを組んで来たとは思えませんでした。」
なるほど、確かにそれはある。一つ目は艦隊の詳細を聞いたときは挑発行為をするための艦隊だと思っていた。とてもじゃないがあの艦隊で我が国に大打撃を与えられる訳がない。そう思っていたのなら自信過剰も良いとこだ。二つ目は他の部隊の報告書を読んだとき、敵艦隊があの時慌てていたのは確かに窺えた。扶桑さんと同じ意見だ。
「自分も同じ意見です。」
「そうか。」
ここで今まで黙っていた樋川中佐が口を開いた。
「自分は報告書しか読んでいませんが扶桑さんの意見と同意見です。」
しばらくの間沈黙が流れた。数秒程度して司令が口を開いた。
「私は統合軍司令本部に出張してくる。私がいない間はフレックスに一任する。」
「了解しました。」
「第45駆逐隊は警戒体制を維持。第44駆逐隊も補給が終わり次第警戒体制に移行せよ。」
「「了解」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
山城 文也、視点8時間後
司令室
「っとに、性に合わねぇ。」
近くで作業をしている副官に聞こえる程度の声で言った。
「貴方が指揮官の性に合っていないのは今更では?」
この副官殿はホント手厳しいねぇ。
「ブラウン大尉、例の書類の転送は?」
例の書類とは戦時における第十三艦隊編成要項である。
「完了してます。」
「まぁ、今回は承認されるだろうなぁ。」
そう言いながらニヤリと笑う。
「はぁ」とため息をつかれた、悲しい。
「関係者会議のセッティングは君に一任する。」
「了解しました。」
「嶋﨑大尉の憲兵隊は外で待機よろしく。」
「あっはい分かりました。」
とハンドガンの手入れをしていた嶋﨑が顔を上げて言った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
とうとうやって来てしまいました、統合軍作戦司令本部、今すぐ帰りたい。関係者会議まで後2時間はある、どうしたものか。
「よう、山城。」
すると後ろから背中を叩かれた。後ろを振り返ると国防大学の同期、第二艦隊司令の伊勢 日向が、いた。
「まぁ、なんだ第三即応艦隊の件は残念だったな、まぁなんだカフェでも行くか?」
「お陰で今も書類上は連合艦隊第三分遣艦隊司令で身動きとれねぇよ。カフェはお前持ちなら」
「分かってる分かってる。」
金が無いわけではない。こういう時は誘った方が払うのが暗黙の了解なのである。
「で?どうしてこんなとこまで?出張か?」
「カフェで話すよ。」
その後、カフェの席に着いてからすぐに
「で、結局何でここにいるんだよ。」
「戦時における第十三艦隊編成の提案その関係者会議。」
「なるほど、やっぱり諦めてなかったか。」
「戦時になったからな。融和派の力が弱くなったから平時より国防派の人間が動きやすくなった。お前だってそうだろう?」
「まぁ、追加戦力組み込みの要請があっさり通ったからな、ビックリしたよ。」
「・・・十二年前の対ナポーズド戦略の第十三艦隊第十四艦隊編成計画、あれを潰したのは融和派のトップだった十崎誠太郎だ。あいつはもう居なくなった。さらに今は戦時だ適材適所に戦力を投入して適切な運用体制を整える。何が悪い。確かに南サファイア海の情勢は油断できない。だからといって今本土からさらに戦力を移すわけにはいかんだろ」
「その適材適所が今は難しいんだよなぁ。」
「南サファイア海、ナポレン方面、さらにシルバーダスト共和国方面大変だな。」
「第六、第十一、第一即応さらに遠洋打撃艦隊は南サファイア海、第九はシルバーダストから動かせない。これに関してはしょうがないだろうな」
「遠洋打撃艦隊ねぇ。」
第一と第二は遠洋打撃艦隊編成のために戦力を引っこ抜かれたのだ、やはり何か思うところがあるのだろう。だがあえてここは聞いておこう。
「どうした?」
「分かってるくせによく言うよ。」
日向は「はぁ」とため息をついてコーヒーを啜る。
「俺もミラーさんも遠洋打撃艦隊編成の時に手塩に掛けて育てた部下を一気に持ってかれたからな良い気はしてないさ。新兵訓練に熟練兵の配置転換、艦隊の練度向上。お陰でようやく戦闘配備ができる。」
周りを見渡して特に人が居ないことを確認してから小声で日向に今俺が考えているとこを話した。
「今回の戦争、不謹慎な話だが融和派の力を大幅に削ぐチャンスだこれをものにしないわけにはいかない。」
「何か考えでもあるのか?」
それがどういうことなのか理解している日向はこちらも小声で聞いてきた。
「あぁ、今融和派の上層連中のスキャンダルを調べあげてるとこだ。国家安全保証情報局の連中も一緒だよ。国家第一主義者の過激派連中は動向掴めてないがね。今回は融和派にターゲットを絞る。」
「へぇ?国安もか。だがそんな話聞いたことなかったぞ」
「俺の個人的なツテを使ってるからな知ってるやつは現時点でお前位だよ。」
「なるほど。」
と一応は納得してくれたようだ。
「一ついいか?」
「なんだ?」
俺が質問しようとすると珍しいとでも言うような声を出された。
「永野さんをここ一ヶ月で見てないか?」
「?そういや見てないな、それがどうした?」
「いや、なんでもない。」
なるほどやはりか。丁度良いし今回の戦争、他の司令官の私見は聞いてみたいと思っていた。聞いてみるか
「話は変わるが今回のFNUCの動きどう思う?」
「そうだな、まぁプロスティどころかフォルテッツァもナポーズドに足並み揃えてるとは言いがたい程度には慌てていたというとこだな。」
日向は一度考える素振りをしてそう言った。なるほど、まぁそんなもんだろう。あの宣戦布告の時にFNUC各国の対応があまりにも後手後手だった。可能性として通告していなかった、ということだがしない理由が見つからない。だが状況的にそれしか今は考えられない。本当にどう言うことなのか検討がつかない。と考えていると日向がポツリと呟いた。
「FNUCとOSMPが総力戦ねぇ」
シミュレーションでしか経験してこなかった状況が今現在繰り広げられている。
「NSGACのスパーデマルテロ連邦は我が国との相互独立保証条約に基づいて参戦。IPのノイターゼ帝国はFNUC側で参戦。EAMO加盟国は今のところ動きは無し。戦線拡大の可能性は十分あり得る。相当だよ。」
一瞬空気がお通夜のようになってしまった。話題を探そうとしていると腕時計が目に入った。
「俺はそろそろ行くよ。」
「あぁ、うまく行くと良いな。」
「あぁ」と返事をしてラウンジを後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
結果から言うと第十三艦隊の編成案は通ることになった。平時だったら融和派の反対で通らなかったであろう案だが「今は戦時」という殺し文句のお陰でろくに反対意見も出なかった。これでようやく逐一連合艦隊経由で指揮権委譲要請をせずにすまなくなる。これで少しは楽になった。しかもある程度は艦隊司令の裁量で今まで以上に楽に駆逐隊等を動かせるようになった。さらに今回の開戦で融和派の面子丸つぶれのとこに今回の国防派に対する完敗。融和派は軍内でさらに信用を無くすことになっただろう。
「♫~」
こっちは今まで散々邪魔されてきた、良い気味だ。という気持ちで海崎港に戻るまで上機嫌だった。
「黒羽皐月中佐入ります。」
「入れ。」
現在私は、艦隊司令室に呼び出されていた。今回の開戦やはり司令も何か思うとこでもあるのだろうか。そう思いながら見渡すと、扶桑大佐と樋川中佐、フレックス大佐が居ることに気がついた。仮称第十三艦隊所属の部隊指揮官クラス、さらに副艦隊司令が勢揃いとは。
「今日君達を呼んだのはあの海戦についての所見を聞くためだ。気になることがあれば言ってくれ。」
なるほど、司令はあの事に違和感を抱いているのか。
「では、二つ気になることがあります。」
と、前置きをして扶桑さんが話し始めた。
「まず、一つ目は敵戦力の数です。はっきり言って少なすぎます。あの艦隊は開戦劈頭に我が国に打撃を与えるために編成されたと考える場合、ナポーズド連邦国海軍の総力を挙げた部隊にはとても見えませんでしたから。二つ目は敵の対応の遅さです。とてもプランを組んで来たとは思えませんでした。」
なるほど、確かにそれはある。一つ目は艦隊の詳細を聞いたときは挑発行為をするための艦隊だと思っていた。とてもじゃないがあの艦隊で我が国に大打撃を与えられる訳がない。そう思っていたのなら自信過剰も良いとこだ。二つ目は他の部隊の報告書を読んだとき、敵艦隊があの時慌てていたのは確かに窺えた。扶桑さんと同じ意見だ。
「自分も同じ意見です。」
「そうか。」
ここで今まで黙っていた樋川中佐が口を開いた。
「自分は報告書しか読んでいませんが扶桑さんの意見と同意見です。」
しばらくの間沈黙が流れた。数秒程度して司令が口を開いた。
「私は統合軍司令本部に出張してくる。私がいない間はフレックスに一任する。」
「了解しました。」
「第45駆逐隊は警戒体制を維持。第44駆逐隊も補給が終わり次第警戒体制に移行せよ。」
「「了解」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
山城 文也、視点8時間後
司令室
「っとに、性に合わねぇ。」
近くで作業をしている副官に聞こえる程度の声で言った。
「貴方が指揮官の性に合っていないのは今更では?」
この副官殿はホント手厳しいねぇ。
「ブラウン大尉、例の書類の転送は?」
例の書類とは戦時における第十三艦隊編成要項である。
「完了してます。」
「まぁ、今回は承認されるだろうなぁ。」
そう言いながらニヤリと笑う。
「はぁ」とため息をつかれた、悲しい。
「関係者会議のセッティングは君に一任する。」
「了解しました。」
「嶋﨑大尉の憲兵隊は外で待機よろしく。」
「あっはい分かりました。」
とハンドガンの手入れをしていた嶋﨑が顔を上げて言った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
とうとうやって来てしまいました、統合軍作戦司令本部、今すぐ帰りたい。関係者会議まで後2時間はある、どうしたものか。
「よう、山城。」
すると後ろから背中を叩かれた。後ろを振り返ると国防大学の同期、第二艦隊司令の伊勢 日向が、いた。
「まぁ、なんだ第三即応艦隊の件は残念だったな、まぁなんだカフェでも行くか?」
「お陰で今も書類上は連合艦隊第三分遣艦隊司令で身動きとれねぇよ。カフェはお前持ちなら」
「分かってる分かってる。」
金が無いわけではない。こういう時は誘った方が払うのが暗黙の了解なのである。
「で?どうしてこんなとこまで?出張か?」
「カフェで話すよ。」
その後、カフェの席に着いてからすぐに
「で、結局何でここにいるんだよ。」
「戦時における第十三艦隊編成の提案その関係者会議。」
「なるほど、やっぱり諦めてなかったか。」
「戦時になったからな。融和派の力が弱くなったから平時より国防派の人間が動きやすくなった。お前だってそうだろう?」
「まぁ、追加戦力組み込みの要請があっさり通ったからな、ビックリしたよ。」
「・・・十二年前の対ナポーズド戦略の第十三艦隊第十四艦隊編成計画、あれを潰したのは融和派のトップだった十崎誠太郎だ。あいつはもう居なくなった。さらに今は戦時だ適材適所に戦力を投入して適切な運用体制を整える。何が悪い。確かに南サファイア海の情勢は油断できない。だからといって今本土からさらに戦力を移すわけにはいかんだろ」
「その適材適所が今は難しいんだよなぁ。」
「南サファイア海、ナポレン方面、さらにシルバーダスト共和国方面大変だな。」
「第六、第十一、第一即応さらに遠洋打撃艦隊は南サファイア海、第九はシルバーダストから動かせない。これに関してはしょうがないだろうな」
「遠洋打撃艦隊ねぇ。」
第一と第二は遠洋打撃艦隊編成のために戦力を引っこ抜かれたのだ、やはり何か思うところがあるのだろう。だがあえてここは聞いておこう。
「どうした?」
「分かってるくせによく言うよ。」
日向は「はぁ」とため息をついてコーヒーを啜る。
「俺もミラーさんも遠洋打撃艦隊編成の時に手塩に掛けて育てた部下を一気に持ってかれたからな良い気はしてないさ。新兵訓練に熟練兵の配置転換、艦隊の練度向上。お陰でようやく戦闘配備ができる。」
周りを見渡して特に人が居ないことを確認してから小声で日向に今俺が考えているとこを話した。
「今回の戦争、不謹慎な話だが融和派の力を大幅に削ぐチャンスだこれをものにしないわけにはいかない。」
「何か考えでもあるのか?」
それがどういうことなのか理解している日向はこちらも小声で聞いてきた。
「あぁ、今融和派の上層連中のスキャンダルを調べあげてるとこだ。国家安全保証情報局の連中も一緒だよ。国家第一主義者の過激派連中は動向掴めてないがね。今回は融和派にターゲットを絞る。」
「へぇ?国安もか。だがそんな話聞いたことなかったぞ」
「俺の個人的なツテを使ってるからな知ってるやつは現時点でお前位だよ。」
「なるほど。」
と一応は納得してくれたようだ。
「一ついいか?」
「なんだ?」
俺が質問しようとすると珍しいとでも言うような声を出された。
「永野さんをここ一ヶ月で見てないか?」
「?そういや見てないな、それがどうした?」
「いや、なんでもない。」
なるほどやはりか。丁度良いし今回の戦争、他の司令官の私見は聞いてみたいと思っていた。聞いてみるか
「話は変わるが今回のFNUCの動きどう思う?」
「そうだな、まぁプロスティどころかフォルテッツァもナポーズドに足並み揃えてるとは言いがたい程度には慌てていたというとこだな。」
日向は一度考える素振りをしてそう言った。なるほど、まぁそんなもんだろう。あの宣戦布告の時にFNUC各国の対応があまりにも後手後手だった。可能性として通告していなかった、ということだがしない理由が見つからない。だが状況的にそれしか今は考えられない。本当にどう言うことなのか検討がつかない。と考えていると日向がポツリと呟いた。
「FNUCとOSMPが総力戦ねぇ」
シミュレーションでしか経験してこなかった状況が今現在繰り広げられている。
「NSGACのスパーデマルテロ連邦は我が国との相互独立保証条約に基づいて参戦。IPのノイターゼ帝国はFNUC側で参戦。EAMO加盟国は今のところ動きは無し。戦線拡大の可能性は十分あり得る。相当だよ。」
一瞬空気がお通夜のようになってしまった。話題を探そうとしていると腕時計が目に入った。
「俺はそろそろ行くよ。」
「あぁ、うまく行くと良いな。」
「あぁ」と返事をしてラウンジを後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
結果から言うと第十三艦隊の編成案は通ることになった。平時だったら融和派の反対で通らなかったであろう案だが「今は戦時」という殺し文句のお陰でろくに反対意見も出なかった。これでようやく逐一連合艦隊経由で指揮権委譲要請をせずにすまなくなる。これで少しは楽になった。しかもある程度は艦隊司令の裁量で今まで以上に楽に駆逐隊等を動かせるようになった。さらに今回の開戦で融和派の面子丸つぶれのとこに今回の国防派に対する完敗。融和派は軍内でさらに信用を無くすことになっただろう。
「♫~」
こっちは今まで散々邪魔されてきた、良い気味だ。という気持ちで海崎港に戻るまで上機嫌だった。
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