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初遭遇
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「大丈夫ですかぁ?」
菖蒲の問いかけに両手で口を塞ぎ、首を横に振るのみ。
リディアは限界であった。
地上に降りた後、ダッシュで森の奥へと入っていく。
「……ぇ……うぇぇ……」
近くにある小川のせせらぎに紛れて何か聞こえてくるが、リディアの名誉のために深く触れない方がいいだろう。
「ぎゃああああああ!」
しばらくして、フラフラになりながら戻ってきたリディアの介抱をしていると、川の下流から悲鳴が上がる。
菖蒲の感知能力で敵意や殺気などは感じなかったため、二人でそこへ向かう。
緊急事態だとマズいので、低速で飛んでもらって。
空から確認すると、そう離れていない場所に動く影が見え、リディアが目を凝らす。
「あれは……ゴブリンじゃ!」
どうやら魔族の一種族であったらしく、近くへと降りていく。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「まったく……なんで、こんな」
「あのぉ、ちょっといいですかぁ?」
「んあ? って、ぎゃああ! 空飛ぶ人間!?」
その土気色をした小人――ゴブリンへ、敵である人間が急に声を掛けたのがよろしくなかったのか、驚かせてしまったようだ。
必死で逃げようとしている。
「待つのじゃ! 妾は魔王リディアじゃ!」
このままにする訳にいかないと、リディアも声を張り上げて呼び止める。
すると相手も立ち止まり、二人を見やる。
一応は襲われても大丈夫なように構えながらではあるが、話を聞く体勢を取ってくれた。
「リ、リディア様……? なんで、こんなところにってか、戦争は?」
まだ戦いに勝って間もない上、人もいないような場所では情報も届いていないのも当たり前で、状況が分かっていないらしい。
事情について、ある程度はしょりながら説明を行い、用件を伝える。
「つまり、その人達のおかげで勝利したから、ウチらに戻って来いってことっすか?」
「うむ」
肯定すると、ゴブリンは頭を搔きながら唸り、さすがに一人だけで決められないからと、村へと案内してもらう事になった。
魔王城から離れて、あまり日も経っていないはずだが、村を作っているゴブリン達に少し驚きながら後を付いていく。
村への道すがら、さっきの悲鳴は何だったのかと尋ねた。
「どこの誰だか知らないんですがね、上流からゲ〇が流れてきたんですよ」
その話に、二人の動きが止まる。
「まったく、何考えてんだって話ですよ。上流から〇ロが流れてきた方の身になってみろって思いません? あんな汚いもんを川に流すとか、犯罪ですよ犯罪」
菖蒲がリディアを見ると、顔がトマトのように真っ赤で涙目になり、こぶしを握り締めて、全身をプルプルと震わせている。
「あ、あのぉ……」
止めようとする菖蒲に気付かず、ゴブリンは続ける。
「それに、くっせえのなんのってありゃしない。本当、今日は厄日――」
ゴブリンがそこまで言った時だった。
リディアが一足飛びに懐に飛び込み、片足を前に出しながら爪先を内側に捻じり込む。
その勢いを殺さず足首へ、膝へ、腰へと繋げる。
下半身を回転させて得たエネルギーをさらに上半身へと伝達し、強く握りしめた拳を思い切り振りぬく!
「のじゃあぁぁ!!」
「ぐふぅぅ!?」
それはそれは見事な肝臓打ちだったそうな。
菖蒲の問いかけに両手で口を塞ぎ、首を横に振るのみ。
リディアは限界であった。
地上に降りた後、ダッシュで森の奥へと入っていく。
「……ぇ……うぇぇ……」
近くにある小川のせせらぎに紛れて何か聞こえてくるが、リディアの名誉のために深く触れない方がいいだろう。
「ぎゃああああああ!」
しばらくして、フラフラになりながら戻ってきたリディアの介抱をしていると、川の下流から悲鳴が上がる。
菖蒲の感知能力で敵意や殺気などは感じなかったため、二人でそこへ向かう。
緊急事態だとマズいので、低速で飛んでもらって。
空から確認すると、そう離れていない場所に動く影が見え、リディアが目を凝らす。
「あれは……ゴブリンじゃ!」
どうやら魔族の一種族であったらしく、近くへと降りていく。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「まったく……なんで、こんな」
「あのぉ、ちょっといいですかぁ?」
「んあ? って、ぎゃああ! 空飛ぶ人間!?」
その土気色をした小人――ゴブリンへ、敵である人間が急に声を掛けたのがよろしくなかったのか、驚かせてしまったようだ。
必死で逃げようとしている。
「待つのじゃ! 妾は魔王リディアじゃ!」
このままにする訳にいかないと、リディアも声を張り上げて呼び止める。
すると相手も立ち止まり、二人を見やる。
一応は襲われても大丈夫なように構えながらではあるが、話を聞く体勢を取ってくれた。
「リ、リディア様……? なんで、こんなところにってか、戦争は?」
まだ戦いに勝って間もない上、人もいないような場所では情報も届いていないのも当たり前で、状況が分かっていないらしい。
事情について、ある程度はしょりながら説明を行い、用件を伝える。
「つまり、その人達のおかげで勝利したから、ウチらに戻って来いってことっすか?」
「うむ」
肯定すると、ゴブリンは頭を搔きながら唸り、さすがに一人だけで決められないからと、村へと案内してもらう事になった。
魔王城から離れて、あまり日も経っていないはずだが、村を作っているゴブリン達に少し驚きながら後を付いていく。
村への道すがら、さっきの悲鳴は何だったのかと尋ねた。
「どこの誰だか知らないんですがね、上流からゲ〇が流れてきたんですよ」
その話に、二人の動きが止まる。
「まったく、何考えてんだって話ですよ。上流から〇ロが流れてきた方の身になってみろって思いません? あんな汚いもんを川に流すとか、犯罪ですよ犯罪」
菖蒲がリディアを見ると、顔がトマトのように真っ赤で涙目になり、こぶしを握り締めて、全身をプルプルと震わせている。
「あ、あのぉ……」
止めようとする菖蒲に気付かず、ゴブリンは続ける。
「それに、くっせえのなんのってありゃしない。本当、今日は厄日――」
ゴブリンがそこまで言った時だった。
リディアが一足飛びに懐に飛び込み、片足を前に出しながら爪先を内側に捻じり込む。
その勢いを殺さず足首へ、膝へ、腰へと繋げる。
下半身を回転させて得たエネルギーをさらに上半身へと伝達し、強く握りしめた拳を思い切り振りぬく!
「のじゃあぁぁ!!」
「ぐふぅぅ!?」
それはそれは見事な肝臓打ちだったそうな。
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