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まだ先の話
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リディアは目を覚ます。
実は瑞希達は、自分の意志で帰れるという旨を聞いた翌日。
「むぅ……」
寝ぼけ眼を擦りながら、シャラの元へと向かう。
昨日の時点でシャラに相談はしていたのだが、やはり恩人にはそれ相応の礼をしなければいけないと、準備を済ませる。
五人を喜んで見送ると決めたのだ。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
今は二人で宝物庫の中を物色している最中。
「何か、めぼしい物でも残っていればよいのじゃが」
残っているのは大きな絵画や、そこまで金銭価値の高くない物ばかり。
戦争が始まってから、資金調達のために売り払ったり、外に出て行った魔族の中でも信頼に厚かった者に幾ばくかを渡したりしたためである。
どうせ滅びるくらいならと大盤振る舞いした結果がこれだ。
「こんな事なら、少しは残しておくべきでしたね」
「今さら言っても、後の祭りなのじゃ」
それからは、あれでもないこれでもないと探し回るが、大した品は見つからず。
仕方なしに宝物庫を後にした。
二人は肩を落としながら朝食へと顔を出す。
「おはようございますぅ。 ……どうかしましたかぁ?」
暗い顔をしているのがわかったんだろう。
小首を傾げながら尋ねられた。
「も」
「も?」
「申し訳ないのじゃあ!」
「申し訳ありません!」
凄い勢いで頭を下げるリディア。
今にも土下座しそうな二人に、顔を見合わせる五人。
「帰ってしまうというのに、碌な手土産すら渡せないのじゃ……」
「あぁ、誰か帰るのか」
そう言って、巡は他の面子を見回すが、全員が同じリアクションを取っている。
次に全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「ねぇ。誰から帰るって聞いたのよ?」
「だって、お主等は帰る手段があるのじゃろ?」
リディアとシャラは思い違いをしていた。
確かに方法はあるが、どれだけの時間がかかるか不明。また、道中に敵が出たり、別の異世界に跳んだりするかもしれないし、安全な確証はない。この世界の召喚魔法で喚び出されたなら、同じ方法で帰るのが一番安全。
という結論に達し、今しばらくは様子見する気だと説明を受けるリディア達。
「大体、帰る気があるなら、とっくに帰ってる」
「それもそうですね」
安堵感から、ため息を漏らすシャラ。
最近、何かにつけて心の平穏が乱されているので、早急に対策を打たねばと考える。
リディアは、そんな事は知らされていなかったため、怒ったように少し頬を膨らませるリディアの頭を撫でる瑞希。
ひとまずは空腹をどうにかしようと、朝食を促す。
実は瑞希達は、自分の意志で帰れるという旨を聞いた翌日。
「むぅ……」
寝ぼけ眼を擦りながら、シャラの元へと向かう。
昨日の時点でシャラに相談はしていたのだが、やはり恩人にはそれ相応の礼をしなければいけないと、準備を済ませる。
五人を喜んで見送ると決めたのだ。
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今は二人で宝物庫の中を物色している最中。
「何か、めぼしい物でも残っていればよいのじゃが」
残っているのは大きな絵画や、そこまで金銭価値の高くない物ばかり。
戦争が始まってから、資金調達のために売り払ったり、外に出て行った魔族の中でも信頼に厚かった者に幾ばくかを渡したりしたためである。
どうせ滅びるくらいならと大盤振る舞いした結果がこれだ。
「こんな事なら、少しは残しておくべきでしたね」
「今さら言っても、後の祭りなのじゃ」
それからは、あれでもないこれでもないと探し回るが、大した品は見つからず。
仕方なしに宝物庫を後にした。
二人は肩を落としながら朝食へと顔を出す。
「おはようございますぅ。 ……どうかしましたかぁ?」
暗い顔をしているのがわかったんだろう。
小首を傾げながら尋ねられた。
「も」
「も?」
「申し訳ないのじゃあ!」
「申し訳ありません!」
凄い勢いで頭を下げるリディア。
今にも土下座しそうな二人に、顔を見合わせる五人。
「帰ってしまうというのに、碌な手土産すら渡せないのじゃ……」
「あぁ、誰か帰るのか」
そう言って、巡は他の面子を見回すが、全員が同じリアクションを取っている。
次に全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「ねぇ。誰から帰るって聞いたのよ?」
「だって、お主等は帰る手段があるのじゃろ?」
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確かに方法はあるが、どれだけの時間がかかるか不明。また、道中に敵が出たり、別の異世界に跳んだりするかもしれないし、安全な確証はない。この世界の召喚魔法で喚び出されたなら、同じ方法で帰るのが一番安全。
という結論に達し、今しばらくは様子見する気だと説明を受けるリディア達。
「大体、帰る気があるなら、とっくに帰ってる」
「それもそうですね」
安堵感から、ため息を漏らすシャラ。
最近、何かにつけて心の平穏が乱されているので、早急に対策を打たねばと考える。
リディアは、そんな事は知らされていなかったため、怒ったように少し頬を膨らませるリディアの頭を撫でる瑞希。
ひとまずは空腹をどうにかしようと、朝食を促す。
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