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人間軍vs字無 巡 その2
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巡と人間軍の間に現れたピエロは、口を止める事なく続ける。
「おんやぁ? これまた大勢で挑んで頂きありがとうごっざいまぁす♪ では難易度easyの鬼ごっこ始めましょうかね」
ピエロが指を鳴らすと、大量に地面から出てくる影。
緑色をし、眼はギョロッと見開いた1mほどの醜悪な化け物。
「ルールはかぁんたん。十分間、その"ポーン"から逃げ切ってくっださっいね♢ ちなみに触れると――」
「ふんっ!」
ピエロの説明途中に一般兵が化け物を斬り殺し、大量の返り血を浴びる。
「な、なんだ! 弱いじゃぁぁう゛ぁぁぁぁ――」
そこから先は言葉が上手く言えてなかった。なにせ返り血を浴びた箇所が、まるで熱したチーズのように溶けていたのだから。
思わぬ光景に上がる悲鳴、混乱する兵士達。
見えなかった人間にも恐怖は伝播していく。
「んもぅ! ルールくらいちゃぁぁぁんと聞かなきゃダァメ。ちなみに触れるとぉ――溶けちゃいますよ? って今し方、見た通りなんですけどね、アハハハハハハハハハハ!」
ピエロが笑うと、ポーンと呼ばれた化け物も不快な金切り声を上げる。おそらく笑っているのだろう。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
巡が起動したのは、周りの人間を巻き込んでデスゲームへと強制参加させ、悪夢へと誘うアプリだ。
それと同時に、別のゲームで得たスキルを発動する。
”近接攻撃完全回避”
スキルの効果は名前通りで、条件も必要になってくるが、体当たりや捕まえてこようとするだけのポーンには無敵となるスキル。
先ほどのように体液が飛んできても、攻撃とみなして身体をすり抜けるという優れものだ。
"悪夢"、"END of Moon"、"ギャンブル・ツアー"、"死ぬか殺すか"
都合、四つものデスゲームをクリアした男。
――それが字無 巡の正体である。
「それではゲームゥゥゥ……スターット!」
ピエロの宣言とともに化け物達は誰彼の区別なく一斉に襲い掛かる。
恐怖で足が震え、腰を抜かし動けない者。
迫る大群に怯え逃げ出す者。それよりも先に彼方へと走り去っている者。
魔法による障壁で自分や味方を守ろうとする者、近くにいた仲間を突き飛ばし囮にする者。
今まで見た事が無い化け物に襲われる。それだけで戦意が下がるというのに、もっと恐ろしいのは……
「いぎひぃぃぃぃぃ!」
「ふひ、ふひひ! 俺の体ぁどうなってんだぁ!?」
体が溶けても死んではいない事だった。
苦痛だけを味わう体へ変化させられ、この短時間で狂う者も現れている。
それは正に悪夢だった。
「おんやぁ? これまた大勢で挑んで頂きありがとうごっざいまぁす♪ では難易度easyの鬼ごっこ始めましょうかね」
ピエロが指を鳴らすと、大量に地面から出てくる影。
緑色をし、眼はギョロッと見開いた1mほどの醜悪な化け物。
「ルールはかぁんたん。十分間、その"ポーン"から逃げ切ってくっださっいね♢ ちなみに触れると――」
「ふんっ!」
ピエロの説明途中に一般兵が化け物を斬り殺し、大量の返り血を浴びる。
「な、なんだ! 弱いじゃぁぁう゛ぁぁぁぁ――」
そこから先は言葉が上手く言えてなかった。なにせ返り血を浴びた箇所が、まるで熱したチーズのように溶けていたのだから。
思わぬ光景に上がる悲鳴、混乱する兵士達。
見えなかった人間にも恐怖は伝播していく。
「んもぅ! ルールくらいちゃぁぁぁんと聞かなきゃダァメ。ちなみに触れるとぉ――溶けちゃいますよ? って今し方、見た通りなんですけどね、アハハハハハハハハハハ!」
ピエロが笑うと、ポーンと呼ばれた化け物も不快な金切り声を上げる。おそらく笑っているのだろう。
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巡が起動したのは、周りの人間を巻き込んでデスゲームへと強制参加させ、悪夢へと誘うアプリだ。
それと同時に、別のゲームで得たスキルを発動する。
”近接攻撃完全回避”
スキルの効果は名前通りで、条件も必要になってくるが、体当たりや捕まえてこようとするだけのポーンには無敵となるスキル。
先ほどのように体液が飛んできても、攻撃とみなして身体をすり抜けるという優れものだ。
"悪夢"、"END of Moon"、"ギャンブル・ツアー"、"死ぬか殺すか"
都合、四つものデスゲームをクリアした男。
――それが字無 巡の正体である。
「それではゲームゥゥゥ……スターット!」
ピエロの宣言とともに化け物達は誰彼の区別なく一斉に襲い掛かる。
恐怖で足が震え、腰を抜かし動けない者。
迫る大群に怯え逃げ出す者。それよりも先に彼方へと走り去っている者。
魔法による障壁で自分や味方を守ろうとする者、近くにいた仲間を突き飛ばし囮にする者。
今まで見た事が無い化け物に襲われる。それだけで戦意が下がるというのに、もっと恐ろしいのは……
「いぎひぃぃぃぃぃ!」
「ふひ、ふひひ! 俺の体ぁどうなってんだぁ!?」
体が溶けても死んではいない事だった。
苦痛だけを味わう体へ変化させられ、この短時間で狂う者も現れている。
それは正に悪夢だった。
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