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第6章
第18話
しおりを挟む「はい。今回の記録は問題ありません。
しかし決闘とは、最近あまりやらない方が多い中、面白いことになりましたね」
玉が飛んで行った方に行ってみたらギルドの受付で、並ぶ列で自分たちの順番でアマは記録された玉と決闘に至った経緯を受付にて話したところ、受付嬢は玉の確認したあと楽しそうにそう言ったのだった。
「しかし、そちらの方がミーツさんですか、記録の映像ですと、仮面を付けてなかったようですが、これからそれを装着されるのですか?」
そう俺は、帰りのエレベーターの中でミーツとして活動する時だけ仮面を装着することにしたのだ。その時は仮面を装着しているため、SSランクのギルド証を使うことになり、それ以外の活動する時などは仮面を外し、名前は元の名前に一文字付け加えた『ミツルギ』として活動することにした。
もっと捻りを効かせて全く違う名前にしようかと思ったものの、全く違う名前にした場合、俺が反応できなくなりそうだから元の名前を元に使うことにしたのだった。
こうした二つの名前で使い分けるのも、ギルドマスターの提案であまり顔が知られたら面倒になることを思い出し、折角の二つのギルド証を持っていることでこうしたのだ。
一応、決闘する時は相手に顔を見せてからするつもりだと受付嬢に話したところ、仮面のままでした方が話題にもなるし、勝ったあとの事を考えると仮面は装着した方がいいとのこと。
対戦相手と相手の担当の受付嬢との話し合いをこれからやって行く上で、正式な決闘の日程について後日伝えるとかで、今日このあと決闘するわけではないのかと少々残念な結果となったものの、決闘にて賭ける物は人や物じゃなくてもいいそうで、相手の同意があればなんでもいいそうだ。
アマとギルド証を提出後に俺は仮面装着時のSSランクにポイントを加算され、今日の所は彼女と共に宿に帰って、今回の出来事を仲間たちに話した。
「アミに了承を取らずに勝手に賭けの対象にして済まないと思っている。だけど、俺は今回の決闘について考えていることがあって、負けるつもりは無いけど、もしもという時があった時は覚悟しておいて欲しい」
「いえ、全然良いです!むしろ私のためにミーツさんが戦ってくれると思ったら嬉しいです。
コテンパンに叩きのして下さい」
「そうねえ、アミちゃんの言う通りよミーツちゃん。あの子はいずれ、あたしが決闘して心身共に再起不能にしてあげようと思っていたのよ」
「俺がその場にいればぶん殴っていたのかも知れん。大事な妹たちを自分のハーレムの一員にしてやるとかふざけてやがる!ミーツさん、俺もその決闘に参加するぜ」
宿では俺の話を聴いた仲間たちが一緒に怒ってくれて、ヤスドルは我関せずといった感じで、黙々と俺が想像魔法で出したカレーを頬張っており、士郎は子供を寝かしに行っていて、シオンはまだ帰ってきてなかった。
「それにしても、ミーツちゃんは仮面を着けてないときはミツルギと名乗るのね。
外に出てるときはいえ、あたしたちと一緒にいる時も仮面ってなんだか淋しいわ」
「でも、ダンク姉さま。ミーツさんはどんな姿でも素敵ですから、私は全然構いません。
宿とか、私たちだけの時は外してもらえるんですよね?」
「アミ、時と場合によっては宿でも着けたままだったりするよ。姐さんも、それは仕方ないことなんだ。俺は高難易度のダンジョンも踏破しなきゃいけないから、下手に顔がバレるわけにはいかないと思うからさ。
それに今回の決闘もなんだか、大袈裟になってきている気がして」
「そりゃそうよ!数年に一度の武闘技祭でない限り、冒険者同士が戦うなんてこと滅多にないんだから!決闘もリスクを負ってまで戦う冒険者も少なくなっちゃったし、今回のミーツちゃんの決闘も、ギルドが全面的に仕切ると思うわ」
俺としては普通にひっそりと、彼らと戦って決着を着けるのだと思っていただけに、やや大ごとになっていることに頭が痛くなってきていた。
「それで、ミーツちゃんは相手に要求する物は決めたの?」
「ああ、それについてはもう決めてあるよ。
別に物じゃなくても良いって話らしいし、今回の決闘については先にネタバレしたくないし、当日まで楽しみにしててよ。
相手が俺の要望を聞き入れたらの話だけどね。
それでさ、今回は勿論、俺一人で戦うつもりだからさ」
「なにいい!俺の妹たちが賭けられているんだぞ!なんであんた一人で戦うんだ!」
俺が一人で戦うと言った瞬間、シーバスが反論してきたものの、それを無視した姐さんが俺に質問して来た。
「もちろんそれはいいんだけど、相手がチーム戦を希望してきたらどうするのかしら」
「それでも一人で戦うつもりだよ。彼らがギルド地下のダンジョンで戦っていたのを少しだけだけど見た感じだと、大したことないなってのが感想だ。たかがエルダーオークごときに、あれだけ時間を掛けるんだ。多分、本気で戦わなくても普通に勝てると思う」
姐さんの質問にそう答えたら、シーバス兄妹と姐さんは驚いた表情をした。
「ミーツさん、アンタ一体どれほど強いんだ。
アイツらはもう少しでSSSランクになれるような奴らだぞ」
「ミーツさん素敵過ぎます~!」
「もうアミうるさい!あたしは既におじさんの今の強さを見たけど、あたしたちと会った時から強かったから、あたしなんかじゃおじさんの実力は測れないかな」
「ミーツちゃん、今度あたしと本気で手合わせしてくれないかしら。
今のミーツちゃんの実力が気になるわ。
既にあたしより強いのはミーツちゃんの雰囲気で分かるけど、どれほどの差があるか知りたいわ。
勿論、決闘後でいいからお願いね。
あたしは、あの子一人くらいだったらあたしでも余裕で勝てるけど、チーム戦となったら勝てはすると思うけど、かなり苦戦はすると思うわ」
そう淡々と言う姐さんの言葉に、姐さんでもそんなに自信がないと言うほど、彼らは実力者なのかと衝撃を受けたものの、思い出せば思い出すほど、大したことなかったような記憶しか思い出せない。
だが、戦い方からして魔物相手でもクソ野郎ってことは分かった。
俺たちが決闘について話をしたあと、彼らが直ぐに戦った魔物エルダーオークだった魔物に対して、手足の拘束を仲間たちの魔法によって身動き出来ない状況にさせたあとに、一思いで倒さずにジワジワと傷を付けて苦痛に泣き叫ぶ魔物の声がダンジョン内に響いていたのを思い出す。
とりあえずのところ、仲間たちとの話し合いは終了し、自室にて幸せそうな表情で眠るヤスドルの隣のベッドで横になっていたら、額当て型の通信機の着信音が鳴った。
夜、皆んなが寝静まったであろう時間帯に突然頭の中で鳴り響く音に驚くも、そっと廊下に出て通信機に出てみたら、相手はレインだった。
「ミーツさん、夜分遅く済みません。
でも、ミーツさんの決闘話を聞いたからには、居ても立っても居られなく連絡してしまいました。ミーツさんが決闘についてご迷惑だとお思いでしたら、私の権限をフルに使って無かったことにしたいと思っております」
突然、そう切り出す彼の言葉に、全く迷惑じゃないよと返し、更に、今回の決闘について皇族が手を出したりしたら許さないと念を押して言ったら、彼は何度も謝って、観戦しに行くのは大丈夫ですか?と恐る恐る聞いて来たことで、それくらいなら全く問題ないよと返して通話を切った。決闘の日にちまで待ち遠しいと思いながらも、俺も部屋に戻って就寝する。
ーーーーーーーーーーーー
通話を終えたレインは、ミーツに余計なことをしたら許さないと言われてしまって、皇宮の中庭の椅子に座り込んで落ち込んでいたら、彼の従者が彼の元にやってきた。
「殿下、どうされたのですか?またあの下賎な冒険者との通話で殿下が落ち込まれることでも言われたのでしょうか。あの下賎な冒険者のことなどで、殿下がお気になされることではないではないですか!」
従者は彼を励ますつもりでそう言ったのだったが、彼にとってそれはミーツを貶す言葉でしかなく、ミーツに対して好意を持っている彼にとって禁句ともいえる言葉だった。
「貴方はミーツさんのことをそんな風に見ていたのですね。もう貴方は私の従者の任を解きます。たった今から私に近づくのも、皇宮に来るのも禁止します。陛下には私から言っておきますから、今すぐ出て行って下さい」
レインと従者は幼い頃から共にしていたのだが、彼にとってミーツはそれほど大事に思っていたのかと従者は気付くも、冷静で淡々とそう話す彼ともう会話の余地がないことに気付かされて、頭を下げて従者は皇宮から出て行った。
中庭に残されたレインは、ため息を吐いたあと、瞬間移動で自室に戻り、大切な箱に入れられたミーツに貰ったミーツ人形や、密かに集めたミーツの服の切れ端や髪の毛などを手に頬擦りをし、息を切らしながら抱き締めた。
ー翌朝ー
目を覚ましたレインは大切な人形の小さな汚れを魔法で綺麗にして上質な布で更に拭きあげてから箱に収め、幼い頃から共にしていた従者の解任について父親に相談しに行った。
「ふむ、お前に唯一心を許し残った幼馴染だった子だぞ。そんな簡単に解任してよかったのだろうか。私としては、お前がそれで良いと言うなら問題ないが、今後は従者についてどうするつもりなのだ」
「いいのです!彼はミーツさんを侮辱したんですから、あの言葉はミーツさんに好意を寄せている私にとっては禁句でしたから!
彼もそのことを知っていたはずなのに、それを口に出したのですから、もう戻って来て欲しいとは思いません。
従者についてですが、チアフルを元に開発した自律型の魔導人形がつい先日、行動テストの結果、何処に出しても問題ないとの報告を受けてますので、その魔導人形を従者にするつもりです。確か、サンと言う名の女性型であると聞いています」
「うむ。なにがあったかは分からぬが、我らの友人であるミーツ殿を侮辱した発言は許せぬな。だが、魔導人形については、いくら行動テストを合格レベルに到達したからといっても、まだ従者にするほどではないはずだからダメだ」
「いずれは世に出し、弟妹たちの護衛や教育係として使用するつもりでしょう。 でしたら、先に私から試してはいかがですか」
「でも仮に暴走でもしたら、お前が苦労するのだぞ。だが、それでも構わないといったその顔を見る限り、気持ちは変わらないようだな。
分かった許可をしよう、明日にでも魔導人形制作科にでも行こうぞ」
家族のみの食事の時にレインは陛下としてではなく、一人の父親としての時に従者の解任の話を持ち出し、豪雨に許可を取ろうと真剣に話し合った結果、豪雨がレインのレインの従者は魔導人形が務めることになったのだった。
従者を人から魔導人形に変えたことにより、レインにとって後々苦労することになるのだが、それはまた別の話である。
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