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第6章
第1話
しおりを挟むあれからどのくらい経ったのだろうか、漆黒の触手に捕まって罠の階層で落ち、身体中に触手に絡まれてゆっくりと落下しているのは分かるものの、それだけで片手に持っている焦熱剣を振り回せるだけの自由がない。
【俺様を出したと思ったら自分の腕を斬っちまうなんて正気じゃないと思ったけど、あいつらを助けるためだったんだな。
で、お前さんよ、これからどうするんだ?このままこいつらに絡まれながら落ちるのか?
だったら俺様を引っ込めろよ。気持ち悪くてしょうがねえ。だけどよ、この空間は懐かしい気がするぜ】
触手は視界も遮って焦熱剣がどのような状態かも分からないまま、剣の言葉を信じるなら剣にも触手が絡み付いているようだ。
これだけ身体中に触手が絡み付いているというのに、ゆっくりと落下している感覚があるのが不思議だと思って、そのまま目を開けていても真っ暗闇なため少しの間、寝ていようと目を瞑ると、暗闇の中で時折、焦熱剣とは別の声が聴こえてくるも、声が小さ過ぎてよく聞き取れないまましばらく経った頃、起きろという怒鳴り声が聴こえて目を開けてみたら、突破したはずの白亜紀の階層の空から地面に向けて落下していた。
「うおおおお!なんだこりゃああ!」
【ようやく起きたかお前さんよ。こんな状況でどうするよ?】
いつの間にか眠っていたのか、俺が起きたことで冷静になった焦熱剣はこの状況をどうするか聞いてきたものの、この階層から上では空を飛ぶことができないと聞いているから、地面が近付いてくるときにダメ元で想像魔法で宙に浮く想像魔法を試みたら、落下スピードが緩やかになって、地面に鼻先が当たるギリギリのところで宙に浮いた。
「おお!シロヤマが空を飛ぶことができないって言っていたから、試してなかったけど、全然飛べるじゃないか」
それにしてもシロヤマは何で、空を飛ぶことができないなんて嘘を教えたのだろうかと地面に降り立ってから座り込んで考えるも、その理由が思いつかない。
もしかしたら、瞬間転移魔法みたいに空を飛ぶことができる飛空魔法が使えないと言いたかったのかも知れない。 試しにいつも転移魔法を使って転移していた感覚を想像魔法で試みたら、たまたま視界に入っていた空を飛ぶ恐竜であるプテラノドンの背に転移してしまった。
プテラノドンもいきなり背中に重みを感じて驚いたのだろう、翼をバタつかせて空で暴れ出し、ただでさえスベスベに滑る皮に意外と肉が付いてない身体に掴まる箇所がなくて、落下してしまい、俺が乗っていたことに気が付いたプテラノドンに食い付かれてそのまま巣に連行されてしまった。
俺の服が丸焼けになった岩山の近くに巣があり、腹を空かせた雛鳥ような生まれたばかりのプテラノドンの雛が餌を求めるようにクチバシを上に向けてギャーギャーと言っている上に落とされ、バランスを整える前に身体中クチバシで喰いつかれて皮や肉が抉り取られて行く。
クチバシは鋭い刃のように、触れる身体の部分が切られて行く。
【お前さんよお、こんなクソトカゲどもはさっさと倒しちまえよ。じゃねえと、お前さんが死んじまうぞ】
焦熱剣の言う通り、このままでは死んでしまうと思い、頭や目をガードして防御していたのだが、焦熱剣を振り回したら、雛プテラノドンの首や頭がズレて倒した。
俺の様子を空を旋回していた親プテラノドンが、叫びながら巣にただ一人いる俺に向かって突っ込んできたものの、雛プテラノドン同様にクチバシを斬り伏せてバランスを崩れたのを見逃さずに、首を刎ねてI.Bに収納した。
「ふう、やれやれ、やっと一息つけるね」
【お前さんよ、これからどうするんだ?】
「とりあえず、自分で斬った腕と、抉られた肉を治療して考えるよ」
焦熱剣の問いかけは保留にして、焦熱剣で斬ったことで血が出ずに焼け塞がっている腕の治療から試みる。
いつものように想像魔法にて腕の再生を想像してみたら、自分で斬る前の腕が再生され、再生されている中に今度は食われた身体中の肉の再生もやっておくと、腕の再生が終わるころ、身体中の傷や抉られた肉も元に戻っているのに満足に頷き、俺の周りに横たわっている雛プテラノドンもI.Bに収納したところで、自分がどのような場所にいるかの確認のため辺りを見渡す。 俺の落とされた巣はかなり高い場所なようであり、下を覗けば霧がかっているが、所々に同じような巣が沢山見えたところ、プテラノドンの群れがあるのだろうと推測できる。
この場所で空でも飛ぼうものなら、すぐに他のプテラノドンに見つかって同じように捕まるだろう。
ならばどうするか、転移で元の場所に転移しようとも思ったものの、もう少し霧が晴れて辺りが見渡せるようになっても遅くないと考えてこのまま巣の中で休もうと巣の中を見たら、巣の中は人型の骸骨やら、小物の恐竜の骨やらが数多くあり、その骨の所々にまだ肉が付いていてその肉が腐って鼻につく臭いが堪らなくて、あまりにも臭い骨のみを下に落とした。
そうした俺の行動は下に巣の回りを旋回しているプテラノドンを呼ぶこととなって、上昇してきたプテラノドンに見つからないように臭い骨の中に潜って下に下にと潜っていたら、プテラノドンの糞尿が付着した藁や木々が重なっている所に行きついたものの、まだ下に潜れそうでどれだけ潜れるのだろうと思いつつ、どんどん下に潜れてしまったところで、手に当たる物が無くなったところで顔を出したら空洞になっていた。
これだけ潜ったら、明かりを付けても流石に上で旋回しているであろうプテラノドンにバレないだろうと思い、空洞に向けて想像魔法で出した光の玉を落として見ると、空洞の中は緩やかな坂になっているのが分かった。
これなら落ちても大丈夫そうだと思って先に焦熱剣をI.Bに収納してから降りてみると、乾いてない糞尿が滑って頭からウォータースライダーのように滑っていき、下の方で明かりが見えたところで頭をガードしていいたらプテラノドンの糞尿が溜まりに溜まった池に落ちてしまった。
こんな所で焦熱剣を出したら文句言われると思いながらも、周りにどんな恐竜がいるか分からないため、I.Bから焦熱剣を出したら、予想通りに出した瞬間に汚物まみれなってしまったことで文句を言われてしまった。
【お前さん、いくら俺様が剣だからって、こんな場所で出すなんて酷くないか?】
「いや~、悪いと思ってたんだけどね。周りにどんな恐竜がいるか分からないから出したんだけど、やっぱりダメだったみたいだね」
【当たりめえだ!】
「分かった分かった。じゃあ、あとで綺麗にしてやるのは勿論のこと、炎も魔法で出してやるから、それで機嫌なおしてくれよ」
【チッ、仕方ねえな。高温で良質な炎じゃなきゃ許さねえぜ】
なんとか焦熱剣の機嫌が治ったところで、糞尿が溜まった池を這い出たら、腰蓑として巻いていたローブが取れて無くなってしまっていた。
完全に全裸の状態になってしまったが、誰か人がいる訳でもないし、まあいいかと思ったものの、何処からか、誰かに見られている視線をずっと一人でこの地に落ちたときから感じていた。
だからといって、辺りを見渡しても誰かいるわけではなく、汚物まみれの剣を想像魔法にて身綺麗にして、なるべく良質の炎を与えたあとの焦熱剣に聞いても【知らねえよ】と言うだけで特に何も気付かないようだ。
視線を感じたからといっても、現状ではどうしようもなく、裸のまま汚物の池から離れて森を歩いていたら、巨大な昆虫が急に頭上から落ちて来たりしたが、焦熱剣で素早く焼き斬り伏せてはI.Bに収納して行く。
「ふうふう、随分と歩いたけど、今ってどの辺りなんだろうね」
【知らねえよ。気になるなら空でも飛べばいいんじゃねえか】
焦熱剣の言うことはもっともだと思ったものの、森の中は鬱蒼としており、これから空を飛ぼうにも木々の枝が密集し過ぎて多分、枝を上手く抜けることができないのではないだろうか。 せめて、もう少し空が見えるところまでと思って歩き続けていたら、辺りが次第に暗くなり始めて、真っ暗になってしまってから気付くのが遅くなってしまって明らかに夜になってしまった。
いくら灯りが出せるとはいえ、道なき道を歩き続けるのも危険だと感じて、巨大な昆虫が沢山いる中の森で休もうと光の玉を数個出して壁を囲う想像魔法を使おうと思って、先に光の玉を出した途端に光目掛けて虫が突っ込んできたことで、剣で斬る動作も遅れて避けるしか出来なくて転がったら、暗くて分からなかったともいえるが、大きな穴に落ちてしまった。
穴はとても深く、曲がりくねった歪な形で身体を打ちつけながら下に下に落ちて行った。
途中で剣を横壁に突き刺すも、土が脆くて突き刺した箇所が崩れて落下する始末だ。
しかし、めげずにひたすら剣を横壁に突き刺していたら、崩れずに上手いこと剣が突き刺さって落下が止まった。真っ暗な辺りの状況を確認するべく、光の玉を想像魔法で出したら、すぐ足元に地面が見えて、剣を引き抜いたら地面に降り立つことができた。
上に光の玉を飛ばしてみるも、上部は歪な形のため途中で引っかかって上まであがらない。
仕方なく、降り立った状況を確認し、横にまたも歪な形に洞窟状に広がっている。
こんな洞窟をわざわざ進む必要なんてないのだが、何故だか先に進まなければならない感覚になって、光の玉を横に飛ばしながら進んでいたら、デジャヴだろうか、見たことがある雰囲気な洞窟だと思っていたら、腹に激痛を感じて腹を見ると深々と棒状の物が突き刺さっており、その棒状の先を見たらゴブリンが地面と同化して突き刺していた。
これはいつか見たことがある夢そのものだと思いつつも、この痛みは夢では考えられなく痛いことから、確実に現実だと考えられる。
とりあえずのところ、俺の腹に突き刺しているゴブリンは斬り伏せて、棒を引き抜いたら汚らしい槍だったものの、引き抜いたら槍は霧散して消えた。
他にもこういったゴブリンがいるのかと辺りを注意深く見渡したら、先程のゴブリンのように地面や天井に横壁から上半身出した状態で待ち構えているのが見える。それに、それだけではなく、前方から道幅いっぱいに広がって迫ってくる大量のゴブリンがいることから、一気に殲滅してしまおうと想像魔法で炎を出してドラゴンの息吹のように噴射させた。
それによりゴブリンたちは派手に燃えては消えて行く。何故か爆発する奴もいるなか、後方のゴブリンが炎の中でも生きて向かってくる奴が現れ始める。
最初は一匹二匹だったのが、次第に群れとなって迫って来て一匹二匹が迫ってきたときは斬り伏せていたが、流石に群れとなれば、この足場の悪い場所で戦うのはキツイと感じ、炎が効かなければ今度は冷気だと思って、液体窒素を想像魔法で出して向かってくるゴブリンに浴びせる。
炎は平気でも流石に液体窒素は平気ではないようで、凍りついていくゴブリンたちを斬りながら前に進んでいると、沼地のような所に行き着いて、その沼からゴブリンが湧いて出て来ていた。
新たに出てきたゴブリンも含めて沼に炎を浴びせるも、ゴブリンは全く効いてないように平然と這い出て向かってくることから、今度は液体窒素を浴びせるも、これも凍らずに向かってくる。
ここのゴブリンは前の個体が受けた魔法を無効化するのだろうと推測して、剣ならば大丈夫だろうと普通に斬っていたら途中から硬くて弾かれた。
焦熱剣にMPを込めなくて普通の剣として使っても、斬れ味は普通の剣よりもずっと良いはずなのに、弾かれたことに驚いて、今度は焦熱剣にMPを込めて斬ったら、スパスパと簡単に斬ることができた。
ある程度のゴブリンを斬り伏せたところで、一つの仮説を考えた。それはーー
この洞窟内で倒したゴブリンは倒した方法での耐性が付くのではないかということだ。
それで、この沼で新たに生まれるゴブリンは、その耐性が付いた状態で生まれて襲い掛かってくるというものだ。
この仮説が立証されるかどうかを、次に生まれるゴブリンが現れるまでしばらくの間、待っていること数分後、見た目は今までと同じゴブリンが沼から生まれて上がってきたところで、先程と同じように焦熱剣に同じくらいのMPを込めてゴブリンの胴体を斬ったら、弾かれはしないものの、片腕しか斬れず腹に少し傷が付いた程度だった。
殺しきれないことに焦熱剣も驚いたが、俺の仮説が立証された瞬間だ。
しかし、軽くしかMPを吸わせてない焦熱剣に、今度は大量にMPを吸わせて斬り伏せると、上がってきた沢山のゴブリンを一掃することが出来た。
「次のゴブリンが生まれる前にここから退散しなきゃな。次のときは倒しようがないしね」
【ふん!俺様の本当の力を取り戻せば、どんな耐性が付いた奴でも燃やし尽くしてやるぜ】
「はいはい、現時点では取り戻してないんだし、さっさと進むよ」
焦熱剣と話しながら先に進むと、後方からゴブリンの鳴き声とともに追いかけてきている姿があり、急ぎめで先に進んでいたら、またも地面や天井から上半身を出した状態のゴブリンが現れ始める。 これ以上、倒して耐性が付くのを恐れ、ゴブリンの攻撃を避けながら強引に進む。
どれほど進めば、終わりがくるのだろうかと思いながらも、息を切らしながら奥へ奥へと進んでいたら、途中から人工的な作りの岩壁になって、追いかけてきていたゴブリンたちも岩壁の方に近寄ることができないようで、剣や槍を叫びながら威嚇するように突き刺して立ち止まっている。
ようやく一息つけると思って、その場に座り込んで休んでいると、奥から冷んやりとした冷気の風が吹いてきたことで、奥になにがあるのだろうかと思いながら先に進んだら、いかにもボスがいます的なドーム状の大きな部屋に辿り着いた。ドーム状の部屋に入るなり、元の来た道は閉じた。
【チッ、俺様が嫌いな奴の気配がするぜ】
「焦熱剣の嫌いな奴?」
焦熱剣の嫌な奴とは何なのか、そう焦熱剣に話しかけると、壁をすり抜けて一匹のペンギンが姿を現した。
よちよちの歩き方に心が和み、ボス的な魔物が現れると思ったら、ペットにしたいくらい可愛いペンギンだったため、心の癒しを求めてペンギンに近づくと、ペンギンは目の前で消えた。
あれっと思ったら、俺は前のめりで倒れていて、激痛が襲いかかって後方を振り向けば、俺の両脚が揃って斬られ、ペンギンの翼の部分に赤く染まった血が付着していた。
ここがダンジョンの中なのを一瞬でも忘れていたことに後悔しつつ、想像魔法で宙に浮いて、斬られた両脚を想像魔法で再生させて治療に励むと、宙に浮いた俺を見上げているペンギンがジャンプして飛び上がってきたものの、高度が足らずに落ちた。
これで宙に浮きながら安全に倒せると思ったのも束の間、一匹だったペンギンが次第に壁からすり抜けて増えていき、終いには天井からもボトボトと降り落ちてきた。
天井のは、なんとか避けきることが出来たものの、地上は足の踏み場もないくらいにペンギンで埋め尽くされてしまっている。
ここは、ペンギンが届かない高度の今の状態で倒すのが賢明だと思って、焦熱剣にMPを思いっきり吸わせて地上のペンギンを焼き払った。 ペンギンは叫び一つあげずに焼かれて、残ったのは鋭い刃の翼だけが無数に残り、それらを拾いあげようと地上に降り立ったら、その刃の翼が中央部に集まりだして、一匹の巨大なペンギンに姿を変えた。
ペンギンの翼は巨大で、一振りしたら当たらずとも風の刃で身体中に無数の傷を付けられる。 先程みたいに宙に浮かんでも、余裕で届く攻撃は飛んだほうが分が悪い。
それならばと、ペンギンの足元を素早く動いて足元から斬っていこうと考えたものの、足元を斬りつけようとすれば巨大ペンギンの身体から小さなペンギンが生まれ斬りかかってくる始末だ。
とりあえずのところ、小さい方のペンギンは焦熱剣で斬り伏せて倒し、そのついでに大きい方も小さい方を一掃したときみたいにMPを焦熱剣に同じくらいに吸わせて斬ったが、腹に薄っすらと焦げ目が付いた程度になってしまった。
「これはまさか、ゴブリンのときと同じか!
耐性が付いて攻撃が効かないのか」
そう独り言を呟きつつ、焦熱剣が効かないならば今度は想像魔法で炎を出して当てる。
しかし、焦げ目すら付かないで小さなペンギンを生み出して来る。
新たに生み出された小さなペンギンの方は耐性が付いてないみたいで、簡単に焦熱剣でも斬り倒せるものの、小さい方を倒しつつどうやって倒すか考えながら、素早く動き回っていると、小さなペンギンを倒したあと刃の翼が残って、放って置いたら大きい方に吸収されているのが分かった。
だから無限ともいえるほどのペンギンを生み出すのだろう。それなら倒した小さなペンギンは吸収される前にI.Bに収納する。
これで少しは変わるかと期待しながらも、大きなペンギンが翼を振ったときの風の刃の範囲内に入らないようにしながら、小物を狩ってはI.Bに収納していくのを続けていたら、わずかづつだが、大きい方のペンギンの身体が縮んでいるのに気が付いた。
その気づきによって、避け続けていた大きなペンギンの攻略法が分かって、それからは積極的に足元に近付いては小さなペンギンを生み出し続けるのを狩り続けて倒したペンギンからI.Bに収納していくこと数時間経ったころ、大きなペンギンは三メートルほどまで縮んだところで小さなペンギンを生み出さなくなった。
一歩も動くことなく翼を振れば風の刃であるカマイタチを発生させていたのが、縮んだことにより、動きはスムーズに動きだして翼を広げて突進してきたり、飛び上がって天井に足を着けて降りて来ずに、翼をデタラメに振っての攻撃をしだしたことにより、鋭い風の刃が降り注いできて腕や脚が切断されてしまって、急いで想像魔法で再生を試みながら、同じく想像魔法で降り注いでくる攻撃を跳ね返すシールドを展開させた。
自身の身体の治療と再生が終わって、自身の張ったシールドが破られてないことを確認しつつペンギンを見たら、跳ね返した風の刃は見事に天井に張り付いたペンギンに当たって、上半身が地面に落ちて下半身が天井に張り付いたままだ。
下半身の部分と上半身の部分の断面を見たところ、焦熱剣で斬ったわけではないのに内臓が出てないのが気がかりで、自身の張ったシールドを解かずに落ちた上半身に近づくと、突然上半身が動き出した。
翼を足代わりにカツカツと地面に突き刺しながらやってきて、そのままの勢いで翼を振り上げて攻撃してきたものの、俺の反射シールドに当たって反対側の壁まで吹き飛んだ。
上半身があれだけ動けるのだから、天井に張り付いたままの下半身も動けるのではないかと、下半身のある天井を見上げたら、そこにはもう既に下半身はなく、壁にめり込んで埋まっている上半身の元に移動して上半身とくっ付いて再度動き出す。
「こんなのどうやって倒せばいいんだよ!」
【お前さん、難しく考えんでも簡単じゃねえかよ。バラバラの細切れにすればいいだけだろうがよ!】
「でも既に焦熱剣との強力な攻撃の耐性は付いているし、もう倒しようがないよ」
【俺様の限界があれしきだと思ったのか!俺様の限界はまたまだ上があるんだぜ】
「そ、そうかい?それなら限界と言うまでMPを込めるよ」
【いや、今回は魔力も込めろや】
「分かった。出来るかどうか分からないけど、やれるだけやってみる」
剣の魔力を込めるというのに困惑しながらでも返事をし、まずMPを剣に込めて魔力はどう送ったらいいか考えるも思いつかず、もう難しく考えず、とにかく俺のステータスに表示してある魔力を焦熱剣に送るイメージをしたら、元々青く輝いていた焦熱剣は元の赤色に戻り光って、赤から青変化して青くも光る、そして青から黄色に変わって光り、またも色が変わって黒になったところで色の変化が止まった。
黒光りする焦熱剣は俺様をあの野郎に突き刺せと叫んだことで、素早く向かってくるペンギンに突き刺したら、ペンギンは黒く変色して突き刺した剣に吸い込まれるように渦巻いて消えた。 ペンギンが消えたあと黒光りの焦熱剣は元の青く輝く色に戻った。
【チッ、嫌な奴が姿を現すぜ】
焦熱剣がなにをそんなに嫌がっているのか分からずにいると、ドームの中央に白く透明に近い色の剣が一本地面から盛り上がって現れた。
今の焦熱剣を手にしたときと似た感じを思い出しながら、その剣を手に取ってみると、焦熱剣が初めて話しかけて来たときと同じように頭に声が響いて聴こえてきた。
【ありがとうございます。私様(わたくしさま)の新しい主様。それと、随分と久しぶりですね地獄の炎竜】
【チッ、今は焦熱剣だ。その名で呼ぶなや!】
「えと、焦熱剣のことを知っているようだけど、キミは?」
【申し遅れました。今の私様のことは凍結剣とお呼び下さいませ。力を取り戻せば呼び方も変わりますが、今はそちらの焦熱と同等かそれ以上の天竜魔剣だと思われて結構でございます】
新しく手にした剣は焦熱剣と違って礼儀正しいが、自身のことを焦熱剣と同じように私様と、一人称に様を付ける辺りのところをみると、同類なのかも知れない。
現に名前が凍結剣って、氷の魔剣であることは間違いないだろうが、天竜魔剣と魔剣とどう違うのだろうと思いつつも、凍結剣にMPを軽く込めて振ったら、氷のスパイクがバキバキバキっと現れて壁一面にまで到達した。
【お前さんよ、こんな奴は使うなや。
俺様だけを使ってりゃいいんだからよ】
【それは聞き捨てならないですね。私様はこんな中途半端な温度の熱しか出すことができない剣より、ずっと使えますからね】
【そりゃ、今のてめえじゃ俺様と大して変わらねえだろうが!むしろ、俺様の方がよっぽど使えらあ】
昔からの犬猿の仲だろうか、凍結剣を手にしてから二本の剣はお互いを罵り合いながら、自分が相手より使えることをアピールしてくるものの、頭の中で響いてくる口喧嘩は耳を塞いでも意味がないため、二本の剣は手に持ったまま二本ともI.Bに収納した。
剣を収納したあと、行き止まりであるドーム内を見て回って壁を触っていたら、触った壁の一部が変色して扉が現れた。
急に扉が現れたことに驚いたものの、まだこの先にも厄介な魔物が潜んでいるかもと警戒しながらI.Bから焦熱剣だけを取り出して、この洞窟を最初に進む際、感じた感覚を信じて扉を開けて中に入って進んだ。
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