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第5章
第37話
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第37話
ダンジョンボスを倒して魔法陣に乗った『ミーツと愉快な仲間たち』のメンバーたちはシロヤマを除く皆が困惑していた。
何故ならば魔法陣で転移された場所は家が数件あるだけの、いかにもな貧しい村だったからだ。
そんな中に貴族が乗るような豪華な馬車が十台並んで止まっており、その馬車と馬車が連なってくっ付いており、順番通りに進んで乗って行けと言われているからだ。
「シロヤマ、あの馬車に順番通り乗るのって意味があるのか?それに街にはいつになったら入れるんだ?」
「な~に~?シーバスってば、ダンジョンクリアしたら、すぐ街に入れると思ってたのお?
チッチッチ甘い甘い、考えが甘いよ。
ボクらはダンジョンを抜けたからといっても、正規のルートで入国してないんだから、身体検査や持ち物検査に犯罪歴などがないかの審査があって当たり前じゃないか。
それに、ダンジョン内での出来事も全部じゃないけど、ギルド本部で観られてるから、こうしてダンジョンを通って入国したらバレるんだよ」
シーバスは彼女の言い分は分かるが、なんとも面倒だと思いながらも、先に女性陣が入っていって終わらせてから、男性陣の番になり、シーバスから最初の馬車に乗り込むと、見た目に反して中はとても広く、数人の防護服を着た者たちが、持ち物検査として持ち物はもちろんのこと服も全部脱げと指示をだした。
いくらなんでもこんな人前で脱げるかよと怒るシーバスだったが、彼の背後から続けて乗ってきたヤスドルは気にせずに手や脚に装着していた手甲を手渡して服を脱いで、指示通りに次の馬車に繋がる通路を通って行き、それを見たシーバスも頭をガシガシと掻いて同じように持ち物を手渡して服を脱いだ。
「最後は君だ。早く脱ぎなさい。それで、その子はいつから居た?我らがギルド本部から出る時はそんな子は居なかったはずだが…」
防護服を着ている者の一人が最後に残った士郎に、胸に抱いている幼児について説明するも、士郎も死んだパーティリーダーがダンジョン内で拾ってきたと言うしかなく、馬車内で防護服を着た者同士ボソボソとした話し合いがあったものの、士郎には手甲と服を脱衣を命じて、裸になると指示された通りに先に進まなければならない状況になった。幼児については検査のあと返すとのことで幼児は取り上げられて、連れて行かれた。
二台目の馬車では入った瞬間、粉を全身にかけられ、一キロほどの粉を水で流し込んで飲めといったことをされて、指示の通り次の三台目に移動させられると、三台目では四方八方から水を掛けられるといったことをされて身綺麗になったら次の指示で四台目の移動を指示され、四台目では一人一人に防護服服を着ている者たちが身体検査と称して身体を触って書類の数ある項目にチェックを入れていく。
それが終われば次の指示で五台目に移動してみると、五台目では一人一人にバスタオルを手渡されて、胸から巻くように指示を出されてそのまま通路を通過するだけで、男性陣は首を傾げながら指示通りに行動する。指示通りに六台目に行くと、洗われたであろう服を返されて服を着直してまたも指示通りに七台目に移動したら、パーティ全員と合流し、荷物の返却もされた。
「シロヤマよお、指示通りに移動したんだが、今までのは意味があったのか?」
こういったことを何度も経験しているシロヤマにシーバスは質問をした。
「もちろん意味はあるよ。ボクもよく分からないけど、未知なる病原菌の持ち込みがないかのチェックと乗る前に言った、犯罪歴のチェックなどをしてるって聞いたことあるよ。
で、最初に乗った馬車では服を脱いで荷物を預けるだけでしょ。で、二台目では身体に付いた菌を殺菌する粉を掛けられて、三台目ではそれを洗い流されて、四台目では身体に危険な物を埋められてないかとかの、ボクにもよく分からない検査をさせられて、五台目ではスキャンっていう完全に分からないやつをするんだってさ。
で、六台目で服と荷物を返されて、ボクたちは七台目にいるんだけど、これから棺みたいな箱に入れられるんだ。入ったらすぐに眠たくなっちゃうから、寝ちゃってていいよ。起きたらヤマトのギルド本部に到着してるからさ」
十台の馬車のうち七台の説明しかしない彼女に、シーバスは残りの三台についての質問をしたら、彼女自身もそれについては分からないらしい。
「あのーシロヤマさん、あの子供がまだ返されてないんですけど、あの子はなんで、まだ返してくれないんですかね?」
「あー、あの子かあ。士郎くんと一緒じゃなかったんだね。だったらボクにも分かんない。多分だけど、ギルド本部で返してくれるんじゃないかな。もうこの馬車にはボクら以外誰も居ないし、先にも後にも行けないし、戻れないから箱に入って休んでようよ」
シロヤマは率先して七台ある箱の一つに向かった。
「この箱は、酸素カプセルって感じですね」
「士郎くんはこの棺のこと知ってんの?」
士郎は元の世界でもよく使っていた酸素カプセルを思い出したものの、こんな中世みたいな世界観にそんな物があるわけがないと思いつつも、彼女に酸素カプセルの説明をするのが難しくて説明するのはやめて、似た物を見たことあるだけで違うかもしれませんと言って、棺に入ったら自動で天井が閉まり、シューッという音が聞こえて士郎は、すぐさま眠気に襲われながら、やっぱり酸素カプセルではなかったとみたいだと考えていると、すぐに意識が無くなって眠りについた。
「さ、士郎くんも入ったし、皆んなも入って入って、人数分より一つ多いのは多分、ミーツくんの分だったんだろうね」
彼女がそう言うと、またもアマとアミがボロボロと泣き出した。彼女たちが泣き出したことにより、シロヤマはしまったと口に手を当てて、シーバスとヤスドルに協力してもらって、無理矢理にでも棺に入れて大人しくさせた。
「シロヤマよお、しばらくの間、ミーツさんの話もミーツさんの名前も禁句な」
「ごめんね。ついうっかり言っちゃったんだ。
でも次からは気を付けるよ」
シロヤマとシーバスがミーツのことについて話していたら、ヤスドルは無言で棺に入っていた。
「ヤスドルも一言くらい何か言ってくれればいいのにね」
「あいつもミーツさんのことを話したら辛いんだろうな。俺たちも入ろう」
シーバスは棺の一つに片足を入れてふと、思い出したことをシロヤマに聞いた。
「あ、そういえばよ。ミーツさんの使い魔たちと馬車は何処に行ったんだ?てっきり、ダンジョンを出たらすぐいると思っていたんだけどよ」
「多分、ギルド本部で保護されてると思うよ。
使い魔の主人が死んだら、次の主人が見つかるまで保護されるか、絶対に人に懐かないタイプの使い魔だったら下の世界に解放されるか、珍しいタイプだったら王族貴族に売られるかだね」
「あれ?そうか?でもお前、ダンジョンの入口で主人が死んだ使い魔は殺されるって言ってなかったか?」
「うん言ったよ。そう言ったらミーツくんも、何がなんでも生きて突破しようって思うと思ったんだもん。でも結果は落ちて死んじゃったしねえ」
「そうだな。じゃあ、ミーツさんの使い魔たちは珍しいタイプの魔物ばかりだから売られてたら、そのときは俺たちで買おうな」
シーバスは真剣な表情でシロヤマにそう言うと、彼女は俯きながらそれは無理だよっと反論した。 理由としては彼が言った通り、ミーツの使い魔は希少価値のある魔物なため、売られるとしたら王族貴族専門のオークションに出されるからだとシロヤマは追加で言い加えた。
「全てはギルド本部に着いてから考えようよ。
とにかく今は、この棺に入らないと馬車も動かないから、入って休もう?」
「わ、分かった。小休憩は時々あったが、ずっとまともに寝てなかったからか、俺も眠たかったんだ」
シーバスはシロヤマに返事をしたあと、自ら棺に入って横になると、他の者たちと同様に眠気に襲われて眠った。
「シマークスさん、ご苦労様。今回は大変苦労したようですね」
シーバスまで棺に入って休み、一人になったシロヤマの元に一人の防護服を着た者が彼女に近づき話しかけてきた。
「うん。今回はこのパーティリーダーが仲間を助けた代わりに死んじゃってね。凄く大変だったよ。といってもボクの所為なんだけどね。
実力は凄かったから、言われた通りの道のりを通ったけど、こんなことはこれっきりにして欲しいかな。 ボクはもうダンジョンの案内人を辞めるよ」
「もちろん、お好きになさって大丈夫ですよ。
案内人も辞めてもらって結構です。
私も罠に嵌めた件は聞いておりますので、約束通りこちらも全力でお仲間の捜索に、買取を行います。 あー、そうそう、その死んだと思われるパーティリーダーのミーツさんが死んだと思われるのは気が早いですね。あの方が言うには、まだ生きてるそうですよ。そもそも殺す気で落とし穴の罠に嵌めたのではないそうですよ」
「え?どういうこと?ミーツくんは生きてるって?殺す気がないって意味わかんない。
それだったら皆んなに知らせなきゃ!」
彼女はミーツがまだ生きてると知って、我慢していた涙を流して既に眠ってしまった仲間たちに知らせようと棺に近付くと、防護服の者は彼女の首を手刀で叩いて気絶させ、わらわらと現れた他の防護服の者たちによって別の馬車に連れて行かれた。
「さあ、引き上げです!しばらくの間、このルートで通る者はいないでしょう!いつも通り、監視役に交代で残して引き上げますよ」
「でも残念ですね。彼女が案内人を辞めるなんて、もう腕利きの冒険者たちが入ってこないんですね」
「彼女は元々、案内人を辞めたがってましたからね。こちらの提案は願ったり叶ったりでしょう」
「彼女には何をお願いしたのでしょうか?」
「なんでも、彼女の同胞たちの捜索と集めてもらうのを条件に、彼女が死んだと思い込まれているミーツという男を、あのダンジョンの決められたルートを通らせるということだったんですよ。
まあ、なんの為かは私の知ることではないですが、あのお方にとってはそれが必要だったのでしょう。シマークスさんを使ってでも罠に嵌めたかったのだから恐ろしいものです。
お喋りはこの辺りにして、そろそろ帰りますよ。
ダンジョンで生まれたという子供のことも調べなければならないですしね」
防護服を着た者たちは彼女が棺と呼んでいた箱を、それぞれ一台一台別の馬車に移動させたあと、撤収と声を張り上げて十台もの馬車は一斉に発進した。
第5章 完
ダンジョンボスを倒して魔法陣に乗った『ミーツと愉快な仲間たち』のメンバーたちはシロヤマを除く皆が困惑していた。
何故ならば魔法陣で転移された場所は家が数件あるだけの、いかにもな貧しい村だったからだ。
そんな中に貴族が乗るような豪華な馬車が十台並んで止まっており、その馬車と馬車が連なってくっ付いており、順番通りに進んで乗って行けと言われているからだ。
「シロヤマ、あの馬車に順番通り乗るのって意味があるのか?それに街にはいつになったら入れるんだ?」
「な~に~?シーバスってば、ダンジョンクリアしたら、すぐ街に入れると思ってたのお?
チッチッチ甘い甘い、考えが甘いよ。
ボクらはダンジョンを抜けたからといっても、正規のルートで入国してないんだから、身体検査や持ち物検査に犯罪歴などがないかの審査があって当たり前じゃないか。
それに、ダンジョン内での出来事も全部じゃないけど、ギルド本部で観られてるから、こうしてダンジョンを通って入国したらバレるんだよ」
シーバスは彼女の言い分は分かるが、なんとも面倒だと思いながらも、先に女性陣が入っていって終わらせてから、男性陣の番になり、シーバスから最初の馬車に乗り込むと、見た目に反して中はとても広く、数人の防護服を着た者たちが、持ち物検査として持ち物はもちろんのこと服も全部脱げと指示をだした。
いくらなんでもこんな人前で脱げるかよと怒るシーバスだったが、彼の背後から続けて乗ってきたヤスドルは気にせずに手や脚に装着していた手甲を手渡して服を脱いで、指示通りに次の馬車に繋がる通路を通って行き、それを見たシーバスも頭をガシガシと掻いて同じように持ち物を手渡して服を脱いだ。
「最後は君だ。早く脱ぎなさい。それで、その子はいつから居た?我らがギルド本部から出る時はそんな子は居なかったはずだが…」
防護服を着ている者の一人が最後に残った士郎に、胸に抱いている幼児について説明するも、士郎も死んだパーティリーダーがダンジョン内で拾ってきたと言うしかなく、馬車内で防護服を着た者同士ボソボソとした話し合いがあったものの、士郎には手甲と服を脱衣を命じて、裸になると指示された通りに先に進まなければならない状況になった。幼児については検査のあと返すとのことで幼児は取り上げられて、連れて行かれた。
二台目の馬車では入った瞬間、粉を全身にかけられ、一キロほどの粉を水で流し込んで飲めといったことをされて、指示の通り次の三台目に移動させられると、三台目では四方八方から水を掛けられるといったことをされて身綺麗になったら次の指示で四台目の移動を指示され、四台目では一人一人に防護服服を着ている者たちが身体検査と称して身体を触って書類の数ある項目にチェックを入れていく。
それが終われば次の指示で五台目に移動してみると、五台目では一人一人にバスタオルを手渡されて、胸から巻くように指示を出されてそのまま通路を通過するだけで、男性陣は首を傾げながら指示通りに行動する。指示通りに六台目に行くと、洗われたであろう服を返されて服を着直してまたも指示通りに七台目に移動したら、パーティ全員と合流し、荷物の返却もされた。
「シロヤマよお、指示通りに移動したんだが、今までのは意味があったのか?」
こういったことを何度も経験しているシロヤマにシーバスは質問をした。
「もちろん意味はあるよ。ボクもよく分からないけど、未知なる病原菌の持ち込みがないかのチェックと乗る前に言った、犯罪歴のチェックなどをしてるって聞いたことあるよ。
で、最初に乗った馬車では服を脱いで荷物を預けるだけでしょ。で、二台目では身体に付いた菌を殺菌する粉を掛けられて、三台目ではそれを洗い流されて、四台目では身体に危険な物を埋められてないかとかの、ボクにもよく分からない検査をさせられて、五台目ではスキャンっていう完全に分からないやつをするんだってさ。
で、六台目で服と荷物を返されて、ボクたちは七台目にいるんだけど、これから棺みたいな箱に入れられるんだ。入ったらすぐに眠たくなっちゃうから、寝ちゃってていいよ。起きたらヤマトのギルド本部に到着してるからさ」
十台の馬車のうち七台の説明しかしない彼女に、シーバスは残りの三台についての質問をしたら、彼女自身もそれについては分からないらしい。
「あのーシロヤマさん、あの子供がまだ返されてないんですけど、あの子はなんで、まだ返してくれないんですかね?」
「あー、あの子かあ。士郎くんと一緒じゃなかったんだね。だったらボクにも分かんない。多分だけど、ギルド本部で返してくれるんじゃないかな。もうこの馬車にはボクら以外誰も居ないし、先にも後にも行けないし、戻れないから箱に入って休んでようよ」
シロヤマは率先して七台ある箱の一つに向かった。
「この箱は、酸素カプセルって感じですね」
「士郎くんはこの棺のこと知ってんの?」
士郎は元の世界でもよく使っていた酸素カプセルを思い出したものの、こんな中世みたいな世界観にそんな物があるわけがないと思いつつも、彼女に酸素カプセルの説明をするのが難しくて説明するのはやめて、似た物を見たことあるだけで違うかもしれませんと言って、棺に入ったら自動で天井が閉まり、シューッという音が聞こえて士郎は、すぐさま眠気に襲われながら、やっぱり酸素カプセルではなかったとみたいだと考えていると、すぐに意識が無くなって眠りについた。
「さ、士郎くんも入ったし、皆んなも入って入って、人数分より一つ多いのは多分、ミーツくんの分だったんだろうね」
彼女がそう言うと、またもアマとアミがボロボロと泣き出した。彼女たちが泣き出したことにより、シロヤマはしまったと口に手を当てて、シーバスとヤスドルに協力してもらって、無理矢理にでも棺に入れて大人しくさせた。
「シロヤマよお、しばらくの間、ミーツさんの話もミーツさんの名前も禁句な」
「ごめんね。ついうっかり言っちゃったんだ。
でも次からは気を付けるよ」
シロヤマとシーバスがミーツのことについて話していたら、ヤスドルは無言で棺に入っていた。
「ヤスドルも一言くらい何か言ってくれればいいのにね」
「あいつもミーツさんのことを話したら辛いんだろうな。俺たちも入ろう」
シーバスは棺の一つに片足を入れてふと、思い出したことをシロヤマに聞いた。
「あ、そういえばよ。ミーツさんの使い魔たちと馬車は何処に行ったんだ?てっきり、ダンジョンを出たらすぐいると思っていたんだけどよ」
「多分、ギルド本部で保護されてると思うよ。
使い魔の主人が死んだら、次の主人が見つかるまで保護されるか、絶対に人に懐かないタイプの使い魔だったら下の世界に解放されるか、珍しいタイプだったら王族貴族に売られるかだね」
「あれ?そうか?でもお前、ダンジョンの入口で主人が死んだ使い魔は殺されるって言ってなかったか?」
「うん言ったよ。そう言ったらミーツくんも、何がなんでも生きて突破しようって思うと思ったんだもん。でも結果は落ちて死んじゃったしねえ」
「そうだな。じゃあ、ミーツさんの使い魔たちは珍しいタイプの魔物ばかりだから売られてたら、そのときは俺たちで買おうな」
シーバスは真剣な表情でシロヤマにそう言うと、彼女は俯きながらそれは無理だよっと反論した。 理由としては彼が言った通り、ミーツの使い魔は希少価値のある魔物なため、売られるとしたら王族貴族専門のオークションに出されるからだとシロヤマは追加で言い加えた。
「全てはギルド本部に着いてから考えようよ。
とにかく今は、この棺に入らないと馬車も動かないから、入って休もう?」
「わ、分かった。小休憩は時々あったが、ずっとまともに寝てなかったからか、俺も眠たかったんだ」
シーバスはシロヤマに返事をしたあと、自ら棺に入って横になると、他の者たちと同様に眠気に襲われて眠った。
「シマークスさん、ご苦労様。今回は大変苦労したようですね」
シーバスまで棺に入って休み、一人になったシロヤマの元に一人の防護服を着た者が彼女に近づき話しかけてきた。
「うん。今回はこのパーティリーダーが仲間を助けた代わりに死んじゃってね。凄く大変だったよ。といってもボクの所為なんだけどね。
実力は凄かったから、言われた通りの道のりを通ったけど、こんなことはこれっきりにして欲しいかな。 ボクはもうダンジョンの案内人を辞めるよ」
「もちろん、お好きになさって大丈夫ですよ。
案内人も辞めてもらって結構です。
私も罠に嵌めた件は聞いておりますので、約束通りこちらも全力でお仲間の捜索に、買取を行います。 あー、そうそう、その死んだと思われるパーティリーダーのミーツさんが死んだと思われるのは気が早いですね。あの方が言うには、まだ生きてるそうですよ。そもそも殺す気で落とし穴の罠に嵌めたのではないそうですよ」
「え?どういうこと?ミーツくんは生きてるって?殺す気がないって意味わかんない。
それだったら皆んなに知らせなきゃ!」
彼女はミーツがまだ生きてると知って、我慢していた涙を流して既に眠ってしまった仲間たちに知らせようと棺に近付くと、防護服の者は彼女の首を手刀で叩いて気絶させ、わらわらと現れた他の防護服の者たちによって別の馬車に連れて行かれた。
「さあ、引き上げです!しばらくの間、このルートで通る者はいないでしょう!いつも通り、監視役に交代で残して引き上げますよ」
「でも残念ですね。彼女が案内人を辞めるなんて、もう腕利きの冒険者たちが入ってこないんですね」
「彼女は元々、案内人を辞めたがってましたからね。こちらの提案は願ったり叶ったりでしょう」
「彼女には何をお願いしたのでしょうか?」
「なんでも、彼女の同胞たちの捜索と集めてもらうのを条件に、彼女が死んだと思い込まれているミーツという男を、あのダンジョンの決められたルートを通らせるということだったんですよ。
まあ、なんの為かは私の知ることではないですが、あのお方にとってはそれが必要だったのでしょう。シマークスさんを使ってでも罠に嵌めたかったのだから恐ろしいものです。
お喋りはこの辺りにして、そろそろ帰りますよ。
ダンジョンで生まれたという子供のことも調べなければならないですしね」
防護服を着た者たちは彼女が棺と呼んでいた箱を、それぞれ一台一台別の馬車に移動させたあと、撤収と声を張り上げて十台もの馬車は一斉に発進した。
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