底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第5章

第26話

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第26話

 翌朝、起きるとシーバスとヤスドルが幸せそうな顔で眠っていた。今思えば、深夜帯だったのに夜食としてはどうかと思う食べ物だったカレーライスは想像魔法で出して、見事にカレーの魅力にハマった彼らはルーの入った寸胴ごとと、鍋一杯の米を食べ尽くしていた。
 だからこその幸せそうな顔なのだろう。
 シーバスは兎も角、ヤスドルの緩みきった幸せそうな顔は珍しく、起きる前に記念に撮っておこうと、I.Bに収納しているスマホを手に取り、連写で一気に撮ったら、その音で目を覚まして緩みきった顔がいつもの無表情に変わった。

「あ、ミーツさんおはようございます。
あの、かれーらいすというのはまだありますか?
無いのだとしたら諦めますが、もし仕入れたら呼んで下さい。俺にとってアレが何よりも褒美になりますので!」

 彼は余程カレーにハマったのだろう、起きて早々に正座して恥ずかしそうにカレーを要求をしてきた。
 彼がそこまでハマるとは思っていなかったため嬉しくなって、朝から大皿一杯のカレーを想像魔法で出して手渡した。
 昨夜の深夜帯にもかかわらず、あれだけの物を食べたのに寝起きでまた食べる姿に驚いたが、その匂いと話し声で起きたであろうシーバスが彼の食べてる姿を黙って見つめているのに気が付いた。

「なあミーツさん、俺にもそれ食わせてくれないか?それともヤスドルが食ってるのが最後か?」
「まだいくらでもあるけど、夜中に食べたのにまだ食べるの?」
「俺はほとんど食ってねえ!ソレの大半はヤスドルに食われたんだ!」

 シーバスの言葉に驚いて彼の方を向いたら、カレーの大皿を大事そうに抱えて、自分の食べてるカレーは取られまいという意味がありそうに、俺たちを睨みながら一口一口ゆっくりと食している姿に笑ってしまった。

「ミーツさん笑い事じゃねえぞ!」
「いや、ごめんごめん。ヤスドルの姿を見てると、俺が最初の王都で世話になったギルドマスターのグレンさんを思い出してね。彼も、とあるスイーツにハマって今のヤスドルみたいな感じだったから、なんか懐かしくなっちゃったよ。
って、とりあえずシーバスにも一杯ね」

 カレーくらいで本気で怒るシーバスに、ヤスドルに出した物と同じくらいの皿に想像魔法で出してあげると、出した皿をシーバスが受け取る前にヤスドルの手によって掻っ攫われた。

「あー!俺のカレー!ちくしょう!今度という今度こそ取り返してやる!」

 シーバスは取られたカレーを奪い返そうと手を伸ばすも、ヤスドルは走って逃げながら奪ったカレーを食って行き、ヤスドルが捕まったころには食べ終わって、シーバスはまたも食えなかったと四つん這いになって泣いている。
 流石にシーバスが不憫に思い、カレーだとまた取られる可能性があると思って、シーバスには想像魔法で出した炒飯を差し出したら、シーバスはこれじゃ無いとか言いながらも、悲しそうに炒飯を食べ出した。

「でもヤスドル、いくらカレーが気に入ったからといっても、人の物までは取っちゃダメだよ。
そこまでやるなら今後、キミには出してあげられない」

 俺はそう彼に言うと、彼はすぐさま、俺の目の前に滑り込むように正座し、流れるように土下座をして謝ってきた。

「俺にじゃなくて、ここはシーバスに謝らなきゃだよ」

 彼は気まずそうに炒飯を食べてるシーバスの元に行き、謝り倒して今回は許すということで許してもらっていた。

「ミーツさん、その格好で下に降りるのか?」

 食事も終わり仲間内でのいざこざもなくなって、下に降りようってことになったとき、シーバスに呼び止められた。
 その格好とはどういうことだろうと思って、自分自身の身体を改めて見たら、服は勿論のこと下着までもが焼け焦げて、俺の股間が表に出ていた。 唯一残っている物といえば、ギルド証だけでそれ以外は全て身に付けている物が無くなっていた。

 彼に言われなければ下に降りたとき、ちょっとした騒ぎになっていたかも知れないが、仲間内だしシロヤマは勿論のこと彼の妹たちも、兄たちの股間を見慣れているため、今更なんとも思わないだろうけど、このままでは他の冒険者とかち合ったときに、おかしな目で見られると思って、I.Bに収納している別の服を取り出して着て見たら、下着を穿いてないこともあって股間の位置が定まらなく、仕方なくジーラントにもらったローブを着ると、下着がないから股間がスースーするけど普通の服を着るよりマシなため、そのまま穴倉のシールドを解いて下に降りたら、既にシロヤマたちが遅いと言いながらも待っていた。

「あれあれ?おじさんおじさん、服はどうしちゃったの?あたし達とお揃いのローブなんか着ちゃってさ」

 早速、アマに服のことを聞かれ、シーバスが降りてくるまでの間、正直に昨日の出来事を話したら、シロヤマは腹を押さえて笑い、アミと士郎はそんなことがあって大丈夫なのと心配してくれているなか、アマは目を閉じて数回深呼吸したあと、ヤスドルの身体を匂いを嗅ぎだした。

「うん、やっぱり間違いないね。ヤスドルくんから美味しそうな匂いがするよ」
「ん。カレーの匂いだ。ミーツさんがくれたんだ」

 夜中と今朝に食べたカレーの匂いが、ヤスドルに染み付いていたのだろう。
 彼も特に隠しもせずにカレーのことを言ったら、アマはもちろんのこと、シロヤマがズルイと騒ぎ出した。

「ミーツくんたちだけズルイよ!ボクたちは硬い干し肉とちょっと臭うチーズだけだったんだよ?」
「うーん、じゃあ、今夜は同じ物を食わせてやるよ。それでいいかな?シーバスがそろそろ降りて来たし、今日も張り切って行こうかね」

 今食べさせてよと言うシロヤマとアマを下に降り切ったシーバスが、二人を脇に挟んで抱きかかえてあーだこーだとうるせえと一喝して、出発することになったものの、彼女らはシーバスからも匂うカレーの匂いにも気が付いて、今度はシーバスが責められることになったが、アマという妹に持つ彼にとってはこういうことは日常茶飯事なのだろう、二人を地面に落として耳を塞いだ。

 彼の行動によってアマはまたそうやって逃げると言いながらも、言うのを止めた。アマが言うのを止めたところでシロヤマも言うのを止めて俺に向かって指を差して今夜は絶対にカレーを食べさせてよ!
 そう言い彼女を先頭に、上にあがるためのダンジョンの探索を開始しだした。

 出発して早々に暴食竜ほどの大きさではないものの、二~三メートルほどの凶暴な肉食恐竜の群れと遭遇し、俺は戦う気満々だったのだが、シロヤマの逃げろーと叫んだことにより、彼女に付いて行くように皆んなが逃げ出して、俺は殿(しんがり)として逃げる手伝いとして想像魔法で岩壁を作って出して逃げ切ることに成功した。

 逃げたのはいいが、元の岩山に戻ってきてしまい、岩山周辺を軽く探索した程度になってしまった。 逃げた方向とは別の方向に向かっても、同じような恐竜に遭遇したものの、岩山が近いこともあってすぐさま岩山に避難したら、恐竜は岩山に近付くことができないようで、岩山と同じ色の地面に足を踏み入れようとしない。
 昨晩の大蛇は何故か岩山に入り込んでいたが、それは今晩にでもシロヤマに聞こうと思う。

「これは詰んだんじゃないか?
もう逃げないで、全員がレベリングをして一人でもアレくらいの恐竜を倒せるくらいの力を身に付けるしかなくないかい?」

 どの方向に行っても現れる肉食竜の群れに、レベリングの提案をシロヤマに言った。

「どうやってさ!本当はこんなところにあんなのが現れないんだよ?あの魔物はね、とても頭がよくて魔物なのに連携が取れるんだよ?」
「ふーん、そうなのかい。でもレベリングなら俺は前にやったことあるし、大丈夫だと思うよ?な!士郎」
「う、うん。確かにミーツさんのお陰で急激に強くなれましたけど、アレをここでやるんですか?」
「あのときのことをそのままってわけじゃないよ。ここは俺の知らないダンジョンで、まだ知らない恐竜も数多くいるだろうけど、俺がやることは一つ。手脚を折ったりぶった斬ったりした恐竜を連れてくることだ。 いくら連携が取れる恐竜でも、仲間が次々と動けない状況になっていけば、引くしかないだろう。でも、レベリングをするならば引く恐竜をも狩る」


 俺がそう言うと、女の子全員が引いているのが分かるくらい顔が青ざめている。

「もし、意見があれば今言って欲しい。
無ければ、このままレベリングを開始しようと思う。一人一人の考えを聴かせて欲しい」

 俺がそう言うと、小さく手を挙げてアミから話しだした。

「あの、あの、ミ、ミーツさん。私たちは魔法使いで力は非力です。ですから、いくらレベルを上げても、一人であの凶暴そうな魔物は倒せないと思うんですけど」
「そうだそうだ!今まで通り、兄ちゃんが前線で戦ってあたしたちが後方で魔法を放つのでいいじゃん」
「僕は魔力ないし、嫌でも前線で戦わなきゃいけないし、ミーツさんの提案を受け入れます」
「そうだな。俺もミーツさんの提案は受け入れるぜ。レベルだけでも上がれば、俺でも大蛇をぶった斬れることが昨日分かったしな」
「俺は元々ミーツさんの提案は良いと思っているから、問題ない」
「ボクは反対だな。だって、急激にレベルアップしたら気分が悪くなっちゃうんだよ?こんな医者や回復師がいる訳でもなく、回復アイテムが限られているダンジョンでやることじゃ無いよ!」
「それについては問題ないよ。俺も急激なレベルアップの経験はあるし、回復薬についても俺と一緒なら一生困らないくらいあるからね。
反対意見はそれだけなら、レベリングを開始しようかね。行動不能になった恐竜たちを連れてくるから、一番レベルが低い人から順番にトドメを刺して行ってくれよ」
「ちょ、まだ話は終わってない!話を聞けえぇー!」

 俺が岩山から離れ、一人で森に入っても後方からシロヤマの何か言ってる声が聞こえた。
 久しぶりにレベルアップの手伝いをすることになったものの、彼らは自分のパーティの仲間たちなため、自分自身の為にもなることから面倒がらずに、森の中で襲い掛かってくる恐竜たちの噛みつきや引っ掻きを避けながら、炎熱剣で手脚を切り裂いて行動不能にして行き、襲ってくる個体がいなくなれば行動不能にした恐竜の脚を片手で掴んで二匹づつ仲間の元に連れて行った。

「え、本当にミーツくん一人でこれをやったの?」

 行動不能にした恐竜は全部で五十匹程いて、最初こそは片手で一匹づつ持って行っていたが、数が数なだけに死なない程度に森から岩山に向かって投げていき、森で倒した恐竜が山盛りになったところで、シロヤマに恐る恐るといった感じで俺が一人でやったのかを聞かれた。

「もちろん、むしろ今、俺以外に誰がこれだけのことをやれるんだよ。驚くのもいいけど、そろそろ下敷きになったヤツが虫の息だから、トドメを刺していかないと死んでしまうよ。じゃあとりあえず、アマかアミからだね」
「え!あたしからぁ?ア、アミからやっていいよ。あたしは次でいいからさ」
「えぇ!そんなの私も無理だよぉ」
「お前たちいい加減にしろ!折角ミーツさんが俺たちのために、トドメを刺すだけの状態の魔物を連れてきたんだ。お前たちがやらないなら俺が全部貰う!」

 彼女らはお互いがへっぴり腰になって譲り合いをしているなか、兄であるシーバスが彼女らに拳骨をして、最初の一匹はシーバスが剣を頭に突き立て殺した。

 そんなシーバスの言動に目が覚めたのか、彼女らも弱っているヤツから順番に倒していき、俺とシロヤマを除いた仲間の一人辺り十匹の恐竜を倒し終えた。
 倒し終えてもまだまだ余裕がありそうだと判断し、追加でまたも恐竜を捜しに森の中に行ったら、俺が脅威だと判断したのだろうか、遠目で見てくるだけで襲いかかろうとしない恐竜たちをスルーして、更に森の奥を進んだら、森を抜けてしまった。

 森を抜けてしまった場所は暴食竜の群れがあって、俺を見つけるなり襲い掛かってきたことから、直様炎熱剣で暴食竜の手脚を斬り裂いて行動不能にし、襲い掛かってくる全ての暴食竜を行動不能にした頃、沢山の暴食竜が叫び声を上げながら横たわっているのを見て、これだけを殺さずに森を抜けて岩山に連れていくのは困難だろうと思った。

 先程の恐竜みたいに岩山に向かって投げてもいいが、こいつらの自らの重さで投げると死んでしまうかも知れないと思い、どうしようかと考えたのち、俺のI.Bに生きたままの暴食竜は入れることが出来ないかと考えて、試しに収納してみたら入れることが出来た。

 入れた暴食竜は取り出すと生きたままなのが確認できたところを見ると、俺のI.Bはよくある物語のI.Bと別物であることが分かって、そこからはこの場で倒した暴食竜をI.Bに収納して行くと、残ったのは所々に残された大きな卵だけだ。

 ここは暴食竜たちの巣だったみたいだ。
 流石に卵までは持って行こうとは考えず、仲間たちの元に戻ろうと森に入ったら、岩山は見えるのに岩山に向かっても中々辿り着けなくて苦労したものの、なんとか元の岩山に辿り着いて、仲間たちの目の前で瀕死の暴食竜をI.Bから取り出したら、目の前で生きた暴食竜が現れたことで、ヤスドルとシロヤマ以外のメンバーは叫んで逃げ迷い、そのメンバーを一人一人捕まえて動けない暴食竜の前に連れて行き、トドメを刺させるも暴食竜の頭部が硬いってのもあってか、シーバスでも時間を掛けながらトドメを刺して行く、アマとアミは泣きながらもトドメを刺す姿は少し笑えた。

 最初に暴食竜にトドメを刺し終えたシーバスが具合悪そうにしだして、次に士郎で最後にアマとアミが熱を出して倒れた。
 ヤスドルは元々レベル自体が高いのか、それとも鬼人族の特性なのだろうか、ケロッとした様子で自主トレーニングとして岩山を登ったり降りたりを繰り返している。

「この惨状を見て、ボクは倒してないけど頭が痛くなっちゃったよ。悪いけどボクは先に休ませてもらうよ」

 シロヤマは頭を押さえて岩山の穴倉の一つに入って行った。
 確かに彼女言う通り、最初に倒した恐竜と暴食竜の血の匂いが辺り一面に立ち込めて具合が悪くなるのも仕方ないと思った。
 最初に倒した恐竜と暴食竜たちはI.Bに収納し、飛び散った血は想像魔法で綺麗に掃除をして、臭いも石鹸水をスプリンクラーのように散水して臭いを誤魔化した。

 岩山を登り降りしているヤスドルに手伝ってもらって、具合悪くなっている仲間たちを俺たちが休んだ穴倉に連れて行き、看病をすることにしたのだが、女の子がいるため、ここはシロヤマにも手伝って貰おうと彼女が休んでいる穴倉をこじ開けると、彼女は酒瓶を両手に持って飲んでいた。


「しばらく禁酒するんじゃなかったのかい?
俺は飲んでいいなんて一言も言ってないけど?」
「あ、いや、これは違うんだよ?ちょっと現実逃避がしたくってーー。うん、ごめんなさい。もう飲まないから、その殺気は止めてくれる?そっちは大変なんでしょ?手伝うから許して!」

 俺は特に殺気を出したつもりはなく、ただ睨んだだけなのだが、彼女にとってはただの睨みも殺気が出ていると感じたのだろう。そんな彼女は両手に持っていた酒を俺に差し出した。
 それからは仲間たちの看病に付き合ってくれて、若いからか、熱を出した仲間たちは夜中には熱は引いてお腹空いたと声を出せるようになり、腹は減っても動けない仲間たちのヤスドルとシロヤマにはカレーを、それ以外のメンバーたちには雑炊を食べさせた。

 魔力があるメンバーにはMP魔力欠乏症になる可能性があるため、士郎以外の仲間たちには俺のMPを分け与えるため、多めに流し込んで欠乏症を予防に努めて、更に急激なレベルアップに対する筋肉の硬直や筋肉痛を予想して、揉んで筋肉をほぐしたり、想像魔法でメンバーの状態を確認しつつ、少しでも変化が起これば治療できるように監視をして夜が明けていった。






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