底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第5章

第10話

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第10話

 巨大トレントを倒した確信がないため、念のためにI.Bから取り出した炎熱剣を片手に、トレントの上部に降り立ち剣を突き刺すも反応がないところ、完全に倒したと思っていいだろうと思い、トレントの上部から下に降りると、テントいっぱいにドームの中にいた人たちがシーバスたちと共に歓喜で騒いでいた。
 俺が戻ったことにアマとアミは抱きついてきて、俺の無事を手探りで身体のあちこちを触ってきて、商人たちもトレントを眺めている。

「もしやこれは大雨のときに現れ、暴れるだけ暴れたら雨と共に去る。幻のトレントでは…。
今まで、発見されたことは多々あるものの、討伐されることはなかったのが、こうも簡単に…」


 どデカいだけのトレントだと思っていたのが、まさか幻のトレントだとは思わなかったが、商人たちも黒焦げのトレントを眺めるだけで、買い取りを言ってこない所をみると、どう査定すれば分からないような感じだ。


「さあ、夜が明けたら出発しようかね。ってその前にこれを収納しなきゃね。アッシュ、これいけるかい?」
【これは無理~】
「そうか、流石のアッシュでも無理か。それなら俺が収納するしかないね」

 黒焦げのトレントに手を翳して、I.Bに収納した途端に、MPの消費が急激に減った気がしたものの、ステータスを見る限り、全体のMPのほんの僅かであったことに安堵し、これ以上魔物が現れないことを祈りつつ、テントの森に面した部分を壁で覆って、正面とドームに繋がった部分をシーバスとシロが交代で見張りをしてもらうことになった。トレントが急に消えたことにより、商人たちは残念そうにしてゾロゾロと、元のドームの中に戻って行った。

 馬車内で休むことになって、ずぶ濡れな服と身体を想像魔法で乾かしてから横になるが、戦闘直後ってこともあってか、眠れないと思っていたのが目を瞑ると意外と意識が遠のいて眠れてしまった。 翌朝、起きたらアマとアミが俺の両腕に絡みつくようにして眠っていて、一瞬焦ったものの、転移で抜け出して馬車の外に転移したら、シロが眠たそうな目で見張りをしていた。


「おはよう、お疲れさん、移動は馬車もあるし、今日は馬車内でゆっくり休むといい」
「あ、ミーツさん。おはようございます。
一晩くらいの夜通しの見張りなんて、慣れてますから大丈夫ですよ。それにシーバスさんと交代でやってましたから、少しは寝れましたしね」


 ドームの中やテントの中では、ほとんどの者が起きて出発しているようで、道の妨げになると思ってドームとテントを撤去しようと思ってこれらを塵に帰した。
 まだ眠っていた冒険者や中で出発の支度をしていた者たちは、いきなり建物が無くなったことに驚き騒めいたものの、ここは元々急な雨によって俺の魔法によって建てた物だと、シーバスが昨晩何人かに説明してくれていたみたいで、知らない人らに聞いた人が教えてあげていることにより、騒めきはすぐに収まって、それぞれがすぐに出立して行く。

 俺もまだ眠っているアマとアミを起こさず、シーバスとシロを素早く馬車に乗せて出発し、御者席にシーバスと並んで座り道案内をしてもらいながら進んで行くと、途中途中で昨日の大雨によってできた川に道を遮られて遠回りしながらもなんとか夜になる前に目的地となる街に辿り着いた。

「ミーツさん、ここにミーツさんの目的地となるヤマトへの案内ができる者がいるんだ。今日のところは遅いし、適当に宿にでも泊まろう。
ここには俺たちが依頼を受けたギルドもあるから、明日朝一番に行って依頼の達成をしてくる。
ミーツさんもギルドに用があれば一緒にくるか?」
「そうだね。久々にギルドに行ってみるかな。
クリスタル国以外で、まともなギルドなんて初めてだからね。それにシーバスたちが俺とパーティを組むならパーティ名を申請しなきゃだしね」
「え!おじさんのパーティ名あるの?」
「うんあるよ。ただ一度もギルドに申請してないから、今は別行動の仲間以外では知られてないね。なんの名前かは今は秘密だよ」

 今日のところはギルドに行くのは止めて、シーバスの言う通りに街の中を進んで、お勧めの宿に案内されて泊まることになったものの、部屋割りが明らかにおかしい。

「ねえ、シーバス?なんで俺がアマとアミと同室なのかい?二部屋しか取れないなら、シーバスが妹たちと同室になるべきだと思うんだけど?」
「ああ、それはシロさんがミーツさんと同室は嫌だって言うから仕方なく、こういう分け方にしたんだ」
「だったら、シロがアマたちと同じ部屋にするべきじゃないのかい?」
「それも考えたが、まだシロさんのことをそこまで信用してないから妹たちと同室だと不安なんだ。その点、ミーツさんなら妹たちに手を出すことはないだろう?」
「そりゃあ、当たり前だ。あんなまだ成人してもない子供に手を出すもんかね。俺は犯罪者になりたくないからね」
「だったら安心だ。今朝の馬車内でミーツさんが妹たちに手を出していたら、この分け方にしてないさ」

 シーバスが俺のことをそこまで信用してくれているのはありがたいが、色々とマズイし、俺自身が嫌だと思って、シロの肩に手を置いて、俺と同室が嫌なら外で休むか、馬小屋で休めと言うと、アマとアミがそこまで自分たちと同室が嫌なの?って涙目になってしまったことにより、今回は俺が折れてシーバスの分け方に同意した。

 ただし、このまま俺だけが折れるのはしゃくだと思って、シーバスの耳元にそっと耳打ちをして、シロの恋愛対象は男性だから気を付けろよ?とだけ言って、分けられた部屋に向かったが、後方で俺を呼ぶ声が宿全体に響いたものの、その声を無視して彼女たちと部屋に入った。

 この街では食事処が閉まるのが早いようで、宿に到着したときには、ほとんどの店が閉まっており、酒場なら開いていたものの、男だけなら大丈夫だろうが、女の子を連れて行けるものではないと思い、部屋の中で軽く済まされるジャンクフードを出して、彼女たちに振る舞ったが、外に出て店で食べる食事より美味しいとのことで、満足してもらったのち、三つあるベッドのうち、一つを木の床と同じ色の壁で囲んで、転移でベッドに潜り込んで休んだ。
 壁の向こう側では彼女たちが、魔法を使わずに壊そうとしている声が聞こえてくるも、その騒がしい声が帰って子守唄のように心地よい声に変換されて、モコモコで肌触りが良いロップを枕代わりにして寝ることにした。

 翌朝、彼女たちから逃げるように一人で勝手に壁を囲んで休んだことに怒った彼女らは、起きて壁を取り除いたさい、彼女らは壁の近くにベッドを引きずって眠っていて、壁を取り除いた音で目を覚ますなり叱られてしまった。

 俺の歳の半分も満たない子たちに叱られていると、部屋の扉を勝手に開けてニヤニヤした顔で見ていたシーバスが、諦めて今日は妹たちの言うことをなんでも聞かなければ、後々面倒になるぞと言われ、仕方なく彼女らの言うことを聞くことになり、宿からギルドまでの間、彼女らに手を引っ張られている。
 シーバスは既にシロと二人で先にギルドに行って、依頼の達成とランクアップの手続きをしに行っているため、俺はため息を吐きながら彼女らに急かされていくのだった。

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