底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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1巻

1-2

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 それならなぜ聞いた⁉
 それに、ジジイって呼ばれるほど、年取ってないよ!
 しかも「クソが!」を二回も言ったけど、口癖くちぐせか?
 正直、腹が立ってムカついたが、ペコペコと頭を下げながら、その場を去ることにした。
 腹も減っているが、昨日シオンに教えてもらったアレを食べるには、プライドを捨てきれない。やることも食うものもないから、ぶっちゃけ、あとは寝るくらいしかできない。
 起きているだけで、喉もかわくし腹も減る。
 ヘタにカロリー消費するのもキツくなってきたので、今なら昨日シオンが座ってたところあたりは空いてるだろうと思い、行ってみることにした。するとガラガラで、ところどころにシオンと同じくらいの背格好、服装のホームレスが座っているだけだった。
 身体も痛いし夜まで寝ちまおうと座り込むと、すぐ意識がなくなっていた。
 気が付いたら夕方になっていた。さすがにこの時間帯なら井戸の周りには人はいないだろうと、それでも念のために警戒しながら行ったが、無事に井戸水を飲むことができた。
 改めて井戸水を見ても、やっぱり汚い。水溜みずたまりの水みたいなにごった色してる。
 昨夜は気が付かなかったが、臭いも少しする。本当は飲み水ではないんじゃないのか、と思いたくなるような色と臭いだ。
 現代の日本は水の環境も設備もいいから問題ないが、同じ地球でもどこかの部族とかは、こういったにごった水を飲んでいるってテレビで見たことあったなあ、と思い出した。

「この環境から抜け出せないのか?」

 独り言をつぶやいていた。これからシオンに聞いてみるかと、彼を探しにスラムを歩きはじめた。
 しかし、昨夜のシオンの寝床に行ったがいない。
 どこにいるんだろうか? 食事の残飯でもあさっているんだろうか? 教えてもらった食事の場所を探してもいない。再度井戸に行ってもいない。
 まあ、昨日知り合ったばかりだし知らない街だし、行ける場所も限られてるんだが、だからといってジッとしているのも暇だ。
 本当に冒険者ギルドに行ったら追い出されるか、試してみるかと、ギルドを探しに行くことにした。
 そういえば、スラム以外の場所に行くのは初めてじゃないかな? どういう雰囲気だろうと歩いていたら、いかにもな建物を見つけた。
 ロングソードみたいな長剣が、二本クロスしたバッテンの形のレリーフがかかげてある建物だ。
 こんな建物、武器屋か冒険者ギルドしかないと思って、入口の前に立って中の様子をうかがっていると、後ろから声をかけられた。

「よう。こんなところでどうした? 裏ギルドのこと、誰かに聞いたか?」
「あ、シオン! 裏ギルド? 裏ギルドって、普通の冒険者ギルドと違うのか? っていうか、裏ギルドってなんだ?」
「……しまったな。知っていたわけじゃなかったのか。こんなところで話すもんじゃねえから、移動するぞ」

 シオンがスラムの方に移動したので、俺もついていった。
 スラムの路地裏でシオンは誰もいないのを確認すべくあたりをキョロキョロと見回しているが、俺はシオンに裏ギルドについて率直に聞いた。

「で? 裏ギルドってなんなんだ?」
「裏ギルドとはな、冒険者ギルドの裏に受付があってな。主な仕事は表に出ないようなやつばかりだ。依頼料をもらっての人殺しから、盗みに、依頼料を払わない依頼人への取り立てだったり、表の依頼でも期限ギリギリのだったりと、街の表ギルドでは誰もやりたがらないのがほとんどだな」
「裏手にあるって、それじゃあ依頼人とかはどこで手続きするんだ? 普通、ギルドのそばに別に受付があってそこに個室があり、その個室で手続きするもんだと思ったが、違うのか? そして、暗殺とか間諜かんちょうとかも裏ギルドの仕事であるのか? 間諜かんちょうは表のギルドでもできそうだけど?」
「いっぺんに聞くな! 一個ずつ言うぞ。冒険者ギルドへの依頼は、基本冒険者ギルドの横に併設されてる建物で行われる。これは、冒険者との鉢合わせを避けるためだ。護衛や、魔物から村を救ってくれとかの依頼じゃない限りは、顔を合わせることがない。理由は、いらぬトラブルを避けるためだ。緊急時以外はここで依頼のやりとりをする。ちなみに個室だ。依頼人同士も顔を合わせることがないようにとの配慮だ。緊急時は併設されてる建物ではなく、ギルド内の受付でおこなう。この場合、依頼料が高めだが、目の前に冒険者がいるため、即決することが多々ある」

 シオンは言葉を切って間を置くと、再び続けた。

「次に、裏ギルドでの仕事には暗殺や間諜かんちょうもあるぞ。ちなみに、どっちの仕事も表のギルドにはない。理由は、表のギルドではギルドカードや首飾りを持たされるんだが、そこに成否は問わず過去に受けた依頼と今現在受けている依頼が記録されるからだ。他国や他の街に入るときに、警備兵に渡さないといけない決まりがあるんだ。個人的に間諜かんちょうの依頼をされても分かるようになっているらしい。そんなカードや首飾りを引っさげてコソコソと他国の情報を調べたりはできないだろう? そして、裏ギルドにはそれらが必要ないため、そういった依頼が回ってきたりする。俺は一度表に登録してるから、間諜かんちょうにはなれない」
「なあ、冒険者ギルドカードは身分証にもなるんだよな?」
「そうだが、よく知ってたな。それこそが記録の媒体になるんだ。依頼を受けたが数ヶ月放っておくとする。だが数ヶ月後に依頼達成したとなれば、あらかじめ定められた期限がない限りは、依頼失敗とはならないわけだ」
「あと、期限ギリギリの依頼って、主にどういったやつが多いんだ?」
「街の住民による雑用だな。大体その日のみの依頼から二、三日の期限がある場合もあるが、ほとんどがあまり金にならないから、表に出ても誰も手を出さないんだ。冒険者自体は子供でもなれるから、表だと教会の孤児たちが請け負うことが多いな。だが、やっぱり住民の雑用だから、数が半端じゃない。だから裏にまで回ってくるんだ。スラム生まれの者や俺やお前みたいな表のギルドに入れない者、まともな仕事にありつけないやつには持ってこいの仕事だ」

 シオンはギルドの説明をしてくれたあと、最後にニヤリと笑った。

「そうか! ありがとう、シオン! この生活を抜け出すにはどうすればいいか、シオンに相談しようと思ってたんだが、解決したよ」
「だが雑用もキツイぞ? それに、まだ話が残ってる。期限間近の依頼についてだが、魔物退治の依頼もあるんだ。ほとんどがゴブリンや虫の魔物の退治で、これも仕事のわりには金にならないから敬遠される。孤児院の子供も魔物退治は嫌がるからな」
「俺も表のギルドに登録するまでは魔物退治はやらないかな。第一、武器も持ってないしね」
「じゃあ、とりあえず受付に行ってみるか? お前のほとんど裸状態の格好をなんとかしないとだな」
「そうだな。モノは試しだ、やってみないと分からないしな。そう言われても、服なんてないから、人目にあまりつかない仕事があればやりたいな」
「じゃあ、行くか!」

 そうしてシオンに裏ギルドなるところに連れていってもらった。
 本当にシオンには助けてもらってばかりだよ。いずれ何かしらの恩返しをしないといけないと思った。
 連れていってもらった場所は、まさしく冒険者ギルドの真裏だった。
 そこには掘っ建て小屋みたいなのが建っていた。おそらく内部で表のギルドに繋がっているのだろう。
 ちなみに、表のギルドは見た目、田舎にある木造の小学校みたいな建物だ。でも奥行きがあり、かなり広そうだ。
 シオンに聞いた話では地下もあるそうで、地下も含めると四階建てみたいだ。
 身なりを整えたら、必ず登録しに行こうと心に誓った。
 とりあえず裏にある掘っ建て小屋に入ると、受付窓口が二つ並んでいた。担当者はどちらも男で、いかついゴリゴリマッチョの角刈りの男と、ツリ目のキツそうな七三分けの細い男の二人だ。角刈りマッチョはもちろんだが、七三も全く弱そうに見えない。
 どちらも空いてるが、角刈りマッチョの方に向かった。シオンがなんの躊躇ちゅうちょもなく角刈りマッチョの方に向かったからだ。

「あら~、シオンちゃんおひさ~! 今日はどうしたの~、あたしに会いに来てくれたの~?」
「ちげえよ。今日はこいつを紹介したくて連れてきた。こんな時間だが、仕事を斡旋あっせんしてくれ」

 マッチョはオネエだった。ありがちだな。テンプレってやつかもしれない。

「ま、まさかシオンちゃんの男? シオンちゃ~ん、あたしに黙って彼氏作るなんて酷いわ~」
「ちげえって! 何度も言うが、俺にそっちの趣味はねえよ。話進まねーから、勝手に紹介するぞ! このいかつい筋肉がダンクで、こっちの腹が出てるおっさんが光流だ。異世界人だと言っている頭のおかしいやつだ」
「あ、よろしくお願いいたします。光流と言います。シオンには、城から追い出され、スラムで服と荷物をぎ取られて途方にくれていたところを、助けていただきました」

 ペコペコと頭を下げながらも、角刈りマッチョのダンクという名のオネエに挨拶あいさつした。

「あら、いいのよ~。あたしはダンク、よろしくね。でも、あまり聞かない名前ね~。本当に異世界人かしら? それにシオンちゃん。相変わらず面倒見いいわねえ、そんなところがシオンちゃんのいいところなんだけど♡ れ直しちゃうわ~」
「確かに男前だな、シオンは」
「あら~、ミーツさんもイケてると思うわよ~? そのだらしない身体を引きめられたら、全然イケると思うわよ」
「ミ、ミーツ?」
「クックック、良かったじゃないか。いい愛称もらってよ。光流より全然コッチの方がしっくりくるぞ」
「そっ、そうか? なら、俺のことは今度からミーツって呼べよ。シオン〝ちゃん〟」
「テメエ、喧嘩けんか売ってんのか! ゴラァ‼」
「スマンスマン、悪かったって」
「仲いいわね~って、仕事だったわね。シオンちゃんの紹介だし、色々ある中から、いいの選んでア・ゲ・ル♡ ミーツさん♡」

 ゾワ~っときたが、おそらく冗談じょうだんで言ってるに違いない。そう信じたいと思った。



 第三話


「今日紹介できるのは、え~と、こんなのがあるわよ~」


『汚水掃除』期限三日=鉄貨一枚
『井戸の掃除』期限二日=銅貨五枚
『表冒険者ギルドの掃除』無期限、綺麗きれいな度合いで報酬変動有り。最低報酬=銅貨一枚~鉄貨三枚
『主婦の洗濯代行』毎日常時依頼、報酬変動有り。最低報酬=石貨三枚~銅貨三枚
『便所の糞み取り。み取った後の掃除まで』と『糞桶の回収及び糞桶掃除』毎日常時依頼=銅貨五枚(便所一件、もしくは糞桶三件)


「今あるのはこれだけかしらね」

 うーん、通貨の価値が分からない。
 ここは正直に聞くのが一番か。

「石貨とかって、いくらくらいなんだ?」
「ん? 石貨は石貨だろう、何言ってんだ?」
「あー、そっか。えーと、じゃあな。一番安い果物はいくらくらいで買える? 石貨で買えるか? 買えるなら何枚で買える? で、石貨の上の硬貨は鉄貨か?」
「そんなことも知らないのか? まあいい。そうだな、一番安い果物は石貨三枚ってとこだな。それでもって、石貨の次は銅貨だ。石貨十枚で銅貨一枚だ。で、鉄貨、銀貨、金貨と続く。金貨までそれぞれ十枚ずつで、上の硬貨一枚となるのだ」

 なるほど。じゃあ、石貨は一枚十円ってことかな?
 そうなると、便所の糞掃除が五百円ってところか?
 アリエナイ無理だ! これはパスだ!
 なぜなら、コッチの便所はボットン便所というやつにちがいないからだ。
 現代日本では、ほぼなくなってるが。
 俺が若い頃はまだあった。日本では和式タイプだが、こちらのは洋式タイプのボットン便所のはずだ。
 一昔前までは日本でもみ取りの作業をしている人をよく見たなあと思い出した。
 あと、便所がない家は、桶を便所代わりにしているようだ。王都の外だったら、糞尿ふんにょうめられる場所があるらしいが、この王都の街では窓から捨てたりする人も見かけたのだ。
 今回は、窓から捨てない家の糞尿ふんにょうが入ってる桶の廃棄と掃除か。銅貨五枚の仕事じゃねえ!
 しかも糞桶三件で五枚って、生きるためであっても嫌すぎる。

「なあ、便所の糞掃除はやる人いるのか? それに、糞桶三件やらないと依頼達成にならないのか?」
「そうよ。三件分達成しないと、報酬はもらえないわ。一件で逃げちゃう人もいるからよ。それに、この依頼を受ける人は普通にいるわよ」
「そうなんだよなあ、不思議といるんだよなあ。俺は絶対にごめんだけどな。銅貨五枚ごときであんなのやるやつの気が知れん!」

 やっぱりシオンも同じこと考えているのか。

「こういうのは表の人たちは絶対にやってくれないのよね。たまに表で自分で受けておいて、銅貨五枚なんかでやってられるかってキレる人もいるわね。だから裏に回ってくるのよね」

 表ギルドでまともな街の依頼って何があるんだろ? やっぱり簡単なやつが表で、大変で報酬が安いのが裏なのかな?

「表の依頼は、子守や街のゴミ拾いとか家の掃除とか、報酬は安いけど簡単なのが多いわね。たまに、貴族様からメイドの数が足りないから、臨時で冒険者を雇いたいってのがあるわね。貴族様のはどんな依頼でも結構な報酬になるから、みんな進んで受けるわ。ただし、汚い系の仕事は貴族様のものでも嫌がられるわね。だから裏には報酬が安くて大変なのが回ってくるの。たま~に納得できないで暴れる人がいるけど、スラムの人に仕事を紹介してあげてるんだから、逆に感謝して欲しいわ」
「考えていることを全部答えてくれた。ありがとうございます」
「ふふふ、ミーツちゃんって分かりやすいんですもの、可愛かわいいわ。でも、一番はシオンちゃんだけどね♡」
「この短い間に『さん』呼びから『ちゃん』呼びに変わった⁉ まあいいけど。ダンクさんオネエだし」
「あら~、嬉しいわね。あたしのこと分かってくれるのはギルマスとシオンちゃんだけだったのに、ミーツちゃんまで分かってくれるのね。嬉しいわ」
「俺のいた世界では、ダンクさんみたいな人は別に珍しくなかったよ。お店出している人はいたし、友達にもいたしね。俺の元いた世界では、身体は男でも心は乙女って人は当たり前にいたからね」
「おいおい、ダンクが泣いてるじゃないか。ミーツ、泣かせるなよ」
「あらやだ、涙が勝手に……さてと、気を取り直して。それで、今日はどうする? 依頼を受ける? それとも今日のところはやめておく?」
「もちろんやるよ。最初だし、洗濯代行をやってみようと思う。ついでに、汚水掃除もやってみようかな」
「じゃあ、明日の朝一に井戸で洗濯してる人にこの木札を渡して。それで分かってくれるわよ。くれぐれも寝坊しないようにしてね? あと、汚水の方もやるのね? うん、まあ頑張がんばってねとしか言えないわね。まあ、ミーツちゃん以外にもいるから、いいっちゃいいんだけど」

 そして、ダンクさんとシオンにお礼を言ってから、裏ギルドを出た。
 今からやるのかと思ったら明日の朝一か、寝坊しないようにスマホのアラームを設定しとくかな? ただ、寝ようと思っても、寝すぎて寝れないってのと、腹が減った。
 さすがに、三日も腹に水しか入れてないのは辛くつらなってきた。これが外なら適当に草か木の実でも食べられたかもだが、残飯はな~と、しばらく思案した。

「よし! 決めた! くだらんプライドなんか捨てよう。そして勇気をもって、なるべく綺麗きれいな野菜クズかなにかを食べよう」

 気合を入れるためにそう声に出すと、通行人に汚い物でも見るかのような顔で見られてしまった。
 いざ、シオンに教えてもらった生ゴミのある食事の場所へ行くと、前よりは臭いがキツくない気がする。
 俺自身が臭いためか、もしくはこの三日でここのスラムの臭いに慣れたか、これなら難なく食べられるかもと思ったが……めてました。
 メッチャ臭いです。そしてメッチャ不味まずいです。なるべく綺麗きれいな野菜クズを選んだのに!
 元々こっちのメシは不味まずいからなのか?
 ゴミでくさってるから不味まずいのか分からないが、適当に両手に持てるだけ持って、井戸まで移動して、水で無理矢理喉の奥に流し込んだ。
 明日はってか、明日にもならないうちに、お腹が痛くなった。やっぱりくさっていたのか?
 身体に合わなかったのかは分からない。
 この井戸水も、最初に飲んだあとはお腹を壊した。
 現代の日本人の身体はデリケートにできているから、ちょっと水や食べ物におかしな物が入ってたりすると、体調を崩しやすいんだろう。
 そう自分自身に納得させた。
 でも、無理矢理でも腹に何か入れておきたい。
 身体が拒否しても、しばらくはまともな物が食べられない現状なので、再度チャレンジした。
 が、結果は同じだった。
 夜が明けるまでの間に、それを何度も続け、ようやく気分的に慣れてきたところで目覚ましのアラームがなり、あたりにいたスラムの人たちに何事かと見られた。
 ちょうど井戸の近くにいたため、大して移動しなくても、依頼の婦人たちがやってきた。
 見たことのある人がいた。前に井戸で通せんぼされ、メッチャ嫌な顔をされた婦人たちの一人だ。

「すみません、ギルドで依頼を受けた者なんですが、この木札はどなたにお渡しすればよろしいでしょうか?」

 婦人たちの一人に声をかけると、メッチャ嫌な顔をしている人が眉間みけんしわを寄せて無造作に洗濯物を渡してきた。木札は人差し指と親指で汚い物でも掴むような手で受け取っていた。
 こちらの世界の洗濯は、洗濯用の木でできたタライに水をめ、足踏みで汚れを踏みつぶして押し出すような洗いか、手でガシガシみ洗いするのが主流だった。これは、前に見ている。
 だからといって、ガムシャラに洗えばいいというものではない。悪い例が、俺の着ている布だ。
 元々ボロ布だったが、洗ったことでさらにボロボロになり、着ているとは言えないレベルのモノになってしまっている。
 だから現在では、ほぼボクサーパンツのみのパンイチ状態だ。元の世界だったら警察に通報されて捕まるレベルだ。
 話は洗濯に戻るが、洗剤があるわけじゃない。ではどうするのか? ひたすら水で洗えばいいのか?
 米ぬかがあればよかったが、こちらの世界ではパンが主食だろうしな。米ぬかは昔、石鹸せっけん代わりに使われていたらしい。たしか、江戸時代くらいの人たちは灰を使った灰汁あくで洗濯物を洗っていたと、本に書いてあったのを思い出した。
 でも、灰汁あくを作るのは面倒だったような気がする。
 仕方ない。今日は足踏みとみ洗いで頑張がんばろう。
 いつか灰汁あくを手に入れたら、試してみようと思う。お仕事初日なのにいきなりやったことのないやつをやって失敗したら、大変なことになりそうだしな。
 成功したら、次から洗濯で使えばいいわけだし。


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