160 / 247
第4章
第41話
しおりを挟む
第41話
「親父、居るか?
馬の用意出来ているんだろうな?」
グレムと再びあの汚い親父のいる小屋に入ったら、親父は怪しいくらいの笑顔で出迎えてくれた。
「へい旦那。馬の用意はできてるぞですはい。貧乏兵士のオメェに勿体ない雇い主だな。
旦那、こんな小僧じゃなくワシを雇った方がいいと思うぞですはい」
「いや、大丈夫ですはい。
グレムに案内して貰うんで、だから親父さんは馬だけを用意してくれれば大丈夫ですはい」
「ククク、おっさん。親父の変な言葉使いが移ってるぜ」
「うるさいぞ小僧!旦那、じゃあワシに付いてこいですはい」
グレムに喋りに対して指摘を受けた事で、自分が親父さんと同じ語尾になっていた事に気が付いた。
「ほら、グレム。良いから親父さんに付いて行くよ」
「おっさん、顔が赤くなってるぜ」
グレムはまだ俺を茶化して笑っている。
そんなグレムをもう無視して外に出て親父さんに付いて行くと、ピーちゃんの大穴がある方向に歩きだした。
俺は嫌な予感がして俺の後ろを歩くグレムにコソッと親父さんは俺を嵌めて、更に金を奪おうとしているんじゃないかと聞いた。
「おっさん、あの親父は見た目と口は悪いけど、商売に関しては信用できるんだぜ」
「そうか、なら良いけど。俺は一応警戒しておくからな。ロップにアッシュ起きてるか?
一応、お前達も警戒していてくれ」
【はーい。主様】
【んー、まだ眠いけど主様分かった】
一応警戒をしたまま親父さんに付いて行くと、案の定ピーちゃんのいる大穴に辿り着き、大穴の前には屈強な男達が四人並んでいたが、馬も同数の馬がいた。どういう事だと頭が?になったが、それは直ぐに分かった。
「さてさて、旦那。そんな小僧なんか雇わんで此処にいる男達を雇ったらどうだ?ですはい」
「おい親父!どう言う事だよ!
コイツ等と馬にどう関係あるんだ。それに俺はおっさんにっておい、コラなんだ掴むな」
グレムが話している最中に親父さんは男達に指示を出して、グレムを押さえつけた。
それでズルズルと大穴にグレムを連れて行った所で俺は声を上げた。
「ストップ!何している?
俺はグレムを雇ったんだ。それで親父さんは馬だけを用意すれば良い。こんな男達は要らない」
「でも旦那、こんな役に立たない小僧がいるから、他を雇えないんだろ?ですはい。
きっと何か弱みを握られているんだですはい」
ふぅ、これ以上何言っても無駄か、それならばとグレムを引きずって大穴に落とそうとしている男達に向かって殺気を飛ばした。
すると、男達は泡を吹いて次々と倒れていった。
最初から倒されていたグレムも泡を吹いて白目を向いて痙攣していて、泡を吹いて気絶しているグレムを肩に乗せて馬の所に向かうと、途中で親父さんも倒れているのに気が付いた。
殺気は男達に向かって飛ばした筈だが、どうやら俺の近くにいた親父さんも俺の殺気に当てられたみたいだ。
まだ気絶しているグレムを馬に乗せて四頭いる馬を纏めて、教会から少し離れた場所に転移して教会に向かって移動し、教会に近づいて行くとグレムの元仲間である男達が教会前でウロウロしていた。
まだ金を奪おうと考えているのか、警戒しながら男達に近づくと、男達は気絶したグレムが馬に乗せられているのに気付いた。
「おっさん、グレムに何した!」
「ああ、殺気に当てられて気絶してるんだよ。
じきに目を覚ますさ」
「ああん?なんだとぉ、おっさんがやったのか?
許せん!俺達の親友に!」
最初に裏切って金を奪っただけでは無く、追いかけたグレムを殴った奴等のセリフだとは思えなく、怒り狂ったように殴り掛かってきた。
だが、俺の頭に乗っているロップが殴りかかってきた男達を何時もの耳ビンタで倒した。
【ふあ~~ぁ、主様、警戒するレベルじゃなかったね】
もしかしたら、俺がさっき殺気を出した時、まだロップは寝てたのか?それとも警戒を解除するよう言ってなかったから、俺に危害を加えようとした奴を懲らしめたのか分からないが、俺の頭でスヤスヤと眠っているロップを撫でて男達はその場に放っておいて馬は教会前に待たせて中に入ると、大きなリュックを背負ったマリエさんが、子供達と一緒に目の前に立っていた。
兵舎で助けた女性達は未だに目は虚ろで放心状態でいるが、少しは意識があるのか長椅子に座っていた。あの猿ぐつわを噛ませた少女は、変わらず口を塞がれていて手も拘束されたままだが、足だけ拘束を解かれていた。
「あの、おじさま。グレムは一緒ではないのですか?」
「あー、グレムね。気絶しちゃったから表で馬の背に乗せてるよ」
「え!グレム~~」
マリエさんは気絶している事を言った瞬間、表に駆け出して行った。
出て行ったマリエさんに続いて俺も外に出ると、丁度馬の背で気が付いていたグレムが自身の頭を両手で抱えながら、マリエさんを宥めていた。
「おいおいおい、マリエ。なに?どうした?
俺もなんで馬に乗っているか分からないんだけど、マリエ何か聞いてる?何か恐ろしい物だった気がしたんだけど全く憶えてない」
「おじさまがグレムが気絶してるって言うから、またグレムが無茶したんだと思っちゃったじゃない」
「あ、そうだ。おっさんだ。あの時……いや考えるの止めとこう。多分ピーちゃんより恐ろしかった気がする。それはそうと、なんでコイツ等が伸びてるんだ?」
「え?キャー!」
マリエさんがグレムに駆け寄って行くのを見ていたが、マリエさんはグレムの事になると周りに目が行き届かないようで、グレムの元仲間達を踏んづけたり、蹴飛ばしたりしながらグレムに近寄っていた。
「で、おっさん。コイツ等はどうしたんだ?
知ってたら教えてくれ」
「あぁ、俺もよく分からないけど、俺が来た時には既に教会前にいたんだ。
それで気絶したグレムを見て殴りかかってきたんだけど、俺の使い魔がな」
「あー、それは仕方ねぇよな。おっさんに殴りかかってきたんならコイツ等が悪い。でも何の為に来たのかくらいは聞いておきたいぜ」
「そうだな。じゃあ、一番軽傷そうな奴を起こそう」
マリエさんに蹴られても踏まれてもいない奴は一人だけいた。それは一番最初に俺に殴りかかってきた奴で倒れてはいるが、目を開けて瞬きをしているところをみると男は狸寝入りをしていた。
俺がその男に近づくと、男も俺が近づいている事に気付き目を閉じたが、もう既に遅く男の腕を掴んで持ち上げると「うわー殴らないで」と叫んだ。
「お前等、今更何しにしたんだよ。
俺はおっさんとマリエ達と国を出るからよ。
お前等とは此処で最後だな」
「いやグレム。俺達はお前に謝りに来たんだ」
「何を今更」
「本当に悪かった!金に目が眩んでつい、グレムに手渡された金を奪って更に追いかけてきたグレムを殴ってしまった事を反省してる。
だから、俺達も一緒に連れて行ってくれないか?
勿論、お前から奪った金は返す。
そこで白目剥いてる奴が持ってるから」
「分かった。許してやる。でも次、同じ事をしたら許さないからな!」
「ああ!もちろんだ」
「グレム良いのか?なんか都合良くないか?一緒に付いてきて何か企んでいるんじゃないのか?」
「いやいやいや、俺達は何も企んでなんかない!
グレムを殴ってしまった後、仲間達と話し合ったんだ。本当にこれで良いのかってグレムみたいな良い奴を裏切って本当に良いのかって」
「お前等、よし!おっさん、コイツ等も連れて行くぜ!何かあれば俺の見る目がなかったと思って諦めるぜ」
グレムは俺以上にお人好しの性格のようだ。
信じたい気持ちも分からなくはない。元々グレムの仲間だった奴等だ。
ここは一つ俺もグレムを信じよう。
「分かった。なら今伸びてる奴等を起こして行こっかね」
グレムとマリエさんとグレムの仲間の奴とで気絶して尚且つ、マリエさんに追加で怪我を負った奴等を教会に運び介抱した。
そして、起きた奴等が先程の奴同様にグレムを見るなに謝ってグレムもそれを許して、さあいよいよ王都を出ようという時、何か背中がゾワリとした。
【怖い怖い怖い。主様!何か嫌な物がくるわ】
【ボクもなにか嫌な感じがするよ】
頭に乗っているロップが俺の頭をペシペシと叩きながら、何かに怯えている。こんな事は初めてだ。胸にいるアッシュもプルプルと小刻みに揺れている。
未だにゾワゾワするが、なんだろうと思いながらも外に出てみても何もない。
今直ぐにでも王都を出ないとしばらく出られない気がした為、馬に引かせるための幌付きの大きめの荷車を想像魔法で出し馬に繋げた。
「お、おっさん。そんな物どこにあった?
いや、どこから出した?」
俺が荷車を出した事でグレムを含めた全員が目を見開いて驚いている。
その中でグレムが何とか口を開いたって感じだ。
「グレム!そんな事より、急いで女性達と子供達を乗せるんだ。俺の使い魔達が嫌な物が来ると警告してるんだ。説明は後でしてやる!急げ」
「あ、ああ、分かったぜ。おい、お前等!
おっさんの言う通り、女達と子供達を馬車に乗せろ!」
グレムの指示でグレムの仲間達は女性達と子供達を乗せた後、自分達も乗り込んだ。
俺はそれを確認した後、御者席に座り王都の外に転移した。
転移した場所は王都の門のロップが兵士だったグレムの同僚を叩きのめした場所で、気絶していた筈の兵士達は一人もいなくなっている。兵士が居たら一緒に連れて行ってやろうと思っていたが、居ないならと馬車を動かしだした。
その時、だいぶ遠くだが森の方角から人の大群がフラフラとした足取りでこちらに向かって来ているが、何か様子が変だ。
なにか様子がおかしいと思って、こちらに向かって来ている人達をよーく観察していると、首や腕が抉れているから、こちらに向かって来ているのは腐人だ。昨夜森で遭遇した兵士も混ざっている。
「ロップ、お前達が言っていたのは、腐人のことだったのか?」
【主様、あんなのじゃない早く逃げて】
ロップが逃げてと警告した直後、猿ぐつわして手も縛っていた少女が縛っていた縄と猿ぐつわを解いて馬車から脱走してしまった。少女はこちらに向かってくる腐人の方角に走って行ってしまって追い掛けようと手綱を握った。
「お姉ちゃーん」
【主様!来る】
弟君の姉を呼ぶ声が響いた直後にロップが来ると言った瞬間、俺が巨大なスライムだった時のアッシュと戦った場所から大量の灰色の何かが湧き上がった。
何かは分からないが、自分自身と馬車を守るようにシールドを馬車全体を包むように張ると、目の前を走って逃げていた少女が走って近くまで来ていた腐人達に捕まり食いつかれてしまって「痛い痛い」と泣き叫んでいると、今度は灰色の何かが少女と腐人諸共包みこんで少女は断末魔をあげた。
声は直ぐに止んだが灰色の何かは王都に津波のようにうねり押し寄せ、高い王都を守る壁など簡単に越えて王都に入って行った。
シールドの中から見て分かったが、灰色の物体の正体はマダニだった。しばらくすると目の前が灰色一色だったのが段々と視界が開けて行き、灰色のマダニはまだまだいるがだいぶ少なくなった。
断末魔をあげた少女の所を見ると、腐人と共に少女は骨だけになっており、腐人の腕に絡みついた形で立ったまま残っていた。
俺は少女の骨に手を合わせて黙祷をした後、王都の方から「ピィィィーー」とけたたましい音が王都から聞こえ、王都の門の方を振り向くと、三つの頭を持った虎の体だが下半身はドロドロの状態のピーちゃんが門を突き破って出てきて、三つの頭の一つがクチバシから光線を出して灰色の虫達を一掃していった。
だが灰色のダニは既にピーちゃんを食い付いているのか、光線を出し続けていた頭のピーちゃんの肉がいきなり内側に萎んでいき、骨だけになってしまった。窪んだ目の所からマダニがカサカサと出てきては、他の頭や身体の部分に移動してピーちゃんも断末魔をあげて地面に崩れ落ちた。
このままここに居てはマズイと考え、シールドはそのままにして、まばらになった虫を潰しながら馬車を発進させた。
しばらく馬車を走らせて馬が疲れを見せた辺りで、シールドを解いてゆっくりと進むようにしたが、手にチクリと痛みが走り手の甲を見ると灰色のマダニが手の甲に噛み付いていた。
急ぎ、もう片方の手で潰すと馬車の幌の屋根からパラパラっと落ちてきて、たった今潰したマダニの死骸を喰らってる奴と俺の首を噛み付いている奴とがいる。
「アッシュ、俺に取り付いてるマダニから馬車に取り付いているマダニを喰らえ」
【はーい】
アッシュは俺の身体全体を包み込んでマダニだけを溶かした。手に張り付いているマダニだけがシュワシュワと溶けて行くのは見ていて面白かった。
俺に付いてるマダニをアッシュによって取り除いた後、俺から離れ馬に移動して馬の身体を包み込んだ後、素早く馬車の幌や荷台に移動して行った。
【主様~、終わったよ~】
「あぁ、ご苦労さん。ありがとう」
【わーい、主様に褒められた~】
アッシュは再び俺の胸に薄く伸ばして張り付いたから頑張った褒美で撫でてあげると、触手を俺の顔に伸ばして喜んだ。
「親父、居るか?
馬の用意出来ているんだろうな?」
グレムと再びあの汚い親父のいる小屋に入ったら、親父は怪しいくらいの笑顔で出迎えてくれた。
「へい旦那。馬の用意はできてるぞですはい。貧乏兵士のオメェに勿体ない雇い主だな。
旦那、こんな小僧じゃなくワシを雇った方がいいと思うぞですはい」
「いや、大丈夫ですはい。
グレムに案内して貰うんで、だから親父さんは馬だけを用意してくれれば大丈夫ですはい」
「ククク、おっさん。親父の変な言葉使いが移ってるぜ」
「うるさいぞ小僧!旦那、じゃあワシに付いてこいですはい」
グレムに喋りに対して指摘を受けた事で、自分が親父さんと同じ語尾になっていた事に気が付いた。
「ほら、グレム。良いから親父さんに付いて行くよ」
「おっさん、顔が赤くなってるぜ」
グレムはまだ俺を茶化して笑っている。
そんなグレムをもう無視して外に出て親父さんに付いて行くと、ピーちゃんの大穴がある方向に歩きだした。
俺は嫌な予感がして俺の後ろを歩くグレムにコソッと親父さんは俺を嵌めて、更に金を奪おうとしているんじゃないかと聞いた。
「おっさん、あの親父は見た目と口は悪いけど、商売に関しては信用できるんだぜ」
「そうか、なら良いけど。俺は一応警戒しておくからな。ロップにアッシュ起きてるか?
一応、お前達も警戒していてくれ」
【はーい。主様】
【んー、まだ眠いけど主様分かった】
一応警戒をしたまま親父さんに付いて行くと、案の定ピーちゃんのいる大穴に辿り着き、大穴の前には屈強な男達が四人並んでいたが、馬も同数の馬がいた。どういう事だと頭が?になったが、それは直ぐに分かった。
「さてさて、旦那。そんな小僧なんか雇わんで此処にいる男達を雇ったらどうだ?ですはい」
「おい親父!どう言う事だよ!
コイツ等と馬にどう関係あるんだ。それに俺はおっさんにっておい、コラなんだ掴むな」
グレムが話している最中に親父さんは男達に指示を出して、グレムを押さえつけた。
それでズルズルと大穴にグレムを連れて行った所で俺は声を上げた。
「ストップ!何している?
俺はグレムを雇ったんだ。それで親父さんは馬だけを用意すれば良い。こんな男達は要らない」
「でも旦那、こんな役に立たない小僧がいるから、他を雇えないんだろ?ですはい。
きっと何か弱みを握られているんだですはい」
ふぅ、これ以上何言っても無駄か、それならばとグレムを引きずって大穴に落とそうとしている男達に向かって殺気を飛ばした。
すると、男達は泡を吹いて次々と倒れていった。
最初から倒されていたグレムも泡を吹いて白目を向いて痙攣していて、泡を吹いて気絶しているグレムを肩に乗せて馬の所に向かうと、途中で親父さんも倒れているのに気が付いた。
殺気は男達に向かって飛ばした筈だが、どうやら俺の近くにいた親父さんも俺の殺気に当てられたみたいだ。
まだ気絶しているグレムを馬に乗せて四頭いる馬を纏めて、教会から少し離れた場所に転移して教会に向かって移動し、教会に近づいて行くとグレムの元仲間である男達が教会前でウロウロしていた。
まだ金を奪おうと考えているのか、警戒しながら男達に近づくと、男達は気絶したグレムが馬に乗せられているのに気付いた。
「おっさん、グレムに何した!」
「ああ、殺気に当てられて気絶してるんだよ。
じきに目を覚ますさ」
「ああん?なんだとぉ、おっさんがやったのか?
許せん!俺達の親友に!」
最初に裏切って金を奪っただけでは無く、追いかけたグレムを殴った奴等のセリフだとは思えなく、怒り狂ったように殴り掛かってきた。
だが、俺の頭に乗っているロップが殴りかかってきた男達を何時もの耳ビンタで倒した。
【ふあ~~ぁ、主様、警戒するレベルじゃなかったね】
もしかしたら、俺がさっき殺気を出した時、まだロップは寝てたのか?それとも警戒を解除するよう言ってなかったから、俺に危害を加えようとした奴を懲らしめたのか分からないが、俺の頭でスヤスヤと眠っているロップを撫でて男達はその場に放っておいて馬は教会前に待たせて中に入ると、大きなリュックを背負ったマリエさんが、子供達と一緒に目の前に立っていた。
兵舎で助けた女性達は未だに目は虚ろで放心状態でいるが、少しは意識があるのか長椅子に座っていた。あの猿ぐつわを噛ませた少女は、変わらず口を塞がれていて手も拘束されたままだが、足だけ拘束を解かれていた。
「あの、おじさま。グレムは一緒ではないのですか?」
「あー、グレムね。気絶しちゃったから表で馬の背に乗せてるよ」
「え!グレム~~」
マリエさんは気絶している事を言った瞬間、表に駆け出して行った。
出て行ったマリエさんに続いて俺も外に出ると、丁度馬の背で気が付いていたグレムが自身の頭を両手で抱えながら、マリエさんを宥めていた。
「おいおいおい、マリエ。なに?どうした?
俺もなんで馬に乗っているか分からないんだけど、マリエ何か聞いてる?何か恐ろしい物だった気がしたんだけど全く憶えてない」
「おじさまがグレムが気絶してるって言うから、またグレムが無茶したんだと思っちゃったじゃない」
「あ、そうだ。おっさんだ。あの時……いや考えるの止めとこう。多分ピーちゃんより恐ろしかった気がする。それはそうと、なんでコイツ等が伸びてるんだ?」
「え?キャー!」
マリエさんがグレムに駆け寄って行くのを見ていたが、マリエさんはグレムの事になると周りに目が行き届かないようで、グレムの元仲間達を踏んづけたり、蹴飛ばしたりしながらグレムに近寄っていた。
「で、おっさん。コイツ等はどうしたんだ?
知ってたら教えてくれ」
「あぁ、俺もよく分からないけど、俺が来た時には既に教会前にいたんだ。
それで気絶したグレムを見て殴りかかってきたんだけど、俺の使い魔がな」
「あー、それは仕方ねぇよな。おっさんに殴りかかってきたんならコイツ等が悪い。でも何の為に来たのかくらいは聞いておきたいぜ」
「そうだな。じゃあ、一番軽傷そうな奴を起こそう」
マリエさんに蹴られても踏まれてもいない奴は一人だけいた。それは一番最初に俺に殴りかかってきた奴で倒れてはいるが、目を開けて瞬きをしているところをみると男は狸寝入りをしていた。
俺がその男に近づくと、男も俺が近づいている事に気付き目を閉じたが、もう既に遅く男の腕を掴んで持ち上げると「うわー殴らないで」と叫んだ。
「お前等、今更何しにしたんだよ。
俺はおっさんとマリエ達と国を出るからよ。
お前等とは此処で最後だな」
「いやグレム。俺達はお前に謝りに来たんだ」
「何を今更」
「本当に悪かった!金に目が眩んでつい、グレムに手渡された金を奪って更に追いかけてきたグレムを殴ってしまった事を反省してる。
だから、俺達も一緒に連れて行ってくれないか?
勿論、お前から奪った金は返す。
そこで白目剥いてる奴が持ってるから」
「分かった。許してやる。でも次、同じ事をしたら許さないからな!」
「ああ!もちろんだ」
「グレム良いのか?なんか都合良くないか?一緒に付いてきて何か企んでいるんじゃないのか?」
「いやいやいや、俺達は何も企んでなんかない!
グレムを殴ってしまった後、仲間達と話し合ったんだ。本当にこれで良いのかってグレムみたいな良い奴を裏切って本当に良いのかって」
「お前等、よし!おっさん、コイツ等も連れて行くぜ!何かあれば俺の見る目がなかったと思って諦めるぜ」
グレムは俺以上にお人好しの性格のようだ。
信じたい気持ちも分からなくはない。元々グレムの仲間だった奴等だ。
ここは一つ俺もグレムを信じよう。
「分かった。なら今伸びてる奴等を起こして行こっかね」
グレムとマリエさんとグレムの仲間の奴とで気絶して尚且つ、マリエさんに追加で怪我を負った奴等を教会に運び介抱した。
そして、起きた奴等が先程の奴同様にグレムを見るなに謝ってグレムもそれを許して、さあいよいよ王都を出ようという時、何か背中がゾワリとした。
【怖い怖い怖い。主様!何か嫌な物がくるわ】
【ボクもなにか嫌な感じがするよ】
頭に乗っているロップが俺の頭をペシペシと叩きながら、何かに怯えている。こんな事は初めてだ。胸にいるアッシュもプルプルと小刻みに揺れている。
未だにゾワゾワするが、なんだろうと思いながらも外に出てみても何もない。
今直ぐにでも王都を出ないとしばらく出られない気がした為、馬に引かせるための幌付きの大きめの荷車を想像魔法で出し馬に繋げた。
「お、おっさん。そんな物どこにあった?
いや、どこから出した?」
俺が荷車を出した事でグレムを含めた全員が目を見開いて驚いている。
その中でグレムが何とか口を開いたって感じだ。
「グレム!そんな事より、急いで女性達と子供達を乗せるんだ。俺の使い魔達が嫌な物が来ると警告してるんだ。説明は後でしてやる!急げ」
「あ、ああ、分かったぜ。おい、お前等!
おっさんの言う通り、女達と子供達を馬車に乗せろ!」
グレムの指示でグレムの仲間達は女性達と子供達を乗せた後、自分達も乗り込んだ。
俺はそれを確認した後、御者席に座り王都の外に転移した。
転移した場所は王都の門のロップが兵士だったグレムの同僚を叩きのめした場所で、気絶していた筈の兵士達は一人もいなくなっている。兵士が居たら一緒に連れて行ってやろうと思っていたが、居ないならと馬車を動かしだした。
その時、だいぶ遠くだが森の方角から人の大群がフラフラとした足取りでこちらに向かって来ているが、何か様子が変だ。
なにか様子がおかしいと思って、こちらに向かって来ている人達をよーく観察していると、首や腕が抉れているから、こちらに向かって来ているのは腐人だ。昨夜森で遭遇した兵士も混ざっている。
「ロップ、お前達が言っていたのは、腐人のことだったのか?」
【主様、あんなのじゃない早く逃げて】
ロップが逃げてと警告した直後、猿ぐつわして手も縛っていた少女が縛っていた縄と猿ぐつわを解いて馬車から脱走してしまった。少女はこちらに向かってくる腐人の方角に走って行ってしまって追い掛けようと手綱を握った。
「お姉ちゃーん」
【主様!来る】
弟君の姉を呼ぶ声が響いた直後にロップが来ると言った瞬間、俺が巨大なスライムだった時のアッシュと戦った場所から大量の灰色の何かが湧き上がった。
何かは分からないが、自分自身と馬車を守るようにシールドを馬車全体を包むように張ると、目の前を走って逃げていた少女が走って近くまで来ていた腐人達に捕まり食いつかれてしまって「痛い痛い」と泣き叫んでいると、今度は灰色の何かが少女と腐人諸共包みこんで少女は断末魔をあげた。
声は直ぐに止んだが灰色の何かは王都に津波のようにうねり押し寄せ、高い王都を守る壁など簡単に越えて王都に入って行った。
シールドの中から見て分かったが、灰色の物体の正体はマダニだった。しばらくすると目の前が灰色一色だったのが段々と視界が開けて行き、灰色のマダニはまだまだいるがだいぶ少なくなった。
断末魔をあげた少女の所を見ると、腐人と共に少女は骨だけになっており、腐人の腕に絡みついた形で立ったまま残っていた。
俺は少女の骨に手を合わせて黙祷をした後、王都の方から「ピィィィーー」とけたたましい音が王都から聞こえ、王都の門の方を振り向くと、三つの頭を持った虎の体だが下半身はドロドロの状態のピーちゃんが門を突き破って出てきて、三つの頭の一つがクチバシから光線を出して灰色の虫達を一掃していった。
だが灰色のダニは既にピーちゃんを食い付いているのか、光線を出し続けていた頭のピーちゃんの肉がいきなり内側に萎んでいき、骨だけになってしまった。窪んだ目の所からマダニがカサカサと出てきては、他の頭や身体の部分に移動してピーちゃんも断末魔をあげて地面に崩れ落ちた。
このままここに居てはマズイと考え、シールドはそのままにして、まばらになった虫を潰しながら馬車を発進させた。
しばらく馬車を走らせて馬が疲れを見せた辺りで、シールドを解いてゆっくりと進むようにしたが、手にチクリと痛みが走り手の甲を見ると灰色のマダニが手の甲に噛み付いていた。
急ぎ、もう片方の手で潰すと馬車の幌の屋根からパラパラっと落ちてきて、たった今潰したマダニの死骸を喰らってる奴と俺の首を噛み付いている奴とがいる。
「アッシュ、俺に取り付いてるマダニから馬車に取り付いているマダニを喰らえ」
【はーい】
アッシュは俺の身体全体を包み込んでマダニだけを溶かした。手に張り付いているマダニだけがシュワシュワと溶けて行くのは見ていて面白かった。
俺に付いてるマダニをアッシュによって取り除いた後、俺から離れ馬に移動して馬の身体を包み込んだ後、素早く馬車の幌や荷台に移動して行った。
【主様~、終わったよ~】
「あぁ、ご苦労さん。ありがとう」
【わーい、主様に褒められた~】
アッシュは再び俺の胸に薄く伸ばして張り付いたから頑張った褒美で撫でてあげると、触手を俺の顔に伸ばして喜んだ。
1
お気に入りに追加
7,123
あなたにおすすめの小説
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。