底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第4章

第36話

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第36話

地上に上がる階段の前にいる兵士は二人で数ある檻の前には一人も居ない所をみると、ここの地下には収容している奴隷は一人も居ないかと思った。

だが、それはグレムも同じ考えだったようで真っ直ぐ階段の方に向かったその時、空だと思っていた檻から呻き声が聞こえてきた。

階段の方に歩いていたグレムは立ち止まり、呻き声の聞こえた檻を凝視していた事で、階段前にいる兵士がこちらの行動が不審に思ったのか近寄ってきたが、グレムはそれに気が付いていない。


「おい、グレム。兵士が近寄ってきたよ。
これに対処する方法はあるんだろ?」

小声でグレムの背中を軽く叩いて、気付かせようと試みるが、グレムは俺の行動に気付かないまま兵士が目の前にやって来た。


「おい!さっきから何ボーッと突っ立っている!
て、おい、その奴隷首輪してないじゃないか」

「え、あ、ああ、コイツは喋る事全部喋ったからピーちゃんの餌に持って行くんだ。
それでもう一人の奴隷はもう少し楽しむそうだ」


兵士がグレムの肩に手を置いた事でグレムは気が付いて、前もって考えていたのかツラツラと喋りだしたが、ピーちゃんとは何なんだろうか?


「そうか、なら早く持って行け、ピーちゃんも最近奴隷の餌が少なくなったんで気が立っているみたいだからな」

「ああ、その前にあそこの檻の様子を見に行っても良いか?」

「あ?なんだ?あそこはスラムから連れてきたヤツしか入れてないぞ。っておい!」

兵士がスラムの人が檻にいると言った瞬間、兵士が次に言葉を発する前にグレムは檻の方に足を進めた。俺の手を縛っている縄を持ったままだったから俺も一緒に檻の前に連れて行かれると、檻の中には指があらぬ方向に曲がり、脚を膝から先を切断され顔中血と痣だらけの男性が入っていた。

「ゔゔ、こ、殺してくれ」

掠れ声で殺してくれと懇願している男性の傍ら(かたわら)には小さな子供が無残な状態で横たわって死んでいる。その姿は男性同様に指を曲げられ、脚も切り取られ、顔は火で炙ったような後があった。


「誰がこれを?」

グレムは声を震わせながら、後方にいる兵士に聞いた。


「あー、コイツか、コイツは前に来た奴隷解放を言って回っていた仮面のヤツと一緒にいたから捕らえて、仮面の奴との関係を調べたんだよ。
仮面の奴が居なくなった後の数日で奴隷が一斉に居なくなったんで、コイツが関係している筈だと兵士長が言ったんで探しだして拷問かけたが一向に喋りやがらねぇ。ってんで一緒に連れて行った家族を目の前で拷問にかけたんだ」

「それで喋ったのか?」

「いんや、何も喋りやがらねぇ。だから別のヤツだったんじゃねぇかってんで今スラム中を捜索中だ」


グレムは身体と声を震わせながら、男性を見つめ近寄ってきていた兵士が腰に刺していた剣を奪い、男性の心臓を突き刺して殺してあげた。男性は涙を流しながら感謝を述べて息を引き取った。


「あーあ、殺しちまったか。まぁ、散々楽しんだしいいか。コイツの嫁は上等兵士に渡す前に拷問部屋で俺達で楽しんだしな。ついでにコイツもピーちゃんの餌に持って行けよ。荷車は上に置いてあるだろ。そこまでは手伝ってやるよ」


兵士はそう言うと檻の鍵を開けて檻の中に入った瞬間、グレムは兵士の首を剣で斬り飛ばした。


「おい、何が起きた!」

グレムが兵士の首を斬り飛ばした所為で、兵士が大きく前のめりで倒れ鎧が地面に大きく当たって大きな音がした為、階段にいたもう一人の兵士が駆け寄ってきたが、俺が縛られている両手を振って近寄ってきた兵士の腹を殴り飛ばして気絶させた。

「おっさん、ありがとな。この人達をピーちゃんの餌にだけはしたくないんだ」

「さっきからピーちゃんって何の事だ?」

「あぁ、ピーちゃんかピーちゃんは魔物の名前だよ。おっさん、死んだ奴隷や使い物にならなくなった奴隷ってどうしてると思う?その辺の外に捨てていると思うか?」

「いや、どうしているんだろう。
まさかピーちゃんという魔物に与えているのか?」

「そうだ。奴隷や罪人の死体を処理する用の魔物だ。確か、ピクトラトルって名前の鳥の魔物で、呼びにくいからピーちゃんって呼んでいる。町外れの大きな穴で飼っているんだ」

「そうか、それで?この人達はどうする?
埋葬したいなら、しばらく俺が預かっておくが」

「そうしたいけど、どうやってだよ」
「こうやってだよ」


俺は亡くなった親子に手を翳してI.Bに収納した。

「な、おっさんどうやった!」
「うーん、もう説明も面倒だし秘密にしておく」
「何でだよ!」

グレムはしつこく亡くなった親子が何処に行ったかを聞いてきたが、説明も面倒だし説明したところで恐らく理解出来ないだろう。そんなグレムは放って置いて、気絶させた兵士は兵士の着ている服を破って口の中に布を入れて猿ぐつわとして噛ませてと、手足を余った布で縛った。お陰で兵士は全裸に鎧といったなんともマヌケな格好で気絶している事になった。

「おい!っておっさん聞いているのかよ」

「ん?まだ亡くなった親子が何処に行ったかを聞いているのか?」

「ちげぇよ。それも気になるけど言わねぇんだろ?今言ってるのは上に上がるって言ってんだよ。兵舎に用があるんだろ?俺も兵舎に用ができたしよ。あの人の嫁さんを見つけて助けてあげないと」

「兵舎のどの辺にいるか分かるのか?」

「上等兵士に渡したって言っていたから、大体の居場所は想像がつく」

「因みに俺が連れてきた男の子の姉は何処にいるか分かるか?」

「ああ、それも分かる。おっさんが見たのが昼頃だったら、まだ犯されてない筈だ。奴らも仕事があるからヤルなら夜か夜中やる筈だからな」

「それなら早く地上に出て助けよう。
助けるのが簡単な方から助けよう」

「おっさん、お人好しだな。あの姉ちゃんはおっさんを逃亡犯罪者呼ばわりしたんだぞ。
今ならおっさんが逃亡犯罪者なんかじゃない事くらい俺にも分かるぜ」

「いや、元々逃亡犯罪者じゃないって説明しただろうが」
「そうだったっけか?まあ良いじゃねぇか。
とっとと行こうぜ」


俺とグレムは階段を駆け上がり、地上に出ると外は薄暗く、夜の六~七時頃くらいか。
これは急いで兵舎に向かわねばならないと思い、未だに縛られていた自身手の縄を引きちぎってグレムを肩に担ぎ、堂々と兵舎の正面から駆け込んだ。

兵舎の玄関はとても広く、数多くのロッカーが並んでいる。玄関には多くの兵士達は既に居て、身につけている鎧を脱いで自分の鎧や武器をロッカーに仕舞っている者や、これから見回りなのか鎧を着込んでいる者とが居て、そんな所に俺は飛び込んだ拍子に入口付近にいた兵士を突き飛ばし、兵士は奥まで転がって行った。

「侵入者だ!武器を構え殺せ!」

多くの兵士はポカーンとしていたが、俺が侵入者だと気が付いた一人の兵士が叫び、全員が剣や槍など様々な武器を持ち臨戦態勢をとった。

「命知らずめ死ね!」

そんな兵士の何人かが剣で斬りかかって来たが、その全てを避けながら兵士達の武器を持った手首をチョップして武器を持てなくし、片手で掌底を兵士達に次々と当て飛ばして行く。そんな光景を見た後方の兵士達は驚いた表情をしていたが、兵士達に火が入った様で更に多くの兵士が襲いかかってきた。

流石に肩に担いでいるグレムが邪魔だと感じ、玄関の隅に担いでいるグレムを置いてアッシュにグレムを守るよう命令した。


【主様~、敵がこっちにきたら食べてもいいの?】
「なるべく食うな。でも兵士の身につけている物なら食って良い。それでも襲ってくるようなら兵士ごと食っていい」
【は~い】

「グレムはしばらく俺の使い魔と一緒にいてくれ。必要になったら連れて行くから心配するな」
「うお!なんだこりゃ」

アッシュにそう命令すると、アッシュはグレムを包み込むように薄く囲んだ。それによりグレムは驚きビクビクしている。これでグレムの心配はしなくて大丈夫そうだ。グレムとアッシュの方を見てばかりいて、兵士が斬りかかった剣が目の前を掠め、ギリギリ当たらない事に肝を冷やしたが、斬りかかった兵士は何故か後方に飛んでいた。

首を傾げながら回りを見るとピンク色の毛が見えて、まさかなと思いつつ兵士達の方に向き直ると目の前には小さな羽をパタパタさせているロップが目の前にいた。ロップがいつの間にか兵舎に入っていて斬りかかった兵士を耳ビンタで叩き飛ばしていたのだ。


「おい、ロップ、お前は弟君を守れと言ったはずだぞ。なんでこんな所にいる!」

【大丈夫だよ。あの子なら任せられる人に預けてきたから】

「意味不明だけど詳しい話は後で聞くからな」


それだけ言うと襲いかかる兵士達を次から次へと掌底で叩き飛ばして行く、ロップも同じように耳ビンタで地面に叩きつけたり叩き 飛ばしたりしていた。

アッシュを見るとアッシュも言いつけ通り、グレムを守る為にグレムに近づいた兵士に対してアッシュは自身から小さく分離させたスライムを兵士にくっつかせて武器を溶かした後、鎧と服と兵士の身につけている物全てを溶かして自身の本体に戻した。

アッシュに近づいた兵士は全裸の状態で身体の毛という毛が全て無くなっている状態だ。
正直、自分で命令したとはいえ酷い状態だなっと思ってしまった。そんな全裸の兵士を見た他の兵士はアッシュに近づこうとする者は居なくなった。

次々と兵士を倒していると、後方でコソコソと後ろに下がって走り出した兵士を見つけた。

「アッシュ、ロップ、この場はお前達に任せる!
アッシュは絶対人を食っちゃダメだ」


後を追うべくアッシュが囲んでいるグレムを再度肩に担ぎ、アッシュとロップにこの場を任せる事を命令して後方に下がっていく兵士を追い掛けると、今まで戦っていた兵士も一緒に付いてきた。

「うえぇ⁉︎おっさんおっさん後ろぉ、皆んな付いて来てるぜ!」

「分かってる!ロップにアッシュ!後ろからでも数を減らしてくれ頼む」

【わーい頼まれました~】
【主様に頼られたの初めてだね。私を頼ってくれて嬉しい。アッシュより頑張る】
【むー、ボクの方がロップより頑張るよ~】
【主様は私を頼ったのよ】
【ボクだよー】
【じゃあ勝負する?倒した数が多い方が主様に愛されているとして】
【よし乗ったー。絶対ボクが勝つよ】


俺が使い魔達に命令ではなく、頼んだ事によって二匹ともヤル気を見せてくれたが、使い魔同士で言い合いをしだして仕舞いには兵士を倒した数で俺に愛されているとか、訳わからない事になってしまっている。

後ろでバキバキと嫌な音が聞こえる中、未だに兵士達が追いかけている音が聞こえる事で廊下一面にシールドを張った。

すると、背後から「ブベラ」っと声がして後ろを振り返ると見えない壁に激突した兵士達が凄い顔していた。

「なあ、おっさんがこれをやったのか?」


肩に担いでいるグレムが驚き、見えない壁を指差して恐る恐る俺に聞いてきたが無視して未だに振り返りもせずに逃げている兵士を追い掛け、二階三階と駆け上がった先に一つの扉があり、逃げた兵士は勢いよく扉を開けて中に入って続けて俺も入ると中は、お香でも焚いているのか煙が充満していた。

「た、大変です!下の玄関にとんでもない強さの男と男に使役されてると思われる魔物が暴れまわってます」

兵士は背後にいる俺に気付かず、侵入者である俺の事を部屋に入るなり大声で叫んだ。
部屋はランプをいくつ灯しているのか凄く薄暗く、部屋の中の人の形がかろうじて分かる程度で、複数の人影が見える。

「あっそ、それで侵入者をここまで連れてきたのか」
「へ?えふ」

兵士が背後にいる俺に振り向いた瞬間、強めのデコピンを手加減しつつ兵士のでこに当てて気絶させた。

「チッこれから良いところなのに邪魔しやがって、侵入者よ。このまま引き返すなら許してやろう。だが、引き返さないならここで死ね」


部屋の中の人影が動くと左右から人が現れてナイフで刺しにきたが、念のため正面以外に俺の回りにシールドを張っていた為、左右にいた人はシールドに弾かれて倒れた。

まだまだ薄暗い部屋に目が慣れない事に不満を持った俺は、光の玉を想像魔法で出して部屋全体を明るくした。すると、部屋はかなり広く部屋内にいる者全員が裸で、その中にあの娘は勿論他にも女性がいて、その女性等全員が裸で鎖や縄で縛られていた。

「おっさん、も、もう俺、我慢の限界だぜ」

その中グレムは服を脱ぎ出し全裸になると、縛られている女性の元にフラフラと歩きだした。
もしや、この煙に催淫効果があるのではと口を塞いで、グレムを四方シールドで囲んで動きを止めた。
グレムはシールドをカリカリと爪で引っ掻きだし、爪が剥がれても血だらけの指で必死にシールドを破ろうとしている。

正直、俺も股間は暴発しそうなくらい大きくなってきており、グレム同様に女性の方に行きたい気持ちもあるが、理性でなんとか保っている状況だ。

元々部屋にいた男達も股間をギンギンに勃てたまま俺に殺意を向けているのか目が血走っている。


「クククお前の連れはこんなんだが、お前はなんともないのか?今、大人しく投降すれば女を分けてやるぞ?」

「くっ、だ、誰がお前に投降なんかするか!」


部屋にいる偉そうな男が嫌らしそうな顔と言い方で挑発してくるが、なんとか耐えつつどうするかを思案していると、足元に異変を感じるのと同時にフワリと空を飛んだ時と同じ浮遊感を感じた。

気のせいかとも一瞬思ったが、気のせいでは無く本当に宙に浮いていて俺だけじゃなく、この場にいる全員が無重力空間にいるみたいに宙に浮き出し、何事かと思っていると壁がバキバキっと壊れだした。

何やらマズイと思い、この場にいる女性達とグレムを瞬間転移により建物の外に転移して建物があった所を見ると、建物が巨大な竜巻によって上空に巻き上げられていた。


「あー、何なんだ?何がどうしてこうなったんだろう」

兵舎が巻き上げられているのを見てそう呟いていると、足に何か当たって足下を見るとロップが俺の足のつま先に前足を置いて何か申し訳ないような感じでいた。
よく見るとアッシュもロップの後ろにいて、表情は分からないがプルプルと嬉しそうにしている。

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