底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第4章

第34話

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第34話

壁の中に完全にハマってしまって、アッシュにつっかえている場所を溶かして貰おうとも考えたが、下手に溶かして崩落でもしてしまったら、ひとたまりもない。
そんな事を考えていると、未だに爆笑していた声が「あ、マズい」って声に変わった。

それで視線を声の方に向けると、足しか見えないがドタバタと慌てている様子が見える。
そんな様子を観察していると目の前に複数の足が穴を塞ぐように並んだ。

「おい!お前達、何を隠している!」

威圧的な声が聞こえた所でようやく、町の取り締まりの兵に見つかったんだな。っと理解した。
それではこのままじゃ俺も見つかるのも時間の問題だろうと考え、とりあえず外に転移した。

そしてロップを抱きかかえている弟君ごと穴から離れ、間一髪見つからず間に合った。


「こんな所に穴を開けて何しようとしていたんだ!あーあ、お前達これ元に戻せるのかよ。
これじゃ外から丸見えだよ。
王都中の奴隷達も消えてるし、丁度いいな。お前達全員奴隷落ちだ」


声だけを聞くと穴を覗き込んで外を見ている様子で、俺を中に入れてくれようとしていたグレムと手引きしてくれようとしていた者達全員が、奴隷落ちとかマズい展開になってきてしまっている。

俺の所為でグレムだけじゃなく、グレムの仲間達すらも奴隷落ちとか絶対させてはいけないと、壁の中に入って壁を空けた理由を説明しなければと瞬間転移で壁の内側に転移すると「ブベッ」っと変な音が聞こえた。


「うお!お、お前、ど、どこから現れた!」


回りを見ると俺を囲むように、灰色の鎧を着込んでいる兵達が俺が目の前に現れた事で驚いていた。視線を壁側に見やると壁側に押し付けられている見知らぬボロいを着た複数の人達とグレムがいる。

そして、回りで驚いていた兵士達は何やら凄く睨んで殺気めいたモノを出してきたが、俺は特別に何かした訳じゃなく頭に?を浮かべ、とりあえずは壁に押し付けられているグレム達を解放するように頭を下げた。


「兵士様方、申し訳ございません。
そこの人達は私をこの町の中に入れてくれようとしてくれた人達で、悪いのは私だけなんです。ですから、その者達は解放して頂けないでしょうか?勿論、タダでとは言いません。それ相応の金をお支払いしましょう」

「その前に、そこを退けぇーー!」


頭を下げても一人の兵士が剣を振り上げ斬って来たが、剣を人差し指と親指で掴むと、簡単に奪う事が出来た。奪うつもりで掴んだ訳じゃないから、直ぐに手を離すと「ギャッ」と声が聞こえ足元を見ると、うつ伏せに倒れている兵士がいた。
俺は兵士の上に立っていたのか、その兵士の太腿には先程の剣が刺さっている。


「あ!そういう事だったんですね。
すみません、足元が平らだったから気が付きませんでした。勿論、傷は癒します」


そう言い、直ぐに兵士の上から退いて刺さっている剣を抜いて、手をかざして傷を癒した。
それでも回りの兵士達の殺気は収まらず、先程まで踏んでいた兵士も起き上がって斬りかかってきた。

今度は剣を掴まずに避けていると、壁に押さえつけられていたグレムとその他の人達を押さえつけていた兵士達も俺の方に参戦した事により、グレム達は解放された事でそーっと逃げて行った。

俺もこのまま避けてばかりでは面倒で疲れるから、壁の上に転移して下を見下ろすと兵士達は俺が目の前で消えた事により、辺りをキョロキョロと探しだし、あまりにも見つからない事で諦めて何処かに行ってしまった。

壁の上からグレムを探すと、グレムよりも先に弟君の姉である少女を見つけてしまった。だが、あの少女は首輪を着けられており、先程の兵士と同じ鎧を着ている兵士達によって手を縄で縛り歩かされられていた。

そんな姿の少女の連れて行かれる行方を目で追跡すると、多くの兵士が出入りしている建物に入って行った。その建物が何であるかを知る為に、グレムを探さなければいけない。


「おっさん、さっきはありがとな」
「うお、ビックリした」

探そうと思っていたグレムは既に壁の上にいる俺の横に居た。ビックリして壁から落ちそうになってしまったが、踏み止まってグレムに少女が連れて行かれた建物を指差してあの建物が何なのかを聞いた。


「あそこか?あそこは見ての通り兵舎だ。
兵舎に何か用があるのか?」

「ああ、あそこに目当ての少女が首輪を着けられて先程連れて行かれていたからな」

「だったら間違いなく奴隷落ちにされてるぜ。そのうえ、兵士達の慰め用にされるぜ」


矢張りか、正直あの少女が今更どうなってもいいんだが、あの幼い弟君の事を考えると少女は助けてあげて、しばらく生活できるだけの金を渡して立ち去るのが一番良いだろう。


「おっさん、まさか兵舎に潜入するつもりなのかよ」

「ああ、そのつもりだ。できれば協力して欲しいが無理にとは言わない。あまりやりたく無いけど力技で無理矢理正面から入るから」

「あー、もう仕方ねぇな!協力してやるよ!でも報酬は多めに貰うからな!」


グレムの目を真っ直ぐに見て頼むとグレムは頭をボリボリと搔きむしりながら、仕方なく協力してくれる事を約束してくれた。


「それで、おっさんの使い魔に協力してもらおうと思うけど、あの強い使い魔は何処にいるんだ?」

「普通に外に弟君のお守りで置いて来たけど」

「はあ?何だって、あの強い使い魔が居なければ作戦の立てようがないじゃねぇか!」

「そうなのか?それなら直ぐに連れてくる」


グレムにそう言うと、ロップを抱いた弟君がいる場所に転移した。弟君は今にも泣きそうな顔をしながらロップを抱いて立っていたが、目の前に俺が現れると、大泣きしてしまった。

咄嗟に抱かれているロップが耳で弟君の口を塞いで、俺もロップの耳の上から手を当てながら弟君を抱いてグレムの所まで再び転移すると、グレムは目を何度も擦り俺を凝視している。


「おっさん、どうやって連れてきた?」

「ん?普通に転移して連れて来たけど?」

「転移だと?そんなんがあれば、あんな壁から入らなくても良かったじゃねぇかよ!」


グレムは大声で俺にツッコミを入れたが、その声が元に近くを徘徊していた兵士に見つかってしまい、多くの兵士が壁の上に集結した事により、捕まってしまった。

逃げようと思えば逃げられるが、あの少女を助けるのに丁度良いと思い、抵抗しないまま捕らえられた。グレムは暴れていたが多勢に無勢で、兵士数人に殴られた事で呆気なく大人しくなった。

弟君は人質として町から連れてきたと嘘を言うと、弟君だけ解放されて町中にロップを抱かせた状態で置き去りにされた。

俺達が連れて行かれる時、ロップにはアイコンタクトで引き続き弟君を守れと、言ったつもりだが分かってくれたかな?

グレムはブツブツと「ああ、とうとう奴隷にされる時が来た。もう俺は終わりだ」と同じ事をずっと繰り返し言っている。

何が終わりか分からないが、沢山の兵士達に連れて行かれたのは兵舎ではない別の建物だった。
そこでは沢山の様々な種類の首輪が壁に並んでいて、カウンターが一つあり、俺がいうのもなんだが、小太りのおじさんが一人だけいた。

兵士の一人がおじさんに俺達に合う首輪をと尋ねると、普通サイズのと大きめのサイズの二つの灰色の重量がありそうな首輪をカウンターにゴトリと置いて、兵士は金を払いグレムから首輪を着けだした。

首輪の中央にはゴツい鎖が付いており、グレムは再び暴れたが兵士達に取り押さえられ呆気なく着けられた。次に俺の番になった事で念の為、胸で今迄大人しくしていたアッシュに小声で首にそーっと移動しろと言うと、アッシュは首に移動した。そして俺にも首輪を取り付けられた。


「ああ、俺終わった。隷従の首輪まで着けられてしまった」


グレムは隷従の首輪を着けられて終わったと言った所で兵士達はゾロゾロと俺達を連れて兵舎の方角に行き、そのまま兵舎に入るかと思えば兵舎に隣接している掘っ建て小屋に連れて行かれ、掘っ建て小屋に入ると、直ぐに地下に下る階段があった。

そこで地下に続く階段を下って行くと、広めのフロアに着いたが、階段は更に下に続いていて俺達は更に下に連れて行かれ、どれほど下に下ったか分からなくなった頃、階段の終点に辿り着いた。

階段の壁には松明があったが、終点は真っ暗で全く何も見えない状態だったが、兵士の一人が手持ちのランプに火を灯すと薄っすらとだが終点の場所が見えてきた。

終点となる所は狭い通路があって、一つの扉があるだけだった。兵士は鍵を使って扉を開けると、またも真っ暗で兵士の持つランプでは部屋が見えない。そう思っていると、ランプを持っている兵士が壁側に寄って他に火を灯して行く。

そうすると、部屋の全体が見えてきたが、部屋の全体を見てビックリした。それは、様々な拷問器具があったからだ。

椅子の座る所に薔薇のような棘があったり、アイアンメイデンといわれる棺のような箱の内側に複数の針が取り付けられたりといった器具があり、グレムは何も取り付けられてない椅子に手足を縛られて座らせられ、俺はバツ印の板に張り付けされ手足を縛られた。

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