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第4章

第14話

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第14話

引き返してきた俺達は、早速商人とシオン達を集めて先程の説明をしていくと、商人と冒険者達は青褪めた顔をしていたが、シオンは俯いて考え事をしている様子だ。


「ミーツにダンク、お前達は腐人を見た後に町がどうなっていたかを見たか?」

「見てないわ。でもあれだけ大群の腐人よ?
町は壊滅したと思っても良いと思うわ。
それに、この地面に残る様々な足跡は魔物が沢山歩いた跡でしょ?だから…」


姐さんは言葉に詰まったが、詰まった先は誰もが想像できる為、姐さんに敢えて聞こうともしなかった。


「それでも町の現状を知っておく必要があるぞ。それによっては、ここから遠回りしてでも王都に向かわねばならないからな。

ミーツ、商人を抱きかかえて町の様子を空から見て来てくれ」

「え?ミーツさんって空を飛ぶ魔法も使えるのですか?水や火に氷だけじゃなかったんですね。それならそうと早く言ってくれればよかったのに」


シオンが俺に商人を抱きかかえて町の様子を見てこいと言う言葉に商人が反応して、空を飛べる事を早く知っておきたかったと、ブツブツ呟いている。

シオンもアッサリと俺が空を飛べる事をバラしたけど、状況が状況だから別に良いと思ったが、シオンは自分で商人には魔法の事を言うなって言ったの憶えているのかな?
それに商人より機転がきく姐さんの方が良いと思うんだが。

「ミーツ、早く商人連れて飛んで行け」

「シオン、そこは商人ではなくて姐さんの方がいいんじゃないか?」

「駄目だ。ダンクでは町の元々の配置から避難場所などは知らないだろ。
それに、商人の馬車の修理に力のあるダンクが必要だからな」

「確かに、じゃあ商人さん行きましょうか」


俺は商人を背負ってゆっくりと上昇すると商人は、興奮しているのか呼吸が荒く、俺の首元や耳に息がかかって気持ち悪くて臭い。

背中の商人の示す方向に飛んで行くと、先程の腐人の大群が見えてきた所で、商人は腐人の大群を見て恐ろしさでなのか、更に呼吸が荒くなってブルブル震えだした。


「あ、あの、ミーツさんの魔力は町まで持つのですよね?
今、魔力切れとかにならないで下さいよ」

「大丈夫ですから、あまり密着しないで下さい」

「む、無理ですよ~。
絶対離しません!」


うーん、正直商人の息と体臭が臭すぎるから、あまりくっ付かないで欲しいのだけどな。
仕方ない、商人の示す方向に向かって急ぎめで飛んで行こうと思って、飛ぶスピードをアップさせて行くと、腐人の大群の後に少し距離をおいた所に外壁も建物もボロボロの町に着いた。

上から見る限りでは、生きている人は居ないんじゃないだろうかと思うくらい、腐人と人型の魔物が町中をウロウロしていた。

人型の魔物は首無しで鎧を着ているデュラハンや、腕が複数生えている阿修羅みたいな魔物?が腐人とぶつかりながら徘徊している。

時折、腐人?人を食べている魔物もいて見ていて気分が悪くなる光景だ。


「ミーツさん戻りましょう。
この惨状では、きっと生きている人なんて居ませんよ」


町全体を潰したくなるような光景を見ていると、息の荒い商人は避難場所も確認しないまま戻ろうと提案してきた。


「でも、避難場所くらいは確認しなければ、ここに来た意味がないですよ」


俺がそう言うと、商人は首をフルフルと横に振ると
「ここまで壊滅してたらどれが避難場所かなんて分かりませんよ。もういいでしょ、行きましょうよ~」


避難場所も分からないと言う商人に正直飽きれて、連れてきた意味のない事を言い続ける事に苛立ちを覚えたが、苛立っても仕方ないし納得出来ないが戻る事を考えていると、何か気になる物が目の端に入った。

その気になる物とは、建物はボロボロだが、かろうじて屋根が無事で人が集まって座り込んでる姿だった。動かない所をみると腐人ではないのか?

一応、腐人の可能性もあるかもと考えて、刀を取り出して無事な屋根に降り立とうと下降していると、商人がパニックになって俺にチョークスリーパーしてしまい、俺もパニックになりながら屋根の上に落下してしまった。

幸い落下の衝撃で屋根は壊れなかったみたいで安心したが、念の為に屋根を支える様に下からブロックの柱を数本建てて屋根が崩れない様に想像魔法で作った。

商人は落下の衝撃で気を失っているみたいだから、商人の気を失っている隙に集まって座り込んでいる人の元に行くと子供ばかりだった。

踞っているから年齢は分からないが、見た目は大きい子で14才前後くらいで小さい子で7才前後くらいか?

でも、まだ腐人ではない確信がない為、直ぐに逃げられる様に、子供達の肌に手を触れると僅かだが人の温かさを感じて腐人ではない事に安堵したが、どの子も衰弱しきっていて俺をチラリとも見ない。


「ミ、ミーツさん!魔力切れですか?
そんな腐人に近づいたら、ミーツさんまで腐人になっちゃいますよ。離れて下さい!
早く戻りましょうよ!こんな場所から早く戻らなきゃ駄目なんですよ」


商人がいつの間にか気がついていて、俺が腐人といると思ったのか、パニックになりながら戻ろうを連呼しだした。

五月蝿いと思いながらも商人の元に向かうと、商人は俺に抱きついて、更に戻ろうを連呼しだしたが、俺は戻るにしてもこの子らと一緒に戻ろうと考えた。


「商人さん、戻るのは良いですけど、あの子達も一緒に戻りますよ」

「嫌です。腐人と一緒とか絶対に嫌です」


勝手に腐人と断定している商人に少し腹が立ったけど、説得しなければいけない。


「あの子達は衰弱していますけど、腐人ではないみたいなんで、一緒に戻りますよ。
幸い戻る方法はありますから」

「嫌だ!絶対嫌だ!ミーツさん、今は腐人ではないかもですけど、絶対これから腐人になりますよ!帰る方法なんて飛ぶしかないのでしょ?私は絶対あっちの腐人の側には行きません」


正直、面倒になってきた俺は商人の服を掴んで子供達の元に連れて行こうとすると、商人は俺の行動に気づいて足を踏ん張って動かなくなった。

それでも俺は強めに服を引っ張っると、服が破れて商人は屋根から落ちそうになるも、慌てて俺の手に掴まり落ちずにすんだ。


「なんて事するんですか!もう貴方を雇うのを辞めます。辞めるんですから私を元の場所に戻して下さい」

「ふぅ、分かりました。
もう雇い人ではないなら、これから好き勝手をします」


正直有り難いと思った。
これで好きに行動できると思ったからだ。
早速行動を開始する事にして、商人の手首を掴んで無理矢理ズルズルと子供達の元に連れて行くと、商人は慌てて俺を叩いたり掴んでいる俺の手に噛み付いたりしたが、それでも構わずに子供達の元に連れて行くと、商人は諦めたのかその場で座り込んだ。

俺は広めの布を取り出して子供達に被せて、ついでに商人にも目隠し用に顔をすっぽり被る様に布を被せてシオン達の元に瞬間転移した。


「「「「は?」」」」

「あらあら、ミーツちゃん使っちゃったのね。
そんなに切迫詰まってたの?」

「あーあ、使っちまったか、お前がそれを使ったって事は、かなり危ない状況だったって事だよな?」


冒険者達は目が点になっていて、姐さんとシオンは普通に状況を聞いてきた。
冒険者達はとりあえず、放置しておいて後でシオンか姐さんに説明をお願いしよう。

俺はさっきまでいた町の様子から、空から見た腐人の大群の様子までを説明したところでシオンと姐さんは苦い顔をしだした。


「ミーツちゃん、魔物はどんな魔物がいた?
それと腐人の大群はどのくらいいて、後どのくらいで、あたし達の元に着きそう?」

「魔物はまだ名前を知らないけど、人型の魔物だと思う。首が無かったり腕が複数付いていたりしていた。でも腐人が魔物を襲わなかったのが不思議だったな。

大群はもう既に着いていても不思議じゃない筈だよ。腐人の数は多分だけど、百より少し多いくらいはいたと思う」


「ミーツちゃん、腐人は人間しか襲わないわ。獣や魔物は襲わないの。偶に例外もあるけど基本は人だけね。
数はそんなにいたのね。今迄、そんなに発生したって聞いた事がないわ」


「ダンク、お前は聞いた事なくても俺は見た事も対処方法も知ってるぞ。
先の戦争後は大変だったからな。
腐人は放置するか、俺の光魔法の上位魔法を使うか、神聖魔法を使うかしか大まかな対処方法がないんだ。

数匹くらいなら剣や槍で頭を突くか切り落とせば良いが、数百人となれば今言った方法しかないな」

「シオン、放置ってどのくらいの期間放置するんだ?」

「状態にもよるが、大体30日から150日程度だな。前に放置方法取った時は数百の魔導師を使って腐人を囲むように穴を魔法で掘って放置したぞ。穴に落ちた魔導師もしたがな」


成る程、それも一つの解決方だと思うが、今回やるとしたら穴じゃなく、壊れないような壁がいいだろうな。
穴だと旅人が知らずに落ちそうだし。

シオン達と話していると、商人が大人しい事に気が付いて、商人の方を振り向くと透明な長方形の箱の様な物に入っているのか、音は聞こえないが壁をバンバンと叩いているみたいだ。

ソルトがシオンと姐さんとの会話を邪魔しないように、気を効かせたみたいだな。
相変わらず馬車の御者に座ってるソルトに目を向けると、親指立ててサムズアップを無表情で俺に向けていた。


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