底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第4章

第5話

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第5話

 商人の案内で馬車内に入ると木箱が沢山積まれていて、どれが服の木箱なのかが分からないでいた。

「あぁ、少々お待ち下さい」

商人はそう言うと、沢山積まれた木箱を上の箱から下ろしだして「服は一番下に入れているんですよ」
と言いながら手を動かしていた。

俺も手伝おうかと思い動いたが、商人に手を前に突き出されて制された。

「大丈夫ですよ。上に積んであるのは軽い物ばかりなんで」

と、商人は木箱を軽々と下ろして、僅かにあるスペースに片付けて行った。
そして、一番下の木箱まで辿り着いて蓋を開けると、色々な衣類が折り畳んで三分割で入っていた。

「えっと、成人男性用はどれですかね?」

商人の横で木箱を覗き込みながら聞いた。


「男性用は右端ですね。男性用だけ出してみますね」

商人は右端の衣類を全部出そうとしたが、馬車内は木箱や他の荷物で一杯でとても服を広げて見られるスペースがない為、一度外に出して見る事にしよう。

 俺は服が地面の土で汚れるのを防ぐ為に、余っている布を広げて布の上で服を見せて貰おうとした。

 商人は畳んである服を一着づつ丁寧に広げて、見せてくれたが、どれも俺の体型に合わない服ばかりだ。

 それもその筈で、この世界で俺みたいなメタボ体型や肥満の人は貴族に多く見られて、普通の村人や町人で肥満体型なんて殆どいないみたいだし、今のところ女性以外では恰幅の良い人は見た事が無い。

最後の一着を商人が立っている俺の体に、服を合わせようとする動作をしだした。
体に合わせて見たところ、丈は合っているが実際着て見ないと分からない為、今着ている服を脱いで袖を通すと、俺の為に作られたのではないだろうかと思うくらいピッタリだった。

 でも、全身を見るとゲームの初期装備か、これから農作業する人にしか見えないんじゃないか?
でも、この服どこかで見た事ある気がするけど、どこで見たんだっけな。


「良くお似合いですよ。
恐らくですが、前の服みたいに絡まれる事が無くなると思います」

「これは因みに幾らですか?」

「そうですね。助けて貰った事ですから無料でいいですよ」


わざわざ木箱を片付けてくれて服を見せてくれたのに、流石に無料は気が引けるのから、気持ち程度に渡そうと前の服の腰に付けていた小さな皮袋に手を突っ込み、I.Bから貨幣をいくつか取り出した。

腰に付けた皮袋は普段気持ち程度に貨幣を入れていて、必要な量の貨幣はI.Bに豊富に入れている。

そして、手に適当に掴んだ貨幣は鉄貨数枚と銀貨ばかりで、こんな服でもある程度はするだろうと考えた俺は鉄貨5枚ほどを握り、商人に手渡した。

「すみません、これくらいは渡します。
受け取って下さい」


商人は頑なに首を横に振り、俺の手を押し返して断ったけど、何故?タダで譲ってくれようとするのだろうか。

理由は分からないけど、そこまでして断るならと、俺も有り難く貰うことにした。

前の服は気に入っていたし、I.Bに仕舞い込んで、さあ、これで出発しようとシオンと姐さんの方を振り返ると、2人とも顔を下に向けてプルプル震えていた。

俺はシオンに近づいて見ると、真っ赤な顔のシオンの顔があった。


「ブワッハッハハハハ、いくらそれしか無いって言われたからって、普通着るかよ。
俺を笑い死にさせる気か!」

「シ、シオンちゃん、わ、笑っちゃ、プププ、ダ、ダメよ」


姐さんまで顔を真っ赤にさせて笑っている。
シオンみたいに声を上げて笑ってないけど、誰が見ても分かるくらい、笑い声を抑えて笑っている姿がある。


「はぁ?2人とも何笑ってんだよ。
こんなの普通の村人が着る服じゃないのか」

「ふぅ、ふぅ、ミーツちゃんの着てる服は、普通の村の人が着る物とは違うのよ。
ミーツちゃんが着ているのは、犯罪を犯した人が捕まって死刑前に着る服よ。
今後、絡まれる事は無いでしょうけど、人も近寄って来ないんじゃないかしら。
どう見ても冒険者には見えないわね」


 姐さんは息を整えて答えてくれたが、まだ顔が真っ赤だ。
 そう言われれば、前に汚水掃除をした時にコレと同じ服装の人達がいた事を今思い出した。


「ああ!そうか、あの時の囚人服か!」

商人は分かってて俺に勧めたのか、商人の方を向くと、既に服は折り畳んで商人の馬車に乗り込んで木箱に入れている作業をしているみたいだった。

やられた。だから無料でいいと言ったのか、前の服に着替えるのも何だし、しばらくは今のまま着て行く事にしよう。

何か問題が起こるか、別に服が手に入ったらその時にでも着替えればいいかと自分の馬車に向かった。

出発するにいたって、商人側の護衛の冒険者達の強い要望で、シオンが向こう側に着く事になり、シオンも快く向こうの冒険者達と歩き護衛を始めた。

それを見ていた姐さんは、自分も行こうとしたけど、向こうの冒険者達に断れて現在ウチの馬車内で体育座りで落ち込んでいる。


「姐さん、大きめの町に着く迄だろ。
俺達は長い旅路なんだから、少しの期間だけでも貸してあげてもいいんじゃないか?」

「分かっているわよ!
でも、急に決まり過ぎて気持ちが落ち着かないのよ」

「でも、元々旅立つ前迄、常に一緒にいた訳じゃないし、偶にはいいんじゃないかい?」


 俺がそう言うと、姐さんは黙ってしまい俯いてしまった。
御者はソルトに任せてあるし、魔物が出る気配はなさそうだし、少し暇になった事だし、この服を着てから運がどのくらい変動したかを見なきゃなと思い、ステータスを見る事にした。

レベル80
HP2,500万/2,500万 MP150億/150億
筋力15万 体力14万 魔力15億
 俊敏度8万 運-9


早速ステータスを開くと、レベルが少し上がってるけど何だコレは!
 運がたったの1しか変わってないって、俺の運の低さは服だけの所為じゃないって事なのか。

自分のステータスを見てショックを受けた。
服の所為で運が悪いと思っていたのに、ほぼ関係ないなんて、元々の運が無かっただけだったなんて。


「ミーツちゃん、どうしたの?」

ガックリと四つん這いで落ち込んでる俺に、姐さんが話しかけてきた。

「商人に服が不幸を呼ぶ服だと言われて、服を着替えて、今ステータスチェックしたらたったの1しか変わってなかったんだ」

「現在のステータスは、どのくらいなのかしら?」

「運はー9だよ。服を着替える前はー10だったんだけど」

「良かったじゃない。たったの1でも変動があったんなら、これから増えるかも知れないわよ。幸運の象徴のロップちゃんと常に一緒に居れば運も上がるかも知れないし」

「そうかな。だったら良いんだけど、俺の運はロップと一緒に居ても上がるとは思えないんだけどなぁ」


姐さんと話していると馬車の振動が止まり、何故止まったかをソルトに聞きに御者の方に行くと、前方の商人の馬車も停止していて、不思議に思った俺は馬車から降りて聞きに向かうと、シオンが空を指差して陽が傾き出している事を教えてくれた。

 確かに空を見上げると、赤く染まってはいないものの、もう後一時間しないうちに空は赤く染まるだろう。

シオン達を見ると、野営の準備に取り掛かっており、薪を拾いに行く者と食事の準備をする者で別れて行動しだした。

商人を見ると、馬車を草木が生えている場所まで移動させただけで、商人は荷台に一人引っ込んでしまった。

馬は地面の草を勝手に食べているが、水が無い場所で本当に大丈夫かと思ったけど、誰も気にしてないみたいだしいいのかな?
後でコッソリと、自分の馬車の馬に水をあげるついでに商人の馬にも水を与えておこう。

 そう思い俺がいる自分の所は、ほぼ何もしないでいると、後ろから姐さんに話しかけられた。

「ミーツちゃん、格好だけでもいいから野営の準備はした方がいいわよ」


いつもは俺が適当にI.BやM.Bから食材を出したり、キャンピングカーやボロアパートを出したりしていたけど、商人や冒険者達に俺のスキルや道具を見せるのは、止めた方がいいみたいだな。

でも、野営の準備って何すれば良いのだろうか。それとも適当に焚火をして、料理でもすれば良いのだろうか。
前に野営をする時はどうしていたっけかな。

キャンピングカーやアパートを出す前は、普通に焚火を囲っていただけだった様な気がするけど、少し悩んだのちシオンと冒険者達の行動を観察していると、簡単に布を広げて木の棒を組みテントを作っていた。

テント前に焚火ができるように、大きめの石を囲っている者もいる。
 俺はその様子を見て成る程と思ったが、俺にはテントを張らなくても馬車があるし、準備をするような事はしなくても良いんじゃないか?

でも、姐さんは何処かに行ってしまったし、残った俺は焚火だけでもと思って、見よう見まねで石を囲おうと辺りを探した。

 でも、手頃な石がない為、想像魔法でコンクリートブロックを出して、綺麗に並べて囲い終わると視線を感じて、顔を上げるとシオンは頭に手を置いて苦い物でも食べたかの様な顔をしている。

俺は?を頭に浮かべながら辺りを見渡すと、俺のやった事を凝視している冒険者達の姿があった。





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