118 / 247
第3章
第45話
しおりを挟む
第45話
王都から出てしばらく馬車に揺られながら、進んでいると急に思い出した。
「あ、冒険者達に黄金を渡すの忘れていた。
姐さんとシオン悪いけど、ちょっと王都に行ってくるね」
それだけ言い残して、瞬間転移で王都に戻り、ギルド前に行くと「キュイーーン」と声?音が聞こえ上を向くとロップが降って来て俺の顔面にダイブしてきた。
あ、コイツの事も忘れていたな。
どこにいたんだ?辺りを見渡すとギルドの建物の上からロイスが飛び蹴りをしてきたが、見えない壁にぶつかって壁に張り付いたカエルみたいになってしまっている。
いつの間にか付いて来ていたソルトがやってくれたみたいだ。
「ソルト、悪いがしばらく姿を消していてくれ」
「了解致しました」
ソルトは姿を消したのを確認して、地面に落ちて来たロイスを見ると、涙目で顔を押さえて俺を睨んできたが、何で睨まれるんだ?全く心辺りがない!
「ボクを置いて行こうとしたでしょ!」
あー、そういう事か。
「ロイスには次のギルマスが決まる迄、この王都に居て貰おうと思ったんだよ」
「え?そうなの?ボクを置いて行こうとした訳じゃないの?でもボクがギルマスか~、ガラじゃないんだけどなぁ」
たった今思い出した事を言ってみると、思いの外、アッサリと受け入れニヤニヤしだした。
「次のギルマスが決まる迄だよ。
もし、この王都のギルマスになれば妹さんとも暮らせるから良いじゃないか」
「そ、それもそうだけど、昔の仲間に会いに行く目的がなぁ。それに何でボクがギルマスになれると思うの?」
もう面倒になってきたな。
「それなら、ギルマスになって時間に余裕が出来たら俺が連れて行ってやるよ。
その頃には、俺も流石に大和に着いているだろうからな。ギルマスになれるかどうかは、この国の王に俺がロイスにさせてやってくれと言ってあるからさ」
王が約束を破らなければだけどな。
「そんな事キミにできるの?」
「ああ、出来るよ。
最近覚えたスキルでだけどな。
その時が来たら迎えに行くよ。俺が忘れてなければだけどな?」
「何なんだよ、それー!」
あ、コイツが仮のギルマスになるなら、今回の冒険者の被害者達に黄金を配って貰えれば早いかも知れないな。
「なぁ、物は相談なんだけどな?
今回この王都での冒険者達の話は知ってるか?知っていたらどこまで知っている?」
「冒険者?何の事?確かにこの王都では冒険者の数が少ないけど、何かあったの?」
ヤバイ、こいつ何も知らないみたいだ。
それでもギルマスの肩書きは伊達じゃない筈だ。だから俺の名前を言ってきた冒険者に黄金を渡して貰おう。
「じゃあ、ロイスに頼み事があるんだけどいいかな?いいよな?
俺の名前を出した冒険者か、城に居た冒険者に俺がダンジョンで貯めた黄金を渡してくれよ。黄金はギルドの倉庫にでも出してやるからさ」
「え、うん、何か分からないけど分かった」
「じゃあ、ギルドの倉庫に行こうか、何処にあるんだ?」
「え、ボク知らないよ?」
は?知らないだと、ならば知ってそうな人ではルイスさんが知ってそうだから、ギルドに入る事にした。
中に入ると、まだ冒険者が解放されたばかりだからなのか未だにガラーンと閑古鳥状態だ。
受付に行き、ルイスさんを呼んで貰うと直ぐに来てくれた。
「あら、ミーツさん、姉さんと一緒にどうされたんですか?」
「詳しくは言えないけど、近いうちに城から解放された冒険者達でギルドは一杯になる筈なんだ。
その冒険者達に支援として、俺が黄金を渡したいけど俺には時間があまり無い上に、この国を出ようと思っているんだ。
だから、その役目はルイスさんとロイスに任せたいと思っているんだ。
やって貰えるかな?勿論報酬は俺の持ってる黄金から取っても良いからさ」
「なんだか良く分からないですけど、良いですよ。どれくらいあるんですか?」
「ロイス、あの国でのギルドの訓練場の広さを憶えているか?
あの広さが一杯になるくらいの黄金を持ってると考えてくれ」
「え?あの広さ一杯って、どれだけ持っているんだよ」
「え、姉さん、ミーツさんが持ってる黄金ってどれくらいあるのか分かるの?」
「滅茶苦茶沢山あるよ!
多分小さな国なら買えちゃうくらいあるよ」
そうなのかな?自覚なかったが、それだけの価値があるのか。
「とりあえず、ルイス。
一番広い倉庫に案内してよ」
ロイスがルイスさんに案内を頼むと、未だによく分かってないルイスさんは、とりあえずと言いながら歩いて行く事にしたようだ。
しばらく歩いて行くと外壁側に建っているトイレか?と思うほど物置小屋みたいな所に着いた。でも普通の小屋と違って扉がない。
そんな扉がない小屋にルイスさんは近づき、小屋に手を付いて、ギルド証とは少し違うカードを小屋に近づけると、小屋の扉が出現して扉が開いたが中が全く見えない。
こんな小さな物置小屋で、扉が開いたのに中が見えないってどうなっているんだ?
そう思っているとルイスさんは中に入って次にロイスが入り、俺は外で戸惑っていると、中から声をかけられてしまった。
「ミーツ、何してんだよ。
早く入りなよ。扉が閉まっちゃうだろ」
ロイスに言われ中に入ると、とても広い所にでた。広さだけで言えば、訓練場まではいかなくても、恐らくあそこの、半分近くの広さはあるのではないだろうか。
それでも棚を作ったりして工夫して、色々な物が置けるようにしてあった。
平面的な広さは大体分かったが、天井はどうだろうと、上を見上げると20m位か?
多分それくらいだろうが、まぁまぁな高さだ。
そして、俺が辺りをキョロキョロと見渡していると、ルイスさんとロイスは奥の方で俺の方を向いて待ってくれていた。
「ミーツ、早くおいでよー」
ロイスに言われ、ルイスさんとロイスの間に瞬間転移した。
「な、あそこからどうやって来たんだよ」
「ダンジョンに入ってレベルがかなり上がったからな。超スピードで来たんだよ」
「それにしては全く見えなかったけどなぁ」
流石にロイスに超スピードで来たと言っても、信用してくれないか。
でもルイスさんは「流石ミーツさんですね」と言って感心してくれている。
「ここになら、出して良いですよ」
そうルイスさんは黄金を出しても良い場所を指差した。
その場所は床に穴が空いている所で広さは20m程で、階段も何もない所をみると地下って訳でもなさそうだ。
「この場所はどれくらいの深さなんですか?」
底が見えないが降りても大丈夫なのかな?
一応聞いておこう。
「この下は、今見える天井の高さくらいの深さはあると思います」
ほほう、なら穴に入れれ天井まで積み上げれば40mは確保できるという事か。
「もう、直ぐに入れても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですが、ミーツさんの肩に掛けてあるマジックバックに、大量の黄金が入っているのですか?」
大量の黄金を持ってると言えば、そう思われるよなぁ。
でも気にせずに、穴に向かって小さい黄金であるスカラベから、ガチャカシャと穴に入れて行った。
スカラベだけで穴が埋まり続けたが、正直スカラベだけで天井まで届きそうだが、他にも出す事にした。
大量の黄金がスカラベしかないと思われたら、何か嫌だからだ。
ソルトに貰った財宝とゴールドスコーピオンや他の魔物の黄金を混ぜつつ、天井まで積み上げた所で、初めてルイスさんとロイスに振り返れば、二人とも呆然とした顔で黄金を見上げている。
「ミーツ、キミはこんなに持っていたんだね」
「こんなに…」
ルイスさんは言葉にならない様で、ただひたすらに積み上げた黄金を見上げていた。
「まだまだ結構あるけど、置き場所ないしこんなもんだろ。冒険者に与えてくれな?
ギルマスのロイス」
「う、うん、頑張ってみるよ」
これで、ようやく此処でやる事が終わったかな? 後はしばらく日を置いてダンジョンの様子を見にでも行くか。
シルビアと王妃の罰が、どの程度かを見てみる必要があるからだ。
生温い罰だったらダンジョンの難易度を上げて、更に俺も罰に介入して厳しくしないといけないからな。
ルイスさんとロイスに一言いって、王都を出よう。俺が出て行ったのに門を通らずに此処に居るのがバレたら面倒な事になるだろうからな。
「ルイスさん、俺の用は済んだから王都を出ようと思うんだけど、この倉庫からはどうやって外に出たら良いんだい?」
入って来た扉は既に無くなっていて、外に出る手段が見当たらない為にルイスさんに聞いた。面倒な手段なら瞬間転移で行く所だが、どうだろうか。
「そ、そうですね。
では、こちらにどうぞ」
俺が扉の出現を聞くと、ルイスさんは何もない壁を触りだして扉を出現させて、ルイスさんは、そのまま扉を開けて先に出て行った。
俺はルイスさんに続いてロイスの次に、扉に入ると外に出る事が出来て、今出てきた扉を振り返ると扉はしばらく、その場にあったが、見つめているとスーッと消えてしまった。
「じゃあ、ロイスにルイスさん此処でお別れだ」
「ミーツさん、お元気で」
「またね。何か知らないけど大和に着いて、スキルで迎えに来られるならちゃんと来てよね」
「憶えてたらな。後、寄り道するかもだから、お前がギルマス解任になったら自力で来た方が早いかもよ」
俺はそう言うと、二人に手を挙げて足早に二人から隠れるように路地に入り転移した。
転移したのは良いが、道の真ん中で何も無い場所にポツンと俺は立っている。
「ソルト、付いてきて居るか?姐さん達がどっちの方向に行ったか分かるか?」
「回答、勿論付いて来ています。馬車にマーク付けてましたので追跡できます」
「じゃあ、空飛ぶから案内を頼む。
姿を現してくれ」
俺がそう言うと姿を現したソルトは、俺の上半身の服から、ほつれてる糸を伸ばして俺から一歩分離れて立っていた。
成る程、だから瞬間転移しても付いて来られたのか。
姿を現したソルトの腹に腕を入れて脇に挟む形で抱えて、空を飛ぶとソルトが指差す方向に飛んだ。
ソルトの指差す方向に進んでいると、ソルトが唐突に口を開き話しだした。
「あの、ミーツ様、私も飛ぶ事が出来ますがこのままで、良いのでしょうか?」
「そうだったのか?なら次からは自分で飛んでくれよ」
ソルトとそういったやり取りをしていると、馬車が見えて来たが、馬車は幌を被っている為行商人の可能性もあるから、馬車より先回りして降り立った。
すると、馬車の御者していたのは姐さんで俺の前に止まってくれた。
「ミーツちゃん、用事は終わったのかしら?」
「あぁ、終わったよ。後は偶に向こうのダンジョンに行ってコアに魔力の補充と様子を見に行くついでに、あの王が王妃とシルビアに罰を与えているかを見に行くくらいだよ」
「そうなのね、分かったわ。
ソルトちゃんもご苦労様」
「ダンク姉様、ありがとうございます」
こうして、ようやく忘れていた事をやり遂げて、この国を出る事が出来ると考えて馬車に乗り込むと、目の端の方で見に覚えのある魔物が目に入った。
俺の頭に乗っているロップも気付いている様で、俺の頭をペシペシと前脚で叩いている。
「分かっているよ。ロップ」
俺達が見ているのは、ロップと出会うきっかけになったあの狼だった。
「ミーツちゃん、アレは下手に近づかない方がいいわよ?」
「え?何でだい?レベルも随分と上がったし今度は倒せると思うけど?」
「ミーツちゃん、あれはね。
『ドレインラックウルフ』っていう魔物で対象者の運を一時的に奪って自分の物にする魔物よ。別名『幸運狼』って呼ばれているわ。だから遠くから攻撃するのがオススメよ」
成る程、だから幸運の象徴と言われている、ウイングラビットのロップが襲われていたのか。
でも、俺の新しいスキルの瞬間転移によって行けば倒せるんじゃないか?
俺の頭に乗せてるロップをソルトに手渡して、瞬間転移でドレインラックウルフの元に転移した。
ドレインラックウルフは驚いていたが、一瞬で俺の拳が頭に到達して頭を飛ばした。
ドレインラックウルフは、あの時と同様に三匹居て、後の二匹を攻撃しようとした瞬間、足を滑らせて前のめりで倒れかけたが、手を地面に出したら、手を出した所に魔物か?糞が落ちてて思いっきり糞に手を突っ込み、更に糞の下の地面まで泥濘んでて腕が肩辺りまで沈んだ。
「ミーツ様、危ない!」
ドレインラックウルフが俺に噛み付こうとした瞬間、ソルトがシールドを馬車から張ってくれて噛み付こうとしたドレインラックウルフの頭が木っ端微塵に吹き飛んだ。
それを見たもう一匹は尻尾を腹に丸めて逃げて行った。
なんとも格好のつかないが、なんとか倒す事も出来、ようやく心残りがなくなり、馬車に戻ってこの国を出る事にした。
次はどんな所だろうか?
良い場所である事を願いながら、汚れを落として馬車に揺られる事になる。
。。。。。。。。。。。。
第3章、完
王都から出てしばらく馬車に揺られながら、進んでいると急に思い出した。
「あ、冒険者達に黄金を渡すの忘れていた。
姐さんとシオン悪いけど、ちょっと王都に行ってくるね」
それだけ言い残して、瞬間転移で王都に戻り、ギルド前に行くと「キュイーーン」と声?音が聞こえ上を向くとロップが降って来て俺の顔面にダイブしてきた。
あ、コイツの事も忘れていたな。
どこにいたんだ?辺りを見渡すとギルドの建物の上からロイスが飛び蹴りをしてきたが、見えない壁にぶつかって壁に張り付いたカエルみたいになってしまっている。
いつの間にか付いて来ていたソルトがやってくれたみたいだ。
「ソルト、悪いがしばらく姿を消していてくれ」
「了解致しました」
ソルトは姿を消したのを確認して、地面に落ちて来たロイスを見ると、涙目で顔を押さえて俺を睨んできたが、何で睨まれるんだ?全く心辺りがない!
「ボクを置いて行こうとしたでしょ!」
あー、そういう事か。
「ロイスには次のギルマスが決まる迄、この王都に居て貰おうと思ったんだよ」
「え?そうなの?ボクを置いて行こうとした訳じゃないの?でもボクがギルマスか~、ガラじゃないんだけどなぁ」
たった今思い出した事を言ってみると、思いの外、アッサリと受け入れニヤニヤしだした。
「次のギルマスが決まる迄だよ。
もし、この王都のギルマスになれば妹さんとも暮らせるから良いじゃないか」
「そ、それもそうだけど、昔の仲間に会いに行く目的がなぁ。それに何でボクがギルマスになれると思うの?」
もう面倒になってきたな。
「それなら、ギルマスになって時間に余裕が出来たら俺が連れて行ってやるよ。
その頃には、俺も流石に大和に着いているだろうからな。ギルマスになれるかどうかは、この国の王に俺がロイスにさせてやってくれと言ってあるからさ」
王が約束を破らなければだけどな。
「そんな事キミにできるの?」
「ああ、出来るよ。
最近覚えたスキルでだけどな。
その時が来たら迎えに行くよ。俺が忘れてなければだけどな?」
「何なんだよ、それー!」
あ、コイツが仮のギルマスになるなら、今回の冒険者の被害者達に黄金を配って貰えれば早いかも知れないな。
「なぁ、物は相談なんだけどな?
今回この王都での冒険者達の話は知ってるか?知っていたらどこまで知っている?」
「冒険者?何の事?確かにこの王都では冒険者の数が少ないけど、何かあったの?」
ヤバイ、こいつ何も知らないみたいだ。
それでもギルマスの肩書きは伊達じゃない筈だ。だから俺の名前を言ってきた冒険者に黄金を渡して貰おう。
「じゃあ、ロイスに頼み事があるんだけどいいかな?いいよな?
俺の名前を出した冒険者か、城に居た冒険者に俺がダンジョンで貯めた黄金を渡してくれよ。黄金はギルドの倉庫にでも出してやるからさ」
「え、うん、何か分からないけど分かった」
「じゃあ、ギルドの倉庫に行こうか、何処にあるんだ?」
「え、ボク知らないよ?」
は?知らないだと、ならば知ってそうな人ではルイスさんが知ってそうだから、ギルドに入る事にした。
中に入ると、まだ冒険者が解放されたばかりだからなのか未だにガラーンと閑古鳥状態だ。
受付に行き、ルイスさんを呼んで貰うと直ぐに来てくれた。
「あら、ミーツさん、姉さんと一緒にどうされたんですか?」
「詳しくは言えないけど、近いうちに城から解放された冒険者達でギルドは一杯になる筈なんだ。
その冒険者達に支援として、俺が黄金を渡したいけど俺には時間があまり無い上に、この国を出ようと思っているんだ。
だから、その役目はルイスさんとロイスに任せたいと思っているんだ。
やって貰えるかな?勿論報酬は俺の持ってる黄金から取っても良いからさ」
「なんだか良く分からないですけど、良いですよ。どれくらいあるんですか?」
「ロイス、あの国でのギルドの訓練場の広さを憶えているか?
あの広さが一杯になるくらいの黄金を持ってると考えてくれ」
「え?あの広さ一杯って、どれだけ持っているんだよ」
「え、姉さん、ミーツさんが持ってる黄金ってどれくらいあるのか分かるの?」
「滅茶苦茶沢山あるよ!
多分小さな国なら買えちゃうくらいあるよ」
そうなのかな?自覚なかったが、それだけの価値があるのか。
「とりあえず、ルイス。
一番広い倉庫に案内してよ」
ロイスがルイスさんに案内を頼むと、未だによく分かってないルイスさんは、とりあえずと言いながら歩いて行く事にしたようだ。
しばらく歩いて行くと外壁側に建っているトイレか?と思うほど物置小屋みたいな所に着いた。でも普通の小屋と違って扉がない。
そんな扉がない小屋にルイスさんは近づき、小屋に手を付いて、ギルド証とは少し違うカードを小屋に近づけると、小屋の扉が出現して扉が開いたが中が全く見えない。
こんな小さな物置小屋で、扉が開いたのに中が見えないってどうなっているんだ?
そう思っているとルイスさんは中に入って次にロイスが入り、俺は外で戸惑っていると、中から声をかけられてしまった。
「ミーツ、何してんだよ。
早く入りなよ。扉が閉まっちゃうだろ」
ロイスに言われ中に入ると、とても広い所にでた。広さだけで言えば、訓練場まではいかなくても、恐らくあそこの、半分近くの広さはあるのではないだろうか。
それでも棚を作ったりして工夫して、色々な物が置けるようにしてあった。
平面的な広さは大体分かったが、天井はどうだろうと、上を見上げると20m位か?
多分それくらいだろうが、まぁまぁな高さだ。
そして、俺が辺りをキョロキョロと見渡していると、ルイスさんとロイスは奥の方で俺の方を向いて待ってくれていた。
「ミーツ、早くおいでよー」
ロイスに言われ、ルイスさんとロイスの間に瞬間転移した。
「な、あそこからどうやって来たんだよ」
「ダンジョンに入ってレベルがかなり上がったからな。超スピードで来たんだよ」
「それにしては全く見えなかったけどなぁ」
流石にロイスに超スピードで来たと言っても、信用してくれないか。
でもルイスさんは「流石ミーツさんですね」と言って感心してくれている。
「ここになら、出して良いですよ」
そうルイスさんは黄金を出しても良い場所を指差した。
その場所は床に穴が空いている所で広さは20m程で、階段も何もない所をみると地下って訳でもなさそうだ。
「この場所はどれくらいの深さなんですか?」
底が見えないが降りても大丈夫なのかな?
一応聞いておこう。
「この下は、今見える天井の高さくらいの深さはあると思います」
ほほう、なら穴に入れれ天井まで積み上げれば40mは確保できるという事か。
「もう、直ぐに入れても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですが、ミーツさんの肩に掛けてあるマジックバックに、大量の黄金が入っているのですか?」
大量の黄金を持ってると言えば、そう思われるよなぁ。
でも気にせずに、穴に向かって小さい黄金であるスカラベから、ガチャカシャと穴に入れて行った。
スカラベだけで穴が埋まり続けたが、正直スカラベだけで天井まで届きそうだが、他にも出す事にした。
大量の黄金がスカラベしかないと思われたら、何か嫌だからだ。
ソルトに貰った財宝とゴールドスコーピオンや他の魔物の黄金を混ぜつつ、天井まで積み上げた所で、初めてルイスさんとロイスに振り返れば、二人とも呆然とした顔で黄金を見上げている。
「ミーツ、キミはこんなに持っていたんだね」
「こんなに…」
ルイスさんは言葉にならない様で、ただひたすらに積み上げた黄金を見上げていた。
「まだまだ結構あるけど、置き場所ないしこんなもんだろ。冒険者に与えてくれな?
ギルマスのロイス」
「う、うん、頑張ってみるよ」
これで、ようやく此処でやる事が終わったかな? 後はしばらく日を置いてダンジョンの様子を見にでも行くか。
シルビアと王妃の罰が、どの程度かを見てみる必要があるからだ。
生温い罰だったらダンジョンの難易度を上げて、更に俺も罰に介入して厳しくしないといけないからな。
ルイスさんとロイスに一言いって、王都を出よう。俺が出て行ったのに門を通らずに此処に居るのがバレたら面倒な事になるだろうからな。
「ルイスさん、俺の用は済んだから王都を出ようと思うんだけど、この倉庫からはどうやって外に出たら良いんだい?」
入って来た扉は既に無くなっていて、外に出る手段が見当たらない為にルイスさんに聞いた。面倒な手段なら瞬間転移で行く所だが、どうだろうか。
「そ、そうですね。
では、こちらにどうぞ」
俺が扉の出現を聞くと、ルイスさんは何もない壁を触りだして扉を出現させて、ルイスさんは、そのまま扉を開けて先に出て行った。
俺はルイスさんに続いてロイスの次に、扉に入ると外に出る事が出来て、今出てきた扉を振り返ると扉はしばらく、その場にあったが、見つめているとスーッと消えてしまった。
「じゃあ、ロイスにルイスさん此処でお別れだ」
「ミーツさん、お元気で」
「またね。何か知らないけど大和に着いて、スキルで迎えに来られるならちゃんと来てよね」
「憶えてたらな。後、寄り道するかもだから、お前がギルマス解任になったら自力で来た方が早いかもよ」
俺はそう言うと、二人に手を挙げて足早に二人から隠れるように路地に入り転移した。
転移したのは良いが、道の真ん中で何も無い場所にポツンと俺は立っている。
「ソルト、付いてきて居るか?姐さん達がどっちの方向に行ったか分かるか?」
「回答、勿論付いて来ています。馬車にマーク付けてましたので追跡できます」
「じゃあ、空飛ぶから案内を頼む。
姿を現してくれ」
俺がそう言うと姿を現したソルトは、俺の上半身の服から、ほつれてる糸を伸ばして俺から一歩分離れて立っていた。
成る程、だから瞬間転移しても付いて来られたのか。
姿を現したソルトの腹に腕を入れて脇に挟む形で抱えて、空を飛ぶとソルトが指差す方向に飛んだ。
ソルトの指差す方向に進んでいると、ソルトが唐突に口を開き話しだした。
「あの、ミーツ様、私も飛ぶ事が出来ますがこのままで、良いのでしょうか?」
「そうだったのか?なら次からは自分で飛んでくれよ」
ソルトとそういったやり取りをしていると、馬車が見えて来たが、馬車は幌を被っている為行商人の可能性もあるから、馬車より先回りして降り立った。
すると、馬車の御者していたのは姐さんで俺の前に止まってくれた。
「ミーツちゃん、用事は終わったのかしら?」
「あぁ、終わったよ。後は偶に向こうのダンジョンに行ってコアに魔力の補充と様子を見に行くついでに、あの王が王妃とシルビアに罰を与えているかを見に行くくらいだよ」
「そうなのね、分かったわ。
ソルトちゃんもご苦労様」
「ダンク姉様、ありがとうございます」
こうして、ようやく忘れていた事をやり遂げて、この国を出る事が出来ると考えて馬車に乗り込むと、目の端の方で見に覚えのある魔物が目に入った。
俺の頭に乗っているロップも気付いている様で、俺の頭をペシペシと前脚で叩いている。
「分かっているよ。ロップ」
俺達が見ているのは、ロップと出会うきっかけになったあの狼だった。
「ミーツちゃん、アレは下手に近づかない方がいいわよ?」
「え?何でだい?レベルも随分と上がったし今度は倒せると思うけど?」
「ミーツちゃん、あれはね。
『ドレインラックウルフ』っていう魔物で対象者の運を一時的に奪って自分の物にする魔物よ。別名『幸運狼』って呼ばれているわ。だから遠くから攻撃するのがオススメよ」
成る程、だから幸運の象徴と言われている、ウイングラビットのロップが襲われていたのか。
でも、俺の新しいスキルの瞬間転移によって行けば倒せるんじゃないか?
俺の頭に乗せてるロップをソルトに手渡して、瞬間転移でドレインラックウルフの元に転移した。
ドレインラックウルフは驚いていたが、一瞬で俺の拳が頭に到達して頭を飛ばした。
ドレインラックウルフは、あの時と同様に三匹居て、後の二匹を攻撃しようとした瞬間、足を滑らせて前のめりで倒れかけたが、手を地面に出したら、手を出した所に魔物か?糞が落ちてて思いっきり糞に手を突っ込み、更に糞の下の地面まで泥濘んでて腕が肩辺りまで沈んだ。
「ミーツ様、危ない!」
ドレインラックウルフが俺に噛み付こうとした瞬間、ソルトがシールドを馬車から張ってくれて噛み付こうとしたドレインラックウルフの頭が木っ端微塵に吹き飛んだ。
それを見たもう一匹は尻尾を腹に丸めて逃げて行った。
なんとも格好のつかないが、なんとか倒す事も出来、ようやく心残りがなくなり、馬車に戻ってこの国を出る事にした。
次はどんな所だろうか?
良い場所である事を願いながら、汚れを落として馬車に揺られる事になる。
。。。。。。。。。。。。
第3章、完
32
お気に入りに追加
7,223
あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。