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第3章

第4話

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第4話

 マイルちゃんを背負ったまま、ロイスに付いて行くと、先程まで居たギルドに戻った。

 ロイスは表から入らずに、裏手に回って裏口からギルドに入って行ったから、俺も付いて行くとギルドの受付の内部になっている様だった。

 あれ?ここには裏ギルドは無いのか?
 クリスタル国では解体所や訓練所があったのにここでは、見当たらないロイスに聞いてみるか。


「なぁ、ロイス、何処にも見当たらないけど、ここには解体所や訓練所は無いのか?
裏ギルドも無いよな?」

「無いよ。解体は冒険者が自分達でやって素材を受付に持って行くしかないし、訓練所も作れるだけのスペースがこの王都にはないからね。でも裏ギルドについては別の場所にあるよ」


 成る程、俺みたいな大きめのM.BやI.Bを持っているなら魔物ごと持って来られるけど、普通の冒険者はそんなの持ってないし、戦闘後に自分達で切り取って持ってくるしかないのか。

魔物ごと持って来たとしても、王都に入る時に時間がかかるから、あまり時間が経つと悪くなる素材は持って来れないな。

裏ギルドも別の場所にあるのか、一緒に出来ないのもスペースの問題かな。


「そうなのか、ありがとう」

「キミがお礼言うなんて気持ち悪いね」

 普通に気になっている事を聞いて、教えて貰ったからお礼言ったのに気持ち悪がれてしまった。
 普段の俺ってどういう風に見られているんだ?

 そう考えてると、ロイスが綺麗な女性と話しに小走りで向かって行った。
 そして、何かボソボソと話している。

俺はギルドの受付内部なんて初めて見る為、辺りを観察していると背中が覚えのある温かさを感じてきて、ジワーっと濡れて来た。

背中に負ぶっているマイルちゃんを見ると、俺の背中で寝ていて、そのままお漏らしをしてしまった様だ。

そんな俺の姿に気が付いた、ロイスと話していた女性が近寄って来た。


「あらあら、すみません。
ウチの子が粗相をしてしまって」

ウチの子?もしかして…

「ルイスー、良いよ良いよ。
この人は、そのくらい気にしないから」

「お前に言われると腹立つな。
確かに、気にはしないけどさ」

「でしょ?なら紹介するね。
ボクの妹のルイスだよ。
 で、こっちのオジサンがさっき話していたミーツだよ」


やっぱりマイルちゃんの母親か、全然似てないな。ロイスの言ってた小さい時ってのが、今になって分かった。

「姉が何時もお世話になっています。
ほらっマイル、起きなさい!
ミーツさんが困ってるでしょ」

「んあ、もっと寝るー」

「もう!ミーツさん、申し訳ございません。
もう少しで、ギルドでの交代になる筈なんで終わり次第、家に来て下さい」


 そうルイスさんは言って、ギルドでの仕事に戻って行った。
 俺はとりあえず、ビショビショな背中と汚れを落とすべく、清潔になる魔法と濡れたものを乾かす魔法を使って、マイルちゃんも含めて綺麗にした。

 本当はこの後、風呂にでも入りたいけど、今のままでは無理だから、仕方なく壁に寄っかろうと思っても、マイルちゃんを背負っているから出来ないでいると、もう一つの疑問が出てきた。

ギルドマスターの部屋が見当たらない事に気がついた。見渡す限り、受付の内部で部屋らしい部屋はなく、お偉い様らしい机も人も見当たらない、近くにロイスが居なくなっていたから、後ででも聞いてみるか。

 おっと、ルイスさんの仕事が終わったのか戻って来たぞ。
でも、ロイスが居ないな。

「ミーツさん、お待たせして申し訳ございません。それでは行きましょうか」

「いや、ロイスが居ないんですけど良いんですかね?」

「姉なら大丈夫ですよ。さあ行きましょうか」

本当にいいのか?
そう思ったが、ロイスだし、まぁ良いかと思ってルイスさんに付いて行くと、たどり着いたのは他の建物と同じ様な平屋の一軒家で黄色い建物だった。
あれ?ギルド職員だから寮じゃないのか?

ルイスさんに続いて家の中に入ると、普通の家のようで、入って直ぐに四人掛けの椅子にテーブルに少し入った所に竃、少し奥に部屋があるみたいだけど所あそこが寝室か?

でも、この部屋の脇にも今入って来た扉以外にもドアがあるが、人の家だから無闇に開ける訳にもいかないな。

 ルイスさんは竃に火を入れて何かしている様子だ。
 俺は立ったままで辺りを見ていると、椅子に座る様にルイスさんに勧められて、マイルちゃんを下ろして座らせてから俺も座って待っていると、ルイスさんがお茶を持って来てくれた。

「先程は娘がすみません、洗濯をしますので着ている物を脱いで下さい」

 そう言われても、既に魔法で綺麗にしたんだけどなぁ。

どうしようか、そう思っているとルイスさんはマイルちゃんの服を見て首を傾げている。
あー、そっかそういえばマイルちゃんの服も一緒に綺麗にしたんだった。


「ルイスさんに言ってなかったですけど、俺は特殊なスキルを使えるんですよ。
だから、それで綺麗にして乾かしたんです。
ただ、汚れを綺麗にしたってだけで臭いまでは取れてないので、後でマイルちゃんの服は洗ってあげて下さい」


「それではミーツさんのも洗います」

「俺のは大丈夫です。ルイスさんの自宅で服脱いでいる姿を運悪く、ロイスや旦那さんに見られると、ややこしい事になりそうなんで」

「大丈夫ですよ、旦那はもう既に亡くなっていますし、姉もしばらくはウチに帰って来ないですから」


俺は少し考えたが、幸運の象徴のロップもいる事だし脱ごうとすると、ロップが俺の頭から肩に移動して頰を噛み付いて来た。

脱ぐな!って事か?
でも俺はロップに構わずに脱ぐ事にした。
暴れるロップをテーブルに乗せると、ロップは足踏みをダンダンとしてきたけれど、無視して上半身を脱ぎ、ズボンを脱ぎだしたところで…

「ただいまー」

ロイスが扉を勢いよく開けて、俺と目がバッチリ合ってお互い固まった。

「な、な、な、何やってんだよー!キミ、ボクの妹に何しようとしているんだよ」

「何って洗って貰おうと思ってるけど?」

「ど、どこをだよ!
キミの事を見損なったよ」


ロップの行動を信じればよかったな。
面倒な事になってしまった。

「ね、姉さん、マイルがミーツさんの背中で粗相をしたから服を洗おうとしただけよ」

「いや!ボクは騙されないぞ!きっとミーツ、キミがルイスを誑かしたんだよ。
ルイスが旦那が居ないのをいい事に、好き勝手しようとしたんでしょ!」

「はあ、やっぱり面倒だな。
ルイスさん、服は後で自分のスキルで臭いもどうにかしますので、これで失礼しますね」


そう言って脱ぎかけだったズボンを履き、上着とロップを脇に抱えてスタコラサッサと逃げる様に、ルイスさん宅から出て行った。

 一瞬ロイスに捕まりそうになったけれど、ルイスさんがロイスに声を掛けるといった機転を利かせてくれて、なんとか逃げる事ができるのだった。

ルイスさん宅から上半身裸のまま逃げていると、警備兵や道行く人から白い目で見られている気がする。

ロップの警告ともいえる行動を無視した報いだから、仕方ないんだけど先程の路地裏に行って着替えようと路地裏に入ると、先程の若者達にばったり会ってしまった。

若者達は一瞬固まっていたけど、俺がニコっと笑うと逃げて行った。

何故逃げるんだ?
俺の笑顔が怖かったからか?
それとも先程の俺のパンチが効いたか?

 まぁ、こんなマヌケな格好だし、逃げてくれて助かったけどね。
 誰も居なくなった路地裏で着替えて、表に出ると、シオンと姐さんが少し遠くに歩いているのが見えた。

今度はシオンと姐さんを観察するべく、尾行しだしたけど、シオンは居るのに姐さんが途中から見失った。

「あれ?姐さんがシオンから離れるなんて珍しいな」

物陰からシオンを見ながらそう呟くと、俺の肩を後ろからポンポンと叩かれたけど、こんな所で俺の肩を叩くのはロイスしかいないだろうけど、ロイスだと背丈が届かないだろうし、誰だろうと振り向けば姐さんがニッコリと笑って立っていた。

「あれれ、ダ、ダンク姐さんじゃないか、どうしたのかな?シオンとのデートの筈じゃなかったのかい?」

「あたしを尾ける気配を感じたから、シオンちゃんには普通にして貰って、あたしだけ視線を感じる人の元に来たのよ。まさかミーツちゃんとは思ってなかったけどね」


まさか最初から気付いていたとは思いもしなかったな。流石、姐さんだ。

「姐さん、シオンが待ってるんじゃないか?
早く戻りなよ。俺はもう尾けないからさ」

「コソコソ尾けないで、ミーツちゃんもおいでよ」

「ありがとう、本当に止めとくよ。シオンと楽しんでおいでよ」

俺はそう言って踵を返して、元の裏路地に戻ったけど、やる事なくなって宿で寝る為に戻る事にした。






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