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第十一話

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第十一話

「あれ?知らない天井だ」

 どうして、俺はフカフカなベッドで寝て居るんだろうか?
 上半身を起こして、ベッドに寝かされていた部屋を見渡すと、結構広めの部屋だ。

 30畳分はあるんじゃないだろうか?
 段々と、俺が気を失う前の事を思い出してきた。
 そうだ!あの貴族の娘が襲ってきたから、殺さない様に魔法を放って、放った後に疲れて寝てしまったんだ。

 なら、此処は俺を買ってくれた貴族の屋敷か?
『コンコン』ノックが聞こえたから反射的に「はい」と答えると、入ってきたのは、黄ー377だった。


「身体大丈夫?旦那様に目覚めて起き上がれるくらいに回復してたら、連れて来るように言われたんだけど、どうかな?行ける?」

「おれ、あ、僕どれくらい寝てた?」

「私はよく分からないけど、屋敷に着いたのは夜が明けて、日の出が出る頃で黒–1が屋敷に着いた時、屋敷のメイド長様が黒ー1を運んでいたよ」


 成る程、俺はとりあえずベッドから出てテラスに出て見て、日がどの位の位置にあるか確かめて見ると、まだ昼前って感じの時間だった。

 なら、屋敷に4~5時くらいに着いて、ベッドに移されて起きた時間は大体10時前くらいだから、最低でも6~7時間くらいは眠っていたのか。

随分と寝ていた様だ。
転生して魔法を使える様になって、こんなに寝たのは初めてだ。

 そういえば、ご主人様が呼んでるって言ってたな。
 俺はテラスから部屋に戻って自分の姿を見ると、裸だった。
服が汚いから剥ぎ取られたかな?

「黒1服をメイド長様に貰って来てるからこれに着替えて」

 そう377がベッドの上に清潔で綺麗な白い布の服を置いた。
 俺はそれに袖を通して着替えて、377と部屋を出ると、見知らぬメイドが部屋を出た所に二人居て、377と入れ替わって案内してくれた。

 377は二人にお辞儀をして離れて行った。
 そして、しばらく歩いたのち二人が頑丈そうな赤い扉の前に立ち、ノックをして返事を待った。

「入れ」と言う返事があって二人は扉を開けて俺に部屋に入る様に促した、俺が四つん這いで部屋に入ると、驚いた顔を二人共して俯いたまま扉の外側から扉を閉めた。

 俺はハイハイする様に四つん這いで進むと、ご主人様に馬車の時と同様に驚かれた。

「何で四つん這いで来るんだ?」

「奴隷商人の屋敷でその様に言われたからでございます。主人の部屋は許可なく歩いては行けないと」

「ならば、たった今から奴隷商で学んだ事は忘れなさい、私はその様な振る舞いは好きではありません。昨夜私が貴方に言った言葉は覚えていますか?」


 そう言われて思い出した。
 確か、ご主人様の娘さんの世話役をしろとか言ってたな。

「はい、覚えております。
ご主人様のお嬢様のお世話の話ですよね」

「ああ、そうだ。それなら娘には後で会ってもらおう。だから娘の教育の為にもキミにはもう四つん這いになったりといった。行動はやめて欲しいと思っている」

「1年による躾でこうなってしまったのですが、なるべくこの様な行動を取らない様に心がけします」

「ふむ、では後はどの様な躾をされたか事細かに教えて貰えるか?」


 俺は教えても良いのかなぁって思いながらも、奴隷の食事は床で食べるものだとか、主人の靴を舐めると食事に早めにありつけるとか、よく教鞭で叩かれた事や、この1年であった事を全て話した。


「そうか、中々苦労していたのだな。
 でもここでは鞭で叩く様な事はしないし、させないから安心しなさい」


 そう言われても、黒グソの件での事があって直ぐには安心出来ない。
俺が俯いていると、ご主人様は俺が安心出来るように口を開き

「いきなり言われても安心できまい、徐々に慣れていけば良かろう」


そう言ってくれた。
 正直凄く、ありがたく思う。
 この世界に転生してまだ良い人に出会ったのは、赤ん坊の時の娼館の女ボスくらいだったから、いきなり安心しろと言われても、まだ安心出来ない自分がいる。

 そんな、俺の様子を見ていたご主人様は、ベルを鳴らして扉の外に待機していたメイドを呼び、娘を連れて来る様に命じた。

 命じられて出て行ったメイドが、再度扉をノックするのに10分くらいかかったか?

ノックが聞こえてご主人様が入れと言うと、部屋に入って来たのは、キラキラと輝いた金髪の可愛らしい少女だった。

「お父ちゃま、どうちゃれたのでしゅか?」

 言葉もまだキチンと喋られないのが、また可愛かった。

「この子が私の娘のシャルロットだ。
シャルロット、この人が今日からお前のお付きの者だよ」

「わたちはシャルロット・ゴールドリバーでしゅよろちくでしゅ」

「あ、僕は奴隷商人の屋敷では黒ー1って呼ばれてました」

「それは名前ではなかろう?」

「はい、ご主人様。僕を買ってくれた人に名前を付けて貰えるようにしなさいと言われました」

「そうか、なら今日から『アーテル』と名乗るがいい」

「分かりました。ありがとうございます」


良かった、残念なセンスの方じゃなくて。

「アーテルゥ、わたちと遊んでくれりゅ?」

 シャルロット様が遊ぼと言ってきたけど、俺はご主人様を見て判断を委ねると、ご主人様は頷き「行って来なさい」と言った。

すると、シャルロット様は俺の手を繋ぎ、足早に走って部屋から出て行ってしまった。

扉はシャルロット様が出て行こうとした動作でメイドが気をきかせて開けてくれていた。




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