付加魔法は自分のために

仙堂レイ

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第一章:日常の終わり

新たな自分-10

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「乃亜先輩、煮込みじゃなくて普通のハンバーグにしませんか?」
「えぇ~、せっかく湊の好きな料理にしようと思ったのに……」

 すみません、ホントありがたいんですけど、俺としては乃亜先輩が心配なんです。

「ねぇ……駄目かな?」
「だ、駄目な訳ないじゃないですか!」

 いや駄目だから!?
 つい反射的に言ってしまったが、さすがにそんな時間まで居させる訳にはいかない。

「それとも、やっぱり迷惑……?」
「いや、むしろこっちこそわざわざ迷惑をかけていないかと」
「そんな訳ないでしょ?大体、そんなこと気にしても仕方ないじゃん」

 どうして、こんなに意固地なのだろうか……?
 いや、この人の場合、もしかすると……。

「もしかして……泊まる気でいます?」
「えっ、駄目だった?」

 はい、爆弾発言来ました!?
 もうね、何を言ってるんですかね、この人は……。

「駄目ですよ普通に!」
「えぇ~、昔はよくお泊りしてたじゃん」
「昔ですからね、昔!」
「ケチ~」

 どうしてこう、自分の事を考えられないのかねぇ。
 乃亜先輩は、普通に魅力的なのにな。

「ケチじゃなくてですね……」
「ケチだよケチ!良いじゃんかさぁ~」
「だから……」
「ブーブー」
「えぇい!黙らっしゃい!」

 思わず、声が大きくなる。
 いやだって、仕方ねぇじゃん?

「少しは、自分の身を考えたらどうなんですか?」
「へ?」
「仮にも、男の一人暮らしなんだからさ、こうもう少し危機感持っても良いと思うんですよね!」
「だ、だって、ボクに何かあるわけないでしょ……?」

 ほらこれだ。
 まぁ、ずっと一緒に育ってきたし、そう言う事を意識してないのは分かってるけどさぁ。

「そこんとこ、少しは自重してくださいよ。乃亜先輩は、可愛いんですから」
「んにゃ!?」
「あまり遅くなると、変な人に絡まれるんですからね?」
「にゃにゃにゃ……」

 ようやく、事の重要性に気付いたのか、顔が赤くなってる乃亜先輩。
 ……ん?赤?

「とにかく、もうここまでにしておこうか」
「それがね、もう煮込み始めてるの……」
「んなっ!?」

 いつの間に……。
 何と言うか、やっぱり手際良いよな……じゃねぇよ!?
 もしかして俺は、自然な動作で料理をしている乃亜先輩を、知らず知らずのうちにスルーしていたのか?

「これでもう、終わらせるまで帰れないね♪」

 何故か笑顔で居残り宣言してるな。
 いやまぁ、こうなってる以上、このまま帰す訳にも……。

「よし、乃亜先輩。後は俺がやるんで、心配しないでください」

 いいや、帰しても問題ない!
 流されては駄目だ。乃亜先輩に流されると、いろいろとマズい。

 男として問題がある?
 そんなもんより、乃亜先輩の身の安全に決まってるだろ。


「残念だけど、これからが本番なんだから湊には任せられないよ」
「それくらい、俺でも出来るから」
「それに、ボクの分もあるんだから、今更食べずに帰れないよ」
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