付加魔法は自分のために

仙堂レイ

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第一章:日常の終わり

新たな自分-9

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「ふぅ~」
「話は終わったのかな?」
「あぁはい。すみません、電話に夢中になってて」
「いいよいいよ。それに、今のは隼くんからだったんでしょ?だったら、取ってあげないとだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。だって、隼くんは湊の数少ない友達なんだからさ」

 クリティカルヒット!湊に100のダメージ!

 この人は……いやまぁ事実だけども、俺だって傷付く心くらいはあるんですよ。

「それじゃ、もう遅いですしそろそろ……」

 気が付くと、辺りはいつの間にか暗くなり始めていた。
 乃亜先輩に限って、帰り道に何かあるとは思えないが、そこはやはり女性だし心配なのは仕方ない事だろう。
 変な輩が現れないとも限らないしな。

「そうだね、もうこんな時間だもんね」
「……いや、何をしてらっしゃるので?」

 何故か、人の冷蔵庫を漁っている乃亜先輩。
 そんなとこ調べても、何も出ませんよ?

「いや、だってもうこんな時間でしょ?」
「そうですね、早く帰らないとですよ」
「いやいや、そうじゃなくてさ」
「?」

 乃亜先輩は、冷蔵庫の中から次々に食材を取り出していく。
 まさか……。

「そろそろ夕飯食べないとでしょ?」
「えっと……作ってくれるんです、か……?」
「ボクも食べるけど、良いよね?」
「そりゃもちろん!」

 よっしゃ、久し振りの乃亜先輩の手料理だ。
 この人、ちょっと男勝りだけどすごく料理が上手いんだよな。
 食材が入ってたので分かると思うが、俺も料理はする。一人暮らしだと、何でもやれないとだしな。
 でも、乃亜先輩は俺なんかよりよっぽど上手で……というか、俺の料理の師匠みたいな人だ。

 乃亜先輩には、お母様共々昔から非常に良くして貰っており、両親が忙しい時には、よく晩御飯を作ってもらったりしていた。
 乃亜先輩が大学生になってからは、いろいろ忙しそうだったし、こっちも受験の準備とかでてんやわんやしてたからそんな機会はほとんどなかった。
 あ、ちなみに忙しかったのは主に荷物整理とか書類で、受験自体は特に何をする事もなく普通に受けて普通に受かった。
 こう見えても、頭は良いとは言えないが本番には強いのだ。

 とにかく、そんな乃亜先輩の手料理を久し振りに食べれるとあって、ドキドキが止まらない。
 材料を見た限り、ハンバーグっぽいな。余計な時間もかからないし、すぐに出来るだろう。

「今回は、煮込みハンバーグを作ろうと思ってるの」

 よっしゃ!乃亜先輩の得意料理来た!
 じゃなくて、煮込みって……。
「乃亜先輩、それは少し時間がかかり過ぎでは?」
「大丈夫だよ。ほんの1~2時間くらいだから」

 はい、長時間決定でございます。
 料理自体は、煮込むんだしそれくらいかかって当たり前なのかもしれないが、普通にそこまでかけてしまうと、乃亜先輩の帰るのが深夜になってしまう。
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