付加魔法は自分のために

仙堂レイ

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第一章:日常の終わり

新たな自分-8

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「ういっす」
『おい、どうせ何か掴んでるんだろ?』
「抽象的過ぎて分からん」
『嘘吐くな。一之瀬先輩と一緒だからって切ろうt』
『ツーツーツー……』

 無機質な音が鳴り響く。
 やべ、つい条件反射で切ってしまった。

『~~~♪』

「ういっす」
『いきなり切ってんじゃねぇよ!?』
「お前が変な事言うからだろ?」

 俺が乃亜先輩と一緒だからって、どうして切らなきゃならんのだ。
 そりゃ、こいつからじゃなかったら無視してたけど、それは別に悪くない。
 電話で話し込むと乃亜先輩に失礼だからだ。

「で、何が知りたい?」
『お前の掴んでる中で、一番為になりそうなやつ』
「……報酬は?」
『そんなものはない!』
「だろうな」

 元々、まったく期待などしていない。
 こいつ……石田隼いしだハヤトには、見返りなんぞ求めてはならない。
 というか、求めたところで一切返って来ないのがいつもで、そんなものはとうの昔に諦めた。
 慈善事業……ボランティアとでも思っとけば精神的に少しはマシになるだろう。
 強制的なボランティアだけどな。

 こいつとの付き合いは……もう十年は超えてるんだな。
 正直、最初出会った時の印象は、あまり良くなかった。
 そもそもこいつ、当時から金髪だったんだぜ?まだ年端も行かないガキがそんなことしてたらビビるだろ。
 今でこそ、色はすっかり抜けて薄い茶髪だが、性格は俺と全然違って何と言うかチャラい。本来、俺が嫌いなタイプだ。

 だが何故か、こいつとだけは気があって、親友とは言わないがそれなりに仲はいい。
 隼曰く、俺たちは『悪友』らしいが、確かに何となくしっくりくる気がする。

「まぁ、いいよもう」
『それでこそ湊だな』
「うっせぇよ」

 大体、いつもこんな感じだ。
 隼はあんなんだから、基本こちらが折れるしかない。
 まぁ、それにも随分と慣れてしまったが……。

「じゃあ、さっさと話すぞ」
『おう』
「seconddiaryの入手方法が分かった」
『おぉ、マジか!どこ探しても一向に見付からなかったから助かるわ』

 やっぱり知らなかったか。
 どうやらこの情報、やっぱり闇雲に探しても見付からないように、何か細工されてるな。

「方法は……で……を…………」
『何だって?言葉が途切れて聞こえない!』

 おかしい、電波は悪くないはずなのに、必要な部分を話す時だけノイズが走る。
 ……そうか、これも情報操作か。

「分かった、とりあえず明日こっちに来てくれ」
『電話の調子おかしいみたいだから仕方ないけど、今日は駄目なのか?』
「乃亜先輩を速く帰してやらないとだろうが」
『はいはい、お邪魔虫はさっさと退s』
『ツーツーツー……』

 あいつはいつも一言多いんだよな。
 結局、また反射的に切ってしまったじゃないか。
 いやまぁ、用件済んでたからいいけどな。
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