付加魔法は自分のために

仙堂レイ

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第一章:日常の終わり

新たな自分-3

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 一之瀬乃亜いちのせノア先輩。
 その男勝りなサバサバした親しみやすい性格と、そこからは考えられないくらい気遣いの出来る人で、後輩からの人気は高い。

 しかし、どういう訳か色恋沙汰の話はまったく聞かないんだよな。
 見た目美人で可愛い系も併せ持つ、素材は良い人なんだが。

 ちなみに、あくまでこれは客観的視点であり、俺からするとお節介な幼馴染みという印象が強い。
 いやまぁ、モテないってのは分からないけどな。絶対、人気ないはずないんだから。

「残念ながら、俺に考えなんてないぞ?」
「はいはい、ボクに嘘は吐かないの。あんなの見て、ミナトが何もしようとしないわけないでしょ?」
「そん……いや、その通りだけどさ」
 この人に隠し事は無理だとは思ったが、そうあっさり見破られるのは何か尺だな。

「でも、そんな大層なもんじゃねぇぞ?」
「いいっていいって。どうせ、それでなんとかしちゃうんだからさ」
 酷い言われようだが、これは褒められているんだろう多分。そう言う事にしとこう、うん。

 だが、実際に謙遜なんかじゃなく微妙なラインなのは確かだ。
 宛があるというよりは、数撃てば当たるだろうというただの物量作戦だしな。

「それで、俺のところに来たってことは……」
「もちろん、ボクの分も何とかしてくれると思ってね」
 これである。

 乃亜先輩が頼み事をしてくる時は、基本厄介というか面倒くさい事が多い。
 今回なんて、メーカーが分からなければ販売台数や販売店等、何も情報がない中で手に入るかも分からない物をもう一つ集めるのは、至難の業だろう。
 だが、断るかと言われたらそれはノーだ。

「ねぇ……駄目かな?」
 グハッ!
「べ、別に、一台も二台もそんな変わらないし、大丈夫だけどさ」
「そっか、さすが湊だね」
 ーーー!!

 そう、この上目遣いと笑顔の破壊力。これで、断るという方が無理だ。
 毎度の事だが、こうされると選択肢なんてなくなる。
 どれだけ面倒くさかろうが、理不尽だろうが、メリットが無かろうが、そんなことは些細な事に過ぎなくなる。
 何より大事なのが、あの笑顔になるのだから。

 告白された事なんかない(本人談)とか、絶対に信じられない。
 最も、昔から結構一緒にいるが、男の影は感じた事すら無いんだけどさ。

 あ、あと、この話題に関してというか、俺に関しては最初から拒否権は存在しない。
 上目遣い→笑顔のコンボもだが、それ以上に断るといろいろヤバいのだ。
 何と言うか、昔の事を掘り出して、社会的に抹殺される。

 もちろん、最初から断るつもりなんか無いし、こうなるから会いたくはなかったんだがもう遅いか……。

 「それで?具体的にはどうするつもりなの?」
 「あ、あぁ。とりあえず、先立つ物を集めないとな」
 「ボク、そんなに持ってないよ?」
 「今は、お金よりも情報が一番だ」

 そう、こういった事態の場合、一番役立つのは新鮮で確実な情報だ。
 そして、それを手に入れられる場所と言えばあそこしかないよな。
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