父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

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近衛騎士の受難

帰りたい…
嫁の顔が見たい…
何故こんなことに…

私が訪れたのはサファの海沿いの街マリナ…
ルーカス様の直轄地で組織の本部が置かれている場所だ。
各国から選ばれた精鋭がここで研修を受ける。
その後は自国に戻り、表の職業と組織の依頼を同時進行でこなしていくことになる。

「シーフードの美味しい綺麗な街ですよ、頑張って下さいね」

笑顔でそう言ったトピアス様の言葉は間違いではなかった…
綺麗な街だ、美味しそうな店も沢山ある…

この街の表の顔は風光明媚なリゾート地…
だが私のいるこの場所に漂うのはシーフードの匂いではなく汗と埃の匂い…

汗臭い脳筋の戦闘狂が集うこの場所で、トレーニングに明け暮れる日々…夜は座学で各国の法律や制定される新しい国際法を学ばされ、終わったら脳筋教官に連れられて酒場へ…
バカなのか？あれだけ動いて何故そんなに食べれる…そしてその酒はもっとチビチビ飲むやつだ…ビールじゃないぞ…
見てるだけで胸焼けがする。

食欲などあるはずもない…
体力には自信があった。
その私の自信は初日から砕かれ、決められたスケジュールをこなすのが精一杯…
だからね、時間があったら眠りたいのです…
ルーカス様…疲れたよ…
いつまで続くの？
その話さっきもしてたよね…

俺は今酒場の片隅でルーカス様の話を延々聞かされている。
先ほどまで皆で飲んでいたのだ。カイ様に対する嫉妬心をおさえられないと悩むルーカス様に対する脳筋達の答えは最低だった。

「そんなん動けなくなるまでやっちゃえば物理的に行けなくなるでしょう」

「監禁したらどうですか？カイ様は手強いでしょうが勝てると思いますよ」

「あれ？お前んとこ確か嫁一人に夫二人だよな？教えてやれ、うちの嫁は夫が五人だ参考にならん！」

脳筋三人組はどこかへ消え、俺はルーカス様と二人残された。

「自分がこんなに面倒くさい男だと思ってなかったんだ…」

はい、さっきも言ってましたねアキ様が誰かと話してるだけでイライラしてしまうんですよね。

「カイも大事なんだ…」

そうですね、ずっと応援してらしたんですよね。その相手に自分が恋してしまうなんて思ってなかったんですよね。

「声が聞きたくて顔が見たくて仕方がない…」

そうですね、私もそうですよ。
今物凄く嫁に会いたいです。
今目の前にいるのがルーカス様じゃなくて嫁なら最高なんですけどね…
あぁ…眠い…