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さようなら日本
三好有紀は自覚する
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いろんな事を上手く消化できないまま時間は過ぎて、桜満開まであと少しとなる。
荷物は全て片付き、俺達親子は吉井家にお泊まりだ。
俺たちは庭の桜の木の下で花見をした。
俺が吉井家の台所で料理を作り、兄ちゃんは母さんの大好きなアップルパイを作った。
食べて飲んで、楽しくて…
吉井家のリビングでなっちゃん主導のDVD観賞会をして、春斗が号泣して皆は泣き笑いで…
楽しい時間が終わり、今夜は春斗の部屋で一緒に寝るんだけど…
俺は今春斗の部屋で、後ろから抱き込まれている。
後ろにいる春斗の表情は見えない。
腕の力は緩むことなく、春斗の鼓動が背中に伝わってくる。
「苦しいよ、春斗」
ビクッとして力を緩めた手をそっとほどいて、正面から春斗を見る。
「イケメンが台無し…」
泣き腫らした顔に手を伸ばすと、再び腕の中に閉じ込められた。
「ごめん、もうちょっと…」
広い背中にそっと手をまわして身体を預ける。
春斗の体温が心地よくて有紀は目を閉じた。
「有紀がもう帰って来ない気がして…」
有紀は目を開けて春斗を見上げた。
いつもと違う真剣な顔をした春斗がそこにいて…
「俺が有紀の事を好きだって言ったら、やっぱ気持ち悪いよな…」
「気持ち悪くないよ、俺にとっても春斗は特別だから…」
そう言って春斗の腕から抜け出す。
叱られた大型犬みたいだな…
身体を丸めて項垂れる春斗を愛しいと思った。
春斗の手を引いてベッドに座らせて、今度は有紀が春斗を腕に閉じ込める。
「お前の隣に俺の知らない誰かがいるのを想像すると、嫌だなって思うんだ。」
腕の中の春斗が何度も頷く。
あやすように背中をなでながら、有紀は思う。
嫌悪感なんてない、むしろ好きな気持ちしかない…
そう思ったら身体が動いてた。
腕をほどいて頬に手を添え、唇を重ねる。
春斗が目を見開いて俺を見てる。
「誰かに奪われる前に奪っとこうかなって…」
春斗が俺の大好きな顔で笑う。
俺達はクスクス笑いながら何度もキスをした。
その夜は春斗のベッドで一緒に寝た。
後ろから俺を抱き込んでる春斗の寝息と鼓動が聞こえる。
俺は春斗が好きだ。
春斗が俺を忘れても、重ねてきた時間はちゃんと俺の中にはある。
「今までありがとう」
そう呟いて有紀は目を閉じた。
荷物は全て片付き、俺達親子は吉井家にお泊まりだ。
俺たちは庭の桜の木の下で花見をした。
俺が吉井家の台所で料理を作り、兄ちゃんは母さんの大好きなアップルパイを作った。
食べて飲んで、楽しくて…
吉井家のリビングでなっちゃん主導のDVD観賞会をして、春斗が号泣して皆は泣き笑いで…
楽しい時間が終わり、今夜は春斗の部屋で一緒に寝るんだけど…
俺は今春斗の部屋で、後ろから抱き込まれている。
後ろにいる春斗の表情は見えない。
腕の力は緩むことなく、春斗の鼓動が背中に伝わってくる。
「苦しいよ、春斗」
ビクッとして力を緩めた手をそっとほどいて、正面から春斗を見る。
「イケメンが台無し…」
泣き腫らした顔に手を伸ばすと、再び腕の中に閉じ込められた。
「ごめん、もうちょっと…」
広い背中にそっと手をまわして身体を預ける。
春斗の体温が心地よくて有紀は目を閉じた。
「有紀がもう帰って来ない気がして…」
有紀は目を開けて春斗を見上げた。
いつもと違う真剣な顔をした春斗がそこにいて…
「俺が有紀の事を好きだって言ったら、やっぱ気持ち悪いよな…」
「気持ち悪くないよ、俺にとっても春斗は特別だから…」
そう言って春斗の腕から抜け出す。
叱られた大型犬みたいだな…
身体を丸めて項垂れる春斗を愛しいと思った。
春斗の手を引いてベッドに座らせて、今度は有紀が春斗を腕に閉じ込める。
「お前の隣に俺の知らない誰かがいるのを想像すると、嫌だなって思うんだ。」
腕の中の春斗が何度も頷く。
あやすように背中をなでながら、有紀は思う。
嫌悪感なんてない、むしろ好きな気持ちしかない…
そう思ったら身体が動いてた。
腕をほどいて頬に手を添え、唇を重ねる。
春斗が目を見開いて俺を見てる。
「誰かに奪われる前に奪っとこうかなって…」
春斗が俺の大好きな顔で笑う。
俺達はクスクス笑いながら何度もキスをした。
その夜は春斗のベッドで一緒に寝た。
後ろから俺を抱き込んでる春斗の寝息と鼓動が聞こえる。
俺は春斗が好きだ。
春斗が俺を忘れても、重ねてきた時間はちゃんと俺の中にはある。
「今までありがとう」
そう呟いて有紀は目を閉じた。
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