父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

さようなら日本

異世界ハーフだった俺

結論から言おう…
まだ半信半疑ではあるが、多分俺は異世界人とのハーフだ…
納得はしていない。
でも母の話を聞きながら、今まで感じていた違和感の答え合わせをしていった結果、ありえない話ではないのかもしれないと思い始めてる…

母の話をまとめると…

母はチートな聖女様ご本人だった。
突然召喚された異世界で、悩み苦しみながらも頑張ったらしい…　
うん、仲間達と魔王倒してたよね…
セクシー美女の獣人さんとクールな竜人さんとキラキラの王子様ね。

王子様が勇者で、魔王との戦いで満身創痍の勇者を聖女様が癒しの力で治すんだ。
世界が平和になって、聖女と勇者は結ばれる。

でも元の世界に残した母親が心配な聖女様は、勇者のプロポーズを断るんだ。

あ、ばあちゃんか…

聖女様の気持ちに女神様が応えて、桜の花が咲いてる間だけ元の世界に帰してくれたんだよね。
満開の桜の木の下での母と娘の再会は感動だったな。
異世界補正で存在ごと忘れられたはずの故郷で、母親だけが娘の事を忘れてなかったんだよ。
母も自分を忘れてると思ってた聖女様に、「おかえりなさい」って言うんだ。

あ、ばあちゃんだな…

戻った聖女様は母親と幸せな時間を過ごす。
でも母親は娘が何かを抱えていることに気がついてるんだよね。

うん、ばあちゃんなら気がつくだろうな…

聖女様は母親に今までの事を打ち明け、母親は娘に言うんだよ…

「貴方を愛してくれる人の所に帰りなさい。貴方ならどこに行っても大丈夫よ」

似たような事言われたな…
間違いない、ばあちゃんだ…

そして聖女様は勇者の元へ戻り、幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし…

うん、そんな話だったよね。
で？百歩譲って聖女様だとしよう。
何で今俺はここにいるの？

おかしくない？
ていうか、ばあちゃん知ってたのか…

「聖女様？」

「うん、そうね…ちなみに有紀も癒しの力使えるよ、気付いてないと思うけど…」

はい？今なんと？
ていうか、ハッピーエンドのその先が物凄く気になってきたんだけど…

「ますます分からなくなってきたんだけど、俺の父親は勇者アランってこと？」

「うん、そうだね。名前はアランじゃなくてアルトだけどね」

「ハッピーエンドだったはずだけど…」

「いや…そこはいろいろと事情があって…話せば長くなるんだけど…」

母さん、声が小さくなってますよ。
目も泳いでます。
長くなっても全然かまいませんよ。

「コーヒー入れるね」

今の俺にはカフェインが必要だ。
ばあちゃん、俺も魔法使えるらしいよ。
あとさ、あんまり待たせたら可哀想な人は、藤田さんじゃなくて異世界に暮らす父親の事だったんだね…