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2章 覚醒編
第30話 決着!
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「おかあ……さん……?」
アレクは心の中で何かが壊れたような気がした。
記憶の封印が解けた事で、彼をまばゆい光が包みこむ。アイスシルバーだった髪は白く逆立つ白銀の髪へ、瞳はうっすらと金色に輝く。
「な、なんだ!?」
驚き、慌てふためくミゼットだが、同時に危機感を覚えたらしい。アレクの顔を狙うのをやめ、咄嗟に昏倒魔法が組まれたベストに蹴りを入れる。
いや、入れたはずだった。彼の意識はそこで途切れていた。
白銀のアレクがゆっくりと立ち上がる。
クリスとヒーラーもミゼットが倒れた事で、すでに臨戦体勢だ。祝福を付与してクリスがアレクを狙って迫る。
――雷の防壁――
アレクの周囲に円を描くように雷が走り、壁を生成する。クリスは壁に当たる事なく跳躍した。祝福を受けた彼の身体能力は自分の身長を超える壁を容易く超える事を可能にしていた。
「ばかな!」
「なんだあれは!?」
観客席からは驚きの声が上がる。通常、魔法は詠唱を伴うものだが、アレクのソレは突然現れた。アレクに詠唱する時間などなかったはずだ。しかし、ソレだけでは終わらなかった。
――雷の矛槍――
跳躍して空中にいるクリスを狙った槍が彼を貫き、意識を刈り取る。
「なに!」
「う、嘘だろ!?」
その場に居たほとんどの人間が驚き、声を上げる。魔法の同時使用……それは詠唱や魔力の関係で不可能とされてきた事例の一つだ。多重魔法は単純に魔力を増やし、詠唱を多重化させる事で可能になったが、同時使用は異なる詠唱文を同時に詠唱し、さらに異なる量の魔力をそれぞれの魔法に使用しなければならない。故に不可能とされていた。目の前の人間がそれをやってのけたのだ、驚かずにはいられない。
彼を――アレックスを知らない人間は……
クリス、ミゼットが倒れたのを見て、相手のヒーラーが降参を宣言して試合が終わるも、歓声はなく、会場の雰囲気は変わらなかった。驚愕は次第に疑念へと変わり、不正疑惑を訴える者まで出てくる。先導者は無論彼らの仲間だ。
罵声と怒号が飛び交う中、1人の男が立ち上がる。
「静まらんか!」
その一声でその場のすべての人間が口を閉ざす。
「お前達は証拠もなく、疑いをかけるのか?今、目の前で行った事が事実だ。何の疑いようもない。アレックス、いや、アレクよ。2人が動けるようになったら一緒に学院長室まで来るように。話がある」
男――陛下はそう言うと妃を引き連れて会場から去って行った。静寂の中、アレクはルーナとトゥナを連れて会場を出る。幸い、気絶しただけだったので、一人で歩けるが、一応医務室へ連れて行く。その途中でトゥナが口を開いた。
「ついにやりましたね。おめでとうございます」
それはアレクが魔法を使った事に対する称賛だ。魔力爆散ではない正真正銘の魔法。正直、アレクには実感がなかった。母親を見た瞬間に、何か心の奥底から沸き上がるように魔力が溢れ、ほとんど無意識にミゼットを攻撃していた。これが自営本能というやつか……。次にクリスが突っ込んできたのを見ると、壁で防ぐイメージが流れて、魔法を思い浮かべるだけで雷の防壁が発動した。それを飛び越えた彼が見えたと思うと同時に撃ち落とすイメージが流れ、そのまま思い浮かべる。あっという間の出来事にアレクも戸惑っているうちに決着がつき、気付けば不正だと疑われ、陛下の一声で解決したという流れだった。
「なんかぱっとしないんだけどね」
アレクは答えながら先程の事、そして過去を振り返っていた。
アレクは心の中で何かが壊れたような気がした。
記憶の封印が解けた事で、彼をまばゆい光が包みこむ。アイスシルバーだった髪は白く逆立つ白銀の髪へ、瞳はうっすらと金色に輝く。
「な、なんだ!?」
驚き、慌てふためくミゼットだが、同時に危機感を覚えたらしい。アレクの顔を狙うのをやめ、咄嗟に昏倒魔法が組まれたベストに蹴りを入れる。
いや、入れたはずだった。彼の意識はそこで途切れていた。
白銀のアレクがゆっくりと立ち上がる。
クリスとヒーラーもミゼットが倒れた事で、すでに臨戦体勢だ。祝福を付与してクリスがアレクを狙って迫る。
――雷の防壁――
アレクの周囲に円を描くように雷が走り、壁を生成する。クリスは壁に当たる事なく跳躍した。祝福を受けた彼の身体能力は自分の身長を超える壁を容易く超える事を可能にしていた。
「ばかな!」
「なんだあれは!?」
観客席からは驚きの声が上がる。通常、魔法は詠唱を伴うものだが、アレクのソレは突然現れた。アレクに詠唱する時間などなかったはずだ。しかし、ソレだけでは終わらなかった。
――雷の矛槍――
跳躍して空中にいるクリスを狙った槍が彼を貫き、意識を刈り取る。
「なに!」
「う、嘘だろ!?」
その場に居たほとんどの人間が驚き、声を上げる。魔法の同時使用……それは詠唱や魔力の関係で不可能とされてきた事例の一つだ。多重魔法は単純に魔力を増やし、詠唱を多重化させる事で可能になったが、同時使用は異なる詠唱文を同時に詠唱し、さらに異なる量の魔力をそれぞれの魔法に使用しなければならない。故に不可能とされていた。目の前の人間がそれをやってのけたのだ、驚かずにはいられない。
彼を――アレックスを知らない人間は……
クリス、ミゼットが倒れたのを見て、相手のヒーラーが降参を宣言して試合が終わるも、歓声はなく、会場の雰囲気は変わらなかった。驚愕は次第に疑念へと変わり、不正疑惑を訴える者まで出てくる。先導者は無論彼らの仲間だ。
罵声と怒号が飛び交う中、1人の男が立ち上がる。
「静まらんか!」
その一声でその場のすべての人間が口を閉ざす。
「お前達は証拠もなく、疑いをかけるのか?今、目の前で行った事が事実だ。何の疑いようもない。アレックス、いや、アレクよ。2人が動けるようになったら一緒に学院長室まで来るように。話がある」
男――陛下はそう言うと妃を引き連れて会場から去って行った。静寂の中、アレクはルーナとトゥナを連れて会場を出る。幸い、気絶しただけだったので、一人で歩けるが、一応医務室へ連れて行く。その途中でトゥナが口を開いた。
「ついにやりましたね。おめでとうございます」
それはアレクが魔法を使った事に対する称賛だ。魔力爆散ではない正真正銘の魔法。正直、アレクには実感がなかった。母親を見た瞬間に、何か心の奥底から沸き上がるように魔力が溢れ、ほとんど無意識にミゼットを攻撃していた。これが自営本能というやつか……。次にクリスが突っ込んできたのを見ると、壁で防ぐイメージが流れて、魔法を思い浮かべるだけで雷の防壁が発動した。それを飛び越えた彼が見えたと思うと同時に撃ち落とすイメージが流れ、そのまま思い浮かべる。あっという間の出来事にアレクも戸惑っているうちに決着がつき、気付けば不正だと疑われ、陛下の一声で解決したという流れだった。
「なんかぱっとしないんだけどね」
アレクは答えながら先程の事、そして過去を振り返っていた。
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