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2章 覚醒編
第28話 惨めな結果!
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午前中の試合がすべて終わり、残るは8チームとなった。午後からの準々決勝、対戦相手はあいつだ。念入りに作戦を練るが、剣士として有名なヴァイエン家のクリスの相手はルーナだけでは厳しい。しかも、相手チームには治癒学院のヒーラーも入っており、聖魔法による能力アップはクリスやミゼットの能力を実質的に1ランク上げる事になる。そうなればルーナでさえ相手にならないらしい。アレクの魔力爆散で補助魔法を消し飛ばせるかはやってみないと分からないし、一応トゥナも聖魔法を使えるが、ミゼットも放置はできない。作戦の立案は困難を極めたが、アレクがミゼットを引き付ける事で落ち着いた。
そして、午後のスケジュールが進行する。アレクの試合は第2試合、闘技場で準備を済ませる。前の試合の決着がつき、自分達の出番になる。
目の前にいるミゼットは笑っていた。試合開始の合図と共に、お互いが動く。
「「聖なる光よ、戦慄を奏でる天の祝福」」
2人の魔法がそれぞれの仲間に作用し、体が白く輝きを放つ。祝福を受けたルーナとクリスがお互いの剣を打ち合う。両者一歩も引かない攻防が続いている。
「大いなる風よ、吹き荒れる風の突風!」
ルーナの後方で彼女に補助魔法をかけているトゥナに向かってミゼットが魔法を放つ。トゥナは祝福に魔力を注いでいるため、そちらへの対応はできない。しかし、今のトゥナにはアレクがついている。
――魔力爆散――
魔力爆散でミゼットの魔法を消し飛ばす。それを見たミゼットはにやりと笑っていた。その笑い方が不気味にも思える。
「大いなる風よ、かまいたちの如く大地を切り裂く風の三連刃」
ミゼットはアレクに見向きもせず、次の魔法を放つ。三連であろうと発動している魔法なら関係ない。
――魔力爆散――
「聖なる光よ、悪しき者を貫く光の光槍」
そう。発動している魔法なら――
ミゼットの魔法を合図に祝福を解いたヒーラーは攻撃魔法の詠唱を始めたのだ。ちょうどミゼットの魔法が消された時に発動するようにタイミングを合わせて……
魔力爆散も溜め込んだ魔力を放出する故に、詠唱は不要だが、魔力を溜める必要がある。1対1なら相手が魔法を発動する間に魔力を溜められるが、2対1だとこちらも連発できない。これが、アレクの魔力爆散の弱点だった。
トゥナは抵抗できずに攻撃を浴び、気絶する。トゥナの祝福を失ったルーナもすでにクリスの敵ではない。クリスは祝福なしでも祝福を受けたルーナと同等の実力だった。
そして、残るはアレクただ1人。アレクに近づく1人の男……。
「惨めなもんだな。前回はあの女にしてやられたが、見ろよこの惨状を」
ルーナとトゥナは気絶し、横たわっている。対するミゼットのチームは3人とも立っていた。
「下らん。とんだ茶番だ」
「ほんと。さっさと終わりにしてよね」
クリスとヒーラーの女がミゼットの後ろでぼやいている。アレク以外の2人を打ちのめして、アレクを追い詰める。ミゼットの考えた作戦だった。
「競技大会で懲りたと思ったが、今度は闘技大会か?いい気なもんだな。おい!」
言いながらミゼットはアレクを蹴りつける。蹴られたアレクは地面に倒れ、這いつくばるが、気絶はしていない。
「これがお前の実力だ。所詮、何もできない無能なんだよ!」
再びアレクに蹴りが飛ぶ。ミゼットが狙ったのは顔面……ベストに当てて、気絶なんかさせない。何度も、何度も蹴りを入れていく。
「おい、やばいんじゃないか?」
「誰か止めろよ」
闘技場の観客席はざわついているが、誰も動こうとはしない。ルール上はベストの魔法が発動して戦闘不能になるか降参しなければ敗北にはならないからだ。
その様子を見かねた審判がアレクに近寄る。
「もう降参しなさい」
アレクはゆっくり口を開く。
「こ、こう……」
しかし、アレクの言葉は最後まで続かなかった。
「立ちなさい。アレックス!」
その大きな声に遮られたのだ。その声の主は観客席の最前列……。来賓席にいる綺麗な女性だった。アレクはその女性に見覚えがあった。
その姿は……
まさか!?
「おかあ……さん……?」
アレクは心の中で何かが壊れたような気がした――
そして、午後のスケジュールが進行する。アレクの試合は第2試合、闘技場で準備を済ませる。前の試合の決着がつき、自分達の出番になる。
目の前にいるミゼットは笑っていた。試合開始の合図と共に、お互いが動く。
「「聖なる光よ、戦慄を奏でる天の祝福」」
2人の魔法がそれぞれの仲間に作用し、体が白く輝きを放つ。祝福を受けたルーナとクリスがお互いの剣を打ち合う。両者一歩も引かない攻防が続いている。
「大いなる風よ、吹き荒れる風の突風!」
ルーナの後方で彼女に補助魔法をかけているトゥナに向かってミゼットが魔法を放つ。トゥナは祝福に魔力を注いでいるため、そちらへの対応はできない。しかし、今のトゥナにはアレクがついている。
――魔力爆散――
魔力爆散でミゼットの魔法を消し飛ばす。それを見たミゼットはにやりと笑っていた。その笑い方が不気味にも思える。
「大いなる風よ、かまいたちの如く大地を切り裂く風の三連刃」
ミゼットはアレクに見向きもせず、次の魔法を放つ。三連であろうと発動している魔法なら関係ない。
――魔力爆散――
「聖なる光よ、悪しき者を貫く光の光槍」
そう。発動している魔法なら――
ミゼットの魔法を合図に祝福を解いたヒーラーは攻撃魔法の詠唱を始めたのだ。ちょうどミゼットの魔法が消された時に発動するようにタイミングを合わせて……
魔力爆散も溜め込んだ魔力を放出する故に、詠唱は不要だが、魔力を溜める必要がある。1対1なら相手が魔法を発動する間に魔力を溜められるが、2対1だとこちらも連発できない。これが、アレクの魔力爆散の弱点だった。
トゥナは抵抗できずに攻撃を浴び、気絶する。トゥナの祝福を失ったルーナもすでにクリスの敵ではない。クリスは祝福なしでも祝福を受けたルーナと同等の実力だった。
そして、残るはアレクただ1人。アレクに近づく1人の男……。
「惨めなもんだな。前回はあの女にしてやられたが、見ろよこの惨状を」
ルーナとトゥナは気絶し、横たわっている。対するミゼットのチームは3人とも立っていた。
「下らん。とんだ茶番だ」
「ほんと。さっさと終わりにしてよね」
クリスとヒーラーの女がミゼットの後ろでぼやいている。アレク以外の2人を打ちのめして、アレクを追い詰める。ミゼットの考えた作戦だった。
「競技大会で懲りたと思ったが、今度は闘技大会か?いい気なもんだな。おい!」
言いながらミゼットはアレクを蹴りつける。蹴られたアレクは地面に倒れ、這いつくばるが、気絶はしていない。
「これがお前の実力だ。所詮、何もできない無能なんだよ!」
再びアレクに蹴りが飛ぶ。ミゼットが狙ったのは顔面……ベストに当てて、気絶なんかさせない。何度も、何度も蹴りを入れていく。
「おい、やばいんじゃないか?」
「誰か止めろよ」
闘技場の観客席はざわついているが、誰も動こうとはしない。ルール上はベストの魔法が発動して戦闘不能になるか降参しなければ敗北にはならないからだ。
その様子を見かねた審判がアレクに近寄る。
「もう降参しなさい」
アレクはゆっくり口を開く。
「こ、こう……」
しかし、アレクの言葉は最後まで続かなかった。
「立ちなさい。アレックス!」
その大きな声に遮られたのだ。その声の主は観客席の最前列……。来賓席にいる綺麗な女性だった。アレクはその女性に見覚えがあった。
その姿は……
まさか!?
「おかあ……さん……?」
アレクは心の中で何かが壊れたような気がした――
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