溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

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揺揺(ようよう)

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ほんとうにずっと、このままなんだろうか…

さっきから抱きしめたりキスばかりするハル。
後ろから抱きつかれ、ハルのあぐらの上に座っている。
ぼくは「はぁ」と無意識にため息をつき、つとめてハルが椅子だと思い込み、本を読み続けようとした。
だが最新版で、集中しなきゃストーリーがわからなくなる難解な本だった。

ハルの匂いがする

それだけで集中できなくなった。

「ハル…」

いさめるような、多少うんざりした瞳でハルを振り返り見る。
両腕がロンの腰を抱き締めていた。
後ろの首元をキスされる。

「なんで?邪魔してないよ?」

笑顔がカッコいい…
それで照れてしまって、ハルの匂いで集中できない。とはとてもじゃないが言えなかった。

「……たまには…1人になりたい、かな?」

ここまでハルの気持ちに気を使うようになると思わなかった。
言いにくそうに言う自分。
ハルの表情をうかがいながら。
繊細なハルの心が傷つかないように。

目を開き、少し意外そうに驚いた表情をするハル。
僕はハルの言葉がつむがれるのを待った。 

「いいよ。そうしたいなら」
……

ニコ、と笑ったハル。
言い方は優しかった。
突き放す風でもなく…いつも通りで。
ただ、笑った表情が…少しだけ他人行儀な感じがした。
少し距離を感じたような。

まぁ、ぼくから距離とってくれ、と言ったようなものだが…

ハアァーと息を吹き、タイル状の床に倒れた。
天井を見上げる…

こんな生活…いつまで続くんだろ。

目を瞑る。
こんなこと口に出してしまったら、間違いなくまた監禁コースだ。
束の間の平穏を噛み締める… 

横を向く。
置いてある、本の続きが気になった。
……


『…………眠い無理』

低い声で、ハルは不機嫌そうにそう言った。
周りの生徒よりはずっと明るいが、今より比較的暗めの髪のハル。

なんで高校生のハルがいるんだろう?

そう思ったが、これは本を読んでる途中に寝落ちてしまったとあとでわかった。 

『なに?』

不機嫌なハルの声に慣れてなくてビクッとする。
突っ伏していた腕の間から、綺麗な片目がぼくを見る。
最初は鋭かったが、ゆっくり驚いた瞳に変わり、次に『どうしたの?』と優しい声に変わった。
雰囲気もいい。機嫌が良さそうだ。
僕を見て、パッと態度が変わったハル。

相変わらず…僕は鈍かった。

そう思った。
こんなにわかりやすかったというのに。

「………なんで?」
『ん?』
「なんで?」

僕の声は必死だった。
ここでプツンと、切れたように意識を取り戻した。
夢の続きを見ようと、目を瞑ってまた寝てみても、無意味だった。

………

いつも寝るベッドの上で、今日もまた寝ようとしていた。
その横の椅子に、ハルが座って本を読んでいた。
あのとき読んでいたのと同じのを。

「なかなか面白いね。」

パタンと閉じる。
その間にしおりも挟んであった。
僕が挟んだしおりがちゃんと挟んであるの確認して、ハルに意識を向き直した。
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